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本編
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「私と婚約破棄したいと?」
「…あぁ」
「まぁ、そうですか。
私はそれでも宜しですが、義父様…フォード公爵様はご承知なさっておられませんわよね?」
「…それはっ、父上にはこの後話すつもりだ。まず、私とアーリアの意見を擦り合わせてからかと」
「…私とリカルド様の意見を擦り合わせるのですか?」
「そ…そうだ」
「…まぁ、いいでしょう。
では、フォード公爵家は階級を落とすことを望まれると言う事ですわね?」
「…え?」
「・・・・・」
(まさか、ご自分の家の状況すら知らないなんて…)
アーリアは、何も分かっていないリカルドを前にして頭を抱えていた。
あの会場での断罪劇の後、名指しの4名を含む娼館大好きメンバーは騎士団長とそれぞれの隊長にこってりと絞られた。
そして、その場で階級の降格を言い渡された。
しかも、何の因果が…通い詰めていた全員が婚約者持ちであった為、騎士団長の怒りはピークに達し、次娼館通いが発覚した時点で除隊させる!とまで言わしめた。
まぁ、中には騎士団長の姪と婚約している者もいたので、当然の判断だろう。
身内がいるのに、浮気って…
そして、現在。
問題のダンジョンにも行かないといけないが、娼館問題を有耶無耶にもできず、会場内は未だ混乱していた。
そんな中での、冒頭である。
まぁ、騎士として階級を落とされるなんて不名誉以外の何者でもない。
しかも、その理由が理由なだけにリカルドも父であるフォード公爵の怒りを買うことになるのは間違いないだろう。
しかし、だからと言って婚約破棄を持ちかけてくるなんて…浅はかすぎる。
そもそも、アーリアとリカルドの婚約はフォード家からのたっての願いで成立したものだ。
正直、アーリアにとっては婚約者なんて誰でも良かった。ただ、結婚した後、お互いを尊重しあって思い会える関係を築ければそれで良かったのだ。
そう、今回の事も結婚前のお遊びならばアーリアも動く事はなかったのだ。
しかし、リカルドは確かに宣言した。
『離縁する』と。
その一言が、アーリアの逆鱗に触れたのだ。
それにして、自身のお家事情も知らないなんて…
リカルドは、こう見えて由緒正しき公爵家の嫡男である。
一応、次期フォード公爵になるはずなのだ。
それなのに、フォード家の経済状況を知らないとは情けないにも程がある。
実は、このフォード公爵家。
3代前の公爵様が立ち上げた事業が数年後に傾き始め、他の事業の利益を補填に回した為に総崩れの危機に陥っているのだ。
今の公爵様に代替わりしてすぐに、アーリアのレイノルズ公爵家に融資を求めたのだ。
フォード家と違い、レイノルズ家は商人気質だった為、毎年毎年財産を増やして行っていた。
先代の公爵と違い、すぐに融資を願い出た現フォード公爵の頭の柔らかさを気に入ったアーリアの祖父は、担保としてフォード家の嫡男と孫アーリアの婚約を了承したのだった。
要するに…
少しぐらい返済が遅れても大丈夫!
孫の夫となるなら身内同然!
ただし、金利はしっかり貰うがな!
取り立てはせんよ~!
と、言うわけである。
そして、一昨年の干ばつの影響でフォード家からの返済はしっかりと滞っていた。
万が一、この状況で婚約破棄…
しかも、フォード家の有責で…
となると、全額一斉返金となるのだ。
身内で無くなったのなら、レイノルズ家の総力で取り立てるだろう。
必要ならば、屋敷も全て抵当にいれてでも…
そんな状況になることを、一切知らないリカルドは、我先にと婚約破棄を宣言してきた。
さぁて、どう料理しましょうかね?
「…あぁ」
「まぁ、そうですか。
私はそれでも宜しですが、義父様…フォード公爵様はご承知なさっておられませんわよね?」
「…それはっ、父上にはこの後話すつもりだ。まず、私とアーリアの意見を擦り合わせてからかと」
「…私とリカルド様の意見を擦り合わせるのですか?」
「そ…そうだ」
「…まぁ、いいでしょう。
では、フォード公爵家は階級を落とすことを望まれると言う事ですわね?」
「…え?」
「・・・・・」
(まさか、ご自分の家の状況すら知らないなんて…)
アーリアは、何も分かっていないリカルドを前にして頭を抱えていた。
あの会場での断罪劇の後、名指しの4名を含む娼館大好きメンバーは騎士団長とそれぞれの隊長にこってりと絞られた。
そして、その場で階級の降格を言い渡された。
しかも、何の因果が…通い詰めていた全員が婚約者持ちであった為、騎士団長の怒りはピークに達し、次娼館通いが発覚した時点で除隊させる!とまで言わしめた。
まぁ、中には騎士団長の姪と婚約している者もいたので、当然の判断だろう。
身内がいるのに、浮気って…
そして、現在。
問題のダンジョンにも行かないといけないが、娼館問題を有耶無耶にもできず、会場内は未だ混乱していた。
そんな中での、冒頭である。
まぁ、騎士として階級を落とされるなんて不名誉以外の何者でもない。
しかも、その理由が理由なだけにリカルドも父であるフォード公爵の怒りを買うことになるのは間違いないだろう。
しかし、だからと言って婚約破棄を持ちかけてくるなんて…浅はかすぎる。
そもそも、アーリアとリカルドの婚約はフォード家からのたっての願いで成立したものだ。
正直、アーリアにとっては婚約者なんて誰でも良かった。ただ、結婚した後、お互いを尊重しあって思い会える関係を築ければそれで良かったのだ。
そう、今回の事も結婚前のお遊びならばアーリアも動く事はなかったのだ。
しかし、リカルドは確かに宣言した。
『離縁する』と。
その一言が、アーリアの逆鱗に触れたのだ。
それにして、自身のお家事情も知らないなんて…
リカルドは、こう見えて由緒正しき公爵家の嫡男である。
一応、次期フォード公爵になるはずなのだ。
それなのに、フォード家の経済状況を知らないとは情けないにも程がある。
実は、このフォード公爵家。
3代前の公爵様が立ち上げた事業が数年後に傾き始め、他の事業の利益を補填に回した為に総崩れの危機に陥っているのだ。
今の公爵様に代替わりしてすぐに、アーリアのレイノルズ公爵家に融資を求めたのだ。
フォード家と違い、レイノルズ家は商人気質だった為、毎年毎年財産を増やして行っていた。
先代の公爵と違い、すぐに融資を願い出た現フォード公爵の頭の柔らかさを気に入ったアーリアの祖父は、担保としてフォード家の嫡男と孫アーリアの婚約を了承したのだった。
要するに…
少しぐらい返済が遅れても大丈夫!
孫の夫となるなら身内同然!
ただし、金利はしっかり貰うがな!
取り立てはせんよ~!
と、言うわけである。
そして、一昨年の干ばつの影響でフォード家からの返済はしっかりと滞っていた。
万が一、この状況で婚約破棄…
しかも、フォード家の有責で…
となると、全額一斉返金となるのだ。
身内で無くなったのなら、レイノルズ家の総力で取り立てるだろう。
必要ならば、屋敷も全て抵当にいれてでも…
そんな状況になることを、一切知らないリカルドは、我先にと婚約破棄を宣言してきた。
さぁて、どう料理しましょうかね?
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