20 / 47
第二章
第十話 動きがない島原兵
しおりを挟む「一応確認させてもらうけど、君は最寄田静香さん……で間違いないよね?」
「は、はい……」
わたしは頷く。
「ふむ……四日目か、やっと出会うことが出来て良かったよ……」
茶色の髪をした青年は胸に手を当てて、爽やかにウインクをしてくる。なかなかに整った顔立ちをしている。短髪はきれいにセットされており、清潔さを感じさせる。まさに世の女性の多くにとって理想に近いイケメンだ。だがしかし……。
「……」
わたしは自然と距離を置こうとする。青年がそれに気が付いて、首を傾げる。
「うん? どうかした?」
「いや、なんというか……」
「ひょっとして……警戒をしている感じ?」
「ま、まあ、そうですね……」
一昨昨日の一昨日、一昨日の昨日、昨日の今日だし、しょうがないだろう。わたしは素直に頷くことにする。
「ふふっ……俺は決して怪しい者じゃないよ」
「そ、そうですかね⁉」
わたしは思わず大声を上げてしまう。ブレザー姿の高校生が集まっている中で、宇宙服を着ている男性は怪しい寄りだと思うが。ここは種子島宇宙センターではない。
「そうだよ。だからそんなに警戒をしないでくれ」
「……何故にわたしの名前を知っているんですか?」
「それはもちろん、君に用があるからだよ」
「よ、用があるって……もちろん個人差はあると思いますが、女子は宇宙にそこまで興味を持たないというか……宇宙飛行士さんにそこまで憧れはないというか……」
「! ははははは……!」
青年は声高らかに笑う。わたしはちょっとムッとしながら尋ねる。
「な、なにがおかしいんですか?」
「いや、悪いね……俺は宇宙飛行士じゃないよ。こういうものだ」
青年は宇宙服の左胸のマークを見せてくる。
「え? マー、マーク……? ええっと……?」
「ああ、俺のコードネームはデストロイ=ノリタカという。スペースポリスマンさ」
「ス、スペースポリスマン⁉」
わたしは思いがけないフレーズに驚く。
「そうだよ、ごくごく普通のね」
ノリタカと名乗った青年は髪をかき上げる。
「スペースポリスマンはごくごく普通ではありませんよ!」
「そうかい?」
「そうですよ! っていうか、初めて言いましたよ、そのフレーズ!」
「初めて?」
ノリタカさんは驚いて目を丸くする。
「ええ、初めてですよ!」
「トウキョウはこんなに大きな街だというのに?」
ノリタカさんは両手を大きく広げて、周囲を見回す。
「はい」
「近くにある新宿駅という場所はこの世界で一番の利用者数だと聞いたけど?」
「そ、それはそうらしいですけど……」
「それならば中にはいるだろう、スペースポリスマンの一人や二人くらい」
「ポ、ポリスマンは一杯いますけど、スペースはいないんじゃないですか……そんないちいち確認したりとかはしませんから知らないですけど」
「スペースポリスマンがいないって? ふむ、この日本という国……情報以上に治安が良いようだね……」
ノリタカさんは腕を組んで感心したように呟く。
「……あの、もういいですか? ホームルームが始まってしまいますので……」
わたしはその場から離れようとする。
「あ、ちょっと待ってくれ……!」
「はい?」
わたしは呼び止められ、振り返ってしまう。
「………」
ノリタカさんはなにやら取り出した機器を確認し、周囲を伺う。
「あ、あの……?」
「……うん、とりあえずは大丈夫のようだね」
ノリタカさんは頷く。
「は、はあ……?」
「……そうだな……放課後にまた話をしたいのだけど……お願い出来るかな?」
「え、ええ……」
わたしは露骨に困惑する。
「おや、困惑しているようだね。どうしてかな?」
「いや、どうしてかなって言われても……」
「まだ不信感は拭えていないかな?」
「不信感まみれですよ。大体コードネームってなんですか?」
「作戦を遂行する上での名前だよ」
「それはなんとなく分かりますが……本名は?」
「わけあってそれは明かせない」
「ええ……」
ノリタカだというから、日本系なのかな……。しかし、本名不詳のスペースポリスマンとは……どうしたものか……。
「……マズいかな?」
「いや、いいです。失礼します」
「待っているよ」
わたしは軽く会釈をし、その場を後にして、教室に向かう。夕方になり、ホームルームも終わる。この恥ずかしいイケメンと鉢合わせしたりしないように裏門から帰れば……。
「げっ……」
裏門から帰ろうとしたわたしは顔をしかめる。ノリタカさんが何故かいたからだ。
「やあ!」
「……何故ここに?」
「いや、俺もホームルームが早目に終わったからね……この辺りを調査していた」
ノリタカさんは機器を地面などにかざしながら歩き回っている。
「……そ、そういえば、もしかしてなんですけど……」
「ああ、俺はこの学園の転入生だよ」
「せ、制服が宇宙服で良いんですか?」
「特例で認めてもらったよ」
「そんなことが可能なんですか?」
「可能だ。なんといってもスペースポリスマンだからね」
「はあ……調査って?」
「良い質問だ。異常がないかをチェックしていたんだ」
「い、異常ですか?」
「そうだ……お、異常反応……現れたな、エイリアンだ。さあ、共に迎撃しよう」
「はいいいいっ⁉」
ノリタカさんの提案にわたしは驚く。
「は、はい……」
わたしは頷く。
「ふむ……四日目か、やっと出会うことが出来て良かったよ……」
茶色の髪をした青年は胸に手を当てて、爽やかにウインクをしてくる。なかなかに整った顔立ちをしている。短髪はきれいにセットされており、清潔さを感じさせる。まさに世の女性の多くにとって理想に近いイケメンだ。だがしかし……。
「……」
わたしは自然と距離を置こうとする。青年がそれに気が付いて、首を傾げる。
「うん? どうかした?」
「いや、なんというか……」
「ひょっとして……警戒をしている感じ?」
「ま、まあ、そうですね……」
一昨昨日の一昨日、一昨日の昨日、昨日の今日だし、しょうがないだろう。わたしは素直に頷くことにする。
「ふふっ……俺は決して怪しい者じゃないよ」
「そ、そうですかね⁉」
わたしは思わず大声を上げてしまう。ブレザー姿の高校生が集まっている中で、宇宙服を着ている男性は怪しい寄りだと思うが。ここは種子島宇宙センターではない。
「そうだよ。だからそんなに警戒をしないでくれ」
「……何故にわたしの名前を知っているんですか?」
「それはもちろん、君に用があるからだよ」
「よ、用があるって……もちろん個人差はあると思いますが、女子は宇宙にそこまで興味を持たないというか……宇宙飛行士さんにそこまで憧れはないというか……」
「! ははははは……!」
青年は声高らかに笑う。わたしはちょっとムッとしながら尋ねる。
「な、なにがおかしいんですか?」
「いや、悪いね……俺は宇宙飛行士じゃないよ。こういうものだ」
青年は宇宙服の左胸のマークを見せてくる。
「え? マー、マーク……? ええっと……?」
「ああ、俺のコードネームはデストロイ=ノリタカという。スペースポリスマンさ」
「ス、スペースポリスマン⁉」
わたしは思いがけないフレーズに驚く。
「そうだよ、ごくごく普通のね」
ノリタカと名乗った青年は髪をかき上げる。
「スペースポリスマンはごくごく普通ではありませんよ!」
「そうかい?」
「そうですよ! っていうか、初めて言いましたよ、そのフレーズ!」
「初めて?」
ノリタカさんは驚いて目を丸くする。
「ええ、初めてですよ!」
「トウキョウはこんなに大きな街だというのに?」
ノリタカさんは両手を大きく広げて、周囲を見回す。
「はい」
「近くにある新宿駅という場所はこの世界で一番の利用者数だと聞いたけど?」
「そ、それはそうらしいですけど……」
「それならば中にはいるだろう、スペースポリスマンの一人や二人くらい」
「ポ、ポリスマンは一杯いますけど、スペースはいないんじゃないですか……そんないちいち確認したりとかはしませんから知らないですけど」
「スペースポリスマンがいないって? ふむ、この日本という国……情報以上に治安が良いようだね……」
ノリタカさんは腕を組んで感心したように呟く。
「……あの、もういいですか? ホームルームが始まってしまいますので……」
わたしはその場から離れようとする。
「あ、ちょっと待ってくれ……!」
「はい?」
わたしは呼び止められ、振り返ってしまう。
「………」
ノリタカさんはなにやら取り出した機器を確認し、周囲を伺う。
「あ、あの……?」
「……うん、とりあえずは大丈夫のようだね」
ノリタカさんは頷く。
「は、はあ……?」
「……そうだな……放課後にまた話をしたいのだけど……お願い出来るかな?」
「え、ええ……」
わたしは露骨に困惑する。
「おや、困惑しているようだね。どうしてかな?」
「いや、どうしてかなって言われても……」
「まだ不信感は拭えていないかな?」
「不信感まみれですよ。大体コードネームってなんですか?」
「作戦を遂行する上での名前だよ」
「それはなんとなく分かりますが……本名は?」
「わけあってそれは明かせない」
「ええ……」
ノリタカだというから、日本系なのかな……。しかし、本名不詳のスペースポリスマンとは……どうしたものか……。
「……マズいかな?」
「いや、いいです。失礼します」
「待っているよ」
わたしは軽く会釈をし、その場を後にして、教室に向かう。夕方になり、ホームルームも終わる。この恥ずかしいイケメンと鉢合わせしたりしないように裏門から帰れば……。
「げっ……」
裏門から帰ろうとしたわたしは顔をしかめる。ノリタカさんが何故かいたからだ。
「やあ!」
「……何故ここに?」
「いや、俺もホームルームが早目に終わったからね……この辺りを調査していた」
ノリタカさんは機器を地面などにかざしながら歩き回っている。
「……そ、そういえば、もしかしてなんですけど……」
「ああ、俺はこの学園の転入生だよ」
「せ、制服が宇宙服で良いんですか?」
「特例で認めてもらったよ」
「そんなことが可能なんですか?」
「可能だ。なんといってもスペースポリスマンだからね」
「はあ……調査って?」
「良い質問だ。異常がないかをチェックしていたんだ」
「い、異常ですか?」
「そうだ……お、異常反応……現れたな、エイリアンだ。さあ、共に迎撃しよう」
「はいいいいっ⁉」
ノリタカさんの提案にわたしは驚く。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説

滝川家の人びと
卯花月影
歴史・時代
故郷、甲賀で騒動を起こし、国を追われるようにして出奔した
若き日の滝川一益と滝川義太夫、
尾張に流れ着いた二人は織田信長に会い、織田家の一員として
天下布武の一役を担う。二人をとりまく織田家の人々のそれぞれの思惑が
からみ、紆余曲折しながらも一益がたどり着く先はどこなのか。
日日晴朗 ―異性装娘お助け日記―
優木悠
歴史・時代
―男装の助け人、江戸を駈ける!―
栗栖小源太が女であることを隠し、兄の消息を追って江戸に出てきたのは慶安二年の暮れのこと。
それから三カ月、助っ人稼業で糊口をしのぎながら兄をさがす小源太であったが、やがて由井正雪一党の陰謀に巻き込まれてゆく。
月の後半のみ、毎日10時頃更新しています。

【架空戦記】蒲生の忠
糸冬
歴史・時代
天正十年六月二日、本能寺にて織田信長、死す――。
明智光秀は、腹心の明智秀満の進言を受けて決起当初の腹案を変更し、ごく少勢による奇襲により信長の命を狙う策を敢行する。
その結果、本能寺の信長、そして妙覚寺の織田信忠は、抵抗の暇もなく首級を挙げられる。
両名の首級を四条河原にさらした光秀は、織田政権の崩壊を満天下に明らかとし、畿内にて急速に地歩を固めていく。
一方、近江国日野の所領にいた蒲生賦秀(のちの氏郷)は、信長の悲報を知るや、亡き信長の家族を伊勢国松ヶ島城の織田信雄の元に送り届けるべく安土城に迎えに走る。
だが、瀬田の唐橋を無傷で確保した明智秀満の軍勢が安土城に急速に迫ったため、女子供を連れての逃避行は不可能となる。
かくなる上は、戦うより他に道はなし。
信長の遺した安土城を舞台に、若き闘将・蒲生賦秀の活躍が始まる。
【アラウコの叫び 】第3巻/16世紀の南米史
ヘロヘロデス
歴史・時代
【毎週月曜07:20投稿】
3巻からは戦争編になります。
戦物語に関心のある方は、ここから読み始めるのも良いかもしれません。
※1、2巻は序章的な物語、伝承、風土や生活等事を扱っています。
1500年以降から300年に渡り繰り広げられた「アラウコ戦争」を題材にした物語です。
マプチェ族とスペイン勢力との激突だけでなく、
スペイン勢力内部での覇権争い、
そしてインカ帝国と複雑に様々な勢力が絡み合っていきます。
※ 現地の友人からの情報や様々な文献を元に史実に基づいて描かれている部分もあれば、
フィクションも混在しています。
動画制作などを視野に入れてる為、脚本として使いやすい様に、基本は会話形式で書いています。
HPでは人物紹介や年表等、最新話を先行公開しています。
youtubeチャンネル名:heroher agency
insta:herohero agency
鎌倉最後の日
もず りょう
歴史・時代
かつて源頼朝や北条政子・義時らが多くの血を流して築き上げた武家政権・鎌倉幕府。承久の乱や元寇など幾多の困難を乗り越えてきた幕府も、悪名高き執権北条高時の治政下で頽廃を極めていた。京では後醍醐天皇による倒幕計画が持ち上がり、世に動乱の兆しが見え始める中にあって、北条一門の武将金澤貞将は危機感を募らせていく。ふとしたきっかけで交流を深めることとなった御家人新田義貞らは、貞将にならば鎌倉の未来を託すことができると彼に「決断」を迫るが――。鎌倉幕府の最後を華々しく彩った若き名将の清冽な生きざまを活写する歴史小説、ここに開幕!
独裁者・武田信玄
いずもカリーシ
歴史・時代
歴史の本とは別の視点で武田信玄という人間を描きます!
平和な時代に、戦争の素人が娯楽[エンターテイメント]の一貫で歴史の本を書いたことで、歴史はただ暗記するだけの詰まらないものと化してしまいました。
『事実は小説よりも奇なり』
この言葉の通り、事実の方が好奇心をそそるものであるのに……
歴史の本が単純で薄い内容であるせいで、フィクションの方が面白く、深い内容になっていることが残念でなりません。
過去の出来事ではありますが、独裁国家が民主国家を数で上回り、戦争が相次いで起こる『現代』だからこそ、この歴史物語はどこかに通じるものがあるかもしれません。
【第壱章 独裁者への階段】 国を一つにできない弱く愚かな支配者は、必ず滅ぶのが戦国乱世の習い
【第弐章 川中島合戦】 戦争の勝利に必要な条件は第一に補給、第二に地形
【第参章 戦いの黒幕】 人の持つ欲を煽って争いの種を撒き、愚かな者を操って戦争へと発展させる武器商人
【第肆章 織田信長の愛娘】 人間の生きる価値は、誰かの役に立つ生き方のみにこそある
【最終章 西上作戦】 人々を一つにするには、敵が絶対に必要である
この小説は『大罪人の娘』を補完するものでもあります。
(前編が執筆終了していますが、後編の執筆に向けて修正中です)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる