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本編
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会議が終わった後、フォルトゥナの4人はそれぞれの親達に事情を説明すべく、急ぎ帰路についた。
彼女たちの親は、当然ながら自分たちの娘が冒険者をしているなんて夢にも思っていない。
ましてや、4人でパーティを作りそのランクがSランクで、王命で討伐参加にかり出されるレベルとは、誰しもが思ってはいないだろう。
しかしながら、これが現実である。
【アーリア・レイノルズと公爵夫妻の場合】
「お父様、お母様、折り入ってお話がございます」
学園から戻ってきて早々、娘のアーリアから話しがあると言われた両親である公爵夫妻は、すぐにアーリアの希望を聞き入れ父の書斎へと招き入れてくれた。
アーリアはまず二人に、自分は"冒険者"として現時点でSランクであること、そして仲良しの3人と共にパーティを組んでいることを説明した。
案の定、父である公爵はアーリアの話しに驚愕していたものの、「まぁ、そうなるか…仕方が無いか…」と思いのほか受け止めてくれた。
そして、母である公爵夫人はというと…
「あら!もうSランクまで!?よく頑張ったじゃない!!パーティは?パーティランクはいかほどかしら?」
と、何故か興味津々でランクについては褒めてまでもらえた。
流石のアーリアも、この母の様子には驚きを隠せずにいた。
「えぇ…っと、パーティもSランクですわ。
それよりも、冒険者をしていたことを遺憾には‥思われませんの?」
アーリアは、恐る恐るといったように母に問いかけた。
「遺憾?どうしてかしら?アーリアがやりたいと思ってやった事に、応援はしても遺憾なんて全く思わないわよ?」
そう、あっけらかんと答える母に、アーリアの心の隅に引っかかっていた不安が浄化されていくようだった。
そして、「パーティもSなら王命があれば動かざる得ないわねぇ‥」と、何故かそういったことにやたら詳しかった。そんな母を、じぃーっと眺めていると、横から父が教えてくれた。
「アーリア、お前の母もお前と同じだったのだよ」と…
"同じ"
その言葉に、はじめはピンとこなかった。
だって、アーリアの母は社交界の華と呼ばれるほど、美しく嫋やかで淑女の憧れとされている女性なのだから。
【立てば芍薬 座れば牡丹 歩く姿は百合の花】
このことわざを、体現したような人なのだ。
その母が…アーリアと同じだと父が言う。未だ、うまく理解できないアーリアに対し父が続けた。
「アーリアの母はね、アーリアの叔母と一緒にパーティを組んで冒険者をしていたんだよ‥」
そして、二人を止めさせるのが大変だった…と父は語った。
アーリアは、その話に驚愕していた。
それもそのはずである。
アーリアの叔母であるトリシアは、王弟殿下の奥様であり王族に嫁に入った人なのだから…
この人も、信じられないほど穏やかで美しくふんわりした雰囲気の持ち主なのだ。
決して、父の話す大規模な攻撃魔術をぶっ放し、隅から隅まで魔獣を切り裂いてきた人と同一人物には思えなかった。
「あの頃は、淑女教育のストレスが溜まっていてね☆」
そういって、ニコニコしている母をみると、本当の話なのだと無理にでも納得せざる得なかった。
「心配せずとも、トリシアの血を引くのだから、こうなったことに不満は無いぞ!」
(でも、出来ることなら‥魔獣となど対峙せず見た目通りお淑やかな娘でいて欲しかった‥)
そう言った父の心の声がダダ漏れである…。
まぁ、とりあえず"冒険者"に関しては難なく受け入れられたのだが…
問題は"婚約者"についてだった。
両親に、婚約者であるリカルドが昼間から娼館通いしている事、婚約破棄をしてもいいし結婚後はいつでも離縁して、お気に入りの娼婦を娶ると言っていたこと…
それらを、証拠とともに両親へ差し出した。
そして、もう一つ…
"王命によりダンジョンに潜る"ということ、そしてそれが"テスト"となる旨を伝えた。
案の定、「ダンジョンは王命だもの仕方ないわね」と簡単にお許しが出たのだが…
リカルドの件に関しては、証拠の映像及び音声や貢ぎ物の金額などを確認した後、二人とも大激怒した。
父からは冷気が漂い、母からは初めて聞くような言葉が飛び出した。
「良くも我が娘に蔑ろにしおって…フォード家など握りつぶしてくれるわ」
「女遊びを覚えたケツの青いガキのくせして…舐めた真似をしてくれたわねぇ…」
父はまだしも…母、辛辣である。
父は、直ぐにフォード家に苦情と謝罪を求め、謝罪が無い限り今後一切、援助は行わない旨を示した。
そして、母も直ぐさまフォード公爵夫人に、今後一切社交場での交友は控える旨の案内を出したのだ。
この手紙が届く頃、フォード家は大変なことになるだろう。
アーリアの両親は、しっかりとアーリアが討伐に出向くその日に届くように命じていたのだから。
愛娘を裏切ったリカルドに対し、フォード家が土下座ぐらいさせない限りは父が許すことはなだろう。
そして、討伐に向かえば数日間、もしくは何ヶ月も戻れないかもしれない。
そうなれば、その間フォード家へは何の援助もされない事になる。あの、見栄っ張りなフォード公爵夫人がそれをよしとするだろうか…
あぁ、今後が楽しみで仕方が無い♪
彼女たちの親は、当然ながら自分たちの娘が冒険者をしているなんて夢にも思っていない。
ましてや、4人でパーティを作りそのランクがSランクで、王命で討伐参加にかり出されるレベルとは、誰しもが思ってはいないだろう。
しかしながら、これが現実である。
【アーリア・レイノルズと公爵夫妻の場合】
「お父様、お母様、折り入ってお話がございます」
学園から戻ってきて早々、娘のアーリアから話しがあると言われた両親である公爵夫妻は、すぐにアーリアの希望を聞き入れ父の書斎へと招き入れてくれた。
アーリアはまず二人に、自分は"冒険者"として現時点でSランクであること、そして仲良しの3人と共にパーティを組んでいることを説明した。
案の定、父である公爵はアーリアの話しに驚愕していたものの、「まぁ、そうなるか…仕方が無いか…」と思いのほか受け止めてくれた。
そして、母である公爵夫人はというと…
「あら!もうSランクまで!?よく頑張ったじゃない!!パーティは?パーティランクはいかほどかしら?」
と、何故か興味津々でランクについては褒めてまでもらえた。
流石のアーリアも、この母の様子には驚きを隠せずにいた。
「えぇ…っと、パーティもSランクですわ。
それよりも、冒険者をしていたことを遺憾には‥思われませんの?」
アーリアは、恐る恐るといったように母に問いかけた。
「遺憾?どうしてかしら?アーリアがやりたいと思ってやった事に、応援はしても遺憾なんて全く思わないわよ?」
そう、あっけらかんと答える母に、アーリアの心の隅に引っかかっていた不安が浄化されていくようだった。
そして、「パーティもSなら王命があれば動かざる得ないわねぇ‥」と、何故かそういったことにやたら詳しかった。そんな母を、じぃーっと眺めていると、横から父が教えてくれた。
「アーリア、お前の母もお前と同じだったのだよ」と…
"同じ"
その言葉に、はじめはピンとこなかった。
だって、アーリアの母は社交界の華と呼ばれるほど、美しく嫋やかで淑女の憧れとされている女性なのだから。
【立てば芍薬 座れば牡丹 歩く姿は百合の花】
このことわざを、体現したような人なのだ。
その母が…アーリアと同じだと父が言う。未だ、うまく理解できないアーリアに対し父が続けた。
「アーリアの母はね、アーリアの叔母と一緒にパーティを組んで冒険者をしていたんだよ‥」
そして、二人を止めさせるのが大変だった…と父は語った。
アーリアは、その話に驚愕していた。
それもそのはずである。
アーリアの叔母であるトリシアは、王弟殿下の奥様であり王族に嫁に入った人なのだから…
この人も、信じられないほど穏やかで美しくふんわりした雰囲気の持ち主なのだ。
決して、父の話す大規模な攻撃魔術をぶっ放し、隅から隅まで魔獣を切り裂いてきた人と同一人物には思えなかった。
「あの頃は、淑女教育のストレスが溜まっていてね☆」
そういって、ニコニコしている母をみると、本当の話なのだと無理にでも納得せざる得なかった。
「心配せずとも、トリシアの血を引くのだから、こうなったことに不満は無いぞ!」
(でも、出来ることなら‥魔獣となど対峙せず見た目通りお淑やかな娘でいて欲しかった‥)
そう言った父の心の声がダダ漏れである…。
まぁ、とりあえず"冒険者"に関しては難なく受け入れられたのだが…
問題は"婚約者"についてだった。
両親に、婚約者であるリカルドが昼間から娼館通いしている事、婚約破棄をしてもいいし結婚後はいつでも離縁して、お気に入りの娼婦を娶ると言っていたこと…
それらを、証拠とともに両親へ差し出した。
そして、もう一つ…
"王命によりダンジョンに潜る"ということ、そしてそれが"テスト"となる旨を伝えた。
案の定、「ダンジョンは王命だもの仕方ないわね」と簡単にお許しが出たのだが…
リカルドの件に関しては、証拠の映像及び音声や貢ぎ物の金額などを確認した後、二人とも大激怒した。
父からは冷気が漂い、母からは初めて聞くような言葉が飛び出した。
「良くも我が娘に蔑ろにしおって…フォード家など握りつぶしてくれるわ」
「女遊びを覚えたケツの青いガキのくせして…舐めた真似をしてくれたわねぇ…」
父はまだしも…母、辛辣である。
父は、直ぐにフォード家に苦情と謝罪を求め、謝罪が無い限り今後一切、援助は行わない旨を示した。
そして、母も直ぐさまフォード公爵夫人に、今後一切社交場での交友は控える旨の案内を出したのだ。
この手紙が届く頃、フォード家は大変なことになるだろう。
アーリアの両親は、しっかりとアーリアが討伐に出向くその日に届くように命じていたのだから。
愛娘を裏切ったリカルドに対し、フォード家が土下座ぐらいさせない限りは父が許すことはなだろう。
そして、討伐に向かえば数日間、もしくは何ヶ月も戻れないかもしれない。
そうなれば、その間フォード家へは何の援助もされない事になる。あの、見栄っ張りなフォード公爵夫人がそれをよしとするだろうか…
あぁ、今後が楽しみで仕方が無い♪
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