26 / 30
第二十五章
猫の手
しおりを挟む
お会計は夏海が支払っている。小雪は夏海の使っている財布が昔と違う事に気づいた。以前は二つ折りの百円均一で買った財布だったが、革製の長財布になっている。
「あっ!お財布、変えたんだね?」
「ああ、財布が安物だと金運が下がるらしくてさ。少し高いやつに変えたんだ」
「お金が嫌がって逃げるって言うよね」
焼鳥屋から出て少し歩いたら、夏海の家の勝手口があるので、鍵を開けて中に入った。玄関の入り口は狭すぎて、勝手口の方が玄関より出入りしやすい為、ほとんど勝手口から出入りしている。ただし勝手口は中に入ると狭い。玄関の方が靴を脱ぎやすかった。
「はぁ~、食った食った!一食で五千円とか昔の俺じゃ考えられねぇ」
「美味しかった!お肉は安いけどお酒が高いね」
「それで儲けてんだよ?肉はあの美味さであの値段なら文句ねぇし、酒は一杯五百円だけど、オカンの店よりは安いぞ」
「スナックは居酒屋より割高だから…」
「あの店、ビールなら飲み放題なんだけどビールは俺の口に合わんかった」
「飲み放題が二千九百八十円だから、五杯以下なら飲み放題にしない方がお得だよ」
「そうなんだよ…。最初に行った時は四杯でダウンしたから損しちまった」
「でも美味しかったからまた行きたいね」
「あの店の店員の女の子、めちゃくちゃ手際悪いけど、顔が可愛いからオッさんどもは気に入ってるっぽい」
「そうなんだ?私もあのお店で働いてみようかな…」
「ただの居酒屋だからな。オカンの店より給料は安いみたいだけど、家から近いし、通いやすくて良さそうだな」
「うん!バイト募集してないか聞いてみるよ?」
「この前、おでん注文したんだけど、さつま揚げくださいって言ったら、店員の女の子がさつま揚げなんてないです!とか言うから、ここにあるやん?って指差して言ったんよ」
「おでんもあったんだね。寒くなって来たから、おでんも食べたいなぁ~」
「そしたらこれさつま揚げじゃなくて、はんぺんです!とか言うから、いやいやはんぺんって三角で白いやつやろ?って言ったら、はんぺんはそんなんじゃない!ってムキになるから、そうですか…。じゃあ、はんぺんくださいって言い直したよ」
「たまに間違えて覚えてる子いるね…。しかも間違いを指摘しても認めない…」
「あとで竹田さんとかマダムとか色んな人に聞いたけど、それはさつま揚げだからはんぺんではないってみんな答えてたし、そもそもスーパーでさつま揚げって書いてあるのが売ってるのに、スーパー行った事ねぇのか?と思った」
「甘やかされて育った子なのかな?私だったら間違えてるって言われたら、ごめんなさいって謝って、さつま揚げって認めるんだけど…」
「多分な?他にも色々とおかしな言動が多くてさ…。最初に店に行った時にお通しっての出されて、お通しって何ですか?って聞いたんだけど、お通しはお通しですって答えてて、初めて居酒屋行ったから知らんかったけど、お通しって注文してねぇのに金取るんだな…」
「初めてだと知らないよね…。私はアルバイトでやってたから知ってるけど…」
「それで注文してねぇのに勝手に出されてなんで金取るんだ?って会計の時に言うと女将さんが謝って来て、お通しの説明しなかったバイトの子が悪いからって、ただにするって言われたけど、なんか申し訳なくてお通し代も払った…」
「説明はした方が良いよね。知らないお客様もいるし、聞かれた時の答え方もお通しはお通しですって答えになってない…」
「俺は背が低いから身分証出さないと酒は飲めないし、それまでずっと居酒屋とか行ってなかったから知らなかったんだよ」
「夏海君がお酒飲んでるところ初めて見たよ…」
「しかもカシスオレンジ注文したらカシスオレンジは作れないから無理ですとか言うんで、じゃあなんでメニューに載ってるんですか?って尋ねたら、女将さんが慌てて作り方を教え始めたし…」
「普通は作り方覚えて作れるように努力するものなんだけど、ちょっとワガママな子なんだね…」
「愛奈と喋ってる時みたいにイラッとくるからバイトの女の子、変えて欲しいってマジで思った」
「私は一度、愛奈ちゃんとじっくり話してみたいなって思ってる」
「なんでだよ?愛奈は小雪さんの悪口ばっかり言ってんだぞ」
「好きな人を盗られちゃったからだよ?愛奈ちゃんがどうして夏海君を好きになったのか知りたいの」
「だからそれは愛奈の親に無理やり俺と結婚しろって言われたんだって。俺の親父もそうだっただろ?あの村の大人はみんなあんな感じだから…」
「夏海君がいなくなって、あの喫茶店どうなったのか気になってるから、明日覗きに行って来ても良いかな?」
「う~ん、愛奈はラテアートもできねぇしなぁ」
「ラテアート?クマさんとかクリームで描いてくれるやつ、夏海君できるの?」
「まあやり方の本は店にあるんで、見様見真似で何とか描けた。クマじゃなくてハートだけどな」
「すごい!ラテアートしてもらえるなら、夏海君がいるうちにカフェラテ注文すれば良かった…」
「カフェラテはコーヒーの二倍の値段だからオススメしなかったんだ」
「愛奈ちゃんはラテアートしてくれないなら、注文しても意味ないよね…」
「猫カフェが開店したら猫のラテアートでも作るか?練習の為にカフェラテを買ってこよう」
「本当に?楽しみ!」
翌日、夏海と一緒に小雪は高校に登校した。三週間ぶりなので友達が話しかけてくる。
「小雪~。入院したって聞いたんだけど、面会謝絶だったから、お見舞い出来なくてごめんね?」
「うん、でももう大丈夫だから!」
「小雪が元気そうで安心したよ~」
夏海はいつものように無言で先に行ってしまった。
「相変わらずツンデレ彼氏は冷たいね」
「家ではラブラブで、メロメロなんだけどなぁ」
「そう言えば小雪、彼氏と入籍したとか聞いたんだけど、マジ?」
「うん!婚姻届受理証明書もあるよ?」
「学生結婚か…。まあ小雪はうちらより歳上だから適齢期なのかな?」
「二十歳の誕生日になったら親の許可なしで結婚できるから、誕生日に市役所に持って行こうって約束して婚姻届用意してあったの」
「親に内緒で入籍できるんだ?知らなかった!」
「私の入院中に誕生日が来ちゃって、誕生日の朝に目が覚めたら、旦那さんが面会に来てるとか言うから、お義父さんの事かと思ったら、夏海君だったの」
「入院中に夫婦になったの?結婚式はしないんだね」
「ううん、地味婚パーティーするからみんなも招待するから来てね!」
「マジで?行く行く~!」
「あっでも結婚式ってご祝儀とか渡さなきゃならないんだよね?」
「ご祝儀は参加費?みたいなものだから、無理はしなくて良いよ」
「じゃあお祝いになんかプレゼント持って行くね~」
「みんなありがとう!気持ちだけで嬉しいよ?」
愛奈が通りかかってダッシュで逃げて行った。小雪は愛奈を追い掛けて走り出す。
「愛奈ちゃん、待って!話があるの…」
「別に話す事なんてないんですけど?」
「夏海君と…結婚したかったんだよね?愛奈ちゃんも…」
「あんな奴、好きじゃなかったし!どうでも良い…」
「愛奈ちゃんが夏海君の事、好きになった理由、教えて欲しいんだ…」
「好きじゃないって言ってんじゃん?」
「私はね、自殺しようと思ってた時に助けてもらったんだ…。夏海君に…」
「ふ~ん。私は別になっちゃんなんか、好きでも何でもないから関係ない」
「関係ないならどうしてそんなに怒ってるの?」
「怒ってないし!勘違いしないでよ?」
「地味婚パーティーに招待したら来てくれる?」
「なんで私が行かなきゃなんないの?」
「愛奈ちゃんは小学生の時から夏海君と一緒にいたんでしょ?」
「なっちゃんは私の事嫌いなんだよ?」
「でもバレンタインデーから三ヶ月間、付き合ってた事があるんだよね?」
