【完結】4人の令嬢とその婚約者達

cc.

文字の大きさ
上 下
15 / 31
本編

15

しおりを挟む
クロード・ライガストは、父であるライガスト侯爵の前に座らされていた。

理由は、ただ一つ。
目の前に、山積みになった報告書の束が原因だった。
これは、クロードの素行調査…
では、なく。クロードのだった。
しかも、この報告…1人の者から申告されただけではない。すべて、別々の人物によるものだった。
中には、高級娼館とされている店の娼婦からのクロードとの赤裸々な内容のものから、通りすがりの治安警備隊や農夫、子供からの報告まであった。
特に、驚いた事に、クロードが気に入っていた娼婦からの報告書には、当時の会話の内容が一字一句間違いなく書かれていた。

"彼は、私の身体を舐め回しながらこう言いました。
『俺の婚約者は、胸を見せろと言っても見せもしない、触らせてもくれない…
たかが伯爵家の分際で、この俺を喜ばせることもできないのなら…お前達の方が可愛がいがあるな。ほら…ここ、いい締め付け具合だ』
彼は、私の中に入ると夢中になっていました。そして、この日は明け方まで何度も何度も行為に耽った後、宝石のついたネックレスをくれました。赤いルビーのついたものです"

そして、その娼婦に何を贈ったのかも…

そういった類の報告書を、父の執事が淡々と読み上げていく。
その間、父であるライガスト侯爵は黙ったままクロードを凝視していた。
その隣には、同じく静かに内容を聞いている母、ライガスト侯爵夫人が座っている。

そして、約半分ほどの量を朗読し終えた頃には、母である侯爵夫人は明らかな軽蔑のこもった目でクロードを見ていた。

「本当に、救いようもない愚か者ですこと。我が家の有責であるのは、間違い無いわね…。
まさか、婚約者への贈り物として購入した物を娼婦にあげていただなんて…」

そう言って、侯爵夫人はクロードに対し持っていた扇子を振り上げた。

___バシッ!

バシッ、バシッ…

ただただ、無言で彼女は息子であるクロードを叩き続けたのだ。

もはや、これだけ多くの人々から報告が上がってくるとなると、クロードを庇うことは出来なかった。
まして、そこに書かれた内容をみると貴族としても次期侯爵としても最低な内容ばかりだったのだ。

相手が、娼婦だけならまだ良かったのかもしれない。

ナナエラがかけた暗示は、広範囲によって効果を発揮していたのだ。
報告書によれば、クロードが事に及ぶ相手は複数人いた。
ある時は、騎士団の宿舎を掃除するメイドに手を出し…
ある時は、騎士仲間の恋人だったり想い人だったり…
もはや、手当たり次第に手を出し、挙げ句の果てには、"来るもの拒まず"状態だったのだ。
もちろん、中にはこの侯爵家に勤めているメイドまでいた。

クロードは、騎士団の中でも、諜報活動に優れた二番隊に所属している。
彼らは、情報を引き出すためなら、拷問もすれば女を抱く事だってある。

そこは、クロードの両親である2人も十分理解していた。
だからこそ、ある程度は任務のため仕方がないと理解伯爵家のナナエラと婚約者させたのだ。

しかし、もはやクロードのしていたことは任務と誤魔化せるレベルではなかった。

未だ、母親によって叩かれ続けるクロードに対し、父である侯爵が言う。

「お前の人生は騎士団に捧げよ」と。


謂わば…

ライガスト侯爵家にお前はいらない

そう、言われたも同然だった。
しおりを挟む
感想 28

あなたにおすすめの小説

【完結】君を愛する事はない?でしょうね

玲羅
恋愛
「君を愛する事はない」初夜の寝室でそう言った(書類上の)だんな様。えぇ、えぇ。分かっておりますわ。わたくしもあなた様のようなお方は願い下げです。

私はアナタから消えます。

転生ストーリー大好物
恋愛
振り向いてくれないなら死んだ方がいいのかな ただ辛いだけの話です。

あなたが一番大切なのに

頭フェアリータイプ
恋愛
公爵令嬢で王太子の婚約者なロザリーナは突然婚約破棄されてしまう。 婚約破棄されてしまったロザリーナは一体どうなってしまうのか。

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

【完結】私は身代わりの王女だったけれど、冷たい王太子に愛されました。

朝日みらい
恋愛
虐げられた王女・エリシアは、母の死後、継母と義理の姉妹たちに冷遇されながら宮廷で孤独に暮らしていた。そんな中、病に伏した父王の代わりに和平を保つため、隣国との政略結婚が決定される。本来ならば義姉が花嫁となるはずが、継母の陰謀で「身代わりの花嫁」としてエリシアが送り込まれることに。 隣国の王太子・レオニードは「女嫌い」と噂される冷淡な人物。結婚初夜、彼はエリシアに「形だけの夫婦」と宣言し、心を閉ざしたままだったが――。

お別れを言うはずが

にのまえ
恋愛
婚約者に好きな人ができたのなら、婚約破棄いたしましよう。 エブリスタに掲載しています。

王太子の愚行

よーこ
恋愛
学園に入学してきたばかりの男爵令嬢がいる。 彼女は何人もの高位貴族子息たちを誑かし、手玉にとっているという。 婚約者を男爵令嬢に奪われた伯爵令嬢から相談を受けた公爵令嬢アリアンヌは、このまま放ってはおけないと自分の婚約者である王太子に男爵令嬢のことを相談することにした。 さて、男爵令嬢をどうするか。 王太子の判断は?

皇后マルティナの復讐が幕を開ける時[完]

風龍佳乃
恋愛
マルティナには初恋の人がいたが 王命により皇太子の元に嫁ぎ 無能と言われた夫を支えていた ある日突然 皇帝になった夫が自分の元婚約者令嬢を 第2夫人迎えたのだった マルティナは初恋の人である 第2皇子であった彼を新皇帝にするべく 動き出したのだった マルティナは時間をかけながら じっくりと王家を牛耳り 自分を蔑ろにした夫に三行半を突き付け 理想の人生を作り上げていく

処理中です...