12 / 31
本編
12
しおりを挟む
___バンッ!!!
「‥っリカルド!!この馬鹿者!!恥を知れっ!」
リカルドが、屋敷に戻った直後、彼を待っていたのは怒りに震えた父であるフォード公爵だった。
そんな父の手には、1枚の手紙が見るも無惨な状態で握られていた。
その手紙は、王宮騎士団団長からの直筆の手紙で騎士団の紋章で蝋封されたものだった。
手紙が届いたのは、丁度リカルドが帰ってくる少し前だ。
基本的に、騎士団からの手紙で騎士本人では無く家族宛に、しかも当主宛に届く物はさほど多くは無い。
急ぎの案件かと、慌てて開けてみたその内容にリカルドの父はただただ唖然としていた。
騎士団長からの、丁寧な挨拶から始まった手紙には信じられないような‥
いや、信じたくない内容が書き連ねてあった。
簡単に略すと…
"ご子息の娼館通いが目に余る為、当主からの注意喚起"
"特定の娼婦への入れあげと騎士としての自覚のなさ"
"会議の場において、王命によりSランク冒険者として参加されていた婚約者への罵倒及び暴言"
『この度の件、余りにも目に余るため王宮騎士団長の名の下に、陛下へ報告するものとする。
場合によっては、騎士の称号の剥奪及び、公爵家にも何らかの沙汰が下される場合があると心せよ。』
フォード公爵からしてみれば、もはや何から怒れば良いのか分からないような内容であった。
「この馬鹿者がっ!よりにもよって娼婦に入れあげるとは…情けないっ!
リカルドお前、『アーリア嬢とは上手くいっていますので、ご心配なく』と言っていたあれは何だったのだ!?
まさか…嘘をついてまで娼婦に入れあげていたなどとは言うまいな!!!」
「っ!!あれは‥あの時は、上手くいっていたのですよ‥まだ‥」
「あの時はだと?あの時と言っても、つい10日程前の話だぞ!?たった、10日間の間に騎士団長自ら連絡を寄越さねばならぬほど、貴様は娼館に出入りしていたと申すのか!?」
「いっ、いえ、そういう訳ではございませんが‥
正直に申し上げます。私は、アーリアが好きではありません。確かに、美しく教養もあり次期フォード公爵家の女主人には相応しいとは思います。しかし、アーリアとは触れ合うことも無ければ、共に愛を囁き‥」
「アーリア嬢が、身体を許さぬから金で抱ける女が良いと申すのか?」
「いっ、いえ、ですから、そういうわけでは無く…
恐らくアーリアも私のことを好いてはおりません。私は、父上や母上のように互いを思いやる、そんな夫婦になりたいのです。彼女は確かに娼婦です。しかし、頭が良い。読み書きもできます。私が、今からでも買い上げ教育させれば、公爵夫人にもなれるでしょう!そして、何より我々は愛し合っています!彼女には、私しかいないのです!」
「…それはだな、リカルド、お前が気前の良い金づる、だ・か・ら・だ!!
お前は、そんなことも分からないのか!?
娼婦なんぞ、誰彼構わず"愛している"と囁くのが仕事で、"足を開いて男を受け入れる"それが仕事なのだ!
そんな女達と、貴族界のトップに位置する公爵令嬢を比べる馬鹿がどこにいる!?
読み書きが出来るなど、当たり前だ!
そもそも、その女を他の貴族が買ったことはないのか!?その時点で、次期フォード公爵夫人の身体を知るものが何人もいるなどとなれば、フォード家の恥どころでは済まされんぞ!その意味を、お前は分かって言っているのか!?
