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第七章
長い道
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暫しの沈黙が流れて、夏海はようやく重たい口を開く。
「日曜日は…女性とデートの約束があるから…」
「えっ?夏海君…彼女いたんだ…」
「マスターに頼まれて…土日限定だけど、マダムとデートしてた。デート代も領収書を持って行けば、給料に上乗せしてくれるし、すぐ帰っても日給の八千円もらえるから」
「デートクラブみたいな事してたの?やっぱり…あのマスターさん…悪い人だ…。信用できなくなった…」
「愛奈がおじさんとデートさせられてたけど、俺より愛奈の方がヤバいんじゃね?」
「あのウエイトレスの子、愛奈って言うんだ?多分、大丈夫だと思うけど…夏海君の方が心配…」
「俺は別に…大丈夫だよ?普通にカラオケとか行って…適当におばちゃんの好きそうな古い曲でも歌ってりゃ終わりだからな。蠍座の唄とか…」
「私も夏海君とカラオケ行きたいよ…」
「そのマダムが蠍座で…なぜか俺の事気に入っててさ。小雪さんも蠍座だけど、俺は蠍座と相性が良いのかな?うちのオカンも蠍座なんだが…」
「蠍座は好きな人に振り向いてもらえなくても、一途に想ってしまうから迷惑かけちゃうんだよね…」
「オカンがいつもカラオケで歌ってたから覚えてしまったんだ…。あの蠍座の唄…」
「私もその歌は知ってるよ。演歌だけど蠍座だったから何となく気になっちゃって」
「俺が演歌でわかるのは、木を切るやつとそれくらいかな?」
「あっ、木を切るやつもわかるよ?サブちゃんの歌だよね~」
「マダムに彼女はいるの?ってしつこく聞かれてたが、いつもいないって答えてたんだけど、やっぱいるって答えた方が良いんかな…」
「その彼女って…もしかして私の事?」
「他に誰がいるんだ?小雪さんとは付き合ってないから、彼女じゃなくてただの友達ってマスターにも言ってるし、君と付き合うのはダメだってマスターに何度も言われてんだ。マダムからも言われた…」
「マスターさん、私と夏海君の事、応援してくれてると思ってたのにそんな事、言ってたの?酷い…」
「俺の稼ぎが少ない事も言われたし、障害に理解のない健常者と結婚しても上手く行かないって説得された。マダムのところに養子みたいに住み込みで、身の回りの世話をしてもらうって話もされてて…」
「それは…断ったんだよね?」
「うん、なんかヤバそうな気がしてサインはしなかったよ?」
「良かった…。夏海君がそのマダムに…何かされたら嫌だもん!」
「マダムは何もしないと思うけどな。マスターがマダムに何かしそうで怖いけどね」
「わかんないよ?いくらマダムでも女はいつまで経っても女だから」
「マダムを騙して絵を高く売り付けてたのも見たし、二十五万で売ったのに作者には五千円しか支払ってないのも見てる。安過ぎる…って思った。絵の具代で消えてそうだ」
「夏海君はそばでマスターの事をよく見てるからわかるんだね…」
「警察にも一応、話したんだけどスルーされてさ。もしマスターが逮捕されたら俺は職を失うから、もう良いか…って」
「警察って本当におざなりな対応しかしてくれないよね」
「おざなりなんて難しい言葉を使うね。ギャルは使わないと思ってた」
「私はギャルじゃないんだけど、夏海君にはギャルに見えたの?」
「あまりケバくない清楚系のギャルかなと思ってたが何か違うのか?」
「う~ん、清楚系のギャルなんて聞いた事ないよ?」
「ギャルの定義がよくわからん…。化粧して派手な服着て遊びまくってるのが、ギャルかと思ってた」
「それがギャルの定義だとしたらマダムもギャルになるよね?夏海君とデートして遊んでるでしょ!」
「マダムたちにとっては俺は息子みたいなもんなんだよ」
「でもなんか嫌な予感がするんだけど…。私の心が穢れてるから…そう思うだけなのかな?」
