双子の転生先は双子でした

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Chapter 1

25*双子、白亜の宮殿へ行く

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"白亜の宮殿"

その言葉が、ぴったりと当てはまる様な王宮が、今双子の目の前にそびえたっている。

もちろん、兄に会いに王宮には何度も足を運んでいた。しかし、今回の夜会会場は普段目にする王宮の雰囲気とは全く別の空間だった。
あの苦い思い出しかない、社交界デビューの会場と一緒なはずなのだが…何度アシュリーとナタリーの記憶を思い返しても、この白亜の宮殿は見たことがなかった。

由佳アシュリーは、不思議に思い兄のダニエルに聞いてみた。

「お兄様、ここは夜会会場とは別なのでしょうか?」

本来なら、社交界デビューで使用される会場は『今後の夜会参加を認める』といった意味が含まれる為、必ず夜会時に使用される会場を使うのだ。初めての場所で、慌てなくても済む様に…。

「あぁ、あれ以来お前達は参加していなかったからな。知らないのも当然か」

そう言って、兄が説明してくれた。
何でも、一年前の夜会時に1人の男性を取り合って、どこかの侯爵令嬢と伯爵令嬢とで諍いが起きたそうだ。
その際に、掴み合いの取っ組み合いになり、慌てて止めに入った使用人を突き飛ばした結果…
壁の側にあったキャンドルが倒れ、そのままクロスやらカーテンなどに燃え広がったらしい。壁にかけてあった有名画家の絵や、幾らするのか分からない壺なども、燃えたり割れたりと大変だったそうだ。
幸いにも、被害は一角のみではあったのだが、物が燃えた臭いが酷く残った為、会場の一部修繕とともに会場内の模様替えをしたらしい。

そして、出来上がったのが… 
この、真っ白い会場である。

因みに、何故白くしたのかと言うと…
王妃様曰わく

『心と体と性根…全ての浄化の為です』

との事だそうだ。
要するに、『全てを白紙に戻しましょう』と言う意味らしい。
もちろん、問題を起こした侯爵令嬢と伯爵令嬢には、会場の修繕費の負担及び今後3年間の夜会参加禁止、そして取り合った令息との婚約及び接近禁止令が出されたそうだ。
適齢期の令嬢で、3年間夜会に出られず、問題を起こしたとなれば…
今後、婚約はかなり難しいだろう。
まぁ、こればかりは自業自得だと思って頑張ってほしい。


そうした経緯でできたものの、色々と飾り次第で会場の雰囲気を変えれるところが、王妃様のお気に入りらしく、装飾を選びを楽しんでいらっしゃるとか…
陛下も、王妃様さえ満足ならそれでいいらしい。
両親に続き、国王夫妻も仲睦まじいようで、なんだか嬉しく思った。


___いや、正直とても羨ましい。


やっぱり、いつまで経ってもラブラブな夫婦には憧れる。特に、毎日ラブラブっぷりを見せられている側からすると、羨ましい限りだ。
それに、そういった感情はどうしても前世のイメージが強く出てしまう。
出来ることなら、お部屋でしっぽりイチャイチャだってしたい!
しかし、こちらの世界では、婚約前の男女が2人きりになることは禁止されている。
逆に、婚約さえ結んでしまえば姉達のように、どこまでいっても大丈夫らしい…
…。

もちろん、一度でも身体の関係を持てば基本的に婚約破棄は不可らしく、絶対に結婚しなくてはならない。まぁ、何か事情があればイレギュラーで婚約者解消か破棄をできるらしいが…とにかく規律が細かすぎて、覚えきれない。

でも、この話を聞いた時…
双子の頭に真っ先に浮かんだのは

【既成事実】だった。

やはり、ここら辺はどうしても前世目線になってしまう。
だって、身体の関係から始まる恋って…
あるじゃない?

由佳も由希も、結婚はしていなかったけど恋人は居たし、付き合ってない時期も一緒に寝るだけの相手もいた。
もちろん、遊んでいた訳じゃないけど…
結局は2人とも仕事を優先させてしまい、結果的に振られてしまうのだ。

特に、由佳は状況に応じて半年以上日本を離れることもしばしばあった。
帰ってきたら、彼氏と全く連絡取れない事なんてざらだった。

由希だって、ネイルサロンのオーナーとして朝早くから遅くまで働いていたのだ。
ある日、取材の撮影が予定より早く終わり店に戻ると、彼氏と店のスタッフの子が抱き合っていた。美容関係は男女とも若い子が多い。正直、浮気なんて何度もされた経験がある。でも、それをいちいち気にしている余裕なんて、あの頃の由希には無かったのだ。

そんな経験ばかりしていると、そもそもの存在が煩わしくなる。

だってそうだろう?
「忙しい」と言えば、「お前が構ってくれないから浮気した」と開き直られ、「3ヶ月の出張があと1ヶ月ほど延びた」と伝えれば、「俺の事なんてどうでもいいんだろう?」と言われる。

…この場合、いったい何と答えるのが正解なのだろうか?

仕事を辞めればいいの?
じゃぁ、結婚してくれるの?
私を養ってくれるの?

それは、けれど、自分には構っていてほしい!なんて、自己中にも程があるだろう。


そんな訳で、前世の2人は30代に入ると共に、恋人という括りを外した。
誘われれば、デートへ行く。
お泊まりとなれば、肌を寄せ合った。

毎日毎日、連絡する必要もない。
仕事が忙しい時も、相手を気遣う必要がない。
仕事が落ち着けば、こちらから連絡する。
会えば、当たり前のように夜を共にする相手がいる。
しかし、付き合ってはいない。

相手が、誰と遊んでいても、他の何人と寝ていようが関係ない。悲しむ必要も、嫉妬する必要も、彼氏とのデートの為に仕事の調整に頭を悩ます必要もない。

その関係性が、双子にはとても合っていたんだと思う。

だって、店の子と浮気する度、女の子達をクビにする訳にもいかないでしょう?
だからと言って、そのまま働き続けられても正直気まずい…
でも、恋人じゃなければ、その感情を持つ必要が無くなる。

そう思えば、思う程、恋人はいらなくなった。


そして、現世。
既成事実に恥じらいなんて全くない。
むしろ、関係をもてば結婚してもらえるなんて…

なんて、素晴らしいのでしょう!

前世のように、『一度寝て捨てられた…』なんて事がないのだから。


だからこそ、双子は思った。

押し倒せば、セザール様と結婚できるかも!

…と。
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