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番外編
〜クロードのその後Ⅰ〜
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ギシッ…ギシッ…
あぁ…あぁ…っ…
薄暗い部屋の中から聞こえてくるのは、ベッドの軋む音と、無駄に大きい女の喘ぎ声だ。
「あぁ~っ!いいわっ!いいわよ!ユゼフ!もっと、もっと来てちょうだい!」
「…えぇ、わかりましたよ」
そう、言うと男は紫紺の髪を振り乱し、更に強く腰を打ち付けた。
何度も何度も…
この行為を、少しでも早く終わらせるために…。
【弱く儚い美しき花に愛を…】
女の喘ぎ声が響き渡るこの屋敷の、入り口に掲げられている言葉だ。
そして、この屋敷にはこんなルールがある。
1.女からの要望には、最大限応えなければならない。
2.先に果ててはならない
3.どんな時も、女を敬え
4.絶え間なく甘い言葉をかけ続けろ
5.必ず、愛されていると感じさせろ
そう、ここは高級娼館である。
しかし、少しだけ通常の娼館と違うのは、客が男ではなく女…
すなわち、"男娼"という事だ。
「今日も、最高だったわ。またね、ユゼフ♪」
「メリーゼ様、ありがとうございます。またのご来館をお待ちしております」
「ええ!お利口にまってるのよ♪」
そう言って、ユゼフと名乗る男娼へ口付けをすると、メリーゼと呼ばれた女性は、その男娼の倍はありそうな大きな身体をゆっさゆっさと揺らしながら迎えの馬車へと乗り込んでいった。
そして、一息つく間もないまま、声がかかる。
「おい、ユゼフ!シャワー浴びてこい!
次だ、次!」
「…はい」
事を終えたあとの、特有の気だるさを引きずって、さっとシャワーを浴びる。
目の前の鏡には、以前のような自信に満ち溢れた姿の彼はもういない。
はぁ…
もはや、習慣化するかのように大きな溜息が溢れる。
身体を拭き、着替えて身なりを整えれば、待ってました!とばかりに指名が入った。
次の客は、"マダムロア"と呼ばれる年配の夫人だ。
この客は、大変羽振りがいいのだが…年齢がかなり上のため、なかなか事に及べない。要するに、濡れないのだ。
その為、基本的に断らない他の男娼達も、彼女だけは一度の行為にかなりの時間が取られるため苦手なのだ。
しかし、ユゼフだけは違った。
愛撫にはそれなりに時間がかかるが、彼女はとてもお喋りである。気分が乗ってこれば、どんな質問にも快く答えてくれるのだ。
マダムロアが通じている裏社会の事まで…全て。
だから今日も、男娼ユゼフは彼女の足の間に顔を埋めると、丁寧に舐め上げる。
「今日は暖かい日でしたね」
そんな、何気ない話から始めて暫くすると、足がピクピクと反応し始める。
そうなると、そろそろ深い質問をしてもいい頃合いだ。
「そう言えば、マダムロアはご存じですか?ヘミング通りの宝石店に強盗が押し入ったそうですよ。あの界隈は、高級店が立ち並んでいますので、マダムロアもお気をつけください」
「ん…っ、えぇ、ありがとうユゼフ。でも、あそこの…はぁ…っ、あそこの宝石ならすでに裏で取引が始まってしまって、あぁっ…」
「…取引ですか?それはなんでも、あまりにも早いのでは?
…こちらは、いかがですか?」
「ふぅ…っ、あ、あ…
ええ、ヒッ!いいわ、ユゼフ…
何でも、あの強盗事件は自作自演で…っん!あそこの…て、店主も…はぁん!一枚噛んでるっ!!そこ!そこ、いっ…いいっ!!」
「へぇ~、ここがいいですか?」
「ユゼフ!ユゼフ!もう…っ!」
「はい、わかりましたよ。では、入れましょう、マダムロア」
そうやって、今晩マダムロアから引き出した情報は全部で4つ。
満足そうに帰っていくマダムロアを見送ると、娼館の専属執事に一言断りを入れたのちタバコを吸いに裏手へと回る。
1本に火をつけ、タバコの煙が空へと上がると、直ぐに2本目と3本目に火をつけた。3本の煙が上がる様子を見ていると、その煙に応えるかのように、別の場所からも煙が上がりすぐに消えた。
その後、何事も無かったかのように、娼館内に戻りシャワーへと向かう。
先程の、煙はユゼフが3本、相手からは2本上がっていた。場所は向かって右側だった。
その数と場所によって、使うシャワー室を変えなければならない。
シャワー室は扉を挟むようにして、向かい合わせで10列並んでおり、計20人が浴びれる仕組みだ。
今も、数人が使用していた。
「おっ、ユゼフお疲れさん」
「あの人相手だと、疲れんだろう?」
「今日はもう終わりか?ゆっくり休めよ~」
それぞれ、終わった者もいれば、今からまた1人相手をしに出ていくものもいる。
軽く挨拶を交わしながら、ユゼフは右のシャワー3台、その向かいの右側2台目のシャワー室へと入っていく。
周りに聞こえないようにシャワーを出すと、身体を洗いつつも目の前の鏡に手をかざした。
すると、鏡はすーっと全身が写る程の大きさへと変化をみせた。