「つっても、母親は四十代だから、マダムたちとは微妙に世代がズレてんだけど。母親の好きな曲をカラオケで歌ったら、若い人の曲はわからんわって言われてさ」
「十年以上差があると好みが全く違うもんね。私が三十代のお母さんと好みが合わないのと同じ」
「小雪さんのお母さん三十代なんだ?若いな…」
「十六歳で妊娠して産んだみたい。シングルマザーだったけど、再婚は何度もしてるから…」
「と言う事は三十七歳か?うちの母親が四十七だよ」
「若くて綺麗なお母さんで姉妹みたいって言われるけど…。少しでも太ると叱られてご飯食べさせてもらえなかった…」
「それって虐待なんじゃないか?」
「虐待…だったのかな?」
「俺の背が低いのだって飯をロクに食わせてもらえなくて伸びなかったんだ…」
「私は夏海君ほど親から酷い事はされてないけど…」
「家出して警察に連れ戻された後、家に帰りたくないって言ったら、物置に住めって言われてさ。俺、あんまり風呂に入ってねぇから汗臭いだろ?」
「ううん!全然、臭わないよ?」
「普段はタオルを煮沸して、髪とか体は拭いてる。市民プールにジャグジー風呂があるんだが、水曜日は市民プールも休みだからな」
「今日は水曜日だから開いてないの?」
「マダムとデートの時、市民プール行ってシャワー浴びて、ジャグジー風呂に入るんだ。プール代も立て替えてもらえるし」
「私も夏海君とプールに行きたいよ…」
「俺は障害者割引で二百五十円だけど、小雪さんは健常者だから五百円だね。中学生以下なら二百五十円なんだが、高校生は大人扱いだよ?」
「五百円なら安いし、私もプールに行ってみよっかなぁ」
そして水曜日、夏海が市民プールでマダムとデートしている。夏海はゴーグルを付けて自由遊泳コースを泳いでいたが、マダムはウォーキングコースをひたすら行ったり来たりしている。ダイエットの為に通っているようだ。
「八回…二十五メールを四回で百メートルだから…二百メートルか…体力落ちてるから…キツい」
「お~い!なっちゃん、こっちで一緒に歩かない?」
マダムが隣のレーンから手を振って大声で呼んでいる。
「泳ぎ疲れたんで…あっちのジェットバスに行ってきます」
「若いのにもう疲れちゃったの?」
「何度も説明したのに忘れてしまったんすか?俺の体力、六十代くらいらしいっす。男の癖に体力がなさ過ぎて工事現場のバイトとかクビにされた事もあって…」
「じゃあ運動して体力付けなきゃね?」
「運動より栄養のある食事の方が大事な気もするけど…。はぁ~、肉喰いたい…」
プールサイドに併設されているジェットバスに向かって歩いていると、聞き覚えのある呼び声が夏海の耳に聞こえて来た。
「夏海君!見ぃ~付けた」
突然、目の前に現れた小雪は向日葵柄の白いワンピース姿で手を振っている。夏海は視力が悪いので、ぼやけて顔までは判別できない。
「小雪さん!つーか、それ普通のワンピースじゃないんか?」
「ううん、これはこう言う水着だよ~」
「全然、濡れてないけどシャワーも浴びてないん?」
「入口のシャワー出て来なくて浴びられなかったの。そこの椅子に座って夏海君が泳いでるのをずっと眺めてた…」
「あれはシャワーの前のセンサーが反応して水が出るんだけど、センサーの反応が悪いんだよ…」
「そうなんだ?じゃあもう一度行って浴びてくるね」
「いや、そっちの温水シャワー使うと良いよ?」
アクリル板で囲まれた筒型の半円柱の中に入って赤いボタンを押すと、内側のノズルから四方八方に勢いよくジェット水流が飛び出して来て、全身をマッサージしてくれる。夏海はその中で体をクルクル回転しながら全身を綺麗に洗った。
「これの方が入り口のシャワーより体を綺麗に洗えるから、プールで泳いだ後はいつもここでカルキのニオイ落としてから、風呂に入るんだよ?」
「じゃあ、私もそうするね!」
小雪も同じようにクルクル回転しながら体を洗うと夏海の入ってるジェットバスの横に並んで入る。
「ブクブクが出てないジャグジーがあるけど、壊れてるんですか?って監視員に尋ねたら、ブクブクしてない方が良いって言う客もいるとか言うんだが、ブクブクがないなんて普通の風呂と変わらないじゃん!と思った…」
「お年寄りとか小さなお子様は、この勢いよく出て来るジェット水流が苦手な人もいるのかもね」
「俺はこのブクブクが好きでここに来るんだけどな」
「足の裏と脇腹がブクブクしてるから気持ち良いね」
「マダムはこれが嫌いだって言ってた」
「そうなの?私は好きだな~」
「こうしてると眠くなって来るんだ…」
「向こうのおじさん寝てるね」
一番奥のジェットバスで中年男性が気持ち良さそうに寝ている。
「あのおじさん、もう何時間も前からああしてるっぽい。日曜日はいつもここに来てジェットバスで寝るのが密かな楽しみなんだろなぁ」
「私も日曜日にプール来るのが楽しみになったよ~」
「俺も多分、五十代くらいになったらあのおじさんみたいになってそうだ」
「私がおばさんになっても夏海君とここでこうしてたいな~」
「小雪さんは五十代になっても美魔女とか言う綺麗なお姉さんの予感がするよ」
「たまにいるよね!五十代なのに三十代くらいに見える綺麗な人」
「まあ俺は目が悪いからシワとかよく見えないんで、性格悪い女は若くてもブスに見えるし、性格良かったらマダムでも美人に見える…」
「じゃあ私の顔もよく見えてないって事?美人って言ってたのは性格が良いって意味なのかな?だとしたら嬉しい!」
「顔は…キスした時に至近距離で見たから美人だって確信してるし、性格が良いのも認める。マジで俺の理想のタイプだ…」
「えへへ、夏海君に褒められちゃった!今まで男子に褒められても嬉しいって思った事、一度もなかったけど」
「美人って言われ慣れてるんだ?やっぱモテるよな、小雪さんみたいにハイクオリティな女子は…」
「ヤリモクだから褒めちぎってくるだけだよ?そう言う人は誰にでも同じ事を言ってるの…」
「俺もそいつらと何も変わらんけど?やりたいから優しくしてるだけだ」
「でも夏海君は抱いてくれないよね?」
「ガキができるとメンドイからだよ?本当はやりたい…」
「そう言う真面目なところも好き」
「真面目なんじゃなくて…作家志望だから先の先まで考えて行動しちまうだけだ…」
「何にも考えずに行動してる人より全然カッコいいよ?」
「日曜日は…女性とデートの約束があるから…」
「えっ?夏海君…彼女いたんだ…」
「マスターに頼まれて…土日限定だけど、マダムとデートしてた。デート代も領収書を持って行けば、給料に上乗せしてくれるし、すぐ帰っても日給の八千円もらえるから」
「デートクラブみたいな事してたの?やっぱり…あのマスターさん…悪い人だ…。信用できなくなった…」
「愛奈がおじさんとデートさせられてたけど、俺より愛奈の方がヤバいんじゃね?」
「あのウエイトレスの子、愛奈って言うんだ?多分、大丈夫だと思うけど…夏海君の方が心配…」
「俺は別に…大丈夫だよ?普通にカラオケとか行って…適当におばちゃんの好きそうな古い曲でも歌ってりゃ終わりだからな。蠍座の唄とか…」
「私も夏海君とカラオケ行きたいよ…」
「そのマダムが蠍座で…なぜか俺の事気に入っててさ。小雪さんも蠍座だけど、俺は蠍座と相性が良いのかな?うちのオカンも蠍座なんだが…」
「蠍座は好きな人に振り向いてもらえなくても、一途に想ってしまうから迷惑かけちゃうんだよね…」
「オカンがいつもカラオケで歌ってたから覚えてしまったんだ…。あの蠍座の唄…」
「私もその歌は知ってるよ。演歌だけど蠍座だったから何となく気になっちゃって」
「俺が演歌でわかるのは、木を切るやつとそれくらいかな?」
「あっ、木を切るやつもわかるよ?サブちゃんの歌だよね~」
「マダムに彼女はいるの?ってしつこく聞かれてたが、いつもいないって答えてたんだけど、やっぱいるって答えた方が良いんかな…」
「その彼女って…もしかして私の事?」
「他に誰がいるんだ?小雪さんとは付き合ってないから、彼女じゃなくてただの友達ってマスターにも言ってるし、君と付き合うのはダメだってマスターに何度も言われてんだ。マダムからも言われた…」
「マスターさん、私と夏海君の事、応援してくれてると思ってたのにそんな事、言ってたの?酷い…」
「俺の稼ぎが少ない事も言われたし、障害に理解のない健常者と結婚しても上手く行かないって説得された。マダムのところに養子みたいに住み込みで、身の回りの世話をしてもらうって話もされてて…」
「それは…断ったんだよね?」
「うん、なんかヤバそうな気がしてサインはしなかったよ?」
「良かった…。夏海君がそのマダムに…何かされたら嫌だもん!」
「マダムは何もしないと思うけどな。マスターがマダムに何かしそうで怖いけどね」
「わかんないよ?いくらマダムでも女はいつまで経っても女だから」
「マダムを騙して絵を高く売り付けてたのも見たし、二十五万で売ったのに作者には五千円しか支払ってないのも見てる。安過ぎる…って思った。絵の具代で消えてそうだ」
「夏海君はそばでマスターの事をよく見てるからわかるんだね…」
「警察にも一応、話したんだけどスルーされてさ。もしマスターが逮捕されたら俺は職を失うから、もう良いか…って」
「警察って本当におざなりな対応しかしてくれないよね」
「おざなりなんて難しい言葉を使うね。ギャルは使わないと思ってた」
「私はギャルじゃないんだけど、夏海君にはギャルに見えたの?」
「あまりケバくない清楚系のギャルかなと思ってたが何か違うのか?」
「う~ん、清楚系のギャルなんて聞いた事ないよ?」
「ギャルの定義がよくわからん…。化粧して派手な服着て遊びまくってるのが、ギャルかと思ってた」
「それがギャルの定義だとしたらマダムもギャルになるよね?夏海君とデートして遊んでるでしょ!」
「マダムたちにとっては俺は息子みたいなもんなんだよ」
「でもなんか嫌な予感がするんだけど…。私の心が穢れてるから…そう思うだけなのかな?」
「つっても、母親は四十代だから、マダムたちとは微妙に世代がズレてんだけど。母親の好きな曲をカラオケで歌ったら、若い人の曲はわからんわって言われてさ」
「十年以上差があると好みが全く違うもんね。私が三十代のお母さんと好みが合わないのと同じ」
「小雪さんのお母さん三十代なんだ?若いな…」
「十六歳で妊娠して産んだみたい。シングルマザーだったけど、再婚は何度もしてるから…」
「と言う事は三十七歳か?うちの母親が四十七だよ」
「若くて綺麗なお母さんで姉妹みたいって言われるけど…。少しでも太ると叱られてご飯食べさせてもらえなかった…」
「それって虐待なんじゃないか?」
「虐待…だったのかな?」
「俺の背が低いのだって飯をロクに食わせてもらえなくて伸びなかったんだ…」
「私は夏海君ほど親から酷い事はされてないけど…」
「家出して警察に連れ戻された後、家に帰りたくないって言ったら、物置に住めって言われてさ。俺、あんまり風呂に入ってねぇから汗臭いだろ?」
「ううん!全然、臭わないよ?」
「普段はタオルを煮沸して、髪とか体は拭いてる。市民プールにジャグジー風呂があるんだが、水曜日は市民プールも休みだからな」
「今日は水曜日だから開いてないの?」
「マダムとデートの時、市民プール行ってシャワー浴びて、ジャグジー風呂に入るんだ。プール代も立て替えてもらえるし」
「私も夏海君とプールに行きたいよ…」
「俺は障害者割引で二百五十円だけど、小雪さんは健常者だから五百円だね。中学生以下なら二百五十円なんだが、高校生は大人扱いだよ?」
「五百円なら安いし、私もプールに行ってみよっかなぁ」
そして水曜日、夏海が市民プールでマダムとデートしている。夏海はゴーグルを付けて自由遊泳コースを泳いでいたが、マダムはウォーキングコースをひたすら行ったり来たりしている。ダイエットの為に通っているようだ。
「八回…二十五メールを四回で百メートルだから…二百メートルか…体力落ちてるから…キツい」
「お~い!なっちゃん、こっちで一緒に歩かない?」
マダムが隣のレーンから手を振って大声で呼んでいる。
「泳ぎ疲れたんで…あっちのジェットバスに行ってきます」
「若いのにもう疲れちゃったの?」
