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Chapter 1
17*双子の挨拶
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同席していた騎士達や文官らによる、突然の求婚に驚きはしたものの‥
その求婚劇は、直ぐさま王太子と兄ダニエルによって抹消されてしまった。
けれど、「お前達わきまえろ!」と言った王太子に対し、彼らは「では、退席後にまた改めて!!」と、何故か前向きだった。
根本的なところが違う気がするのだが…。
ちなにみ兄は、即「お前達の嫁にはやらん!」と全否定で答えていた。
彼らは、当人である双子を完全に蚊帳の外にして、暫くのあいだ攻防戦を繰り広げていた。
その様子を、お茶とお菓子を頂きながら眺めていると、来訪を知らせる声が響いた。
「申し上げます!
王宮財務部門セザール・マルクス大臣がお見えです」
「通せ」
「では、殿下、我々はこれにて」
「あぁ、こちらから呼んでおいてすまないな。
アシュリー嬢、ナタリー嬢も、また今度ゆっくりと茶でもしよう」
「「はい、本日はありがとうございました」」
そう言って、王太子に退席の挨拶を終えると、ほぼ同時に入室の声が聞こえた。
開けられた扉から入って来たのは、長身でモノクルを掛けた30代後半ぐらいの男性だった。
彼は、恭しく入室してきたものの、その視界にダニエルを捉えると一気に愛好を崩して話し始めた。
「殿下、失礼致します。
ん?おや、これはダニエル殿、久しぶりです!」
「セザール様、ご無沙汰しております」
「これは‥お邪魔してしまいましたかな?」
「いえ、我々も退席予定でしたので問題ございません」
「そうですか‥もしや、こちらのご令嬢は今噂のお二人かな?」
兄とセザールのやり取りを、後ろで眺めていると不意に双子へと興味を向けられる。
「‥まさか、セザール様のお耳にまで入っているのですか!?」
「もちろんですよ?今、この王宮内で一番人気の話題ではありませんか!」
「はぁ‥、セザール様、紹介いたします。こちら、私の妹でアシュリーとナタリーと申します」
「!!‥まさか、妹君らがあの噂の人物なのですか!?」
その驚き方に、兄のダニエルはどこかしら力なく「‥はい」とだけ答えていた。
実はあの噂、噂が更に噂を呼び現在では‥
『近衛隊長は、あの二人の美女に翻弄され、同じ屋根の下で昼も夜も骨の髄まで貪りつくしているらしい』
と、いうものに変わってしまったらしい。
まぁ…家族であり妹なので、所々は合っているのだが、きっと世間一般の人達との考えとはかなり違うだろう。
その違いに含みをもたせるようにして、アシュリーとナタリーがカーテシーで挨拶をする。
「セザール・マルクス侯爵閣下、お初にお目にかかります。
同じ屋根の下で兄ダニエルを翻弄しております、妹のアシュリーと申します。以後、お見知りおきを‥」
「同じく、お初にお目にかかります。
昼も夜も骨の髄まで兄を堪能しております、妹のナタリーと申します。兄がいつもお世話になっているようで、感謝申し上げます。」
この何とも言えない挨拶に、執務室内にはまたしばしの静寂が訪れた。
そして、目をまん丸にしたセザールに対し双子が満面の笑みを送ると、セザールは吹き出すようにして大爆笑をし始めたのだ。
普段、声を出して笑う姿など見たことも無い、王太子やダニエルを始め周りにいた騎士や文官達は驚愕していた。
「いや~、面白い!!!大変、面白いお嬢さん方だ!
それに、私のことをすでにご存じとは‥暫く社交界に出ておられなかったと聞き及んでおりましたが、大した物です。
それにしても、同じ屋根の下で翻弄に堪能とは…くくっくっ!!!はははははっ!!!」
ツボに入ってしまったかのように、笑いが止まらないセザールを横目に、王太子と兄ダニエルからは、溜息交じりの呆れた声が聞こえてきたのだが、今の双子には全く気にならなかった。
彼女たちの視線は、笑い続けている彼にだけ向けられていたのだから…
((セザール様…カッコイイ!!!))