「三ヶ月後に別れるって言われて…泣いてた…」
「やっぱり好きなんだよ?愛奈ちゃんは夏海君の事」
「なっちゃんは私が小学生の頃いじめられてる時に助けてくれたの…」
「そうなんだ!その時の事、詳しく聞かせて?」
「男子がいいものやるから目を閉じろって言ってきて、そしたら犬のフンを手の上に置かれて…。愛奈は犬のフン触ったからバイ菌ってあだ名つけられた…」
「小学生の男子ってそう言ういじめするよね…」
「なっちゃんは六年生で、私は三年生だった。学校から帰る時は六年生が先頭で、みんな後ろを歩いて帰るんだ」
「六年生の夏海君がその時、先頭を歩いて帰ってたんだね?」
「男子がまたバイ菌っていじめてきたからなっちゃんが私と手を繋いでくれて、それで男子がなっちゃんにもバイ菌がうつったって言って…」
「うんうん。それで…どうなったの?」
「なんかなっちゃんがすごい難しい事を言ったら男子からいじめられなくなったよ」
「夏海君、なんて言ったんだろ?」
「わかんない。なんか難しくて…」
愛奈と話した後、夏海にその事を聞きたくてウズウズしたが、昼休みまで待ってから二年生の教室へ向かう。夏海と購買で焼き立てパンを買って頬張った。昔は一番安い食パンの耳しか買わなかった夏海が、一番高いカツサンドを買って食べている。
「愛奈ちゃんと今朝、話したんだけどね。夏海君が小学六年生の時に、愛奈ちゃんがいじめられてたのを助けたんでしょ?」
「ん?もしかして犬のフンでいじめてたバカな男子の事かな」
「うん、その話。愛奈ちゃんよく覚えてないみたいだったから、夏海君なら覚えてるかな?って思って」
「愛奈は手を洗ってるからバイ菌は除去されてる。そんな事も知らないお前らは中世ヨーロッパの貴族と同じだ。手洗い法をいち早く発見して、ペストの感染を防ごうとしたのに、貴族は鼻で笑って手洗い法を考えた天才医師を牢屋にぶち込んで拷問して殺した。って言ったと思う」
「今は手を洗うのが当たり前だけどペストの頃はそうだったんだね…」
「その頃はパンデミックはなかったけど、手を洗いましょうって幼稚園児の頃から言われてたからな」
「それで愛奈ちゃんいじめられなくなったって言ってたよ?」
「本で読んだ事とか言ったら大人でも俺に反論できなくなって黙るからな」
「あっ!お財布、変えたんだね?」
「ああ、財布が安物だと金運が下がるらしくてさ。少し高いやつに変えたんだ」
「お金が嫌がって逃げるって言うよね」
焼鳥屋から出て少し歩いたら、夏海の家の勝手口があるので、鍵を開けて中に入った。玄関の入り口は狭すぎて、勝手口の方が玄関より出入りしやすい為、ほとんど勝手口から出入りしている。ただし勝手口は中に入ると狭い。玄関の方が靴を脱ぎやすかった。
「はぁ~、食った食った!一食で五千円とか昔の俺じゃ考えられねぇ」
「美味しかった!お肉は安いけどお酒が高いね」
「それで儲けてんだよ?肉はあの美味さであの値段なら文句ねぇし、酒は一杯五百円だけど、オカンの店よりは安いぞ」
「スナックは居酒屋より割高だから…」
「あの店、ビールなら飲み放題なんだけどビールは俺の口に合わんかった」
「飲み放題が二千九百八十円だから、五杯以下なら飲み放題にしない方がお得だよ」
「そうなんだよ…。最初に行った時は四杯でダウンしたから損しちまった」
「でも美味しかったからまた行きたいね」
「あの店の店員の女の子、めちゃくちゃ手際悪いけど、顔が可愛いからオッさんどもは気に入ってるっぽい」
「そうなんだ?私もあのお店で働いてみようかな…」
「ただの居酒屋だからな。オカンの店より給料は安いみたいだけど、家から近いし、通いやすくて良さそうだな」
「うん!バイト募集してないか聞いてみるよ?」
「この前、おでん注文したんだけど、さつま揚げくださいって言ったら、店員の女の子がさつま揚げなんてないです!とか言うから、ここにあるやん?って指差して言ったんよ」