そして、その鏡を軽く押せばそこは娼館とは全く別の部屋へと繋がった。
あぁ…あぁ…っ…
薄暗い部屋の中から聞こえてくるのは、ベッドの軋む音と、無駄に大きい女の喘ぎ声だ。
「あぁ~っ!いいわっ!いいわよ!ユゼフ!もっと、もっと来てちょうだい!」
「…えぇ、わかりましたよ」
そう、言うと男は紫紺の髪を振り乱し、更に強く腰を打ち付けた。
何度も何度も…
この行為を、少しでも早く終わらせるために…。
【弱く儚い美しき花に愛を…】
女の喘ぎ声が響き渡るこの屋敷の、入り口に掲げられている言葉だ。
そして、この屋敷にはこんなルールがある。
1.女からの要望には、最大限応えなければならない。
2.先に果ててはならない
3.どんな時も、女を敬え
4.絶え間なく甘い言葉をかけ続けろ
5.必ず、愛されていると感じさせろ
そう、ここは高級娼館である。
しかし、少しだけ通常の娼館と違うのは、客が男ではなく女…
すなわち、"男娼"という事だ。
「今日も、最高だったわ。またね、ユゼフ♪」
「メリーゼ様、ありがとうございます。またのご来館をお待ちしております」
「ええ!お利口にまってるのよ♪」
そう言って、ユゼフと名乗る男娼へ口付けをすると、メリーゼと呼ばれた女性は、その男娼の倍はありそうな大きな身体をゆっさゆっさと揺らしながら迎えの馬車へと乗り込んでいった。
そして、一息つく間もないまま、声がかかる。
「おい、ユゼフ!シャワー浴びてこい!
次だ、次!」
「…はい」
事を終えたあとの、特有の気だるさを引きずって、さっとシャワーを浴びる。
目の前の鏡には、以前のような自信に満ち溢れた姿の彼はもういない。
はぁ…
もはや、習慣化するかのように大きな溜息が溢れる。
身体を拭き、着替えて身なりを整えれば、待ってました!とばかりに指名が入った。
次の客は、"マダムロア"と呼ばれる年配の夫人だ。
この客は、大変羽振りがいいのだが…年齢がかなり上のため、なかなか事に及べない。要するに、濡れないのだ。
その為、基本的に断らない他の男娼達も、彼女だけは一度の行為にかなりの時間が取られるため苦手なのだ。
しかし、ユゼフだけは違った。
愛撫にはそれなりに時間がかかるが、彼女はとてもお喋りである。気分が乗ってこれば、どんな質問にも快く答えてくれるのだ。
マダムロアが通じている裏社会の事まで…全て。
だから今日も、男娼ユゼフは彼女の足の間に顔を埋めると、丁寧に舐め上げる。
「今日は暖かい日でしたね」
そんな、何気ない話から始めて暫くすると、足がピクピクと反応し始める。
そうなると、そろそろ深い質問をしてもいい頃合いだ。
「そう言えば、マダムロアはご存じですか?ヘミング通りの宝石店に強盗が押し入ったそうですよ。あの界隈は、高級店が立ち並んでいますので、マダムロアもお気をつけください」
「ん…っ、えぇ、ありがとうユゼフ。でも、あそこの…はぁ…っ、あそこの宝石ならすでに裏で取引が始まってしまって、あぁっ…」
「…取引ですか?それはなんでも、あまりにも早いのでは?
…こちらは、いかがですか?」
「ふぅ…っ、あ、あ…
ええ、ヒッ!いいわ、ユゼフ…
何でも、あの強盗事件は自作自演で…っん!あそこの…て、店主も…はぁん!一枚噛んでるっ!!そこ!そこ、いっ…いいっ!!」
「へぇ~、ここがいいですか?」
「ユゼフ!ユゼフ!もう…っ!」
「はい、わかりましたよ。では、入れましょう、マダムロア」
そうやって、今晩マダムロアから引き出した情報は全部で4つ。
満足そうに帰っていくマダムロアを見送ると、娼館の専属執事に一言断りを入れたのちタバコを吸いに裏手へと回る。
1本に火をつけ、タバコの煙が空へと上がると、直ぐに2本目と3本目に火をつけた。3本の煙が上がる様子を見ていると、その煙に応えるかのように、別の場所からも煙が上がりすぐに消えた。
その後、何事も無かったかのように、娼館内に戻りシャワーへと向かう。
先程の、煙はユゼフが3本、相手からは2本上がっていた。場所は向かって右側だった。
その数と場所によって、使うシャワー室を変えなければならない。
シャワー室は扉を挟むようにして、向かい合わせで10列並んでおり、計20人が浴びれる仕組みだ。
今も、数人が使用していた。
「おっ、ユゼフお疲れさん」
「あの人相手だと、疲れんだろう?」
「今日はもう終わりか?ゆっくり休めよ~」
それぞれ、終わった者もいれば、今からまた1人相手をしに出ていくものもいる。
軽く挨拶を交わしながら、ユゼフは右のシャワー3台、その向かいの右側2台目のシャワー室へと入っていく。
周りに聞こえないようにシャワーを出すと、身体を洗いつつも目の前の鏡に手をかざした。
すると、鏡はすーっと全身が写る程の大きさへと変化をみせた。
そして、その鏡を軽く押せばそこは娼館とは全く別の部屋へと繋がった。
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