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31.帰省することにしました
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《紫乃、もうすぐ可愛い双子ちゃん達が産まれるよ。
ラルフに、教えてあげなくてもいいのかい?》
『彼は…子供がいる事すら知らないから。
それに、もうすぐ一年経つんだよ。
今ごろ、あの元カノとでも結婚してんじゃない?』
エデンの問いに、そう答えると紫乃の声に被せる様にして否定してきた。
《彼は、君の帰りを今でも待ってるよ》
『…え?なっ、んで?』
《見てごらん》
そう話すエデンの声は、とても優しくまるで紫乃に訴えかけているようだった。
エデンが示した先には、大きな姿見が置いてあった。
『…鏡?』
覗いてみても、臨月が近づきお腹がパンパンの自分しか写っていない。
不思議そうにみていると、次第に鏡が波紋を広げ始めた。
驚いて食い入る様に見つめてしまう。
波紋が収まり始めると、そこに写っている人物に目が釘付けになった。
場所は教会だろうか…?
男の人が、女神像の祭壇を前にして膝を突き何かを祈っている。
すると、スッと場面が変わる。
また、男の人が祈っていた。
同じ人物だろうか?服装も軽めのものに変わっていた。
なんだろう?この人…
日に日に、痩せていってる?
初めの映像に打ったシルエットから比べると、映像が変わるたびだんだん弱々しくなっているように見えた。
『この人、毎日祈ってるの?』
《そうだよ》
『…何を祈ってるの?』
ふと疑問に思い聞いてみる。
すると、映像に併せて声が聞こえてきた。
その声は、良く知っている声だった。
『…ラ、ラルフ?』
《そうだよ。彼は、君がいなくなってから毎日ああして女神像に祈ってるんだ》
鏡の中に映る、ラルフの願いは切実なものだった。
「女神よ!どうか、俺の元にシノを返してくれ!…頼む」
「シノは、どこにいる?無事なのか?」
「シノの夢を見た。暗部の奴らに追われてる夢だ…。なぁ、女神よ…シノはどこにいる?」
「シノに会いたい、シノに会わせてくれ」
「シノ、シノ、シノ…」
「シノ…愛してる」
「シノが居ないなら…もう、生きている意味がない」
「シノ…あの日、君を守る為だとしてもアレの言うことを聞くべきではなかった。
…すまない、シノ」
ラルフの紡ぐ言葉は、全て紫乃に向けられた言葉だった。
そして、鏡の中のラルフは見る見る痩せ細っていっていた。
ラルフは、ちゃんと食べてるの?
眠ってるの?
…私を守るためって何?
その疑問に答えてくれたのは、側で見守ってくれていたエデンだった。
君に「暗部を差し向ける」と言われたラルフが仕方なく抱いた事、抱いている間も彼はずっと君を"愛してる!"と心の中で想い続けていた事…
そして、君に見られたことを知った時の彼の絶望感と後悔。
エデンは言う。
《ここには、いつでも来れる。
紫乃が居たいのなら、ずっといればいい。
でも、君が今でもラルフを愛しているのなら…
彼に子の父親になる栄光をあげてもいいと思うよ?》
『…そうだね。
エデン、一度里帰りでもしてくるわ!
でも、約束通り…
双子の名前はエデンがつけてね!
貴方は、私のゴッドファーザーだから♪』
ラルフ…帰るよ。
貴方の元へ。
ラルフに、教えてあげなくてもいいのかい?》
『彼は…子供がいる事すら知らないから。
それに、もうすぐ一年経つんだよ。
今ごろ、あの元カノとでも結婚してんじゃない?』
エデンの問いに、そう答えると紫乃の声に被せる様にして否定してきた。
《彼は、君の帰りを今でも待ってるよ》
『…え?なっ、んで?』
《見てごらん》
そう話すエデンの声は、とても優しくまるで紫乃に訴えかけているようだった。
エデンが示した先には、大きな姿見が置いてあった。
『…鏡?』
覗いてみても、臨月が近づきお腹がパンパンの自分しか写っていない。
不思議そうにみていると、次第に鏡が波紋を広げ始めた。
驚いて食い入る様に見つめてしまう。
波紋が収まり始めると、そこに写っている人物に目が釘付けになった。
場所は教会だろうか…?
男の人が、女神像の祭壇を前にして膝を突き何かを祈っている。
すると、スッと場面が変わる。
また、男の人が祈っていた。
同じ人物だろうか?服装も軽めのものに変わっていた。
なんだろう?この人…
日に日に、痩せていってる?
初めの映像に打ったシルエットから比べると、映像が変わるたびだんだん弱々しくなっているように見えた。
『この人、毎日祈ってるの?』
《そうだよ》
『…何を祈ってるの?』
ふと疑問に思い聞いてみる。
すると、映像に併せて声が聞こえてきた。
その声は、良く知っている声だった。
『…ラ、ラルフ?』
《そうだよ。彼は、君がいなくなってから毎日ああして女神像に祈ってるんだ》
鏡の中に映る、ラルフの願いは切実なものだった。
「女神よ!どうか、俺の元にシノを返してくれ!…頼む」
「シノは、どこにいる?無事なのか?」
「シノの夢を見た。暗部の奴らに追われてる夢だ…。なぁ、女神よ…シノはどこにいる?」
「シノに会いたい、シノに会わせてくれ」
「シノ、シノ、シノ…」
「シノ…愛してる」
「シノが居ないなら…もう、生きている意味がない」
「シノ…あの日、君を守る為だとしてもアレの言うことを聞くべきではなかった。
…すまない、シノ」
ラルフの紡ぐ言葉は、全て紫乃に向けられた言葉だった。
そして、鏡の中のラルフは見る見る痩せ細っていっていた。
ラルフは、ちゃんと食べてるの?
眠ってるの?
…私を守るためって何?
その疑問に答えてくれたのは、側で見守ってくれていたエデンだった。
君に「暗部を差し向ける」と言われたラルフが仕方なく抱いた事、抱いている間も彼はずっと君を"愛してる!"と心の中で想い続けていた事…
そして、君に見られたことを知った時の彼の絶望感と後悔。
エデンは言う。
《ここには、いつでも来れる。
紫乃が居たいのなら、ずっといればいい。
でも、君が今でもラルフを愛しているのなら…
彼に子の父親になる栄光をあげてもいいと思うよ?》
『…そうだね。
エデン、一度里帰りでもしてくるわ!
でも、約束通り…
双子の名前はエデンがつけてね!
貴方は、私のゴッドファーザーだから♪』
ラルフ…帰るよ。
貴方の元へ。
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