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序章:月之木陽は許さない
・第一話
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午後二時。
小テスト中の教室の中には、沈黙が下りていた。
皆が皆、答案用紙に向かってペンを走らせる、かつ、かつ、という音だけが異様に大きく響いている。
その音を耳障りに感じながら、月之木陽は、無言で椅子に座っていた。既に問題は解き終わっている、結果が出るまではわからないが、自己採点の結果は満点だ。そうなるよう、毎日勉強しているのだから当然の事だ。答案用紙も何回も見直した、誤字脱字、記入漏れ等もない、今回も満点は確実だろう。
そして恐らく、この小テストの範囲から出題される学期末の試験でも、きっと自分は満点をとる、入学した時からずっと、陽はそうして常に満点をとり、クラスどころか学年全体で、誰にもその座を譲った事がない。
だからといって、それに驕る事はしない。驕らず、自分を必要以上に卑下せず、トップの座に立ち続ける。自分はそういう人間だし、そうありたいと思っている。
もちろん、勉学ばかりではない、運動でも陽は、常に学年トップだ。絵画だとか音楽だとか、生憎とそういう方面には、全くと言って良いくらいに才能が無かったけれど、それは別に構わない、そんな才能を、自分は求めていないし、必要だ、とも感じてはいない、自分の将来の為、必要な『力』があればそれで良い、それ以上を求めるのは贅沢というものだろう。
陽は、そう思った。
月之木陽。
高校二年生。
成績は、入学した時から学年トップ。
運動に関しても同様で、どんなスポーツでも、陽に敵う生徒はいなかった、部活には所属していないけれど、いつも運動部から助っ人を頼まれるし、体育祭などでは、陽が所属するチームはいつも優勝している。
成績、運動ばかりではなく、人当たりも良い性格で、高校の後輩達からは慕われているし、先輩達に頼りにされている、友人、知人は校内に学年を問わずに多い方だろう、整った顔立ちもあって、何人かの女子生徒からは告白される事もあったけれど、全てを断っている。
恋愛に興味が無い、といえば嘘になるけれど、今、自分にはどうしても叶えたい将来の夢がある。
その為には、あまり必要以上に他人と深い関わりを持ちたくない、もう少し……自分の将来に向けての道筋が安定してきたら、改めてそういう事を考えるのも悪く無いかもしれないけれど、今は、どうしても自分の事が優先なのだ。
将来。
そうだ。
陽には、明確な将来の目標がある。
警察官。
それが、陽の目標だった。
陽は、昔から『悪い人間』が嫌いだった。
人を傷つける人間。
人のものを盗む人間。
人を騙す人間。
そうした人々を苦しめる『悪い人間』を、陽はずっと昔から嫌っている。
否。
憎んでいる。
そう言っても過言では無いだろう。そんな人間達を全て捕らえ、牢屋に入れる、そればかりではなく、もしも……許されるのならば……
陽は歯ぎしりした。
許されるのならば、この手で……
そこまで考えて、陽は軽く頭を横に振った、落ち着け、今は小テストの最中だ。
昔からこうなのだ、気が高ぶると、つい歯ぎしりしたり、身体が震えたりしてしまう、悪い癖だな、と思わず心の中でつぶやき、周りに気づかれないよう、そっと息を吐いた、落ち着け、と自分に言い聞かせる、余計な事をしたら他の生徒達にだって迷惑がかかるし、何よりも試験の結果に影響する。
どうして、そんな風に思うようになったのか、それは残念ながら自分でもわからない、気がつけば、そういう風に考えていて、その為にどうするのか、という事を考え、思いついたのが警察官だった、というだけだ。
警察官になる方法も、既に解っている、卒業したら警察学校に入るつもりだ。というよりも、警察学校に入る為に、高卒資格が欲しくて、この学校に入学したというだけだ。
そしていずれは、自分が世の中の悪を全て……
全て……
陽は、また拳を握りしめた。身体がかっ、と熱くなり、慌てて頭を軽く振った、落ち着け、今は静かにしていないと……何か他の事でも考えよう、そう心の中で呟きながら、視線を窓の外に向ける。
綺麗な青空が広がっている、陽はそれを見ながらぼんやりと、放課後はどうしようかと考えていた、そういえば、駅前のゲームセンターに新しいゲームの筐体が入った、という話を何処かで聞いたっけ、ゲームは割と嫌いではない、勉強の息抜きに、少しだけ始めたのがきっかけだったけれど、気がつけば街のゲームセンターや、大手のMMORPGなどの大会やらランキングイベントなどでも、残念ながら一位にはなれなかったけれど、陽はトップ3に入る成績を修めていた、一位になれないのは悔しいが、まあこちらは趣味なのだから、楽しめればそれで良いだろう。
そうだな、今日は久しぶりに、放課後にゲームセンターにでも顔を出そうか? 或いはいつもプレイしているネットゲームにでもインしてみるのも良いかもしれないな。
そう思いながら、陽は視線を教室の中に戻した、そろそろテストが終わる時間だろうか?
そんな事を考えていた時。
陽の目に、その光景は飛び込んで来た。
小テスト中の教室の中には、沈黙が下りていた。
皆が皆、答案用紙に向かってペンを走らせる、かつ、かつ、という音だけが異様に大きく響いている。
その音を耳障りに感じながら、月之木陽は、無言で椅子に座っていた。既に問題は解き終わっている、結果が出るまではわからないが、自己採点の結果は満点だ。そうなるよう、毎日勉強しているのだから当然の事だ。答案用紙も何回も見直した、誤字脱字、記入漏れ等もない、今回も満点は確実だろう。
そして恐らく、この小テストの範囲から出題される学期末の試験でも、きっと自分は満点をとる、入学した時からずっと、陽はそうして常に満点をとり、クラスどころか学年全体で、誰にもその座を譲った事がない。
だからといって、それに驕る事はしない。驕らず、自分を必要以上に卑下せず、トップの座に立ち続ける。自分はそういう人間だし、そうありたいと思っている。
もちろん、勉学ばかりではない、運動でも陽は、常に学年トップだ。絵画だとか音楽だとか、生憎とそういう方面には、全くと言って良いくらいに才能が無かったけれど、それは別に構わない、そんな才能を、自分は求めていないし、必要だ、とも感じてはいない、自分の将来の為、必要な『力』があればそれで良い、それ以上を求めるのは贅沢というものだろう。
陽は、そう思った。
月之木陽。
高校二年生。
成績は、入学した時から学年トップ。
運動に関しても同様で、どんなスポーツでも、陽に敵う生徒はいなかった、部活には所属していないけれど、いつも運動部から助っ人を頼まれるし、体育祭などでは、陽が所属するチームはいつも優勝している。
成績、運動ばかりではなく、人当たりも良い性格で、高校の後輩達からは慕われているし、先輩達に頼りにされている、友人、知人は校内に学年を問わずに多い方だろう、整った顔立ちもあって、何人かの女子生徒からは告白される事もあったけれど、全てを断っている。
恋愛に興味が無い、といえば嘘になるけれど、今、自分にはどうしても叶えたい将来の夢がある。
その為には、あまり必要以上に他人と深い関わりを持ちたくない、もう少し……自分の将来に向けての道筋が安定してきたら、改めてそういう事を考えるのも悪く無いかもしれないけれど、今は、どうしても自分の事が優先なのだ。
将来。
そうだ。
陽には、明確な将来の目標がある。
警察官。
それが、陽の目標だった。
陽は、昔から『悪い人間』が嫌いだった。
人を傷つける人間。
人のものを盗む人間。
人を騙す人間。
そうした人々を苦しめる『悪い人間』を、陽はずっと昔から嫌っている。
否。
憎んでいる。
そう言っても過言では無いだろう。そんな人間達を全て捕らえ、牢屋に入れる、そればかりではなく、もしも……許されるのならば……
陽は歯ぎしりした。
許されるのならば、この手で……
そこまで考えて、陽は軽く頭を横に振った、落ち着け、今は小テストの最中だ。
昔からこうなのだ、気が高ぶると、つい歯ぎしりしたり、身体が震えたりしてしまう、悪い癖だな、と思わず心の中でつぶやき、周りに気づかれないよう、そっと息を吐いた、落ち着け、と自分に言い聞かせる、余計な事をしたら他の生徒達にだって迷惑がかかるし、何よりも試験の結果に影響する。
どうして、そんな風に思うようになったのか、それは残念ながら自分でもわからない、気がつけば、そういう風に考えていて、その為にどうするのか、という事を考え、思いついたのが警察官だった、というだけだ。
警察官になる方法も、既に解っている、卒業したら警察学校に入るつもりだ。というよりも、警察学校に入る為に、高卒資格が欲しくて、この学校に入学したというだけだ。
そしていずれは、自分が世の中の悪を全て……
全て……
陽は、また拳を握りしめた。身体がかっ、と熱くなり、慌てて頭を軽く振った、落ち着け、今は静かにしていないと……何か他の事でも考えよう、そう心の中で呟きながら、視線を窓の外に向ける。
綺麗な青空が広がっている、陽はそれを見ながらぼんやりと、放課後はどうしようかと考えていた、そういえば、駅前のゲームセンターに新しいゲームの筐体が入った、という話を何処かで聞いたっけ、ゲームは割と嫌いではない、勉強の息抜きに、少しだけ始めたのがきっかけだったけれど、気がつけば街のゲームセンターや、大手のMMORPGなどの大会やらランキングイベントなどでも、残念ながら一位にはなれなかったけれど、陽はトップ3に入る成績を修めていた、一位になれないのは悔しいが、まあこちらは趣味なのだから、楽しめればそれで良いだろう。
そうだな、今日は久しぶりに、放課後にゲームセンターにでも顔を出そうか? 或いはいつもプレイしているネットゲームにでもインしてみるのも良いかもしれないな。
そう思いながら、陽は視線を教室の中に戻した、そろそろテストが終わる時間だろうか?
そんな事を考えていた時。
陽の目に、その光景は飛び込んで来た。
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