「何度も説明したのに忘れてしまったんすか?俺の体力、六十代くらいらしいっす。男の癖に体力がなさ過ぎて工事現場のバイトとかクビにされた事もあって…」
「じゃあ運動して体力付けなきゃね?」
「運動より栄養のある食事の方が大事な気もするけど…。はぁ~、肉喰いたい…」
プールサイドに併設されているジェットバスに向かって歩いていると、聞き覚えのある呼び声が夏海の耳に聞こえて来た。
「夏海君!見ぃ~付けた」
突然、目の前に現れた小雪は向日葵柄の白いワンピース姿で手を振っている。夏海は視力が悪いので、ぼやけて顔までは判別できない。
「小雪さん!つーか、それ普通のワンピースじゃないんか?」
「ううん、これはこう言う水着だよ~」
「全然、濡れてないけどシャワーも浴びてないん?」
「入口のシャワー出て来なくて浴びられなかったの。そこの椅子に座って夏海君が泳いでるのをずっと眺めてた…」
「あれはシャワーの前のセンサーが反応して水が出るんだけど、センサーの反応が悪いんだよ…」
「そうなんだ?じゃあもう一度行って浴びてくるね」
「いや、そっちの温水シャワー使うと良いよ?」
アクリル板で囲まれた筒型の半円柱の中に入って赤いボタンを押すと、内側のノズルから四方八方に勢いよくジェット水流が飛び出して来て、全身をマッサージしてくれる。夏海はその中で体をクルクル回転しながら全身を綺麗に洗った。
「これの方が入り口のシャワーより体を綺麗に洗えるから、プールで泳いだ後はいつもここでカルキのニオイ落としてから、風呂に入るんだよ?」
「じゃあ、私もそうするね!」
小雪も同じようにクルクル回転しながら体を洗うと夏海の入ってるジェットバスの横に並んで入る。
「ブクブクが出てないジャグジーがあるけど、壊れてるんですか?って監視員に尋ねたら、ブクブクしてない方が良いって言う客もいるとか言うんだが、ブクブクがないなんて普通の風呂と変わらないじゃん!と思った…」
「お年寄りとか小さなお子様は、この勢いよく出て来るジェット水流が苦手な人もいるのかもね」
「俺はこのブクブクが好きでここに来るんだけどな」
「足の裏と脇腹がブクブクしてるから気持ち良いね」
「マダムはこれが嫌いだって言ってた」
「そうなの?私は好きだな~」
「こうしてると眠くなって来るんだ…」
「向こうのおじさん寝てるね」
一番奥のジェットバスで中年男性が気持ち良さそうに寝ている。
「あのおじさん、もう何時間も前からああしてるっぽい。日曜日はいつもここに来てジェットバスで寝るのが密かな楽しみなんだろなぁ」
「私も日曜日にプール来るのが楽しみになったよ~」
「俺も多分、五十代くらいになったらあのおじさんみたいになってそうだ」
「私がおばさんになっても夏海君とここでこうしてたいな~」
「小雪さんは五十代になっても美魔女とか言う綺麗なお姉さんの予感がするよ」
「たまにいるよね!五十代なのに三十代くらいに見える綺麗な人」
「まあ俺は目が悪いからシワとかよく見えないんで、性格悪い女は若くてもブスに見えるし、性格良かったらマダムでも美人に見える…」
「じゃあ私の顔もよく見えてないって事?美人って言ってたのは性格が良いって意味なのかな?だとしたら嬉しい!」
「顔は…キスした時に至近距離で見たから美人だって確信してるし、性格が良いのも認める。マジで俺の理想のタイプだ…」
「えへへ、夏海君に褒められちゃった!今まで男子に褒められても嬉しいって思った事、一度もなかったけど」
「美人って言われ慣れてるんだ?やっぱモテるよな、小雪さんみたいにハイクオリティな女子は…」
「ヤリモクだから褒めちぎってくるだけだよ?そう言う人は誰にでも同じ事を言ってるの…」
「俺もそいつらと何も変わらんけど?やりたいから優しくしてるだけだ」
「でも夏海君は抱いてくれないよね?」
「ガキができるとメンドイからだよ?本当はやりたい…」
「そう言う真面目なところも好き」
「真面目なんじゃなくて…作家志望だから先の先まで考えて行動しちまうだけだ…」
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