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第21話 神イベ、二十歳の集い

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「なにぃーっ!20歳の集いを開催するだとーっ!!」

 その日、初のアルバム発売を記念し、なんと!10種類ものスペシャル企画を行うとの発表があり、僕は発狂していた。

 ツーショットチェキ会や歌唱衣装姿での握手会、メンバー撮影会などどれもこれもファンなら是が非でも参加したい企画ばかりなのだが、なかでも目を引いたのが二十歳を迎えたメンバーを一緒に祝おう。という企画だった。

 今回のCDを買うといつものように握手会参加券が付いてくるのだが、その券にはシリアルコードが記載されていて、そのシリアルコードを使ってスペシャル応募抽選企画に申し込むことができる。とのことだった。

 スペシャル企画はCDが発売されるたびに行われてはいた。

 メンバーとゲームで遊べるイベントだったり、私物にサインをしてもらえたり、声を録音してもらえたりと毎回趣向を凝らした色々な企画が開催されていた。

 ただ抽選制なので何十口応募しても外れてしまう場合もある。

 抽選企画に応募してしまうとそのシリアルコードが記載されている券は、握手会参加券としては使えなくなってしまうので、当たるかどうか分からないものに応募するより、確実に推しと握手できる券として使用した方が良いだろうと思って今までは応募してこなかったのだが、20歳の集いに参加できるとなると話は別だ。

 イベントの詳細としては、今まで内輪だけで行っていた、20歳を迎えたメンバーを祝う会を間近で見学できるというものだった。
 それだけでも十分嬉しいのに、振袖を着て着飾ったメンバーと写真まで撮れるというのだ。

 完全な、神イベントだ。

 20歳の集いなんて一生に一度きりの大イベントだろう。それを共に祝える機会を企画してくれるなんて、本当に神企画でしかない。

 何百枚CD買ってもこのイベントには参加したいと思った。

 お金に糸目を付けている場合ではないと思った。

 応募方法はシリアルコードを3つ用意し、つまりCDを3枚買って、専用サイトにシリアルコードを登録するとくじを1回回せるようになる。

 早速僕は用意したシリアルコードを一つずつ入力していく。3つ入力し終えると、くじを回すという箇所がタッチできるようになったようで、赤い表示へと変わった。

 タッチしてみると、くじが回っているような動画が画面に現れた後、暗くなった。再び明るくなると『残念でした』との文字が表示されていた。

 どうやらハズレてしまったようだ。

 くじを回す。ハズレるを何度も繰り返し、本当に当たりは入っているのだろうかと不安感に苛まれる。

 このままハズレを引き続け、用意していたシリアルコードを全て使い切ってしまったらどうしたらいいだろうか。
 CDを買ってきて挑戦をし続けるべきだろうか、諦めるべきだろうかとの葛藤に苛まれはじめた頃、今までとは違う画面が表示された。

 うん!?なんだこれ!?

 画面には『デジタルチケット、プレミアムイベント参加券』と表示されていた。

 うん??当たったのかこれ??

「当選おめでとう、とかそういう表示は何もないのかよ!味気なさすぎて当たった実感が湧かないんですけど!」

 でもまぁー、参加券と表示されているのだから、たぶん当たったのだろう。

 いやー、良かった、良かった。一時はどうなるかと思ったが。本当に良かった。なんとかスペシャル企画に参加できる権利を得たようだ。

 でも推しも、もう20歳なのかー。

 本当にビックリだ。一度清楚キャラになるとか言い出して、髪を切ったのだがここ最近はまた伸ばし始めていた。

 髪が伸びてきて、ゆる巻きロングになっていたので、色っぽさが出てきているかもと思っていたところだったが、最近決まったお仕事のお陰でバッサリ切ってショートヘアになっていた。

 お仕事の役作りのためとはいえ、髪をバッサリ切った姿はまた一段とあどけなくなったように見えていた。
 これは言うと怒られるのだが、顔まわりにレイヤーを入れて顔の輪郭を隠しているスタイルなんてもう赤ちゃんだった。

 二十歳を迎えたとしても、演技が上達したとしても、僕からするといつまでも子供にしか見えなくて可愛いままだ。

 これからもずっと推し続けるので、元気に活動を続けてくれることを願うばかりだ。


 当日集合場所に到着すると、まずは近くの神社に案内されることに。

 そこで二十歳を迎えたメンバー達が神様に自分の成長を感謝し、大人の仲間入りができたとの奉告をするのだとか。

 本殿内にお詣り目的以外の方を入れる訳にはいかないが、振袖に着替えたメンバーが参道を歩いてきて、拝殿前でメディアのインタビューに答えるのでその風景を近くで見学できるのだとか。

 今日は晴天で気温もそんなに低くないので急遽決まったのだろうか、それとも初めから決まっていたことなのだろうか、なんとも粋な計らいだと思った。

 イベントの進捗状況がいまいちわからなかったので、メンバー達がいつ来るのだろうかと思いながら、ボーっと空の雲の形でも見て時間を潰していると、何やら関係者の方々がざわつき始めた。

 大きな歓声と拍手が巻き起こった。

 僕の位置からはまだ見えないが、メンバー達が到着したのだろう。

 参道の奥に目を凝らしていると、色とりどりの振袖に身を包んだメンバー達がゆっくり歩きこちらに向かっているところだった。

 一度立ち止まりお辞儀をしてから参道を進んでくる。赤や水色、黄色などの振袖が見えてきた。

 うん!?一人黒地の振袖に身を包んでいるものが!

 目を凝らすとやっぱり推しだった。

「また黒かよっ!」

 柄は綺麗な花柄なのだが、まーた他のメンバーに気を遣ったのだろう。

 今年二十歳を迎えたメンバーは7名いる。藍色、水色、黄色、赤、白色、緑の振袖を着ているので、僕の推しは黒地を選んだのだろう。

「まったくー、周りとのバランスなんて考えないで着たい色着なさいよ」

 まあ推しらしいと言えば推しらしいか。

 参道脇に取材に来られた方がカメラを構えて並び、一斉にフラッシュが焚かれる。それに応えるように笑顔を向けて手を振りながら歩いて来ていた

 気付くとメンバー達がどんどん近づいて来て自分の数メートル先の位置に。

 えっ!あれ?メッチャいい位置どりしてたの?

 ボーッとしてて後ろになってしまい、しまった、と思っていたのだが、メンバー達がぐるりと回って自分の目の前に整列しインタビューに答え出す。

 皆さん前のめりになって参道の方に行っちゃうから。なんか後ろにいた事が正解だったみたいだ。
 残り物には福がある的な幸運が舞い降り、好位置でメンバーが答える姿を見学できることに。

 全員綺麗だなー。

 推しの黒地の着物も花柄が艶やかなので、いうほど悪くはないかなと思った。

 インタビューを終えると全員で右手は二、左手はぜろの形にしてポーズを決め写真撮影に入る。

 二十歳かぁー、ほんと皆んな良くここまで元気に育ってくれました。オジさん感激です。

 メンバー達が本殿へ進んでいくのを見送ると、僕らは場所を移動するよう告げられる。
 しばらく歩かされた後、ホテルのイベントホールに案内されそこでしばらく待っているとメンバー達がやってきて、しばしメンバー達の今までの経歴とこれからの抱負を聞き、最後に写真を撮って終了となった。

 いやー、参加して本当に良かった。神イベントでした。

 でも3000円のCD3つ買って、1回回せるクジを20回回して当てたということは極秘事項である。


 後日の握手会。

「この前のさー、買い物企画のとき真っピンクの財布使ってたよね?」

 推しにそう話しかけると、警戒した様子で身をこわばらせた。

「本当はピンクが大好きなくせに、黒の振袖着ちゃってさー。一生に一度きりのイベントなんだから好きな色着なさいよ」

「黒がっ、好き、なんですぅー」

「黒の着物って、銀座のママかよ」

「誰がっ、銀座のママだっ!」
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