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12.自己紹介からはじめます

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現在、この応接間に集まった全ての人達の視線を独り占めしております…。
まぁ、驚くのも無理はないよね。
今まで、一言も話さずにここまで来ちゃったから"話せない人"として認識されてるもんね。


『えーーーっと、どうするかなぁ…』


《もう声出したんだから、喋っちゃえば?》


『まぁ確かに…それもそっか!』


ゴホンッ!

私は、咳払いし驚愕の顔をしているみんなの顔を一通り見回した後、とりあえず自己紹介を始めてみた。

「えーっと、初めまして。
この度、"迷い人"になりました桜井紫乃と申します。
ジェフリー侯爵家の皆様におかれましては、快く後見人を引き受けて下さり、ありがとうございます。
こちらの世界・・いえ、国についての知識が全く無くご迷惑もおかけしますが、これからどうぞ宜しくお願い致します」


そう言って、社会人らしい完璧なお辞儀を披露して見せた。

自分の中で100点満点の点数をつけて満足げに顔をあげると…
何故か皆さん、まだ固まっていた。

そんな中、真っ先に反応したのは懐いてきた妹さんだった。

「きゃーーーーーーーッ!!!!
お姉様は、お話が出来るのですね!?なんて事でしょう!嬉しいですわっ!!」


・・・???

突如入ってきたフレーズに疑問を浮かべながらも、次々と話しかけられてしまいその疑問を解消することが出来ずにいた。


「神使い様!言葉が話せたのですか!?」

「いつからですか!?」

「てっきり話せないのかと・・申し訳ない!!」

何故か必死に謝ってくる男性陣とは反対に、話せることが分かった女性陣達は直ぐさま私の着ている服やバック、アクセサリーに飛びついた。
そして特に、女性陣の興味を引きつけたのはネイルだった。
こちらの世界にもネイルはあるらしいが、一色のみしか塗らないらしい。
ちなみに、私が今しているデザインはストーンを乗せて細かいデザインを入れたものだった為、尚のこと彼女達の興味を引いたらしい。
綺麗なお姉様方は、ツンツンと触ってみてはキャッキャと盛り上がっていく。

そして、全く落ち着きを見せない現状に見かねたマダムが口を開いた。


「貴女たち、もうお止しなさい!
シイノ様が疲れてしまうでしょう」


『・・・になっちゃったかぁ~』

こっちの人達に、"しの"の発音はいいにくいのだろうか。
日本人の私にしたら、"しの"と"しいの"では全く変わってくる。
指摘するか迷っていると…

ジェフリー団長が放った一言で決心がついた!

「改めて歓迎いたします!
サクライーン・シイノ様!」

「・・・・・うん、無理だね」


「「「「「!?」」」」」


そこからは、ひたすら発音の練習をしてもらった。
苗字は捨て置いて、とりあえず名前だけでも正しい発音で読んでもらいたかった。

猛特訓の末、真っ先に成功したのは…
元傷持ちだった美形イケメンのラルフさん。

そして、その後に続いてマダムにお姉様方と続く…

意外な事に、一番苦戦していたのはラルフさんの妹のアナベルさんだった。
どうしても、「シィー」って伸ばしてしまうんだって。

結果…アナベルさんにだけ「しーちゃん」と呼ばれることになった。
しかも、自分だけでは申し訳ないからとアナベルさんのことは「あーちゃん」と呼んでいいらしい。

あまりの可愛さに、この世界に落ちてから初めて、ほっこりできた気がした。
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