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【ミシュカ・ランブルと侯爵夫妻の場合】
「お父様、お母様、サイモンとの婚約を破棄させて下さい!」
ミシュカは、戻ってきて早々に父と母にそう訴えた。
もちろん、直ぐさま父から罵倒するような声があがった。
「ミシュカ、お前何を言っているのか分かっているのか?サイモンは、優秀で次期参謀とまで期待されている男だぞ?そんな相手と婚約できたにも関わらず、なにが婚約破棄をしたいだ!ふざけるな!」
ミシュカの父は、幼馴染でもあるサイモンをよく知っていた。
そして、彼が頭の切れる優秀な者であることも、もちろん知っている。
幼少期から、お互いを知る二人の婚約を一番喜んでいたのは誰でもないミシュカの父なのだ。
そんな父に、少し考えていたミシュカの母は「あなたミシュカの話しを聞くべきではないかしら?」と助け船を出してくれた。
そして、ミシュカは証拠として撮り溜めてきた録画を両親へとみせた。
そこに記された映像には、真っ昼間の娼館の前で娼婦の胸に顔を埋めている様子や、複数人の娼婦と情事を楽しんでいる様子、そしてミシュカを散々馬鹿にしている様子が鮮明に映し出されていた。
そして、何より極めつけはこの音声だった。
『婚約者?あぁ、ミシュカか…あんな不細工を婚約者にされるなんてな。最悪だよ、最悪。やっぱ女は、お前のように胸が大きくて男を楽しませることができる器がないとな~』
『もうっ!サイモン様ったらぁ~またするの~?フフフッ‥』
もはや、何も言わなくても両親はミシュカの思いをしっかりと受け止めてくれていた。
それこそ、顔をみればどれほど怒っているのか分かるほどに…。
特に父は、サイモンを信頼していたからこそミシュカの婚約者にしたのだ。
その相手から、このように裏切られるとは思っていなかったのだろう。
落胆を通り越して、爽やかに笑っているのだ。普段、一切笑わない父が…。
それだけも、ミシュカは十分怖いと感じていた。
そんなとき、不意に母がミシュカに訪ねた。
「貴女はコレについて、前から知っていたのよね?録画の魔術まで展開して証拠を集めたのですから…」
"コレ"とは、間違いなくサイモンのことだろう。
ミシュカは素直に答えた。
「はい、偶然あの様子を見てしまいました。いつもの3人と一緒に…」
「…そう。では、恐らく他の方々の婚約者も一緒だったのよね?」
「!!!」
流石、社交界でも有名な情報収集のスペシャリストである。
私たち、4人が仲が良いことと同じく婚約者同士が連んでいる事は侯爵夫人にはお見通しだった。
「詳細までは、聞き及んでいませんでしたが…本日、ダンジョン討伐に集められた場所で問題が発生したそうよ。
それは、貴女たちが起こしたのね?そして、内容がコレなんでしょう?」
もはや、母の慧眼さには驚くしか無かった。
そもそも、討伐隊参加の場所にミシュカが呼ばれていることにも動じていないところをみると、母のことだ…
既に知っていたのだろう。我が子が、冒険者であることに。
そうして、モンテネグロ侯爵家への対応は父に任せた母は、急遽ミシュカの友人達3人の母親へ向けて手紙をしたためた。
そして、ミシュカに対しこう話す。
「ごめんなさいね、ミシュカ。嫌な噂は私の耳にも届いてはいたの。でも、あまり事を荒立てるのは良くないかと思って、今度、彼女たちのお母様と集まろうと予定を調整していたところなのよ」
そして、母は満面の笑みではっきりと宣言した。
「あ、心配しなくてもミシュカの婚約は絶対に白紙に戻させるわよ!」と。
その言葉に、あれ?何故か破棄から、白紙になってる?と思いつつも母の力強い宣言に、ミシュカはホッと一息ついたのだった。
「お父様、お母様、サイモンとの婚約を破棄させて下さい!」
ミシュカは、戻ってきて早々に父と母にそう訴えた。
もちろん、直ぐさま父から罵倒するような声があがった。
「ミシュカ、お前何を言っているのか分かっているのか?サイモンは、優秀で次期参謀とまで期待されている男だぞ?そんな相手と婚約できたにも関わらず、なにが婚約破棄をしたいだ!ふざけるな!」
ミシュカの父は、幼馴染でもあるサイモンをよく知っていた。
そして、彼が頭の切れる優秀な者であることも、もちろん知っている。
幼少期から、お互いを知る二人の婚約を一番喜んでいたのは誰でもないミシュカの父なのだ。
そんな父に、少し考えていたミシュカの母は「あなたミシュカの話しを聞くべきではないかしら?」と助け船を出してくれた。
そして、ミシュカは証拠として撮り溜めてきた録画を両親へとみせた。
そこに記された映像には、真っ昼間の娼館の前で娼婦の胸に顔を埋めている様子や、複数人の娼婦と情事を楽しんでいる様子、そしてミシュカを散々馬鹿にしている様子が鮮明に映し出されていた。
そして、何より極めつけはこの音声だった。
『婚約者?あぁ、ミシュカか…あんな不細工を婚約者にされるなんてな。最悪だよ、最悪。やっぱ女は、お前のように胸が大きくて男を楽しませることができる器がないとな~』
『もうっ!サイモン様ったらぁ~またするの~?フフフッ‥』
もはや、何も言わなくても両親はミシュカの思いをしっかりと受け止めてくれていた。
それこそ、顔をみればどれほど怒っているのか分かるほどに…。
特に父は、サイモンを信頼していたからこそミシュカの婚約者にしたのだ。
その相手から、このように裏切られるとは思っていなかったのだろう。
落胆を通り越して、爽やかに笑っているのだ。普段、一切笑わない父が…。
それだけも、ミシュカは十分怖いと感じていた。
そんなとき、不意に母がミシュカに訪ねた。
「貴女はコレについて、前から知っていたのよね?録画の魔術まで展開して証拠を集めたのですから…」
"コレ"とは、間違いなくサイモンのことだろう。
ミシュカは素直に答えた。
「はい、偶然あの様子を見てしまいました。いつもの3人と一緒に…」
「…そう。では、恐らく他の方々の婚約者も一緒だったのよね?」
「!!!」
流石、社交界でも有名な情報収集のスペシャリストである。
私たち、4人が仲が良いことと同じく婚約者同士が連んでいる事は侯爵夫人にはお見通しだった。
「詳細までは、聞き及んでいませんでしたが…本日、ダンジョン討伐に集められた場所で問題が発生したそうよ。
それは、貴女たちが起こしたのね?そして、内容がコレなんでしょう?」
もはや、母の慧眼さには驚くしか無かった。
そもそも、討伐隊参加の場所にミシュカが呼ばれていることにも動じていないところをみると、母のことだ…
既に知っていたのだろう。我が子が、冒険者であることに。
そうして、モンテネグロ侯爵家への対応は父に任せた母は、急遽ミシュカの友人達3人の母親へ向けて手紙をしたためた。
そして、ミシュカに対しこう話す。
「ごめんなさいね、ミシュカ。嫌な噂は私の耳にも届いてはいたの。でも、あまり事を荒立てるのは良くないかと思って、今度、彼女たちのお母様と集まろうと予定を調整していたところなのよ」
そして、母は満面の笑みではっきりと宣言した。
「あ、心配しなくてもミシュカの婚約は絶対に白紙に戻させるわよ!」と。
その言葉に、あれ?何故か破棄から、白紙になってる?と思いつつも母の力強い宣言に、ミシュカはホッと一息ついたのだった。
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