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最終章
第三話 暗殺計画
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幕府軍本陣内は重い空気に包まれていた。藩主が全員集められ軍議を行うが、策を発案しようとする者は誰もいなかった。
三度の総攻撃を行ったが損害という損害は与えることはできなかった。策を講じた上での連携攻撃、波状攻撃も跳ね返されて、総大将を討ち取られてしまうという大失態まで演じてしまった。
皆、自信喪失してしまっていた。
新しく総大将となった松平伊豆守信綱様も同じだった。皆の沈んだ顔を前にし策を発案することなどできないでいた。
そんな場に何か打開策を見出すため、拙者は招かれていた。
「それでは兵糧攻めは無駄と申すか?」
城内の様子を一通り説明し終えると伊豆守はそう言った。
「左様でございます。忍術を使い兵糧を取り寄せている故、食糧不足に陥ることはないでしょう」
念動の術。心の中で念じるだけで物を動かせる力。
「全く厄介な術を使いおる。何か封じる手はないのか?」
「はっ、打つ手がない状態でございます」
拙者はそう断言した。伊豆守は腕を組み瞑目してしまう。その表情から兵糧攻めこそ最善の策ではないかと考えていたのは間違いないだろう。それが無駄となると打つ手が見当たらない。そんな表情をしていた。
「和睦は探れないのでしょうか」
「和睦は断固として拒否するそうだ」
板倉重昌様はかなり譲歩した和睦案を提示したとのことだったが、切支丹信仰をお認めにならない限り、和睦はない。と撥ね付けられているとのことだった。
「伴天連の動きを考えれば、切支丹信仰を認める訳にはいかぬ」
伊豆守は乱を収めるだけではなく、幕府の体制のことも考えなくてはならない。現在、難しい立場にいる事は間違いなかった。
現状はこちら側が劣勢。現状のままではこちら側が妥協案を受け入れなくてはならない立場だ。
だからといって切支丹信仰を認めて仕舞えば、伴天連に付け入る隙を与えてしまうことになるだろう。日ノ本を守る立場としては当然看過できるものではない。
「九州諸藩に増援を頼み、総勢十二万となっている。やはり総攻撃しかないかの」
「難しいでしょうね。発雷の術や塵旋風の術を使われて仕舞えば、防ぐ手立てはありません。伊豆守様の命がいくつあっても足りませぬ」
拙者の言葉に両手を顔に当て、強く擦り上げる。両手を顔から外すと大きく息を吐いた。かなり強く顔を擦ったのだろう。頬が赤くなっていた。
忍術では勝負にならない。急遽寄せ集めた幕府軍と違い、反乱軍は同じ方向に向かっているので統一性があり団結力が高い。事前準備も万全にされてしまっている。
全ての面でこちら側は劣勢に回ってしまっていた。
「この戦、天草四郎を討ち取るほか、勝機を見出すことはできないかと」
旗頭となっている者を排除し、団結力を空中分解させるしか方法はないだろう。
「何か手はあるのか?」
「夜の闇に紛れ、城内に侵入し天草四郎を暗殺する以外、手はないでしょう」
「それは可能なことなのか?」
「分かりません。しかし、成さねば我軍に勝利はありません。拙者達にしばしの猶予をお与え下さい」
「分かった。活躍に期待するぞ」
伊豆守はそう言うと再び腕を組み、瞑目に入った。暗殺計画が失敗に終わった時のことを考え瞑目に入ったのだろう。
最善を尽くす所存ではあるが、期待に応えられるかどうかは分からない。それだけの強敵だった。甲賀忍者の歴史上、かつて出会ったことのない程の強敵である。
対応策があるとすれば、術を使う前に勝負をつけることしかない。
本陣を後にすると夏見に皆で対策を練るよう言い置いた。皆で知恵を出し合ってもらっている間に、拙者は書物を手当たり次第に濫読し、何か対応策を講じなくてはならない。そう思った。
夏見は金縛りの術が利かなくなっていると言っていた。術の効果を消し去るのは本人の鍛錬しかないと思っていたのだが、術の効果を消し去る方法が何かあるのではないか。そう思った。
その方法を見つけることができれば、敵の術を封じられるかもしれない。その方法を見つけなくてはならない。
目には目を歯には歯を術には術をである。
せめて念動の術だけでも封じることが出来れば、この戦、勝機を見出せるかもしれない。
陣所に戻り、持ち込んだ書物を片っ端から読み込んでいく。何度も目を通している書物だ。新しい打開策が見つかるとは思えないが、今はやれることをやるしかない。
「お頭、やはり眠らせて行動不能にするのが一番良いのではないかと思われます」
書物を読み耽っている時、夏見が話し掛けてきた。
「確かにそうだが、何か考えはあるのか?」
「琉球王国に眠り草というものがある様です。それを使ってみたらいかがでしょうか」
なるほど、それは試して見る価値がありそうだ。だが琉球王国とは、ちと遠そうだな。
「長崎に扱っている者がいる様です」
「流石の情報網だな。任せられるか?」
「はっ、すぐに行って参ります」
新月の日の丑の刻、天草四郎暗殺計画を実行することとなった。計画は単純なものである。
闇夜に紛れ侵入し、夏見が用意した眠り草を煎じて調合し、催眠作用を強くした物を香にして、枕元で焚き天草四郎、および一番の障壁となると想定できる大蔵という名の若者を眠らせ暗殺を実行するというものだ。
新月の日は大蔵と呼ばれる若者が、子の刻までの見張り当番の日だ。丑の刻には深い眠りに入っていることだろう。
ただ失敗は許されない。念には念を入れる。香を焚き深い眠りについていてもらう。
香は夏見が見つけ出してくれた秘術中の秘術だが、天草四郎には利かないことも想定しなくてはならない。邪魔立てをする可能性のある者は、全て排除しておかなくてはならない。
城内の者、全ての者に眠ってもらうのが一番だろう。
城内に侵入するとまず初めに大蔵に香を嗅がせるため寝屋へと急ぐ。侵入経路は前回侵入した時に確保しておいた。忍びの者として当然のことである。
寝屋の場所までまっすぐ向かう。闇夜でも道を違うことはない。これも忍びの者としての最低限の能力である。
寝屋に到着すると大蔵は想定通り深い眠りに落ちていた。枕元に香を置く。気付いた様子は全く無かった。
これで日の出まで目を覚ますことはないだろう。
ここまでは順当に事を運ぶことが出来た。次に本丸の奥にある天草四郎の寝床へと急ぐ。
気配を殺し近づき、襖を開け香を室内へ送り込んだ。
ひと時置いて中の様子を伺う。特に物音はしないようだ。起きているのであれば室内に送り込まれた香の存在に気づいているはず。気付いているのなら何か反応があるはずだ。無いのであれば熟睡しているのであろう。
中の様子を伺いながら、聞き耳を立てながらゆっくりと襖を開ける。
室内で天草四郎は一人寝息をたてていた。
穏やかな寝息だ。香の効力が利いてくれているのだろうか。
忍足で近づき刃を取り出す。
あとはこの刃を心の臓に突き刺せば拙者等の任務は終了だ。
三度の総攻撃を行ったが損害という損害は与えることはできなかった。策を講じた上での連携攻撃、波状攻撃も跳ね返されて、総大将を討ち取られてしまうという大失態まで演じてしまった。
皆、自信喪失してしまっていた。
新しく総大将となった松平伊豆守信綱様も同じだった。皆の沈んだ顔を前にし策を発案することなどできないでいた。
そんな場に何か打開策を見出すため、拙者は招かれていた。
「それでは兵糧攻めは無駄と申すか?」
城内の様子を一通り説明し終えると伊豆守はそう言った。
「左様でございます。忍術を使い兵糧を取り寄せている故、食糧不足に陥ることはないでしょう」
念動の術。心の中で念じるだけで物を動かせる力。
「全く厄介な術を使いおる。何か封じる手はないのか?」
「はっ、打つ手がない状態でございます」
拙者はそう断言した。伊豆守は腕を組み瞑目してしまう。その表情から兵糧攻めこそ最善の策ではないかと考えていたのは間違いないだろう。それが無駄となると打つ手が見当たらない。そんな表情をしていた。
「和睦は探れないのでしょうか」
「和睦は断固として拒否するそうだ」
板倉重昌様はかなり譲歩した和睦案を提示したとのことだったが、切支丹信仰をお認めにならない限り、和睦はない。と撥ね付けられているとのことだった。
「伴天連の動きを考えれば、切支丹信仰を認める訳にはいかぬ」
伊豆守は乱を収めるだけではなく、幕府の体制のことも考えなくてはならない。現在、難しい立場にいる事は間違いなかった。
現状はこちら側が劣勢。現状のままではこちら側が妥協案を受け入れなくてはならない立場だ。
だからといって切支丹信仰を認めて仕舞えば、伴天連に付け入る隙を与えてしまうことになるだろう。日ノ本を守る立場としては当然看過できるものではない。
「九州諸藩に増援を頼み、総勢十二万となっている。やはり総攻撃しかないかの」
「難しいでしょうね。発雷の術や塵旋風の術を使われて仕舞えば、防ぐ手立てはありません。伊豆守様の命がいくつあっても足りませぬ」
拙者の言葉に両手を顔に当て、強く擦り上げる。両手を顔から外すと大きく息を吐いた。かなり強く顔を擦ったのだろう。頬が赤くなっていた。
忍術では勝負にならない。急遽寄せ集めた幕府軍と違い、反乱軍は同じ方向に向かっているので統一性があり団結力が高い。事前準備も万全にされてしまっている。
全ての面でこちら側は劣勢に回ってしまっていた。
「この戦、天草四郎を討ち取るほか、勝機を見出すことはできないかと」
旗頭となっている者を排除し、団結力を空中分解させるしか方法はないだろう。
「何か手はあるのか?」
「夜の闇に紛れ、城内に侵入し天草四郎を暗殺する以外、手はないでしょう」
「それは可能なことなのか?」
「分かりません。しかし、成さねば我軍に勝利はありません。拙者達にしばしの猶予をお与え下さい」
「分かった。活躍に期待するぞ」
伊豆守はそう言うと再び腕を組み、瞑目に入った。暗殺計画が失敗に終わった時のことを考え瞑目に入ったのだろう。
最善を尽くす所存ではあるが、期待に応えられるかどうかは分からない。それだけの強敵だった。甲賀忍者の歴史上、かつて出会ったことのない程の強敵である。
対応策があるとすれば、術を使う前に勝負をつけることしかない。
本陣を後にすると夏見に皆で対策を練るよう言い置いた。皆で知恵を出し合ってもらっている間に、拙者は書物を手当たり次第に濫読し、何か対応策を講じなくてはならない。そう思った。
夏見は金縛りの術が利かなくなっていると言っていた。術の効果を消し去るのは本人の鍛錬しかないと思っていたのだが、術の効果を消し去る方法が何かあるのではないか。そう思った。
その方法を見つけることができれば、敵の術を封じられるかもしれない。その方法を見つけなくてはならない。
目には目を歯には歯を術には術をである。
せめて念動の術だけでも封じることが出来れば、この戦、勝機を見出せるかもしれない。
陣所に戻り、持ち込んだ書物を片っ端から読み込んでいく。何度も目を通している書物だ。新しい打開策が見つかるとは思えないが、今はやれることをやるしかない。
「お頭、やはり眠らせて行動不能にするのが一番良いのではないかと思われます」
書物を読み耽っている時、夏見が話し掛けてきた。
「確かにそうだが、何か考えはあるのか?」
「琉球王国に眠り草というものがある様です。それを使ってみたらいかがでしょうか」
なるほど、それは試して見る価値がありそうだ。だが琉球王国とは、ちと遠そうだな。
「長崎に扱っている者がいる様です」
「流石の情報網だな。任せられるか?」
「はっ、すぐに行って参ります」
新月の日の丑の刻、天草四郎暗殺計画を実行することとなった。計画は単純なものである。
闇夜に紛れ侵入し、夏見が用意した眠り草を煎じて調合し、催眠作用を強くした物を香にして、枕元で焚き天草四郎、および一番の障壁となると想定できる大蔵という名の若者を眠らせ暗殺を実行するというものだ。
新月の日は大蔵と呼ばれる若者が、子の刻までの見張り当番の日だ。丑の刻には深い眠りに入っていることだろう。
ただ失敗は許されない。念には念を入れる。香を焚き深い眠りについていてもらう。
香は夏見が見つけ出してくれた秘術中の秘術だが、天草四郎には利かないことも想定しなくてはならない。邪魔立てをする可能性のある者は、全て排除しておかなくてはならない。
城内の者、全ての者に眠ってもらうのが一番だろう。
城内に侵入するとまず初めに大蔵に香を嗅がせるため寝屋へと急ぐ。侵入経路は前回侵入した時に確保しておいた。忍びの者として当然のことである。
寝屋の場所までまっすぐ向かう。闇夜でも道を違うことはない。これも忍びの者としての最低限の能力である。
寝屋に到着すると大蔵は想定通り深い眠りに落ちていた。枕元に香を置く。気付いた様子は全く無かった。
これで日の出まで目を覚ますことはないだろう。
ここまでは順当に事を運ぶことが出来た。次に本丸の奥にある天草四郎の寝床へと急ぐ。
気配を殺し近づき、襖を開け香を室内へ送り込んだ。
ひと時置いて中の様子を伺う。特に物音はしないようだ。起きているのであれば室内に送り込まれた香の存在に気づいているはず。気付いているのなら何か反応があるはずだ。無いのであれば熟睡しているのであろう。
中の様子を伺いながら、聞き耳を立てながらゆっくりと襖を開ける。
室内で天草四郎は一人寝息をたてていた。
穏やかな寝息だ。香の効力が利いてくれているのだろうか。
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