【完結】4人の令嬢とその婚約者達

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【ユーフォニア・ブレナンと伯爵夫妻の場合】


ブレナン伯爵家は、少し変わった経歴の伯爵家である。
何でも、研究好きの先祖が国に貢献するほどの研究結果を上げたことにより、子爵家より伯爵家へと爵位を上げたのだ。その為、どうしてもその血には代々の研究好きの血が混じるため、貴族には珍しい自宅の屋敷に研究棟を構えるほどの研究一族となっていた。しかも、しっかりと結果を残しているため、他の貴族からも『伯爵らしくしてほしい』などとは口が裂けても言えなかった。

そして、研究一族の令嬢も周りに違わぬ程の、研究好きの一人である。

そんな、彼女が今日は珍しく学園から戻ったにも関わらず研究棟によらず、生活圏である本邸へ足をむけた。
目的地は、父の書斎である。近づくに連れ、中から何やら話し声…と、言うよりもイチャイチャ中の声が聞こえてきた。もちろん、この声の主は母である伯爵夫人だ。
ユーフォニアは、躊躇うこと無く扉を叩いて言った。

「イチャイチャ中に申し訳ありませんが、至急ご報告とご相談があります」

もちろん、扉の奥からは慌てている様子が窺える。
…娘としては、両親の仲の良い姿を喜ばしく思うべきなのだろうが、自分の婚約者がアレなのに、そう素直に喜べるほど寛大な心は持ち合わせていなかった。

そして、待つこと数分後…
扉を開けてくれたのは、何事も無かったかのような顔をした母だった。
そう、この家では良くあることなのだ。もはや、娘であるかぎり驚く事はなくなった。

母に招き入れられたところで、早速本題に入った。

「アルバスの娼館通いを、この目で見ました」

その一言に、常に年中ラブラブの両親は衝撃を受けたらしく、驚きのあまり固まっていた。
そんな二人に構うこと無く、ユーフォニアは話しを続けた。

「しかも、娼館の前の脇道で事に及んでおりまして…脇道ですよ?脇道!目の前に娼館があるにも関わらず‥
あまりの不潔さに、"病原体収集"の魔法を展開致しましたの。ですので、一刻も早く婚約を破棄したいと考えております。婚約破棄に関しては、いくつか証拠もございますので、あちらの有責で大丈夫ですわ。
慰謝料の代わりに、彼が集めて蓄積した病原体のサンプルが欲しいと、ライモンド伯爵家にご相談下さい。
なお、アレは公の場で私に"土下座"しなければ消えないよう、組込みましたから…とも、お伝え頂けると幸いですわ」

そこまで言ったところで、真っ先に口を挟んだのは当主である父だった。
因みにこの父…研究一族の中でも特に研究欲が強い。
本当に強い…それは、もう怖いくらいに。

そして、その父が反応したのはもちろん"病原体収集"だった。

「まさか…ユーフォ、お前アルバス殿のにかけたわけじゃないよな?」

事実確認の為か、父が恐る恐るといった風にユーフォニアに確認した。

「もちろん、そこに決まっているではありませんか?
各種"性病"を集めることができるなんて…初めての試みですわよね?!
腕がなりますわ~!少し調べただけでも、1週間に10人ほど別の相手と情事を楽しんでいらっしゃいますから~!
思っていた以上のサンプルが集まるかもしれません!!」

期待に胸が膨らみますわ!!と嬉しそうに報告する娘に対し、父親としては複雑な…
しかし、研究者としてはこの上ない期待と研究心に火が付くのが分かる。
そして、もちろんこの家では後者が勝つのだ。

「わかった、すぐに婚約破棄の手配をしよう。
そして、何が何でもサンプル提出には協力させよう!」

父はそう言うと、満面の笑みで任せろ!!と胸を張った。


そして、母は…更にその上をいった。

「ねぇ、その相手だけどどこの娼館の子達か分かるかしら?
分かれば、娼館側にも圧力をかけてサンプルを貰いましょう!その方が、より正確な研究結果を得られるわよ!」

「「なるほど…」」


その後も、結局執事が呼びに来るまで永遠と研究の話しに没頭した後、思い出したかのように"王命で討伐参加することになったので暫く家を空けます!"と伝えた頃には、両親はいとも簡単に承諾してくれた。

「「はぁ~い、いってらっしゃ~い!」」


そんな、感じで…。
研究の事以外、誰も・何も・気にしない。
それが、我がブレナン家であった。


「ご愁傷様~アルバス。
サンプル採取って‥とぉ~っても痛いのよねぇ…まぁ、頑張ってネ♪」

クスクスと笑いながら、ユーフォニアは家族団欒の夕食を楽しんだ。
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