双子の転生先は双子でした

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Chapter 1

閑話*セザール・マルクスという男

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【セザール・マルクス】

マルクス侯爵家当主でありながら、僅か28歳という歴代最年少で、王宮財務部門の室長に上り詰めたエリート中のエリート。
現在30代後半でありながら、すでに財務部門のトップである大臣を務めており、陛下をはじめ王太子殿下からも信頼を寄せられる人物である。

"では何故、誰から見ても優良物件である彼が未だ独身でいるのか?"

何でも、彼は壊滅的にが悪いらしいのだ。


なんでも、セザールはその無駄に整った容姿と実績で昔から大変モテていた。

しかし、セザールは前侯爵夫妻のいわば高齢出産で産まれた、たった一人の嫡子だった。
その為、前侯爵であるセザールの父は自分たちがいなくなっても家督を継げるように、幼い頃から徹底的に帝王学を学ばせていた。そして、さも当然のように幼い頃から婚約者もいた。幼馴染でもある彼女の事を、セザールは大好きだった。しかし、日々勉学に費やすセザールと婚約者の彼女との間には大きな溝ができはじめた。
そして、その溝を修繕することができないまま、13歳の社交界デビューを迎える。
そしてその時、セザールがエスコートした彼女は驚くことに既に妊娠していたのだ。
もちろん、そんなことは本来あってはならない。
いくら相手が婚約者だったとしてもだ。
もちろん、セザールはまだ彼女に口付けさえしたことがなかった。
相手は、子爵家の三男で騎士団に所属しており、その時既に東の砦に配属されていた。
もちろん、激怒したセザールの父は直ぐさま婚約を破棄し、両家から相当な額の慰謝料を払わせていた。

そしてこの時、初めてセザールは失恋をした。


彼女の事も、彼女の裏切りも、全て忘れたかったセザールは更に勉学にのめり込んだ。
それと同時に、夜会への出席も増え始めると、すぐに令嬢達に囲まれ始めたという。
婚約者がいた頃とは違い、エスコートもせずに夜会へ向かえば、すぐに彼がフリーだということが知り渡る。
そして、その夜会で知り合った2人目の女性が伯爵家の令嬢だった。
彼女とは、直ぐに身体の関係を持つことになる。しかし、何度も身体を重ねてもセザールは"婚約"という単語は絶対に出さなかった。
要するに、その伯爵令嬢もアシュリーとナタリーが考えていた【既成事実】を狙ったのだ。
しかし、いくら待ってもセザールから一度でも婚約の話しは出なかった。だから、彼女はセザールを諦めて別の男性の手を取ったのだ。セザールが、彼女との婚約を許して貰おうと、両親に掛け合っていた間に…。

説得の末、漸く婚約の許しが出たときには、既に彼女と別の男と婚約が発表された後だった。


そして、セザールはまた夜会へと繰り出しては手当たり次第、女性を抱くようになった。
むしろ、子供さえ出来てしまえば、その相手と結婚すればいい…
そんな風に考えるようになっていった。

しかし、残念なことに子供ができることは無く、彼の"夜遊び"ばかりが目立ち始めた。
そして、そんな噂が広まると自然と彼の回りには令嬢ではなく未亡人が集まり始めたのだ。
夫を亡くした彼女たちは、一夜の癒やしや快楽を求めセザールに近づいた。

そのうち、セザールは一人の未亡人にのめり込んでいく。
彼女は、夫を病で亡くしていた。そして、侯爵家の次男だった夫をセザールに重ねたのだ。
肌を重ねながら、彼女はセザールの後ろに亡き夫を見ていた。
彼女は、いまでも亡くなった夫だけを愛していたのだ。
しかし、セザールの目には熱の籠もった瞳が見ているように映っていた。
セザールが、彼女を愛し始めることに時間はかからなかった。

「愛している」

そう、初めて口にした言葉は、無残にも一瞬で散っていった。

そして、婚期を逃し続けたセザールはいつしか"遊び相手"と言った対象にしか見られなくなっていった。
もちろん、中には真剣にセザールに恋して近寄る令嬢達もいる。
しかし、次第にセザールも簡単に肌を重ねてくる彼女たちにそれ以上のことを求めなくなっていった。
お陰で、今では避妊は完璧だ。

来る者拒まず…
去る者追わず…

それが、今のセザールだった。
別に、今更それを悲しむ事も嘆くこともない。
ただ一つ、悔いが残るとすれば、両親に孫の顔を見せられなかったことだけだろう。


*****

セザールの元に、一通の手紙が届いた。
中を開くと、そこには一言だけ…

『今夜、お待ちしておりますわ』と、書かれていた。

彼は、目を通すと何事も無かったかのようにその手紙を破り捨てた。
しかし、その様子に驚き声をあげた者がいた。

「え?!それ、破いても良かったのですか!?」

「えぇ、何も問題ありませんよ。ただの、連絡事項でしたので読み終えればですから。
それよりも、話しを続けましょう!夜会では、ナタリー嬢はアイボリーのドレスを着るのですね?」

「あ、はいっ!それで、セザール様は何色のお召し物になりますか?」

「私は、黒系を着る予定ですよ」

「そうなのですね!では、私がアイボリーでも問題ありませんね!よかったぁ!!」


そう言って、嬉しそうに笑うナタリーを見てセザールは思う。

(ナタリー嬢をエスコートする前までに、身辺整理が必要だな)と…


そして、ナタリーが帰った後、セザールは関係の続くに対し手紙を書いた。
ただただ、簡潔にわかりやすく一言。


___終わりだ。と…

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