「おでんもあったんだね。寒くなって来たから、おでんも食べたいなぁ~」
「そしたらこれさつま揚げじゃなくて、はんぺんです!とか言うから、いやいやはんぺんって三角で白いやつやろ?って言ったら、はんぺんはそんなんじゃない!ってムキになるから、そうですか…。じゃあ、はんぺんくださいって言い直したよ」
「たまに間違えて覚えてる子いるね…。しかも間違いを指摘しても認めない…」
「あとで竹田さんとかマダムとか色んな人に聞いたけど、それはさつま揚げだからはんぺんではないってみんな答えてたし、そもそもスーパーでさつま揚げって書いてあるのが売ってるのに、スーパー行った事ねぇのか?と思った」
「甘やかされて育った子なのかな?私だったら間違えてるって言われたら、ごめんなさいって謝って、さつま揚げって認めるんだけど…」
「多分な?他にも色々とおかしな言動が多くてさ…。最初に店に行った時にお通しっての出されて、お通しって何ですか?って聞いたんだけど、お通しはお通しですって答えてて、初めて居酒屋行ったから知らんかったけど、お通しって注文してねぇのに金取るんだな…」
「初めてだと知らないよね…。私はアルバイトでやってたから知ってるけど…」
「それで注文してねぇのに勝手に出されてなんで金取るんだ?って会計の時に言うと女将さんが謝って来て、お通しの説明しなかったバイトの子が悪いからって、ただにするって言われたけど、なんか申し訳なくてお通し代も払った…」
「説明はした方が良いよね。知らないお客様もいるし、聞かれた時の答え方もお通しはお通しですって答えになってない…」
「俺は背が低いから身分証出さないと酒は飲めないし、それまでずっと居酒屋とか行ってなかったから知らなかったんだよ」
「夏海君がお酒飲んでるところ初めて見たよ…」
「しかもカシスオレンジ注文したらカシスオレンジは作れないから無理ですとか言うんで、じゃあなんでメニューに載ってるんですか?って尋ねたら、女将さんが慌てて作り方を教え始めたし…」
「普通は作り方覚えて作れるように努力するものなんだけど、ちょっとワガママな子なんだね…」
「愛奈と喋ってる時みたいにイラッとくるからバイトの女の子、変えて欲しいってマジで思った」
「私は一度、愛奈ちゃんとじっくり話してみたいなって思ってる」
「なんでだよ?愛奈は小雪さんの悪口ばっかり言ってんだぞ」
「好きな人を盗られちゃったからだよ?愛奈ちゃんがどうして夏海君を好きになったのか知りたいの」
「だからそれは愛奈の親に無理やり俺と結婚しろって言われたんだって。俺の親父もそうだっただろ?あの村の大人はみんなあんな感じだから…」
「夏海君がいなくなって、あの喫茶店どうなったのか気になってるから、明日覗きに行って来ても良いかな?」
「う~ん、愛奈はラテアートもできねぇしなぁ」
「ラテアート?クマさんとかクリームで描いてくれるやつ、夏海君できるの?」
「まあやり方の本は店にあるんで、見様見真似で何とか描けた。クマじゃなくてハートだけどな」
「すごい!ラテアートしてもらえるなら、夏海君がいるうちにカフェラテ注文すれば良かった…」
「カフェラテはコーヒーの二倍の値段だからオススメしなかったんだ」
「愛奈ちゃんはラテアートしてくれないなら、注文しても意味ないよね…」
「猫カフェが開店したら猫のラテアートでも作るか?練習の為にカフェラテを買ってこよう」
「本当に?楽しみ!」
翌日、夏海と一緒に小雪は高校に登校した。三週間ぶりなので友達が話しかけてくる。
「小雪~。入院したって聞いたんだけど、面会謝絶だったから、お見舞い出来なくてごめんね?」
「うん、でももう大丈夫だから!」
「小雪が元気そうで安心したよ~」
夏海はいつものように無言で先に行ってしまった。
「相変わらずツンデレ彼氏は冷たいね」
「家ではラブラブで、メロメロなんだけどなぁ」
「そう言えば小雪、彼氏と入籍したとか聞いたんだけど、マジ?」
「うん!婚姻届受理証明書もあるよ?」
「学生結婚か…。まあ小雪はうちらより歳上だから適齢期なのかな?」
「二十歳の誕生日になったら親の許可なしで結婚できるから、誕生日に市役所に持って行こうって約束して婚姻届用意してあったの」
「親に内緒で入籍できるんだ?知らなかった!」
「私の入院中に誕生日が来ちゃって、誕生日の朝に目が覚めたら、旦那さんが面会に来てるとか言うから、お義父さんの事かと思ったら、夏海君だったの」
「入院中に夫婦になったの?結婚式はしないんだね」
「ううん、地味婚パーティーするからみんなも招待するから来てね!」
「マジで?行く行く~!」
「あっでも結婚式ってご祝儀とか渡さなきゃならないんだよね?」
「ご祝儀は参加費?みたいなものだから、無理はしなくて良いよ」
「じゃあお祝いになんかプレゼント持って行くね~」
「みんなありがとう!気持ちだけで嬉しいよ?」
愛奈が通りかかってダッシュで逃げて行った。小雪は愛奈を追い掛けて走り出す。
「愛奈ちゃん、待って!話があるの…」
「別に話す事なんてないんですけど?」
「夏海君と…結婚したかったんだよね?愛奈ちゃんも…」
「あんな奴、好きじゃなかったし!どうでも良い…」
「愛奈ちゃんが夏海君の事、好きになった理由、教えて欲しいんだ…」
「好きじゃないって言ってんじゃん?」
「私はね、自殺しようと思ってた時に助けてもらったんだ…。夏海君に…」
「ふ~ん。私は別になっちゃんなんか、好きでも何でもないから関係ない」
「関係ないならどうしてそんなに怒ってるの?」
「怒ってないし!勘違いしないでよ?」
「地味婚パーティーに招待したら来てくれる?」
「なんで私が行かなきゃなんないの?」
「愛奈ちゃんは小学生の時から夏海君と一緒にいたんでしょ?」
「なっちゃんは私の事嫌いなんだよ?」
「でもバレンタインデーから三ヶ月間、付き合ってた事があるんだよね?」
「三ヶ月後に別れるって言われて…泣いてた…」
「やっぱり好きなんだよ?愛奈ちゃんは夏海君の事」
「なっちゃんは私が小学生の頃いじめられてる時に助けてくれたの…」
「そうなんだ!その時の事、詳しく聞かせて?」
「男子がいいものやるから目を閉じろって言ってきて、そしたら犬のフンを手の上に置かれて…。愛奈は犬のフン触ったからバイ菌ってあだ名つけられた…」
「小学生の男子ってそう言ういじめするよね…」
「なっちゃんは六年生で、私は三年生だった。学校から帰る時は六年生が先頭で、みんな後ろを歩いて帰るんだ」
「六年生の夏海君がその時、先頭を歩いて帰ってたんだね?」
「男子がまたバイ菌っていじめてきたからなっちゃんが私と手を繋いでくれて、それで男子がなっちゃんにもバイ菌がうつったって言って…」
「うんうん。それで…どうなったの?」
「なんかなっちゃんがすごい難しい事を言ったら男子からいじめられなくなったよ」
「夏海君、なんて言ったんだろ?」
「わかんない。なんか難しくて…」
愛奈と話した後、夏海にその事を聞きたくてウズウズしたが、昼休みまで待ってから二年生の教室へ向かう。夏海と購買で焼き立てパンを買って頬張った。昔は一番安い食パンの耳しか買わなかった夏海が、一番高いカツサンドを買って食べている。
「愛奈ちゃんと今朝、話したんだけどね。夏海君が小学六年生の時に、愛奈ちゃんがいじめられてたのを助けたんでしょ?」
「ん?もしかして犬のフンでいじめてたバカな男子の事かな」
「うん、その話。愛奈ちゃんよく覚えてないみたいだったから、夏海君なら覚えてるかな?って思って」
「愛奈は手を洗ってるからバイ菌は除去されてる。そんな事も知らないお前らは中世ヨーロッパの貴族と同じだ。手洗い法をいち早く発見して、ペストの感染を防ごうとしたのに、貴族は鼻で笑って手洗い法を考えた天才医師を牢屋にぶち込んで拷問して殺した。って言ったと思う」
「今は手を洗うのが当たり前だけどペストの頃はそうだったんだね…」
「その頃はパンデミックはなかったけど、手を洗いましょうって幼稚園児の頃から言われてたからな」
「それで愛奈ちゃんいじめられなくなったって言ってたよ?」
「本で読んだ事とか言ったら大人でも俺に反論できなくなって黙るからな」
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
「……あなた誰?」自殺を図った妻が目覚めた時、彼女は夫である僕を見てそう言った
Kouei
恋愛
大量の睡眠薬を飲んで自殺を図った妻。
侍女の発見が早かったため一命を取り留めたが、
4日間意識不明の状態が続いた。
5日目に意識を取り戻し、安心したのもつかの間。
「……あなた誰?」
目覚めた妻は僕と過ごした三年間の記憶を全て忘れていた。
僕との事だけを……
※この作品は、他投稿サイトにも公開しています。
〖完結〗私が死ねばいいのですね。
藍川みいな
恋愛
侯爵令嬢に生まれた、クレア・コール。
両親が亡くなり、叔父の養子になった。叔父のカーターは、クレアを使用人のように使い、気に入らないと殴りつける。
それでも懸命に生きていたが、ある日濡れ衣を着せられ連行される。
冤罪で地下牢に入れられたクレアを、この国を影で牛耳るデリード公爵が訪ねて来て愛人になれと言って来た。
クレアは愛するホルス王子をずっと待っていた。彼以外のものになる気はない。愛人にはならないと断ったが、デリード公爵は諦めるつもりはなかった。処刑される前日にまた来ると言い残し、デリード公爵は去って行く。
そのことを知ったカーターは、クレアに毒を渡し、死んでくれと頼んで来た。
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
全21話で完結になります。
【R18】もう一度セックスに溺れて
ちゅー
恋愛
--------------------------------------
「んっ…くっ…♡前よりずっと…ふか、い…」
過分な潤滑液にヌラヌラと光る間口に亀頭が抵抗なく吸い込まれていく。久しぶりに男を受け入れる肉道は最初こそ僅かな狭さを示したものの、愛液にコーティングされ膨張した陰茎を容易く受け入れ、すぐに柔らかな圧力で応えた。
--------------------------------------
結婚して五年目。互いにまだ若い夫婦は、愛情も、情熱も、熱欲も多分に持ち合わせているはずだった。仕事と家事に忙殺され、いつの間にかお互いが生活要員に成り果ててしまった二人の元へ”夫婦性活を豹変させる”と銘打たれた宝石が届く。
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
(完結)私の夫は死にました(全3話)
青空一夏
恋愛
夫が新しく始める事業の資金を借りに出かけた直後に行方不明となり、市井の治安が悪い裏通りで夫が乗っていた馬車が発見される。おびただしい血痕があり、盗賊に襲われたのだろうと判断された。1年後に失踪宣告がなされ死んだものと見なされたが、多数の債権者が押し寄せる。
私は莫大な借金を背負い、給料が高いガラス工房の仕事についた。それでも返し切れず夜中は定食屋で調理補助の仕事まで始める。半年後過労で倒れた私に従兄弟が手を差し伸べてくれた。
ところがある日、夫とそっくりな男を見かけてしまい・・・・・・
R15ざまぁ。因果応報。ゆるふわ設定ご都合主義です。全3話。お話しの長さに偏りがあるかもしれません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる