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18.何故そうなる

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結論からして…

あの後、ラルフは父である団長の書斎に怒鳴り込んだ。
そして、"影"をつけた理由も、勝手に付けたことに関しても、紫乃が言おうとしていた以上にとても激しく抗議をして下さった。
それはもう、流血騒ぎになる程に…。

そして、騒ぎを聞き付けて駆けつけたマダムことラルフ母によりその場は、一旦は収まりをみせた。

そこでの話から、影の許可は団長の独断で決めたことだが、監視ではなく紫乃の身の安全を考慮した結果、許可を出した!とのことだった。

だとしても…見られているのは嫌だ!

すぐ様、団長にお願いをして、その場で影を呼び出し丁重にお引き取りいただいた。


これで、誤解は解けたのだが…
紫乃的には、やはりここを出たくて仕方がなかった。


そして、皆んなの集まる食事の席で、紫乃は今回の件とその思いを伝えた。

すると、思いもよらない所に…伏兵が潜んでいた。

マダムが団長である侯爵に大激怒したのだ。

「女性に断りもなく影をつけるなんて、非常識にも程があります!もはや変態のする事ではありませんか!!」と。

そして追い討ちをかけるように…

「そんな事をされれば、私でも間違いなく家を出ますわ…」
と、氷点下まで空気を下げたアナベルが続く。

その後も、コテンパンに怒られ続けた侯爵は何度も謝罪をしてくれた。

しかし、それでも紫乃がピースランドへ行きたい思いは変わらない。

そう話すと、突然ラルフが驚くべき事を言い出した。

「では、共に行こう!」と。

「・・・いえ、間にあってます」

「遠慮しないでくれ」

「いえ、してません」

「うちの別荘で暮らせばいい」


・・・共に?

何故、共に暮らすのだろうか?


返す言葉に悩んでいると…
ラルフが尋ねた。

「・・・俺では嫌なのか?」と。

(はい)

あ、思わず心の中で即答してしまった。

「いえ、あの…
嫌というか…
そもそも騎士団のお仕事があるので、王都から離れられないのではないですか?私でしたら、働きながら適当に暮らしていけますのでご安心下さい」

「それはダメだ。
それに、シノが行くなら当然俺も行く。
騎士団はすぐにでも辞めよう。

父…上、いえ、団長!
私は騎士団を辞め、シノと共に生きます」


「・・・は?」

えっ…と。

今、"行きます"じゃなくて…
"生きます"って言わなかったか!?

生きない!生きない!

重い!重すぎる!!!

「よし、わかった!」

「!?」

え、まって!
全然、わかって欲しくないんだけど!

ラルフの決意表明の横で、必死に首を振る紫乃をみて、アナベルが悲しそうな顔で問いかけてきた。

「お兄様ではダメですの?」と。

・・・あーーー
もう、ダメとか、そう言うのじゃないんだよなぁー

これでは埒があかないと判断し、はっきりと断りをいれる。

「この際なので、はっきり申し上げますが…
私は一人で暮らせます。今までもそうでしたので。
それに、恋人でもないのに男性と一緒には暮らせません。
正直…重いです」

「わかった!
では、シノ。俺と結婚しよう!」

「・・・・・は?」

「夫婦であれば、紫乃が心配する必要はなくなる。それに、俺は紫乃と共に暮らせる。
本当は、もう少し愛を深めてから伝える予定だったのだが…///」

いや、そこで照れられても…。

そもそも、そんな甘い雰囲気にもなったことがないのに、何故?

「俺は、君にあの呪いを解いてもらってから、この命を君に捧げると決めている。
(いや、勝手に決めないで!)

それ程、君に感謝しているし
(感謝だけで十分です)

俺は、どうしようもなく君に惚れている
(うん、惚れなくていいから!)」

・・・ん?

今、なんて?

「シノ、君を一人の女性として愛している。
俺と、結婚してくれないか?」


・・・あれ?
結婚って、こんなすぐに言われるような事だっけ?


【桜井紫乃、人生初のプロポーズは、異世界に来てたった5日目の事だった】
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