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22.過去 ラルフside

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「おはょ…」

「おはよう、シノ」


シノは朝がとても弱い。
彼女いわく、テイケツアツ…と言うものらしく、起きてきてからも暫くはボーッとしている。
何でも、以前は始まりがお昼前から夜にかけての仕事をしていたらしく「夜型なの」と言っていた。
夜型の意味は、説明されたがよく分からなかった。ただ、娼館では働いてないから!と力説された。

別に、俺としては構わないのだが…

むしろ、平民よりも貴族の方が娼館には世話になっているだろう。

まぁ、大抵は触れ合いたくなれば婚約者と交わるのだが、婚約者のいない者や、俺の様に婚約破棄や婚約解消した者達は進んで利用することが多い。

…むしろ、人気だ。
金さえ出せば、最も簡単に服を脱ぐからな。

しかし、誰でも受け入れる様な娼館にも例外はある。

俺の様な、だ。

呪いの類を受けた者たちは、どんなに金を積んでも娼館ですら断られる。
万が一、売り物の女達にうつると商売にならないからだ。

その時、俺に浴びせられた言葉は…

「バケモノ」だった。


◇ ◇ ◇

婚約者の立場を一番に考えたのち、俺は婚約を破棄した。

苦渋の決断だった。


彼女とは長く友人関係を経て婚約した為、まだキスしかしていなかった。
そしてあの日、婚約者とその先に進もうとしていた矢先、緊急の出動要請がきたのだ。
休みであっても、緊急を要する場合だけは騎士団が優先となる。
婚約者と服越しに触れ合っていた俺は、惜しみつつも熱い吐息を放つ婚約者に別れのキスをした。
彼女は、俺を抱きしめて言った。

「今度のお休みは、朝まで共に過ごしましょうね」と。

俺は、浮き足立つ気持ちを抑えて騎士団へと向かった。

浮ついた気持ちを、切り替えせないまま挑んだからだろうか。
俺は、この日を境に呪いで苦しむこととなった。

そして、婚約者は俺に触れることさえ出来なくなった。

______こんな筈では無かったのに。

何度、そう思っただろう。

婚約者にまで、触れるのを拒まれたとき…
俺は自暴自棄になっていた。

そして、この苛立ちを発散させたく大金をもち昔よく誘われた娼館に出向くも門前払い…

代わりの女を抱くこともできず、怒りは狩りで発散していた。

それでも…発散させたい衝動は消すことができず、改めて赴くものの娼館の女達は口を揃えて言った。


「昔の綺麗なラルフ様なら抱かれたかったけど…今の貴方はバケモノのじゃない!」


ラルフは、その日から女を求めなくなった。

いや、女だけでなく人を忌避するようになったのだった。







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