双子の転生先は双子でした

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Chapter 1

33*双子に到来ビックチャンス

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絶賛公開中の、恋愛映画の鑑賞会から王弟を連れ出した双子は、そのまま会場に向かうようにして来た道を戻っていた。

そう、問題はこの腕にホールドした王弟を、#__・どこで解き放つか__#である。

とりあえず、無難に会場に行けばいいか?と無言で足を進める双子に対し言葉を発したのは、今まで黙って連れられていた王弟であるアレキサンダーだった。

「おい、お前達は俺をどこに連れて行くつもりだ?」

それは、シンプル且つ的確な質問だった。
その声に、目を合わせた双子は咄嗟に応えた。

「「とりあえず、会場?」」

はぁ…と、大きな溜息と共に、アレキサンダーからストップがかかった。

「まてまて、やっとあの煩わしい空間から出てきたところだったのだ。戻るなら、お前達だけで戻れ!」

そう言って、捕まれたままの手をヒラヒラと降ってみせたアレキサンダーに、思わず双子も本音がポロリと零れる。

「「心から同意!!」」

ただただ、心から出た本音を言っただけなのだが、双子がそう言った瞬間…
アレキサンダーは、面白いものでも見つけたかのように「くっくっく…」と笑みを零したのだ。
そして、双子に対し「良いところを教えてやる♪」と言って、上機嫌に双子を両手に抱えたまま流れるようなエスコートで案内してくれた先は、会場から少し離れた場所にある王族専用の東屋だった。

「「綺麗…!!!」」

案内されて直ぐ、双子はアレキサンダーの腕を解くようにして、その美しい景色を最前線で見るために掛けだして行く。
王族専用とされる東屋は、少し奥ばった位置にひっそりと佇んでいるのだが、そこからは城下とその先にある海が一望できるようになっていた。
もちろん、前世のようなライトアップされた夜景ではないものの、街からでる淡い光や、海沿いに並ぶ外灯が柔らかく温かい景色を浮かび上がらせていた。それは、どこかホッとさせてくれるような、そんな気持ちにさせてくれる風景だった。

暫く夜景を眺めていた二人は、諸々のことを忘れ今度は夢中になって話しをしていた。

「ねぇ!今度街に行ってみよう!」

「そうだね!あれ屋台とかかな?見てみたーい!あ!ついでに、海にも行っちゃう!?」

「お!それいいーね!行っちゃおー!!ここって‥海入れるのかな?」

「どうだろう?でも、入れるでしょう!あ‥水着ってあるの?」

「水着!!!なんか‥ダサそうじゃない?どうせなら、ビキニとか作っちゃう?」

「そうだね♪でも、ここの下着から考えると…露出レベルやばいかも‥?」

「じゃぁ、とりあえずワンピース型から作ってみる?」

「そうしよ♪そうしよ♪お姉様のは、過激な方がサイラス様が喜ぶんじゃない!?」

「でもあの人‥以外と、他の男の目に入るのはダメ!とか言いそうじゃ無い?」

「あーーー、確かに」


「言うだろうなぁ‥あいつなら」


「「 !!! 」」


突然、何事も無く二人の会話に混じってきた声に、双子は驚くと共にハッとした。

そう、この場にはもう一人居たのだ。

しかも、本来であれば存在を忘れてはいけない人物が…。

恐る恐るといった様子で、双子が後ろを振り返ると…

彼がいた。

やっぱり…いた。

存在感をしっかりと放った彼は、優雅に腰を掛けて座っていたのだ。


もはや、双子は冷や汗ダラダラ状態である。

すっかり忘れていましたからね。
王弟殿下の存在を…
彼、とっても静かなんですよ…
静かに、黙って、双子を観察していたんでしょうね…

それにも気づかず、完全に前世混じりの言葉でワイワイ盛り上がって話しをしていた訳ですよ。

どことなく、気まずい雰囲気が漂う中、諦め半分の乾いた笑い声と共にナタリーが王弟に夜景の感想を述べた。

「えへへ‥綺麗な夜景ですね~、こんな素敵な場所を教えて頂いて、ありがとうございます」

「…どういたしまして。まぁ、君たちは夢中だったようだがね」

「「・・・・・」」

どことなく、含みが込められた王弟の言葉に双子はだんまりを貫いてみたものの、それは直ぐに破られてしまった。

「ところで、そのって言うのは、どんなものなんだい?」

好奇心いっぱいの目で、ニヤニヤと聞いてくる姿に、話しを全て聞かれていたことを悟と、今度はアシュリーが少し好戦的にサラリと答えた。

「胸元とお尻だけを隠した、水中用の衣装です」と。

その言葉に、アレキサンダーは顎に手を添えて「ほぉ~」とだけ返した。
そして、興味深そうにアシュリーとナタリーを眺めると、

「君たちのそのドレスも初めて見るデザインだったが、先程の会話からしてそれらは君たちが作ったのか?」

そう、訪ねてきたのだ。
その問いに、素直に答えると、アレキサンダーはとても驚いていた。
「まさか本当に君たちが作ったのか?」と。
しかし、それは決して否定的なものではなかった。
アレキサンダーは、双子のドレスをとても褒めてくれた。

「大変素晴らしい!そして、美しい!」と。

なんでも、夜会の始めに挨拶に来たときから辺境伯家の着ているドレスは、どれも素晴らしい!と目を引いていたらしく、どこの店のものか訪ねたかったらしい。

しかし、王弟であるがゆえに、そう易々と話しかけにもいけず諦めていたところに、何やら覗き込んでいる双子を発見したそうだ。本人的には、話しを聞きたかっただけで決してを見たかったわけではない。しかし、王族として問題のある貴族に見て見ぬ振りも出来ず、双子の後ろで共に眺めるハメになった訳だ。


そこまで、話しをきいたアシュリーはすぐにピン!ときて、王弟であるアレキサンダーにこう伝えた。

「もしや、贈り物でお考えでしたか?それであれば、お相手様の特徴などを教えて頂ければすぐにデザインを用意致しますわ!」と。

アシュリーは、こう考えたのだ。
私たちに、どこの店のものか問いたかったのは、誰かにドレスを贈りたいからでは無いか?と。
そもそも、貴族は妻や婚約者、恋人にドレスや貴金属を贈るのだ。

"君は私のものだ"と言うような意味を込めて。

だから、今回のドレスも身内だといえ、母のドレスは父に、姉のドレスはサイラス経由で本人達に渡っているのである。

もしや、独身至上主義として有名なイケオジ王弟も遂に結婚か!

そう期待に満ちた目で、アシュリーはアレキサンダーに進言したのだが…

残念ながら、そうでは無かったらしい…

「いや?誰にもあげる予定はないぞ?
単に、余りにも美しいデザインだったのでな。まだ、そのデザイナーのドレスがあるのなら見てみたいと思ったのと…もし可能なら、私の式典用の衣装を手掛けて欲しいと思っていただけだ」

「「 !!!!! 」」

おっ!
一度は流れそうになった話しが、以外にもここで双子にとってビックチャンス到来の予感がした。
自分たちの、デザインしたものをが着てくれるとなれば…

ブランドとして、こんなにも名誉なことはない!

アシュリーとナタリーは、顔を寄せ合い頷き合うと直ぐさまアレキサンダーへと駆け寄った。
そして、元気いっぱい宣言した。


「「是非!作らせて下さい!!式典用の衣装を!!」」

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