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火と月

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【月の国】セリ二からの使者が来ると伝えられたのは、5日前のことだった。

アレースでは、すぐ様使者を迎える準備を始めた。


六神国の一つである
【月の国:セリニ】

かつて、月の国セリニ火の国アレース、そして土の国クロノスは友好国として確固たる絆で結ばれていた。

あの事件があった後…土の国が滅びた今でも、両国の関係は変わらない。


「月の国の皆様がご到着なさいました!」

___開門!!


使者の到着を知らせる声と共に、火の国の王城門が開かれた。
そして、その場に降り立った人物に対し、アレースの誰もが驚きに固まっていた。
今、目の前に立っているのは【月の国】の使者とは比べものにならない人物なのだから…


「やあ!カイル、元気そうだね」

「お兄様!私も来てしまいましたわ!」


屈託の無い笑顔でカイルに微笑みかける二人に、次第に状況をつかみ始めたカイルが…吠えた!


いったい何しているんだ!?」


当然の様に怒り出すカイルに対し、陽気な雰囲気を醸し出している二人は「まぁまぁ」と宥めながら、悪びれることも無く言った…

「驚かせようと思ってな!」
「驚かせたかったのよ!」


・・・と。

「あのなぁ…お前ら、王太子夫妻なんだぞ?しかも、まともに護衛も連れてこないで何やってるんだ!?」


「あぁ、それなら大丈夫だろう?妻のご両親と兄上に会いに来ただけだからな~」


「そうよ、お兄様!私の嫁ぎ先である月の国の馬車を襲う者なんて、このアレースにはおりませんわ!」


「だからだな‥、そういうことでは無くて!
月の国の王太子夫妻お前ら二人が来るのなら、こちらとしても、それ相応の準備が必要だ!と言う事だ!」

お前ら二人の思いつきに振り回されている、そちらの使者が気の毒だ‥と、溜息交じりに零すカイル。
その様子に、馬車の後方では本来来るはずの使者団が一斉に首を縦に振っていた‥らしい。


しかし、押しかけてきたような形ではあるものの、カイルとしても久しぶりの友人と妹との再会には喜んでいた。
直ぐさま、火の王へ『月の国の使者では無く、王太子ご夫妻が到着された』との報告を上げ、皇族用の応接間へと案内する。

「陛下、突然の来訪にも関わらず快く受け入れて下さったこと感謝いたします。」

「いや、こちらとて満足に用意が足りておらぬ。お互い様よ、気にするな!
それより、貴殿も奥方も息災そうで何よりだ!」


そして、堅苦しい挨拶も程ほどに終えると、カイルの妹はそれは嬉しそうに両親である国王夫妻の側へ寄り添った。

「お父様!お母様!お二人ともお変わりなく!お元気そうで安心致しましたわ!!」

「ああ!元気にやっておるぞ!」

「ルミナ…よく顔を見せて頂戴!
あぁ、貴女も元気そうで良かったわ~!また、綺麗になって…ハルシオン様と仲良くやっているのですね!」

「はい!とても、幸せですわ!」


満面の笑みを見せる、隣国に嫁いだ娘。
その幸せそうな笑顔に、国王夫妻は心から安堵し喜んだ。


そう、カイルの妹でありこのアレースの第一王女でもあった彼女
ルミナ・レイ・セリニ

そして、ルミナの夫であり月の国の王太子
ハルシオン・フォス・セリニ



彼らもまた、土の国の滅亡と友の死に打ちひしがれた中の一人だった。


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