その求婚劇は、直ぐさま王太子と兄ダニエルによって抹消されてしまった。
けれど、「お前達わきまえろ!」と言った王太子に対し、彼らは「では、退席後にまた改めて!!」と、何故か前向きだった。
根本的なところが違う気がするのだが…。
ちなにみ兄は、即「お前達の嫁にはやらん!」と全否定で答えていた。
彼らは、当人である双子を完全に蚊帳の外にして、暫くのあいだ攻防戦を繰り広げていた。
その様子を、お茶とお菓子を頂きながら眺めていると、来訪を知らせる声が響いた。
「申し上げます!
王宮財務部門セザール・マルクス大臣がお見えです」
「通せ」
「では、殿下、我々はこれにて」
「あぁ、こちらから呼んでおいてすまないな。
アシュリー嬢、ナタリー嬢も、また今度ゆっくりと茶でもしよう」
「「はい、本日はありがとうございました」」
そう言って、王太子に退席の挨拶を終えると、ほぼ同時に入室の声が聞こえた。
開けられた扉から入って来たのは、長身でモノクルを掛けた30代後半ぐらいの男性だった。
彼は、恭しく入室してきたものの、その視界にダニエルを捉えると一気に愛好を崩して話し始めた。
「殿下、失礼致します。
ん?おや、これはダニエル殿、久しぶりです!」
「セザール様、ご無沙汰しております」
「これは‥お邪魔してしまいましたかな?」
「いえ、我々も退席予定でしたので問題ございません」
「そうですか‥もしや、こちらのご令嬢は今噂のお二人かな?」
兄とセザールのやり取りを、後ろで眺めていると不意に双子へと興味を向けられる。
「‥まさか、セザール様のお耳にまで入っているのですか!?」
「もちろんですよ?今、この王宮内で一番人気の話題ではありませんか!」
「はぁ‥、セザール様、紹介いたします。こちら、私の妹でアシュリーとナタリーと申します」
「!!‥まさか、妹君らがあの噂の人物なのですか!?」
その驚き方に、兄のダニエルはどこかしら力なく「‥はい」とだけ答えていた。
実はあの噂、噂が更に噂を呼び現在では‥
『近衛隊長は、あの二人の美女に翻弄され、同じ屋根の下で昼も夜も骨の髄まで貪りつくしているらしい』
と、いうものに変わってしまったらしい。
まぁ…家族であり妹なので、所々は合っているのだが、きっと世間一般の人達との考えとはかなり違うだろう。
その違いに含みをもたせるようにして、アシュリーとナタリーがカーテシーで挨拶をする。
「セザール・マルクス侯爵閣下、お初にお目にかかります。
同じ屋根の下で兄ダニエルを翻弄しております、妹のアシュリーと申します。以後、お見知りおきを‥」
「同じく、お初にお目にかかります。
昼も夜も骨の髄まで兄を堪能しております、妹のナタリーと申します。兄がいつもお世話になっているようで、感謝申し上げます。」
この何とも言えない挨拶に、執務室内にはまたしばしの静寂が訪れた。
そして、目をまん丸にしたセザールに対し双子が満面の笑みを送ると、セザールは吹き出すようにして大爆笑をし始めたのだ。
普段、声を出して笑う姿など見たことも無い、王太子やダニエルを始め周りにいた騎士や文官達は驚愕していた。
「いや~、面白い!!!大変、面白いお嬢さん方だ!
それに、私のことをすでにご存じとは‥暫く社交界に出ておられなかったと聞き及んでおりましたが、大した物です。
それにしても、同じ屋根の下で翻弄に堪能とは…くくっくっ!!!はははははっ!!!」
ツボに入ってしまったかのように、笑いが止まらないセザールを横目に、王太子と兄ダニエルからは、溜息交じりの呆れた声が聞こえてきたのだが、今の双子には全く気にならなかった。
彼女たちの視線は、笑い続けている彼にだけ向けられていたのだから…
((セザール様…カッコイイ!!!))
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