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8.名誉の負傷は治療不可 ラルフside
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討伐が終わり状況の把握をした後、俺たちは騎士団本部へと戻った。
全く新しいタイプの魔獣だったため、戻ってからも上への報告や戦場状況の詳細まとめなど細かな仕事が多く、治療は後回しにしていた。
もちろん移動の際に、治癒しも同乗してはいたが重傷者が優先とされ、大した痛みじゃなかった俺は戻ってからでいいと断った。
そして、報告書をまとめていると突然仲間に肩を掴まれる。
「ラルフ!!お前っ、なんでこんなになるまで放っておいたんだ!!」
それは、まるで悲鳴のような叫びだった。
突然の事に、室内がざわめき始める。
仲間を落ち着かせようと、大丈夫、大丈夫と声を掛けた。
「あ~、なんかもう血も止まってたし痛みもあまりなかったからな」と。
しかし、集まってきた仲間達は俺の傷をみるなり顔色を変え始めた。
そして、直ぐさま動き始める。
「っおい!誰か!隊長と団長に報告しろ!!」
「ケイン!直ぐさま治癒士を連れてこい!」
「早くしろっ!!」
自分だけが、何が起こったか分かっていなかった。
そして、仲間に渡された鏡を見て絶句した。
自分の傷口から湧き出るようにして、古い魔術紋が形成されていたのだ。
しかも、ただの魔術紋ではない。
俺でも知っているほど有名な紋だった…
【呪詛紋】
かつて非常に強大な力で確実に呪い殺すことが出来るとされていたもので、使用時に己の魂と引き換えに紋を組み込むため禁忌とされた紋である。
それも、800年前に。
それが、今の時代に魔獣の最後の力で組み込まれてしまったら…
駆けつけた治癒士では、どうすることも出来なかった。
そして、何も出来ないまま時間だけが過ぎていく。
呪詛紋が完成形になった瞬間、体中を駆け巡るように激痛が走った。
あまりの痛さに、その場でのたうち回る俺を仲間の騎士達が必死に押さえ込んでいた。
報告を受けやって来た団長である父も、痛がり暴れ回る息子に何もしてやることが出来ず悔やんでいた。
何か方法はないかと、騎士団の治癒士から治癒教会に話しをし、治癒力の高い聖属性魔法の使い手にも見て貰ったのだが、"すでに完成された魔術紋には下手に手を出せない"と言われてしまい完全に八方塞がりだった。
とりあえず、その治癒士には魔術紋には干渉できないが、痛みは抑えることができると言われ、定期的に足を運ぶこととなった。
最終的に、顔全体に浮かび上がっていた魔術紋は翌日には消えていたが、痛みがあるため呪いが消えていないことは分かった。
"治療が出来ない"="呪い死ぬ"事を理解した俺は、婚約者に別れを告げた。
そして、痛みをとりつつ今まで通り騎士団で働いていた。
ただ、死ぬのを待ちながら…
全く新しいタイプの魔獣だったため、戻ってからも上への報告や戦場状況の詳細まとめなど細かな仕事が多く、治療は後回しにしていた。
もちろん移動の際に、治癒しも同乗してはいたが重傷者が優先とされ、大した痛みじゃなかった俺は戻ってからでいいと断った。
そして、報告書をまとめていると突然仲間に肩を掴まれる。
「ラルフ!!お前っ、なんでこんなになるまで放っておいたんだ!!」
それは、まるで悲鳴のような叫びだった。
突然の事に、室内がざわめき始める。
仲間を落ち着かせようと、大丈夫、大丈夫と声を掛けた。
「あ~、なんかもう血も止まってたし痛みもあまりなかったからな」と。
しかし、集まってきた仲間達は俺の傷をみるなり顔色を変え始めた。
そして、直ぐさま動き始める。
「っおい!誰か!隊長と団長に報告しろ!!」
「ケイン!直ぐさま治癒士を連れてこい!」
「早くしろっ!!」
自分だけが、何が起こったか分かっていなかった。
そして、仲間に渡された鏡を見て絶句した。
自分の傷口から湧き出るようにして、古い魔術紋が形成されていたのだ。
しかも、ただの魔術紋ではない。
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かつて非常に強大な力で確実に呪い殺すことが出来るとされていたもので、使用時に己の魂と引き換えに紋を組み込むため禁忌とされた紋である。
それも、800年前に。
それが、今の時代に魔獣の最後の力で組み込まれてしまったら…
駆けつけた治癒士では、どうすることも出来なかった。
そして、何も出来ないまま時間だけが過ぎていく。
呪詛紋が完成形になった瞬間、体中を駆け巡るように激痛が走った。
あまりの痛さに、その場でのたうち回る俺を仲間の騎士達が必死に押さえ込んでいた。
報告を受けやって来た団長である父も、痛がり暴れ回る息子に何もしてやることが出来ず悔やんでいた。
何か方法はないかと、騎士団の治癒士から治癒教会に話しをし、治癒力の高い聖属性魔法の使い手にも見て貰ったのだが、"すでに完成された魔術紋には下手に手を出せない"と言われてしまい完全に八方塞がりだった。
とりあえず、その治癒士には魔術紋には干渉できないが、痛みは抑えることができると言われ、定期的に足を運ぶこととなった。
最終的に、顔全体に浮かび上がっていた魔術紋は翌日には消えていたが、痛みがあるため呪いが消えていないことは分かった。
"治療が出来ない"="呪い死ぬ"事を理解した俺は、婚約者に別れを告げた。
そして、痛みをとりつつ今まで通り騎士団で働いていた。
ただ、死ぬのを待ちながら…
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