13 / 16
国領くんは予定を崩したくないけど、遊びたくなる時だってある
しおりを挟む
「あ゙ぁ~」
疲れた。なんとか残業は免れたけど。伸びをして肩を回し、同僚や上司にちゃんと挨拶をして、エレベーターに乗って退社。会社のエントランスに出ると、めちゃくちゃ見覚えのある柄シャツ男がいて、目を擦る。
「おせぇよ国領!」
「いや、約束してないよな!?」
疲れててすっぽかしたか?いやいや。念の為スマホを確認しようとすると、柴崎はゲラゲラ笑い出したので、約束はしてないと確信。
「約束してねぇじゃねぇかよ!!」
「約束してなきゃダメなのか?」
そのケロッとした顔で俺を見んな。昔っから変わり映えのしない。
「別に……構わねぇけど……」
「な!飲み行こうぜ!」
「えーまだ週中……」
「お前ん家がいい!」
「話聞いてるか?」
店か自分の家なら、まぁ自分の家のが寛げるしいいけど……こいつ泊まる気だよな?俺は明日早いんだが?
「お前明日仕事は」
「休みだな」
「やっぱりか!俺はあと2日あんだよ!」
「国領くんなら大丈夫だって~」
「そんな無責任な信頼いらん」
大袈裟にため息を吐いてみるが、柴崎はやめる気はないようで。駅の近くの駐車場まで俺を引っ張って行き、愛車に押し込めようとする。
「だから!俺いいって言ってねぇだろ!」
「構わねぇっつったろ」
「それは!アポイントの話で!今日飲むかの話じゃない!」
「えーせっかく会いに来たのに、このまま帰すんですか?」
「~~っ!!だぁもう!!」
抵抗をやめ、助手席に座り荒々しくドアを閉めてやった。柴崎はご機嫌で鼻唄を歌いながら、運転席に着く。
「…………酒代奢れよ」
「えそこまで持ち合わせないです」
「ふざけんなよお前」
頭を軽くはたく。なにが嬉しいのか、柴崎はゲラゲラ笑っている。釣られて自分も口角が上がる。頬杖をついて、窓の外を見た。ネオンライトが車の速度に溶けるように流れていく。
「ちょっと飛ばしてぇな~ドライブしてから帰るか!」
「お願いだから直帰させてもらえる?」
「えー」
どっからその元気出てくんだよ、まったく。
「買いすぎだろうがよどう考えても」
「飲み切れなかったらストックしておけばいいし」
「俺の冷蔵庫に?」
「そうだよ?」
「そうだよじゃないが。勝手に圧迫すんな。自炊してんだよこっちは」
オートロックのマンションの、3階1番端の部屋。307号室。鍵を開けて、客より先に中に入る。
「お邪魔しまーす」
「おう」
馬鹿でかい挨拶を背中で聞きながら、とっととスーツとシャツを脱ぐ。洗濯かごに放り込んで、スウェットを2枚出して1枚柴崎に放る。
「さんきゅ」
「先に風呂入る」
「あーい」
柴崎は柄シャツから貸したスウェットに着替えている。いつも思うんだけどなんか……ガキっぽい着替え方なんだよな。なんか、こう。上手く説明出来んが。手早くシャワーを浴びて出るが、おそらく勝手に飲み始めてるだろう。
「おさき~」
ほらな。ため息を吐き、横に座る。梅酒の缶に手を伸ばし、栓を開ける。飲みながら、飯をどうするか考える。
「なぁ卵焼き食いたい」
「うっせえお前に選択権はねぇ」
卵、残ってたっけ。こいつの分くらいは焼けるだろ。米は炊いてねぇし冷凍もないから、パスタか焼きそばか。卵焼きなら焼きそばかね。梅酒缶と一緒に、手狭なキッチンに立つ。
「手伝うか?」
「座ってろ」
こいつに包丁持たせたら最後、血を見るからな。まぁ今日のメニューは包丁使わねぇけどよ。カット野菜を炒めて、麺入れて、水足して蒸して。その間に卵を溶いて、卵焼き器に流す。焼きそばにソース加えて、卵をひっくり返して巻いて。適当に盛り付ける。
「出来たぞ」
「わーい」
皿を取りに来た柴崎の、卵焼きを見つけた時の顔。力が抜けて、最高に笑える。
疲れた。なんとか残業は免れたけど。伸びをして肩を回し、同僚や上司にちゃんと挨拶をして、エレベーターに乗って退社。会社のエントランスに出ると、めちゃくちゃ見覚えのある柄シャツ男がいて、目を擦る。
「おせぇよ国領!」
「いや、約束してないよな!?」
疲れててすっぽかしたか?いやいや。念の為スマホを確認しようとすると、柴崎はゲラゲラ笑い出したので、約束はしてないと確信。
「約束してねぇじゃねぇかよ!!」
「約束してなきゃダメなのか?」
そのケロッとした顔で俺を見んな。昔っから変わり映えのしない。
「別に……構わねぇけど……」
「な!飲み行こうぜ!」
「えーまだ週中……」
「お前ん家がいい!」
「話聞いてるか?」
店か自分の家なら、まぁ自分の家のが寛げるしいいけど……こいつ泊まる気だよな?俺は明日早いんだが?
「お前明日仕事は」
「休みだな」
「やっぱりか!俺はあと2日あんだよ!」
「国領くんなら大丈夫だって~」
「そんな無責任な信頼いらん」
大袈裟にため息を吐いてみるが、柴崎はやめる気はないようで。駅の近くの駐車場まで俺を引っ張って行き、愛車に押し込めようとする。
「だから!俺いいって言ってねぇだろ!」
「構わねぇっつったろ」
「それは!アポイントの話で!今日飲むかの話じゃない!」
「えーせっかく会いに来たのに、このまま帰すんですか?」
「~~っ!!だぁもう!!」
抵抗をやめ、助手席に座り荒々しくドアを閉めてやった。柴崎はご機嫌で鼻唄を歌いながら、運転席に着く。
「…………酒代奢れよ」
「えそこまで持ち合わせないです」
「ふざけんなよお前」
頭を軽くはたく。なにが嬉しいのか、柴崎はゲラゲラ笑っている。釣られて自分も口角が上がる。頬杖をついて、窓の外を見た。ネオンライトが車の速度に溶けるように流れていく。
「ちょっと飛ばしてぇな~ドライブしてから帰るか!」
「お願いだから直帰させてもらえる?」
「えー」
どっからその元気出てくんだよ、まったく。
「買いすぎだろうがよどう考えても」
「飲み切れなかったらストックしておけばいいし」
「俺の冷蔵庫に?」
「そうだよ?」
「そうだよじゃないが。勝手に圧迫すんな。自炊してんだよこっちは」
オートロックのマンションの、3階1番端の部屋。307号室。鍵を開けて、客より先に中に入る。
「お邪魔しまーす」
「おう」
馬鹿でかい挨拶を背中で聞きながら、とっととスーツとシャツを脱ぐ。洗濯かごに放り込んで、スウェットを2枚出して1枚柴崎に放る。
「さんきゅ」
「先に風呂入る」
「あーい」
柴崎は柄シャツから貸したスウェットに着替えている。いつも思うんだけどなんか……ガキっぽい着替え方なんだよな。なんか、こう。上手く説明出来んが。手早くシャワーを浴びて出るが、おそらく勝手に飲み始めてるだろう。
「おさき~」
ほらな。ため息を吐き、横に座る。梅酒の缶に手を伸ばし、栓を開ける。飲みながら、飯をどうするか考える。
「なぁ卵焼き食いたい」
「うっせえお前に選択権はねぇ」
卵、残ってたっけ。こいつの分くらいは焼けるだろ。米は炊いてねぇし冷凍もないから、パスタか焼きそばか。卵焼きなら焼きそばかね。梅酒缶と一緒に、手狭なキッチンに立つ。
「手伝うか?」
「座ってろ」
こいつに包丁持たせたら最後、血を見るからな。まぁ今日のメニューは包丁使わねぇけどよ。カット野菜を炒めて、麺入れて、水足して蒸して。その間に卵を溶いて、卵焼き器に流す。焼きそばにソース加えて、卵をひっくり返して巻いて。適当に盛り付ける。
「出来たぞ」
「わーい」
皿を取りに来た柴崎の、卵焼きを見つけた時の顔。力が抜けて、最高に笑える。
11
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
父が死んだのでようやく邪魔な女とその息子を処分できる
兎屋亀吉
恋愛
伯爵家の当主だった父が亡くなりました。これでようやく、父の愛妾として我が物顔で屋敷内をうろつくばい菌のような女とその息子を処分することができます。父が死ねば息子が当主になれるとでも思ったのかもしれませんが、父がいなくなった今となっては思う通りになることなど何一つありませんよ。今まで父の威を借りてさんざんいびってくれた仕返しといきましょうか。根に持つタイプの陰険女主人公。
夫が寵姫に夢中ですので、私は離宮で気ままに暮らします
希猫 ゆうみ
恋愛
王妃フランチェスカは見切りをつけた。
国王である夫ゴドウィンは踊り子上がりの寵姫マルベルに夢中で、先に男児を産ませて寵姫の子を王太子にするとまで嘯いている。
隣国王女であったフランチェスカの莫大な持参金と、結婚による同盟が国を支えてるというのに、恩知らずも甚だしい。
「勝手にやってください。私は離宮で気ままに暮らしますので」
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子
ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。
Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
目が覚めたら夫と子供がいました
青井陸
恋愛
とある公爵家の若い公爵夫人、シャルロットが毒の入ったのお茶を飲んで倒れた。
1週間寝たきりのシャルロットが目を覚ましたとき、幼い可愛い男の子がいた。
「…お母様?よかった…誰か!お母様が!!!!」
「…あなた誰?」
16歳で政略結婚によって公爵家に嫁いだ、元伯爵令嬢のシャルロット。
シャルロットは一目惚れであったが、夫のハロルドは結婚前からシャルロットには冷たい。
そんな関係の二人が、シャルロットが毒によって記憶をなくしたことにより少しずつ変わっていく。
なろう様でも同時掲載しています。
寵愛のいる旦那様との結婚生活が終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい。
にのまえ
恋愛
リルガルド国。公爵令嬢リイーヤ・ロイアルは令嬢ながら、剣に明け暮れていた。
父に頼まれて参加をした王女のデビュタントの舞踏会で、伯爵家コール・デトロイトと知り合い恋に落ちる。
恋に浮かれて、剣を捨た。
コールと結婚をして初夜を迎えた。
リイーヤはナイトドレスを身に付け、鼓動を高鳴らせて旦那様を待っていた。しかし寝室に訪れた旦那から出た言葉は「私は君を抱くことはない」「私には心から愛する人がいる」だった。
ショックを受けて、旦那には愛してもられないと知る。しかし離縁したくてもリルガルド国では離縁は許されない。しかしリイーヤは二年待ち子供がいなければ離縁できると知る。
結婚二周年の食事の席で、旦那は義理両親にリイーヤに子供ができたと言い出した。それに反論して自分は生娘だと医師の診断書を見せる。
混乱した食堂を後にして、リイーヤは馬に乗り伯爵家から出て行き国境を越え違う国へと向かう。
もし、次があるのなら優しい人と恋がしたいと……
お読みいただき、ありがとうございます。
エブリスタで四月に『完結』した話に差し替えいたいと思っております。内容はさほど、変わっておりません。
それにあたり、栞を挟んでいただいている方、すみません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる