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第十三章 火山の神を封印せよ

第3話 宝石生命体

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 空間移動魔法を使い現地に到着すると、あたり一面を覆うようにモウモウとした黒い煙が上がっていた。

 そして真っ黒な煙の下は真っ赤になっていた。

「まるでこの世の終わりの空のようね」

 今見えている空を姫さまはそんな言葉で表現していた。

 空は真っ黒な煙で覆われ、地表面はマグマの光により真っ赤になっている。確かに人間界にいるとは思えないような景色となっていた。

「こんな有毒ガスが広がる空の下で人々は無事でいられるのでしょうか?」

「確かにひどい臭いね。無事でいることを願うだけね」

 サディの言葉を受け姫さまは口と鼻を手で覆いながらそう答えた。

 3つの支柱を中心にしてマグマが広がっているのだろう。移動してきた中央部のこの場所にはまだマグマは及んでいないが、このまま放置し続けていれば半日と持たずにここにもマグマが押し寄せてくることだろう。

「サイードちゃーん、支柱どこにあるか分かりますー?」

「分かるわボケ!舐めた口利くな!あっちとそっちとそっちだろ」

「あらら、お見事、正解です」

 サディと一緒に大袈裟に拍手を送るとさらに怒った表情になった。

「それくらい分かるわっ、急成長遂げてんだぞボケ!俺様は急先鋒として常に期待されてんだからな覚えとけコラ!」

 はいはい。

「よし、みんな元気みたいだし、いっちょやりますか?」

「おーよ」

「サイードちゃんはどこ行くの?」

「俺か?俺の相手として不足のない奴は、、こっちだな!」

 サイードはそう言って北側の支柱を指差した。確かに一番強いオーラを感じるが、まあ元気そうだしサイードなら大丈夫だろう。

「サディは?」

「じゃあ、私はこっちに行く」

 サディは東側を指さした。

「了解、じゃあ俺は西側だな。姫さま行ってきます。死なないで下さいね」

「大丈夫よ。皆んなも気をつけるのよ」

 サイードは走って、サディは移動魔法で、俺は空間移動魔法で支柱へと向かった。


「これは凄い!支柱の位置がまるで見えない!」

 空間移動魔法を使い一瞬で現地に到着したのだが、眼下に広がっている光景に絶句してしまった。

 支柱はすでにマグマの海に沈んでいて姿形も見られなかった。マグマは海原のように波打ち、熱風を巻き上げている。

 こんなのに人が巻き込まれたらひとたまりもないことだろう。

 マグマ魔人の姿は見られないようなので、この辺一体のマグマを凍結魔法で薙ぎ払ってやろうと思い、オーラを高め出した瞬間だった。

 波打つマグマから人型の何かが飛び出して襲いかかってきた。

 が、構わず凍結魔法を放ってやった。





 始まったようね。

 まだ何の動きもない中央部で周りの様子を伺っていると、一番早く到着したであろうひょうのオーラが高まるのが西側から感じられてきた。

 それと同時に敵のオーラも高まったようだったが、ひょうのオーラにより瞬時に消滅させられてしまっていたようだ。

 その時だった、不気味なオーラが急に立ち上がってきたのは!

『何者だ、我らの謀(はかりごと)に介入しようとするものは、、』

「何?この、今までに感じたことのないような、異質なオーラは?」

 現れたオーラはどんどん人型になっていく、、。

『人間よ、我の使う魔法により、四散せよ!』

 いきなり攻撃を仕掛けてくるとはっ!

 空中に光の点が浮かび上がったと思ったら、瞬時に渦状へと形を変え、そして渦状のものは無数に増え私に襲いかかってきた。

 風魔法?いや、違う!

 私は血の霧を広げ応戦する。

 渦状のものは私の霧に衝突すると煙状となり空中へ消えていく、、。

『我の技を封じるか!人間の分際で生意気なっ!』

 気がつくと声の主は実体化して目の前に仁王立ちしていた。苦々しい顔をし、こちらを睨みつけている。

 一見すると美しい女性のような姿だが、ホログラム紙のように角度を変えるたびに色彩が変わって見えていた。

 なるほど!これが宝石生命体と言われる所以か。

 コイツがカーカで間違いないだろう。

 カーカは再び光の点を自分の周りに広げ出す。またしても魔法で攻撃を仕掛けてくるつもりなのだろう。

 次はどんな攻撃をしてくるのだろうか?

『我の作り出す光は輝く宝石となり貴様に襲い掛かる。我が宝石は我の作り出す魔法を吸い上げ襲い掛かる、、』

 そういうことなのね!

『我が火炎魔法を吸い上げ高熱と化せ!レッドスピネル!』

 カーカの火炎魔法を吸い上げたと思われる光の点が、真っ赤に燃え上がり私に襲いかかってきた!

 血の霧で応戦するが今度は私の霧の方が煙状となっていく、煙となりどんどん蒸発させられてしまっていく。

 このままでは、、。





 一体何が起こったというのだろうか?我の放ったレッドスピネルは確かに目の前にいた小娘に襲いかかったはずだった。
 しかし、手応えが全くなかった。いや、正確に言うと手応えが急に消えてしまった感じだった。

 いま目の前から小娘は消え去っているが、我のレッドスピネルで瞬殺し消滅させたとは思えぬ。

 小娘はどこに行ったというのだろうか?

『!!』

『お主は何者だ!瞬殺したはずの小娘を抱き、なぜその位置に立っている?一体いつからそこにいた?』

 我がそう質問した瞬間だった。

 小娘を抱いていた小僧の口角が上がったような気がしたその瞬間だった。

 我はオーラに包まれ吹き飛ばされた。

『ぎゃーーっ!!』

 異空間に強制転移させる魔法だと!

 オーラで我が体を覆いガードしたお陰で、異空間に強制的に転移させられるのは回避したが、なんと猛々しいオーラか!

 こんな攻撃を何度も受ける訳にはいかぬぞ。

「姫さま、大丈夫ですか?」

「ええ、大丈夫よ。ありがとう。西側の支柱はもう終わったの?」

「はい、楽勝でした」

「流石ね」

「俺もカーカ討伐手伝います」

 我を討伐するだと?寝ぼけたことを!

『バカめ、支柱を復活させたということは、支柱を守っていたマグマ魔人を倒したということだろ。それがどれだけ恐ろしいことを招くことになるのか知らぬとは、人間はやはり、間抜けな生き物よのう』
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