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32.再会しましょう
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___シノ。君に会いたい
朝、目が覚めて真っ先に見るのは、誰も居ない空のベッドだ。
目が覚めた時、ふと横を見れば安心しきった顔で寝ている彼女を眺めることが、俺の1日の始まりであり日課だった。
それが、今では空のベットを眺めることが日課になりつつあった。
シノが側に居なくも、日常は変わらず過ぎていく。
朝が来て、仕事をして、また夜を迎えることの繰り返しだった。
唯一、変わったことといえば…
仕事が終わってから毎日の様に教会に出向く様になったことぐらい。
どこをどんなに探しても、シノは見つからなかった。
暗殺と言う言葉が、頭をよぎりエミリアに問いただすも、暗部は動かしてない!と、きっぱり断言された。そして、申し訳なかったと…
今更、謝ってきたところでシノがいなければ、そんな謝罪…意味がない。
俺は、今日も教会に行き女神像のまえで跪く。
「女神よ…シノは元気にしているか?」
「彼女の声だけでもいい…俺に聞かせてくれ…」
毎日毎日、祈るのはシノの事だけ。
しかし、どんなに願っても女神像から返事をもらえる事はなかった。
「シノ…君に会いたい」
もはや、跪いた状態は保つことができず、その姿は女神像の前に無惨に崩れ落ちていた。
頭の中のシノが、俺に笑いながら声をかけてくれる。
その記憶に縋る様にして、今まで暮らしてきた。
記憶の中の彼女は、優しく声を掛けてくれる。
「『ラルフ』」
…!?
何故だろう、なんだか今日の声はやけに生々しく聞こえてくる。
俺は、少しだけ笑いながら記憶の中のシノに応えた。
「愛してるよ、シノ」と。
「ええ、私もよ…ラルフ」
え?
・・・・・!?
次の瞬間、俺はすぐさま声のした方に振り返った。
そして…
そこには、ずっと待ち望んでいた恋焦がれた人が立っていた。
以前と変わらない笑顔で。
「___っ!!!シノっ!!!」
俺は、すぐに彼女の元に駆け寄った。
本当に彼女か、確認したくて…
そして、彼女を…
愛するシノを力の限り抱きしめた。
「シノ!シノ!シノっ!!」
彼女を抱き寄せ、彼女の柔らかな肌に顔を埋めた。
そして、ただただひたすらに謝り続けた。
「すまない」と。
嗚咽をあげながら、涙を噛み締める様に謝り続けるラルフの背中を、シノは優しくさすり続けた。
ラルフが落ち着くまで、ずっと…
そして、漸く落ち着いてきた頃を見計らって紫乃が口を開いた。
「私の為にありがとう」
その一声で、ラルフはシノが真実を知っていることを悟った。
驚いた様に、顔を上げ紫乃の顔を覗き込んだ。
「…知っているのか?」
少し震えて問うラルフに、紫乃は頷いた。
「でもね、知ったのは最近なの…
ごめんね、事情も確認しないで家出して…。
あの時は、私もいろいろと不安定だったから…」
そう言って、紫乃は愛おしそうにパンパンに膨れ上がったお腹をさすった。
そこで、初めてラルフはシノが妊娠していることに気づいた。
驚き固まっているラルフに対し、紫乃はサラリと宣言した。
「女神様に頼まれたのよ~
ラルフを父親にしてあげて!ってね。
ここまで、何とか出てこない様に女神様パワーで抑えてもらってたの。
だ・か・ら…ラルフパパ!
すぐに出産準備始めるよっ♪」
そして、ラルフはとても大事そうに愛する妻とお腹の双子を抱え上げ、急ぎ屋敷へと戻っていた。
屋敷では、ずっと行方不明の紫乃が臨月状態で戻ってきたことに、驚く暇も感動する暇もなく、大慌てで出産準備をすることになった。
朝、目が覚めて真っ先に見るのは、誰も居ない空のベッドだ。
目が覚めた時、ふと横を見れば安心しきった顔で寝ている彼女を眺めることが、俺の1日の始まりであり日課だった。
それが、今では空のベットを眺めることが日課になりつつあった。
シノが側に居なくも、日常は変わらず過ぎていく。
朝が来て、仕事をして、また夜を迎えることの繰り返しだった。
唯一、変わったことといえば…
仕事が終わってから毎日の様に教会に出向く様になったことぐらい。
どこをどんなに探しても、シノは見つからなかった。
暗殺と言う言葉が、頭をよぎりエミリアに問いただすも、暗部は動かしてない!と、きっぱり断言された。そして、申し訳なかったと…
今更、謝ってきたところでシノがいなければ、そんな謝罪…意味がない。
俺は、今日も教会に行き女神像のまえで跪く。
「女神よ…シノは元気にしているか?」
「彼女の声だけでもいい…俺に聞かせてくれ…」
毎日毎日、祈るのはシノの事だけ。
しかし、どんなに願っても女神像から返事をもらえる事はなかった。
「シノ…君に会いたい」
もはや、跪いた状態は保つことができず、その姿は女神像の前に無惨に崩れ落ちていた。
頭の中のシノが、俺に笑いながら声をかけてくれる。
その記憶に縋る様にして、今まで暮らしてきた。
記憶の中の彼女は、優しく声を掛けてくれる。
「『ラルフ』」
…!?
何故だろう、なんだか今日の声はやけに生々しく聞こえてくる。
俺は、少しだけ笑いながら記憶の中のシノに応えた。
「愛してるよ、シノ」と。
「ええ、私もよ…ラルフ」
え?
・・・・・!?
次の瞬間、俺はすぐさま声のした方に振り返った。
そして…
そこには、ずっと待ち望んでいた恋焦がれた人が立っていた。
以前と変わらない笑顔で。
「___っ!!!シノっ!!!」
俺は、すぐに彼女の元に駆け寄った。
本当に彼女か、確認したくて…
そして、彼女を…
愛するシノを力の限り抱きしめた。
「シノ!シノ!シノっ!!」
彼女を抱き寄せ、彼女の柔らかな肌に顔を埋めた。
そして、ただただひたすらに謝り続けた。
「すまない」と。
嗚咽をあげながら、涙を噛み締める様に謝り続けるラルフの背中を、シノは優しくさすり続けた。
ラルフが落ち着くまで、ずっと…
そして、漸く落ち着いてきた頃を見計らって紫乃が口を開いた。
「私の為にありがとう」
その一声で、ラルフはシノが真実を知っていることを悟った。
驚いた様に、顔を上げ紫乃の顔を覗き込んだ。
「…知っているのか?」
少し震えて問うラルフに、紫乃は頷いた。
「でもね、知ったのは最近なの…
ごめんね、事情も確認しないで家出して…。
あの時は、私もいろいろと不安定だったから…」
そう言って、紫乃は愛おしそうにパンパンに膨れ上がったお腹をさすった。
そこで、初めてラルフはシノが妊娠していることに気づいた。
驚き固まっているラルフに対し、紫乃はサラリと宣言した。
「女神様に頼まれたのよ~
ラルフを父親にしてあげて!ってね。
ここまで、何とか出てこない様に女神様パワーで抑えてもらってたの。
だ・か・ら…ラルフパパ!
すぐに出産準備始めるよっ♪」
そして、ラルフはとても大事そうに愛する妻とお腹の双子を抱え上げ、急ぎ屋敷へと戻っていた。
屋敷では、ずっと行方不明の紫乃が臨月状態で戻ってきたことに、驚く暇も感動する暇もなく、大慌てで出産準備をすることになった。
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