しかも、アーリア嬢自らに見られているなどとは…恥ずかしい。
アーリア嬢に、なんとお詫びすればいいのか‥
そもそも、この婚約はこちらから頭を下げて融資と共にお願いした婚約なのだぞ?全てぶち壊す気か!?」
「…は?」
怒られ続けた彼の頭の中で、父の最後の言葉だけが何度も繰り返されていく。
そう、リカルドは知らなかったのだ。
この婚約が、"フォード家たっての婚約"だった事に…。
そして、リカルドは気づいてしまった。
自分がアーリアに投げかけ続けた言葉に‥
『私は、父に融資をちらつかせて、婚約者におさまったお前を軽蔑するよ』
リカルドは、全く接点のなかったアーリアとの婚約に不満だった。
アーリアは、美姫と比喩されるほどとても美しい令嬢だった。白く透き通るような肌に、さらさらな髪は他の令嬢達の憧れの的だった。
そんな、彼女との婚約に始めはそこまでの不満は無かったものの、常に周りの令嬢から声をかけられていたリカルドは自分に対し、全く好意をみせてこないアーリアに徐々に苛立ちを募らせていったのだ。
要するに、嫉妬である。
彼は、気づいていないのだ。
アーリアに振り向いて欲しくて…
視界に映して欲しくて…
常にリカルドだけを求めて欲しい…
そんな、欲求の元おこなった行為だという事に。
彼自身が言っていたのだ。
『もし、婚約者を自分で選べるなら…
リカルドなら誰を選ぶんだ?』
『私か?そうだな…
レイノルズ家のアーリア嬢を選ぶよ。
何故かって?
彼女は、絶対に私に媚びらないからさ!
誇り高い、公爵令嬢。そこがいいんだ。』
「‥っリカルド!!この馬鹿者!!恥を知れっ!」
リカルドが、屋敷に戻った直後、彼を待っていたのは怒りに震えた父であるフォード公爵だった。
そんな父の手には、1枚の手紙が見るも無惨な状態で握られていた。
その手紙は、王宮騎士団団長からの直筆の手紙で騎士団の紋章で蝋封されたものだった。
手紙が届いたのは、丁度リカルドが帰ってくる少し前だ。
基本的に、騎士団からの手紙で騎士本人では無く家族宛に、しかも当主宛に届く物はさほど多くは無い。
急ぎの案件かと、慌てて開けてみたその内容にリカルドの父はただただ唖然としていた。
騎士団長からの、丁寧な挨拶から始まった手紙には信じられないような‥
いや、信じたくない内容が書き連ねてあった。
簡単に略すと…
"ご子息の娼館通いが目に余る為、当主からの注意喚起"
"特定の娼婦への入れあげと騎士としての自覚のなさ"
"会議の場において、王命によりSランク冒険者として参加されていた婚約者への罵倒及び暴言"
『この度の件、余りにも目に余るため王宮騎士団長の名の下に、陛下へ報告するものとする。
場合によっては、騎士の称号の剥奪及び、公爵家にも何らかの沙汰が下される場合があると心せよ。』
フォード公爵からしてみれば、もはや何から怒れば良いのか分からないような内容であった。
「この馬鹿者がっ!よりにもよって娼婦に入れあげるとは…情けないっ!
リカルドお前、『アーリア嬢とは上手くいっていますので、ご心配なく』と言っていたあれは何だったのだ!?
まさか…嘘をついてまで娼婦に入れあげていたなどとは言うまいな!!!」
「っ!!あれは‥あの時は、上手くいっていたのですよ‥まだ‥」
「あの時はだと?あの時と言っても、つい10日程前の話だぞ!?たった、10日間の間に騎士団長自ら連絡を寄越さねばならぬほど、貴様は娼館に出入りしていたと申すのか!?」
「いっ、いえ、そういう訳ではございませんが‥
正直に申し上げます。私は、アーリアが好きではありません。確かに、美しく教養もあり次期フォード公爵家の女主人には相応しいとは思います。しかし、アーリアとは触れ合うことも無ければ、共に愛を囁き‥」
「アーリア嬢が、身体を許さぬから金で抱ける女が良いと申すのか?」
「いっ、いえ、ですから、そういうわけでは無く…
恐らくアーリアも私のことを好いてはおりません。私は、父上や母上のように互いを思いやる、そんな夫婦になりたいのです。彼女は確かに娼婦です。しかし、頭が良い。読み書きもできます。私が、今からでも買い上げ教育させれば、公爵夫人にもなれるでしょう!そして、何より我々は愛し合っています!彼女には、私しかいないのです!」
「…それはだな、リカルド、お前が気前の良い金づる、だ・か・ら・だ!!
お前は、そんなことも分からないのか!?
娼婦なんぞ、誰彼構わず"愛している"と囁くのが仕事で、"足を開いて男を受け入れる"それが仕事なのだ!
そんな女達と、貴族界のトップに位置する公爵令嬢を比べる馬鹿がどこにいる!?
読み書きが出来るなど、当たり前だ!
そもそも、その女を他の貴族が買ったことはないのか!?その時点で、次期フォード公爵夫人の身体を知るものが何人もいるなどとなれば、フォード家の恥どころでは済まされんぞ!その意味を、お前は分かって言っているのか!?
しかも、アーリア嬢自らに見られているなどとは…恥ずかしい。
アーリア嬢に、なんとお詫びすればいいのか‥
そもそも、この婚約はこちらから頭を下げて融資と共にお願いした婚約なのだぞ?全てぶち壊す気か!?」
「…は?」
怒られ続けた彼の頭の中で、父の最後の言葉だけが何度も繰り返されていく。
そう、リカルドは知らなかったのだ。
この婚約が、"フォード家たっての婚約"だった事に…。
そして、リカルドは気づいてしまった。
自分がアーリアに投げかけ続けた言葉に‥
『私は、父に融資をちらつかせて、婚約者におさまったお前を軽蔑するよ』
リカルドは、全く接点のなかったアーリアとの婚約に不満だった。
アーリアは、美姫と比喩されるほどとても美しい令嬢だった。白く透き通るような肌に、さらさらな髪は他の令嬢達の憧れの的だった。
そんな、彼女との婚約に始めはそこまでの不満は無かったものの、常に周りの令嬢から声をかけられていたリカルドは自分に対し、全く好意をみせてこないアーリアに徐々に苛立ちを募らせていったのだ。
要するに、嫉妬である。
彼は、気づいていないのだ。
アーリアに振り向いて欲しくて…
視界に映して欲しくて…
常にリカルドだけを求めて欲しい…
そんな、欲求の元おこなった行為だという事に。
彼自身が言っていたのだ。
『もし、婚約者を自分で選べるなら…
リカルドなら誰を選ぶんだ?』
『私か?そうだな…
レイノルズ家のアーリア嬢を選ぶよ。
何故かって?
彼女は、絶対に私に媚びらないからさ!
誇り高い、公爵令嬢。そこがいいんだ。』
68
お気に入りに追加
1,637
あなたにおすすめの小説


【完結】私は身代わりの王女だったけれど、冷たい王太子に愛されました。
朝日みらい
恋愛
虐げられた王女・エリシアは、母の死後、継母と義理の姉妹たちに冷遇されながら宮廷で孤独に暮らしていた。そんな中、病に伏した父王の代わりに和平を保つため、隣国との政略結婚が決定される。本来ならば義姉が花嫁となるはずが、継母の陰謀で「身代わりの花嫁」としてエリシアが送り込まれることに。
隣国の王太子・レオニードは「女嫌い」と噂される冷淡な人物。結婚初夜、彼はエリシアに「形だけの夫婦」と宣言し、心を閉ざしたままだったが――。



魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。
悪役令嬢は永眠しました
詩海猫
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」
長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。
だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。
ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」
*思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m


王太子の愚行
よーこ
恋愛
学園に入学してきたばかりの男爵令嬢がいる。
彼女は何人もの高位貴族子息たちを誑かし、手玉にとっているという。
婚約者を男爵令嬢に奪われた伯爵令嬢から相談を受けた公爵令嬢アリアンヌは、このまま放ってはおけないと自分の婚約者である王太子に男爵令嬢のことを相談することにした。
さて、男爵令嬢をどうするか。
王太子の判断は?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる