16 / 20
第4話【監禁そして脱獄】
しおりを挟む
「なんで持って来ちゃうんだよ。ゴミ箱に捨てたのに」
「兄弟。なぜこんな事をした!!」
ライトが胸ぐらを掴む。
だがクロスは動揺もしていないようだ。肩を震わせて笑っている。
「いい加減、調子こいてる素人共がうざいからだよ。
買い物してても、メシ食ってても
どっかの馬鹿が低レベルな推理もどきを繰り広げる。
探偵業は遊びじゃないんだ!
豊富な知識に、経験とテクニック、疑惑をかける相手に対する配慮、全てが必要なんだ。
兼業探偵だあ?
片手間でやれる奴なんてそう居ないんだよ!
俺たち兄弟レベルじゃないとな!」
渾身の右ストレートが炸裂した。
衝撃で倒れ込んだクロスは、顔を押さえながら固まっている。
初めて殴ったのだろうか。
ライトは己の拳を見つめて呆然としている。
「わんわん、まあ落ち着いてお兄さん。
大した事じゃないでしょう。小学生レベルのつまんない嫌がらせです」
「なんだと?」
「だって怖がらせるだけだもん。
ビビリで笑っちゃいます。文章もありきたり」
「ふざけんな犬女!」
立ち上がったクロスは肩で息をしながら
声に怒気を乗せる。
「そんなもんで済むわけねぇだろ!
お前ら知らないだろうな、探偵抹殺チャンネルがあるんだよ。俺はそこの管理人だ」
「なっ!?」
「気に入らない探偵がいる奴に、住所と現在地を教えてやってるのさ。
直接手を下す事なく、うざい奴を排除できる。
馬鹿を使って馬鹿をやるのは最高だ!」
「兄弟、まさか、そこまで!」
高笑いを続ける脅迫犯を前に、コリーはしばらく沈黙を守っていたが
やがて静かに呟いた。
「まさか名探偵のクロス君が、探偵狩りの犯人だったなんて!」
「驚いたか?クソ犬は骨でもかじってろ!」
「意外と口が悪いし、チョロいですね。
イケメンが台無しでファンが見たらガッカリだ」
コリーは犬耳の中から手のひらサイズの機械を取り出す。
それが録音機である事は
再生された音声が流れた事で分かった。
「わんわん。警察に提出します。引退するのはあなたの方ですね」
「この、渡せ!」
殴りかかったクロスは、突然目の前に現れた壁に一瞬ひるんだ。
その隙に腹部に強烈な打撃を受けて、悶絶して膝をついたのちに、気を失った。
「ありがとうございます、花見さん!」
「コリーちゃんが無事で何より」
巨体からは想像もつかないスピードだった。
風船のような腹をしていても、さすがは武闘派探偵。いや愛の力か。
脅迫犯は、警察が来るまで地下倉庫に監禁する事になった。兄であるライトも、自ら志願して一緒に入る。
「犯罪行為が発覚したとはいえ、お客様です。
せめてこちらをおかけください」
執事は焦げ茶のブランケットを手渡して、鍵を締める。
ガチャリと軽快な音が鳴り響く。
一度ノブを回し、開かないことを確認した。
ホールに戻った面々が思い思いにくつろいでいると
突然、激しい爆発音が響き渡る。
「なんだ!どこだ?」
「地下倉庫の方ではないか?」
駆けつけた雪白と月丘が見たのは、爆発で弾け飛んだ扉と、黒こげになっている倉庫内。
中に兄弟探偵の死体が・・・無かった。
「どこに消えたんだ!?」
鍵を持っている執事はずっと側に居た。
脅迫犯とその兄は、まるで煙のように忽然と姿を消してしまった。
「兄弟。なぜこんな事をした!!」
ライトが胸ぐらを掴む。
だがクロスは動揺もしていないようだ。肩を震わせて笑っている。
「いい加減、調子こいてる素人共がうざいからだよ。
買い物してても、メシ食ってても
どっかの馬鹿が低レベルな推理もどきを繰り広げる。
探偵業は遊びじゃないんだ!
豊富な知識に、経験とテクニック、疑惑をかける相手に対する配慮、全てが必要なんだ。
兼業探偵だあ?
片手間でやれる奴なんてそう居ないんだよ!
俺たち兄弟レベルじゃないとな!」
渾身の右ストレートが炸裂した。
衝撃で倒れ込んだクロスは、顔を押さえながら固まっている。
初めて殴ったのだろうか。
ライトは己の拳を見つめて呆然としている。
「わんわん、まあ落ち着いてお兄さん。
大した事じゃないでしょう。小学生レベルのつまんない嫌がらせです」
「なんだと?」
「だって怖がらせるだけだもん。
ビビリで笑っちゃいます。文章もありきたり」
「ふざけんな犬女!」
立ち上がったクロスは肩で息をしながら
声に怒気を乗せる。
「そんなもんで済むわけねぇだろ!
お前ら知らないだろうな、探偵抹殺チャンネルがあるんだよ。俺はそこの管理人だ」
「なっ!?」
「気に入らない探偵がいる奴に、住所と現在地を教えてやってるのさ。
直接手を下す事なく、うざい奴を排除できる。
馬鹿を使って馬鹿をやるのは最高だ!」
「兄弟、まさか、そこまで!」
高笑いを続ける脅迫犯を前に、コリーはしばらく沈黙を守っていたが
やがて静かに呟いた。
「まさか名探偵のクロス君が、探偵狩りの犯人だったなんて!」
「驚いたか?クソ犬は骨でもかじってろ!」
「意外と口が悪いし、チョロいですね。
イケメンが台無しでファンが見たらガッカリだ」
コリーは犬耳の中から手のひらサイズの機械を取り出す。
それが録音機である事は
再生された音声が流れた事で分かった。
「わんわん。警察に提出します。引退するのはあなたの方ですね」
「この、渡せ!」
殴りかかったクロスは、突然目の前に現れた壁に一瞬ひるんだ。
その隙に腹部に強烈な打撃を受けて、悶絶して膝をついたのちに、気を失った。
「ありがとうございます、花見さん!」
「コリーちゃんが無事で何より」
巨体からは想像もつかないスピードだった。
風船のような腹をしていても、さすがは武闘派探偵。いや愛の力か。
脅迫犯は、警察が来るまで地下倉庫に監禁する事になった。兄であるライトも、自ら志願して一緒に入る。
「犯罪行為が発覚したとはいえ、お客様です。
せめてこちらをおかけください」
執事は焦げ茶のブランケットを手渡して、鍵を締める。
ガチャリと軽快な音が鳴り響く。
一度ノブを回し、開かないことを確認した。
ホールに戻った面々が思い思いにくつろいでいると
突然、激しい爆発音が響き渡る。
「なんだ!どこだ?」
「地下倉庫の方ではないか?」
駆けつけた雪白と月丘が見たのは、爆発で弾け飛んだ扉と、黒こげになっている倉庫内。
中に兄弟探偵の死体が・・・無かった。
「どこに消えたんだ!?」
鍵を持っている執事はずっと側に居た。
脅迫犯とその兄は、まるで煙のように忽然と姿を消してしまった。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
友よ、お前は何故死んだのか?
河内三比呂
ミステリー
「僕は、近いうちに死ぬかもしれない」
幼い頃からの悪友であり親友である久川洋壱(くがわよういち)から突如告げられた不穏な言葉に、私立探偵を営む進藤識(しんどうしき)は困惑し嫌な予感を覚えつつもつい流してしまう。
だが……しばらく経った頃、仕事終わりの識のもとへ連絡が入る。
それは洋壱の死の報せであった。
朝倉康平(あさくらこうへい)刑事から事情を訊かれた識はそこで洋壱の死が不可解である事、そして自分宛の手紙が発見された事を伝えられる。
悲しみの最中、朝倉から提案をされる。
──それは、捜査協力の要請。
ただの民間人である自分に何ができるのか?悩みながらも承諾した識は、朝倉とともに洋壱の死の真相を探る事になる。
──果たして、洋壱の死の真相とは一体……?
幻影のアリア
葉羽
ミステリー
天才高校生探偵の神藤葉羽は、幼馴染の望月彩由美と共に、とある古時計のある屋敷を訪れる。その屋敷では、不可解な事件が頻発しており、葉羽は事件の真相を解き明かすべく、推理を開始する。しかし、屋敷には奇妙な力が渦巻いており、葉羽は次第に現実と幻想の境目が曖昧になっていく。果たして、葉羽は事件の謎を解き明かし、屋敷から無事に脱出できるのか?
学園ミステリ~桐木純架
よなぷー
ミステリー
・絶世の美貌で探偵を自称する高校生、桐木純架。しかし彼は重度の奇行癖の持ち主だった! 相棒・朱雀楼路は彼に振り回されつつ毎日を過ごす。
そんな二人の前に立ち塞がる数々の謎。
血の涙を流す肖像画、何者かに折られるチョーク、喫茶店で奇怪な行動を示す老人……。
新感覚学園ミステリ風コメディ、ここに開幕。
『小説家になろう』でも公開されています――が、検索除外設定です。
消えた死体 めんどくさがり探偵
ナマケモノ
ミステリー
めんどくさがりな探偵のもとに依頼がくる。 依頼は消えた死体と殺害した犯人を探すこと。
作品に出てくる人物や地名、団体などはフィクションです。
注意:カクヨムと重複投稿しています。
孤島の洋館と死者の証言
葉羽
ミステリー
高校2年生の神藤葉羽は、学年トップの成績を誇る天才だが、恋愛には奥手な少年。彼の平穏な日常は、幼馴染の望月彩由美と過ごす時間によって色付けされていた。しかし、ある日、彼が大好きな推理小説のイベントに参加するため、二人は不気味な孤島にある古びた洋館に向かうことになる。
その洋館で、参加者の一人が不審死を遂げ、事件は急速に混沌と化す。葉羽は推理の腕を振るい、彩由美と共に事件の真相を追い求めるが、彼らは次第に精神的な恐怖に巻き込まれていく。死者の霊が語る過去の真実、参加者たちの隠された秘密、そして自らの心の中に潜む恐怖。果たして彼らは、事件の謎を解き明かし、無事にこの恐ろしい洋館から脱出できるのか?
Man under the moon
ハートリオ
ミステリー
フェムト星のフェムト星人のモルは、探偵。 ある日、仕事の依頼者に会う為に列車に乗っていたが、間違えてビット村という田舎の村に下車してしまう。 そこで偶然出会った少女に人捜しを頼まれるが・・・
5月16日
・表紙登録しました。
・2月28日投稿した第1話に挿絵イラスト追加しました。 文章はそのままです。
全話ではないですが挿絵イラストを付けますので、雰囲気を感じて頂けたらいいなと思います。
6月21日
29話までしか挿絵間に合ってないのですが、暑くなってきたのでエアコンの無い(壊れっぱなし)部屋で挿絵描く作業はパソコンが熱くなってしまうので、涼しくなるまで控えるしかないので、挿絵途中ですが一旦投稿終了します。(30話からは挿絵なしの小説のみの投稿となります) 涼しくなってから残りの挿絵描いて完全な状態にしたいと思ってますが、修正投稿はあまりしたくないので、どうしようか考え中です。
エアコンが欲しいです~~~
ゾンビ探偵
勇出あつ
ミステリー
パンデミック後人類はほろびかけ、バグと呼ばれるゾンビたちによって世界は荒れ果てた。
そんななか難攻不落の集落であるはずの津井原で怪奇事件が立て続けに起きる。
バグのしわざか人間のしわざか、あるいはだれかがウィルスを持ち込んだのか。
逮捕された容疑者たちは自分の命をかけて犯人さがしの議論をすることになる。
【毎日20時更新】怪盗ジェスターと人食い鬼
ユーレカ書房
ミステリー
帝都を騒がす神出鬼没の義賊・怪盗ジェスター。
彼が持つもうひとつの顔こそ、私立探偵の橋本雅文である。
あるとき、帝都で発生した宝石商襲撃事件の犯人としてジェスターの名が挙がっているという話を聞いた雅文は、襲撃された宝石商・宮園家の生き残りである美月の護衛として、彼女が世話になっている小野寺家に潜り込む。〈偽ジェスター〉が彼女にさらなる危害を加えることを危惧する雅文だったが、小野寺家に隠されていたのは彼の懸念を上回るおぞましい秘密だった……。
【登場人物】
橋本雅文/怪盗ジェスター・・・探偵と怪盗の顔を使い分け、理不尽な境遇に陥れられた人々を救い出すことを信条としている青年。義賊として広く知られており、司法の光が届かない難解な事情を抱えた人々からの依頼を請け負うことが多い。自分の名を騙って宮園家の当主夫妻を殺害した〈偽ジェスター〉を追うため、宮園美月の護衛となる。
宮園美月・・・・・宝石商・宮園家の令嬢。ある晩突如両親を〈ジェスター〉に殺害されてしまい、家を継ぐには若すぎたため、ひとまず遠縁の小野寺家に引き取られる。読書家で、自分でも探偵小説を書いている。以前から義賊のジェスターに憧れを抱いていたのだが……。
小野寺誠三・・・・小野寺家の当主。画商、画家。両親を失った美月を保護し、養父として養育する。不眠に悩まされているらしい。
小野寺加代・・・・誠三の妻。引き取られてきた美月に対して小野寺家で唯一厳しくあたり、家事を言いつけたり外出を管理したりする厳格な人。
松田晴海・・・・・小野寺家に雇われたばかりの使用人。美月に襲撃事件のことを根掘り葉掘り聞いてしまったため、彼女から敬遠されている。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる