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第二章
窓の雪
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学校や福祉関連施設などが密集している地区と、繁華街やショッピングモールの密集している地区があって、水曜日の下校中のバスで三十分ほど離れた場所に二人で降りた。小雪はスポーツバックの中に着替えを持ってきていたので、トイレに行くと気合いの入ったお洒落な服装に変身していた。
「あっ、俺も学生服のままでこんなところ歩いてたら、まずいかな?」
「ううん、別に高校生が学生服で歩いてても大丈夫じゃないかな」
「でも周りの奴みんな私服で歩いてるよな?いつもバイト終わったら家に直行してたから、着替えとか持って来てない」
「それじゃ、私が夏海君に似合いそうな服を選んであげる!あっ、そこのメンズブティックに入ろうよ?」
「あの店は高そうだからな…。中古なら安いから古着屋に行こう」
「私が買ってあげるから値段は気にしないで?」
「女性に貢がせるのはヒモとか言うんだろ?多分だけど俺の父親もヒモだった」
「そうなんだ?夏海君お父さんもイケメンそう」
「ヒモにだけはなりたくない!父親みたいな男にはなりたくないんだ」
「やっぱり夏海君って真面目だね」
「小雪さんみたいな可愛い子の横を歩く時は、それなりの衣装を着ないとな…」
「あんまり気にしないで…?それに何度も言うけど…私、可愛くないし!」
「あのさ、君レベルの顔の子がそれ言うとイヤミにしか聞こえないからやめた方が良いよ?女子に嫌われると思う」
「えっ、女子から嫌われてるの?私…」
「女子は自分より可愛い子がいるといじめたりするもんだろ?男子は優しくするけどな」
「そうなんだ?いじめられてはいないと思うけど…」
「友達の彼氏に襲われたのに君のせいにして罵ったんだろ?明らかないじめじゃないか」
「私にも悪いところがあったかも…と思ったし、思わせぶりな態度で誘ったんでしょ?って言われて言い返せなくて…」
「いや、それはそのやりたいだけのクソ男が全部悪い。彼女の友達を襲うとかあり得ない!」
「ふふ…夏海君って優しいんだね」
「優しくないよ?俺の頭の中、覗いたら絶対に幻滅するから」
「夏海君の頭の中、覗いてみたいな~」
「君と初めて話してた時もヤバい事、あれこれ考えてたしな。やりたいだけのクソ男の父親の血を引いてるから、頭の中はすごい事になってる…」
「そうなの?全然そんな感じしないよ」
「男なんて真面目ぶってても考えてる事は大体、変態思考なんだよ?」
「夏海君になら変態思考されても嫌じゃないよ」
「君、本当に実在の人物なの?俺の妄想の産物で薬の副作用で幻覚を見てるんじゃないだろな…」
「薬の副作用?何か薬飲んでるの」
「なんか色々と盛られてる。薬代で儲ける為に医者が不必要な薬を処方してるって噂だけど…。飲んで体調悪くなるから今はほとんど飲んでない」
古着屋に着くと、小雪は夏海とあれこれ相談しながら服を選ぶ。ダブルジッパーのフード付きパーカーを薦めた。
「俺が選ぶと大体、こう言うTシャツとかで済ませるんだが、小雪さんがいると俺の選ばないような服を選ぶんだな…」
「うん、そのTシャツとこのパーカーを合わせるんだよ。わんこの柄がパーカーの隙間からチラッと覗いてるみたいで、可愛いでしょ?」
「Tシャツだけじゃダメなのか?」
「Tシャツだけでも良いけど、パーカーと合わせるとグッとお洒落になるから」
「なるほど…これがお洒落なのか?わかった!ちょっと高いけど買うか…」
「高くないよ?二千円だし、私が買ってあげようか」
「Tシャツは五百円なのにパーカーは二千円って高いだろ?て言うかヒモは嫌だと何度言えばわかる」
「わかった…。ごめんね…?パーカーは無理して買わなくても良いから…」
「いや、お洒落になるんだろ?買うよ」
店内で着替えると学生服は袋に入れてもらい、二人で店を出た。
「無理させちゃってごめんね」
「無理はしてない。お洒落だから気に入ってる」
「でも…お金ないんだよね?」
「いや、金は一応あるんだけど、貯金してるから。高校出たら一人暮らしする予定だし」
「そうなんだ?高校出た後に一人暮らしするんだね!良いな」
「小雪さんは一人暮らししないのか?」
「親が一人暮らし許してくれなくて…」
「二十歳になれば親の許可なくても借りられるよ?保証人は必要だけど、それは知り合いのおばちゃんに頼み込んでる」
「そっか…。でも一人だと不安だから…彼氏と同棲が良いな」
「親が金出してくれないから、自力で用意するしかないだろ?だから通帳には大体、三十万くらいあるんだ。学費は奨学金だから後で返さないとダメだし」
「三十万も?お金持ちだね!」
「奨学金は借金だからな。それが二百万くらいだから全然、金持ちじゃないよ」
「すごい…。やっぱり夏海君ってしっかりしてる。私より大人っぽい」
「見た目は君の方がお姉さんって感じで俺は弟にしか見えんけど」
「確かに…最初は弟みたいに感じてたけど、今はお父さんみたいに感じてるよ」
小雪は夏海の事を知れば知るほど好きになっていた。今まで付き合った男とは何もかもが違う。お金にルーズな男が多かったし、頭もあまり良くない。見た目ばかり気にして、中身はなかった。
「お父さんって…。結局、家族みたいな感覚なんだな。小雪さんにとって俺は恋愛対象じゃないんだろ?」
「えっ、それって逆でしょ?夏海君にとって私の方が恋愛対象になってない気がするんだけど…」
「君みたいな可愛い子が、俺なんか本気で相手してないのくらいわかってるよ?おそらく愛情じゃなくて同情に近い感情だろう」
「ううっ…、どうして私って…、いつも本命には好かれないんだろ?好きじゃない人には付き纏われるのに…」
「小雪さんは誰に対しても笑顔で優しく接するからじゃないか?そう言う態度で男は、すぐ勘違いするから…」
「確かに…よく勘違いされてたかも…。それで好きじゃない、って言ったら襲われて…」
「笑顔で優しく接して来られると、こいつ俺に気があるんじゃね?って思っちまうんだよ…」
「本気で好きになった人には襲われた事ないのに…」
「俺の事も気を付けた方が良いよ?俺の部屋に来たりしたら襲われるから」
「襲われるの?じゃあ夏海君の部屋に行ってみようかな」
「だから!そう言うのマジで男は勘違いして本気にするからダメだって言ってるそばから…」
「夏海君の家ってどこにあるの?」
「ん?それを聞いてどうするつもりだ」
「えっ、夏海君の家に遊びに行ったら迷惑かな」
「俺は迷惑じゃないけど部屋は物置だから、めちゃくちゃ汚いし、女子が来ても楽しいと感じないと思うぞ?」
「汚くても良いよ?片付けてあげる!」
「いや、片付けられたくない。見られたくない物も置いてあるし」
「部屋にえっちな本とか隠してるの?」
「えっちな本はないけど、見られたらドン引きされそうな物もあるからな」
「例えばどんな感じのもの?」
「う~ん。一番マシなのはペットボトルのキャップとか」
「ペットボトルのキャップってたまに可愛いのあるよね」
「可愛くないのも集めてる。ただのお茶のキャップもあるし、持ってないデザインの見かけたら、自販機のジュースは高いけど買った事もあった」
「そうなんだ?こだわりがあるんだね」
「他の奴はゲーセンのカードとか集めてるみたいだけど、あれは一回百円でカード一枚だから集める気になれんし、ペットボトルなら中身のジュースは美味しく飲めるからカード一枚よりお得だろ?」
「夏海君もゲーセンとか行くの?」
「ああ、ゲーセンの隅っこにある読書コーナーが好きだよ。ただで漫画とか読み放題だし、俺はビジネス本のコーナー読み漁ってた」
「ビジネス本なんか読むんだ?だから頭が良いんだね!」
「逆だよ?めちゃくちゃバカだから読んでた。大人になった時に悪い奴に騙されたりしないようにな」
「私の方が頭が悪いし、ビジネス本読んでみようかな?」
「じゃあゲーセン行くか?この近くにあるし、たまに本を読みに行ってる」
ゲームセンターに着くとビジネス本のコーナーに行ったが大音量でやかましくて、とても本を読むのに集中出来そうになかった。フカフカの革製のソファーに並んで座っていたので、本を読んでる夏海の横顔を眺める方が楽しくて、小雪は全く内容が頭に入らない。
「小雪さん、喉渇いたからジュース買ってあげるよ?好きなの選んで良いから」
「えっ、ジュースくらい自分で買うよ」
「そっか、俺だけ飲んでたら悪いしって思って」
「うん、飲みたくなったら買うね」
ソファーで夏海がアニメのキャラクターの絵柄のペットボトルを飲み干しているのを見つめる。夏海は半分くらい飲むとキャップを締めながらぼやいた。
「これさ、キャップのデザインが何種類もあるんだけど、持ってるのがダブったら凹む」
「同じのがダブったの?」
「うん、これ三個目だからいらないや」
「じゃあ、私にちょうだい?」
「ん?小雪さんもキャップ集めてんの」
「これから集める事にしたの。デートの記念に持って帰って大切にするよ」
「まあ、多分デートはここに来る事が多いかも」
「ここが夏海君のお気に入りのスポットなんだね?」
「て言うかこんなところに来ても楽しくないだろ?女子は…」
「ううん、夏海君と一緒だから楽しい」
「喉渇かないか?一人できたら喋らんから喉もそんな乾かないんだけど…」
「あっ、私のせいで喉渇いちゃったんだね。ジュース、私が奢れたら良いんだけど、奢られるのは嫌なんだよね?」
「ああ、なんか男が奢らせるって、カッコ悪くね?俺の考え方、古いのかな…」
「ううん、古くないよ?真面目でカッコいいと思う」
小雪は夏海と同じアニメのキャラクターのジュースを買ってくるとソファーに座った。
「あっ、それまだ持ってないやつだ。良いな…」
「じゃあ、これ飲み残しだけどジュースごとあげるよ。こんなたくさん飲めないから捨てるしかないし、捨てるくらいならもらってくれるよね?」
「マジで?ありがとう!」
夏海は大喜びでジュースを受け取ると小雪の飲み残しを飲み干した。間接キスで夏海がジュースを飲んでる姿を見て、小雪は満足だった。全て小雪の計算通りである。
「プハ~!喉も渇いてたから助かった」
初めてのデートも楽しく過ごして、この日の交換日記には、次は夏海の家に遊びに行きたいと書いて、小雪はわんこのノートを閉じた。学習机の横のコルクボードには、携帯のカメラで撮った夏海とのツーショットを、ゲームセンターの証明写真の機械で印刷した写真をピンで留めてある。もちろん携帯の待受画面にも同じ写真が使われていた。
「写真も撮らせてくれたし、これで毎日夏海君の顔を眺められる」
小雪はお姫様風のフリフリが付いた掛け布団に潜り込むと、大きなクマのぬいぐるみをギュッと抱き締めて、夏海の顔を思い浮かべながら眠りに就いた。夏海からもらったペットボトルのキャップも大事そうにベッド横の棚に飾ってある。
「あっ、俺も学生服のままでこんなところ歩いてたら、まずいかな?」
「ううん、別に高校生が学生服で歩いてても大丈夫じゃないかな」
「でも周りの奴みんな私服で歩いてるよな?いつもバイト終わったら家に直行してたから、着替えとか持って来てない」
「それじゃ、私が夏海君に似合いそうな服を選んであげる!あっ、そこのメンズブティックに入ろうよ?」
「あの店は高そうだからな…。中古なら安いから古着屋に行こう」
「私が買ってあげるから値段は気にしないで?」
「女性に貢がせるのはヒモとか言うんだろ?多分だけど俺の父親もヒモだった」
「そうなんだ?夏海君お父さんもイケメンそう」
「ヒモにだけはなりたくない!父親みたいな男にはなりたくないんだ」
「やっぱり夏海君って真面目だね」
「小雪さんみたいな可愛い子の横を歩く時は、それなりの衣装を着ないとな…」
「あんまり気にしないで…?それに何度も言うけど…私、可愛くないし!」
「あのさ、君レベルの顔の子がそれ言うとイヤミにしか聞こえないからやめた方が良いよ?女子に嫌われると思う」
「えっ、女子から嫌われてるの?私…」
「女子は自分より可愛い子がいるといじめたりするもんだろ?男子は優しくするけどな」
「そうなんだ?いじめられてはいないと思うけど…」
「友達の彼氏に襲われたのに君のせいにして罵ったんだろ?明らかないじめじゃないか」
「私にも悪いところがあったかも…と思ったし、思わせぶりな態度で誘ったんでしょ?って言われて言い返せなくて…」
「いや、それはそのやりたいだけのクソ男が全部悪い。彼女の友達を襲うとかあり得ない!」
「ふふ…夏海君って優しいんだね」
「優しくないよ?俺の頭の中、覗いたら絶対に幻滅するから」
「夏海君の頭の中、覗いてみたいな~」
「君と初めて話してた時もヤバい事、あれこれ考えてたしな。やりたいだけのクソ男の父親の血を引いてるから、頭の中はすごい事になってる…」
「そうなの?全然そんな感じしないよ」
「男なんて真面目ぶってても考えてる事は大体、変態思考なんだよ?」
「夏海君になら変態思考されても嫌じゃないよ」
「君、本当に実在の人物なの?俺の妄想の産物で薬の副作用で幻覚を見てるんじゃないだろな…」
「薬の副作用?何か薬飲んでるの」
「なんか色々と盛られてる。薬代で儲ける為に医者が不必要な薬を処方してるって噂だけど…。飲んで体調悪くなるから今はほとんど飲んでない」
古着屋に着くと、小雪は夏海とあれこれ相談しながら服を選ぶ。ダブルジッパーのフード付きパーカーを薦めた。
「俺が選ぶと大体、こう言うTシャツとかで済ませるんだが、小雪さんがいると俺の選ばないような服を選ぶんだな…」
「うん、そのTシャツとこのパーカーを合わせるんだよ。わんこの柄がパーカーの隙間からチラッと覗いてるみたいで、可愛いでしょ?」
「Tシャツだけじゃダメなのか?」
「Tシャツだけでも良いけど、パーカーと合わせるとグッとお洒落になるから」
「なるほど…これがお洒落なのか?わかった!ちょっと高いけど買うか…」
「高くないよ?二千円だし、私が買ってあげようか」
「Tシャツは五百円なのにパーカーは二千円って高いだろ?て言うかヒモは嫌だと何度言えばわかる」
「わかった…。ごめんね…?パーカーは無理して買わなくても良いから…」
「いや、お洒落になるんだろ?買うよ」
店内で着替えると学生服は袋に入れてもらい、二人で店を出た。
「無理させちゃってごめんね」
「無理はしてない。お洒落だから気に入ってる」
「でも…お金ないんだよね?」
「いや、金は一応あるんだけど、貯金してるから。高校出たら一人暮らしする予定だし」
「そうなんだ?高校出た後に一人暮らしするんだね!良いな」
「小雪さんは一人暮らししないのか?」
「親が一人暮らし許してくれなくて…」
「二十歳になれば親の許可なくても借りられるよ?保証人は必要だけど、それは知り合いのおばちゃんに頼み込んでる」
「そっか…。でも一人だと不安だから…彼氏と同棲が良いな」
「親が金出してくれないから、自力で用意するしかないだろ?だから通帳には大体、三十万くらいあるんだ。学費は奨学金だから後で返さないとダメだし」
「三十万も?お金持ちだね!」
「奨学金は借金だからな。それが二百万くらいだから全然、金持ちじゃないよ」
「すごい…。やっぱり夏海君ってしっかりしてる。私より大人っぽい」
「見た目は君の方がお姉さんって感じで俺は弟にしか見えんけど」
「確かに…最初は弟みたいに感じてたけど、今はお父さんみたいに感じてるよ」
小雪は夏海の事を知れば知るほど好きになっていた。今まで付き合った男とは何もかもが違う。お金にルーズな男が多かったし、頭もあまり良くない。見た目ばかり気にして、中身はなかった。
「お父さんって…。結局、家族みたいな感覚なんだな。小雪さんにとって俺は恋愛対象じゃないんだろ?」
「えっ、それって逆でしょ?夏海君にとって私の方が恋愛対象になってない気がするんだけど…」
「君みたいな可愛い子が、俺なんか本気で相手してないのくらいわかってるよ?おそらく愛情じゃなくて同情に近い感情だろう」
「ううっ…、どうして私って…、いつも本命には好かれないんだろ?好きじゃない人には付き纏われるのに…」
「小雪さんは誰に対しても笑顔で優しく接するからじゃないか?そう言う態度で男は、すぐ勘違いするから…」
「確かに…よく勘違いされてたかも…。それで好きじゃない、って言ったら襲われて…」
「笑顔で優しく接して来られると、こいつ俺に気があるんじゃね?って思っちまうんだよ…」
「本気で好きになった人には襲われた事ないのに…」
「俺の事も気を付けた方が良いよ?俺の部屋に来たりしたら襲われるから」
「襲われるの?じゃあ夏海君の部屋に行ってみようかな」
「だから!そう言うのマジで男は勘違いして本気にするからダメだって言ってるそばから…」
「夏海君の家ってどこにあるの?」
「ん?それを聞いてどうするつもりだ」
「えっ、夏海君の家に遊びに行ったら迷惑かな」
「俺は迷惑じゃないけど部屋は物置だから、めちゃくちゃ汚いし、女子が来ても楽しいと感じないと思うぞ?」
「汚くても良いよ?片付けてあげる!」
「いや、片付けられたくない。見られたくない物も置いてあるし」
「部屋にえっちな本とか隠してるの?」
「えっちな本はないけど、見られたらドン引きされそうな物もあるからな」
「例えばどんな感じのもの?」
「う~ん。一番マシなのはペットボトルのキャップとか」
「ペットボトルのキャップってたまに可愛いのあるよね」
「可愛くないのも集めてる。ただのお茶のキャップもあるし、持ってないデザインの見かけたら、自販機のジュースは高いけど買った事もあった」
「そうなんだ?こだわりがあるんだね」
「他の奴はゲーセンのカードとか集めてるみたいだけど、あれは一回百円でカード一枚だから集める気になれんし、ペットボトルなら中身のジュースは美味しく飲めるからカード一枚よりお得だろ?」
「夏海君もゲーセンとか行くの?」
「ああ、ゲーセンの隅っこにある読書コーナーが好きだよ。ただで漫画とか読み放題だし、俺はビジネス本のコーナー読み漁ってた」
「ビジネス本なんか読むんだ?だから頭が良いんだね!」
「逆だよ?めちゃくちゃバカだから読んでた。大人になった時に悪い奴に騙されたりしないようにな」
「私の方が頭が悪いし、ビジネス本読んでみようかな?」
「じゃあゲーセン行くか?この近くにあるし、たまに本を読みに行ってる」
ゲームセンターに着くとビジネス本のコーナーに行ったが大音量でやかましくて、とても本を読むのに集中出来そうになかった。フカフカの革製のソファーに並んで座っていたので、本を読んでる夏海の横顔を眺める方が楽しくて、小雪は全く内容が頭に入らない。
「小雪さん、喉渇いたからジュース買ってあげるよ?好きなの選んで良いから」
「えっ、ジュースくらい自分で買うよ」
「そっか、俺だけ飲んでたら悪いしって思って」
「うん、飲みたくなったら買うね」
ソファーで夏海がアニメのキャラクターの絵柄のペットボトルを飲み干しているのを見つめる。夏海は半分くらい飲むとキャップを締めながらぼやいた。
「これさ、キャップのデザインが何種類もあるんだけど、持ってるのがダブったら凹む」
「同じのがダブったの?」
「うん、これ三個目だからいらないや」
「じゃあ、私にちょうだい?」
「ん?小雪さんもキャップ集めてんの」
「これから集める事にしたの。デートの記念に持って帰って大切にするよ」
「まあ、多分デートはここに来る事が多いかも」
「ここが夏海君のお気に入りのスポットなんだね?」
「て言うかこんなところに来ても楽しくないだろ?女子は…」
「ううん、夏海君と一緒だから楽しい」
「喉渇かないか?一人できたら喋らんから喉もそんな乾かないんだけど…」
「あっ、私のせいで喉渇いちゃったんだね。ジュース、私が奢れたら良いんだけど、奢られるのは嫌なんだよね?」
「ああ、なんか男が奢らせるって、カッコ悪くね?俺の考え方、古いのかな…」
「ううん、古くないよ?真面目でカッコいいと思う」
小雪は夏海と同じアニメのキャラクターのジュースを買ってくるとソファーに座った。
「あっ、それまだ持ってないやつだ。良いな…」
「じゃあ、これ飲み残しだけどジュースごとあげるよ。こんなたくさん飲めないから捨てるしかないし、捨てるくらいならもらってくれるよね?」
「マジで?ありがとう!」
夏海は大喜びでジュースを受け取ると小雪の飲み残しを飲み干した。間接キスで夏海がジュースを飲んでる姿を見て、小雪は満足だった。全て小雪の計算通りである。
「プハ~!喉も渇いてたから助かった」
初めてのデートも楽しく過ごして、この日の交換日記には、次は夏海の家に遊びに行きたいと書いて、小雪はわんこのノートを閉じた。学習机の横のコルクボードには、携帯のカメラで撮った夏海とのツーショットを、ゲームセンターの証明写真の機械で印刷した写真をピンで留めてある。もちろん携帯の待受画面にも同じ写真が使われていた。
「写真も撮らせてくれたし、これで毎日夏海君の顔を眺められる」
小雪はお姫様風のフリフリが付いた掛け布団に潜り込むと、大きなクマのぬいぐるみをギュッと抱き締めて、夏海の顔を思い浮かべながら眠りに就いた。夏海からもらったペットボトルのキャップも大事そうにベッド横の棚に飾ってある。
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