双子の転生先は双子でした

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Chapter 1

26*ナタリーとセザール

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まぁ、常にそのような邪な想いを胸に抱きつつも、今は目の前のことに集中しなければならない。
今夜は、これまでの努力の成果を大々的に見せつける為の参加なのだから。

アシュリーは、無意識のうちに兄ダニエルに添えた手に力がこもった。
それに気づくと、ダニエルはそっとアシュリーに手を重ねてくれた。
それだけでも、アシュリーにはとても心強かった。

そして、緊張感が増していたのはナタリーも同じだった。
腕だけでなく、会場の入り口が近づくに連れ自然と全身に力が入る。
しかし、そんなナタリーを安心させるかのように、セザールがそっと腰に手を回しグッと引き寄せてくれる。
そして、周りに気づかれないようそっと耳元で囁いた。

「大丈夫、私がついている」 と…


こんな…
こんな紳士的な男性に、ときめかない女性は果たしているのだろうか!?
年上男性ならではの包容力で、強ばったナタリーの心を一瞬で溶かしてくれた。
むしろ、名前が呼ばれるまでのしばらくの間、ポーッとセザールを見つめてしまうほど、破壊力が半端なかったのだ。
しかも、そんな事をサラッとやってのけるセザールは、間違いなく女性の扱いが上手い筈だ。

"それなのに、未だ独身を貫いているのは何故か?"

必然的に、そんな疑問が浮かんでくる。

でも、とりあえず彼が私のパートナーであることは間違いない。
堂々と胸を張って、セザールの横を歩こう!
ナタリーは、そう想いを新たに彼の横に並んだ。
その表情には、自身が溢れている。


そして、そんなナタリーの姿を、ちらりと横目に見たセザールは久しぶりに強い高揚感を抱いていた。

初めてあった時から感じていた、双子のアンバランスさ。
目をキラキラとさせながら初々しく声をかけてきたかと思えば、きっちりと高位貴族特有の上品な淑女の礼を行い、好奇心いっぱいの目で、自分に妻はいるのか?と尋ねてこれば、自分達が周りから何と言われているのか理解し、既に結婚は諦めているかのような発言をする。

その時点でも、貴族令嬢としては十分不思議な存在だったのだが、極め付けは今回のエスコートに関してだった。

『私達のどちらかのエスコート役を引き受けては頂けませんか』

そう言った、彼女達にセザールはこう返した。

『せっかくの夜会なのだから、身の丈のあった相手と行きなさい』と。

自分のように、年の離れた相手ではなく、同世代の令息と共に行けばいい…と。

しかし、彼女達は決して諦めようとはしなかった。何度も何度も、私の元に足を運んでは頼んでくるのだ。最終的には、ほぼ毎日だ。
毎日、お菓子を片手にやってくる彼女達を迎える事が日課になりつつあった。

そして、それを楽しみにまっている自分に気がついた時、セザールは彼女達にエスコート役を引き受けると返事をした。

彼女達よりも、彼女達の親との方が歳が近いだろう。我ながら、馬鹿げていると思う。
しかし、惹かれずにはいられなかった。

そして、夜会の数日前にナタリーが1人でやってきた時、私のパートナーはナタリーなのだと分かった。
少し照れた様に笑いながら、『当日はよろしくお願いします』という彼女は、とても可愛らしかった。

そして、今夜。
目の前に現れた彼女は、女神のように美しかった。 

近頃の貴族令嬢が好んで着る、フリルやリボンが沢山ついたボリュームがあるドレスではなく、彼女の華奢な身体を包み込む様なドレスは、己の庇護欲を存分に掻き立てた。
背中のリボンを解けば、彼女の全てを手に入れられるのではないか、とまで思ってしまう。
到底、10代には見えない色気を彼女は纏っていた

楽しそうに頬を緩ませながら、会場の入り口に向かうも、次第にその表情には緊張が見えてきた。
まぁ、無理もないだろう。
彼女達にとってこの夜会は、あの夜会以来の久々の参加となるのだから。

セザールは、強張る彼女の身体に手を回し自分の元へと腰を引き寄せた。
ただ、純粋に安心させたかったからだ。
しかし、それは大きな間違いだと気づいた。
腰を引いた瞬間、すぐに違和感があった。でも、もうそれを止めることは出来なかった。

彼女の耳元で、安心させようと呟いた時…
私の心は大いに揺れていた。

(まさか、コルセットを付けていないのか!?) と…。

そう、彼女の腰はとても柔らかったのだ。

ダンスを踊る関係で、女性の腰に手を添えることは多々ある。大抵は、硬くギチギチに締め上げたコルセットを着けている為、まるで鎧に触れている様な感覚なのだ。
しかし、ナタリーの腰はとても柔らかく、まるで指が吸い寄せられるかのように彼女の身体に張り付いた。
まるで、ナタリーを抱いているかの様なそんな感覚だった。
そして、同時になんとも言えない気持ちが芽生える。


___あぁ、彼女が欲しい。
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