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本編
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そして、時同じくして、モンテネグロ侯爵家___
『婚約者?あぁ、ミシュカか…あんな不細工を婚約者にされるなんてな。最悪だよ、最悪。やっぱ女は、お前のように胸が大きくて男を楽しませることができる器がないとな~』
『もうっ!サイモン様ったらぁ~またするの~?フフフッ‥あんっ!』
あん❤︎あん❤︎あーんっ❤︎
両親である、モンテネグロ侯爵夫妻を前にして流されている映像には、サイモンのこれまでの娼婦達との会話から情事の様子まで、全てがしっかりと納められていた。
両親と共に、自身の交わりの様子をみることになるとは思っていなかったサイモンの顔色は、もはや真っ白だった。
そして、もちろん…我が子のこのような姿を見ることになった侯爵夫妻は、怒りで肩が震えていた。
この映像は、サイモンの婚約者であるミシュカのランブル侯爵家から贈られてきた映像だった。
添えられていた手紙には、『必ず3人で見て欲しい』と書かれており、息子の幼馴染で幼い頃から交流のあったミシュカを我が子同然に可愛がってきた侯爵夫人は喜んで、サイモンを呼び映像を流させたのだ。
そう、夫人はてっきりこの映像は、二人の結婚式の準備に関することだと思っていた。
だからこそ、何のためらいも無くそれを見た。
我が子が、一人の娼婦に後ろから覆い被さり腰を振りつつ、両隣にいる娼婦に口付けをしながら胸を鷲づかみにしている様子を…
しかも、この映像が流れる前に、ランブル侯爵夫人であるミシュカの母の声で、『一度流すと最後見終わるまで映像を止めることは出来ませんので、ご注意下さい』と案内が入っていた。
だから、この不潔極まりない映像を止めることは誰にも出来ないのだ。
もちろん、侯爵夫妻はこれがどういうつもりでランブル家から送られてきたのか、すぐに理解した。
そして、嘆き悲しんだ。
ミシュカとサイモンが幼馴染であるということは、両家が幼い頃から交流があったと言うことであり、尚且つ両親同士が親友でもあったのだ。
だからこそ、ミシュカがサイモンの嫁に来て、自分たちの義娘になることを誰よりも楽しみにしていた。
それを、我が子が…
息子のサイモンが最悪な形で裏切ったのだ。
この映像は、ランブル家から贈られてきたものだ。
当然、ミシュカもこの映像を見ているのだろう。
そう思うだけで、モンテネグロ侯爵夫妻はミシュカのことを思うとかける言葉が見つからなかった。
『可哀想なミシュカ…』
『義娘となるはずだった、あんな可愛い子を裏切るなんて…』
そんな思いが、駆け巡ったのだろ…
サイモンの母である侯爵夫人が言った一言は、これからのサイモンの人生を一変させることになった。
「娼婦にうつつを抜かすような者は、いらないわ。
見損ないました。サイモン・モンテネグロ。お前を嫡男から外しましょう」
「っ!待って下さい、母上!?」
「サイモン、お前はなんて愚かなことを…侯爵家は弟のユリウスに継がせる。
お前は、好きにせよ。…ほとほと愛想が尽きた」
「ランブル家に謝罪に伺います。直ぐさま、準備なさい」
「っ!お待ち下さい!確かに、娼館にはまいりましたが…一時的なもので、今ではミシュカを妻とすることに納得しております」
「…"納得"ですって?」
サイモンの言葉に母である、侯爵夫人は何か引っかかったように小首を傾げた。
そして、説得に試みようと身を乗り出した瞬間!
サイモンは、その場から弾き飛ばされていた。
侯爵によって殴り飛ばされたのだ。
そして、怒りに震える侯爵に言われた言葉でサイモンは我に返った。
「この大馬鹿者が!!!何が、納得だっ!
そもそも、ミシュカ嬢としか結婚しないと言い張ったのは、誰でも無い!お前だ!!そんなことも忘れたお前に、この侯爵家の当主が務まるわけがない!廃嫡にしないだけでも、有難くおもわんかっ!!」
(自分が、ミシュカと結婚したいと望んだ?)
その言葉に、サイモンの幼少期の記憶が薄らと思い返されていく。
いつも手を繋ぎ、一緒に遊んだ。ミシュカは、本に出てくる王子様とお姫様みたいに幸せになりたいの!と言っていた。だから、サイモンはミシュカに言った。
『僕が王子様になったら、ミシュカがお姫様になってくれる?』と…
そして、幼いミシュカは何気なく答えた。
『うん!サイモンが王子様になったら私がお姫様になって幸せにしてあげるね』と。
その後、サイモンは嬉しくなって直ぐに両親に言ったのだ。
『僕たち、結婚するから!』と。
ミシュカを、婚約者にされたんじゃない。
自分が、ミシュカを望んだんだ。
流石に早いんじゃ無いか?と止める互いの両親を、説き伏せるようにしてサイモンはその場でミシュカに言ったのだ。以前、見た求婚していた男性の姿を見よう見まねで…
彼女の前で片膝をつき、僅か8歳の男の子が言った。
『ミシュカ・ランブル嬢、君はずっとずっと僕のお姫様だよ。だから、僕を君だけの王子様にしてほしい』と。
その言葉に、まだ5歳の女の子は笑顔で答えた。
『うん!嬉しい!』と。
これには、両家の夫人である母達が大いに歓喜した。
そして二人は幼いながらにも婚約したのだった。
いつからだったのだろうか。
ミシュカとの婚約を、煩わしく感じ始めたのは…
恐らく、学園に入った頃だろう。3つ下の女の子より、同世代の女の子達との会話の方が楽しかったことを覚えている。
ミシュカを、馬鹿にし始めたのは…
初めて、どこかの令嬢と肌を重ねたときだろうか。あの気持ちよさの虜になったのは、言うまでも無い。
サイモンは、暫くその場から動くことが出来なかった。
そして、引きずられるようにして連れていかれた先で待っていたのは…
婚約破棄ではなく、白紙撤回だった。
「貴方の婚約者であった事実を消し去りたい」
そう言われた気がした。
『婚約者?あぁ、ミシュカか…あんな不細工を婚約者にされるなんてな。最悪だよ、最悪。やっぱ女は、お前のように胸が大きくて男を楽しませることができる器がないとな~』
『もうっ!サイモン様ったらぁ~またするの~?フフフッ‥あんっ!』
あん❤︎あん❤︎あーんっ❤︎
両親である、モンテネグロ侯爵夫妻を前にして流されている映像には、サイモンのこれまでの娼婦達との会話から情事の様子まで、全てがしっかりと納められていた。
両親と共に、自身の交わりの様子をみることになるとは思っていなかったサイモンの顔色は、もはや真っ白だった。
そして、もちろん…我が子のこのような姿を見ることになった侯爵夫妻は、怒りで肩が震えていた。
この映像は、サイモンの婚約者であるミシュカのランブル侯爵家から贈られてきた映像だった。
添えられていた手紙には、『必ず3人で見て欲しい』と書かれており、息子の幼馴染で幼い頃から交流のあったミシュカを我が子同然に可愛がってきた侯爵夫人は喜んで、サイモンを呼び映像を流させたのだ。
そう、夫人はてっきりこの映像は、二人の結婚式の準備に関することだと思っていた。
だからこそ、何のためらいも無くそれを見た。
我が子が、一人の娼婦に後ろから覆い被さり腰を振りつつ、両隣にいる娼婦に口付けをしながら胸を鷲づかみにしている様子を…
しかも、この映像が流れる前に、ランブル侯爵夫人であるミシュカの母の声で、『一度流すと最後見終わるまで映像を止めることは出来ませんので、ご注意下さい』と案内が入っていた。
だから、この不潔極まりない映像を止めることは誰にも出来ないのだ。
もちろん、侯爵夫妻はこれがどういうつもりでランブル家から送られてきたのか、すぐに理解した。
そして、嘆き悲しんだ。
ミシュカとサイモンが幼馴染であるということは、両家が幼い頃から交流があったと言うことであり、尚且つ両親同士が親友でもあったのだ。
だからこそ、ミシュカがサイモンの嫁に来て、自分たちの義娘になることを誰よりも楽しみにしていた。
それを、我が子が…
息子のサイモンが最悪な形で裏切ったのだ。
この映像は、ランブル家から贈られてきたものだ。
当然、ミシュカもこの映像を見ているのだろう。
そう思うだけで、モンテネグロ侯爵夫妻はミシュカのことを思うとかける言葉が見つからなかった。
『可哀想なミシュカ…』
『義娘となるはずだった、あんな可愛い子を裏切るなんて…』
そんな思いが、駆け巡ったのだろ…
サイモンの母である侯爵夫人が言った一言は、これからのサイモンの人生を一変させることになった。
「娼婦にうつつを抜かすような者は、いらないわ。
見損ないました。サイモン・モンテネグロ。お前を嫡男から外しましょう」
「っ!待って下さい、母上!?」
「サイモン、お前はなんて愚かなことを…侯爵家は弟のユリウスに継がせる。
お前は、好きにせよ。…ほとほと愛想が尽きた」
「ランブル家に謝罪に伺います。直ぐさま、準備なさい」
「っ!お待ち下さい!確かに、娼館にはまいりましたが…一時的なもので、今ではミシュカを妻とすることに納得しております」
「…"納得"ですって?」
サイモンの言葉に母である、侯爵夫人は何か引っかかったように小首を傾げた。
そして、説得に試みようと身を乗り出した瞬間!
サイモンは、その場から弾き飛ばされていた。
侯爵によって殴り飛ばされたのだ。
そして、怒りに震える侯爵に言われた言葉でサイモンは我に返った。
「この大馬鹿者が!!!何が、納得だっ!
そもそも、ミシュカ嬢としか結婚しないと言い張ったのは、誰でも無い!お前だ!!そんなことも忘れたお前に、この侯爵家の当主が務まるわけがない!廃嫡にしないだけでも、有難くおもわんかっ!!」
(自分が、ミシュカと結婚したいと望んだ?)
その言葉に、サイモンの幼少期の記憶が薄らと思い返されていく。
いつも手を繋ぎ、一緒に遊んだ。ミシュカは、本に出てくる王子様とお姫様みたいに幸せになりたいの!と言っていた。だから、サイモンはミシュカに言った。
『僕が王子様になったら、ミシュカがお姫様になってくれる?』と…
そして、幼いミシュカは何気なく答えた。
『うん!サイモンが王子様になったら私がお姫様になって幸せにしてあげるね』と。
その後、サイモンは嬉しくなって直ぐに両親に言ったのだ。
『僕たち、結婚するから!』と。
ミシュカを、婚約者にされたんじゃない。
自分が、ミシュカを望んだんだ。
流石に早いんじゃ無いか?と止める互いの両親を、説き伏せるようにしてサイモンはその場でミシュカに言ったのだ。以前、見た求婚していた男性の姿を見よう見まねで…
彼女の前で片膝をつき、僅か8歳の男の子が言った。
『ミシュカ・ランブル嬢、君はずっとずっと僕のお姫様だよ。だから、僕を君だけの王子様にしてほしい』と。
その言葉に、まだ5歳の女の子は笑顔で答えた。
『うん!嬉しい!』と。
これには、両家の夫人である母達が大いに歓喜した。
そして二人は幼いながらにも婚約したのだった。
いつからだったのだろうか。
ミシュカとの婚約を、煩わしく感じ始めたのは…
恐らく、学園に入った頃だろう。3つ下の女の子より、同世代の女の子達との会話の方が楽しかったことを覚えている。
ミシュカを、馬鹿にし始めたのは…
初めて、どこかの令嬢と肌を重ねたときだろうか。あの気持ちよさの虜になったのは、言うまでも無い。
サイモンは、暫くその場から動くことが出来なかった。
そして、引きずられるようにして連れていかれた先で待っていたのは…
婚約破棄ではなく、白紙撤回だった。
「貴方の婚約者であった事実を消し去りたい」
そう言われた気がした。
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