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第十一章 地震の神を封印せよ

第3話 荒廃した街の人達

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「とまあそういう感じだ」

 サディ、ジャメル、サイードに今回の任務の内容をざっと説明し終えるとジャメルは疑問顔をし質問をしてきた。

「ひょうは今回の任務、あまり乗り気ではないのか?」

 察しがいいな、説明している言葉の端々に面倒くさいと思っているような感じが伝わってしまったのだろうか?

「ひょうは人間嫌いだからね。神の怒りを買うようなことをしているような連中は特に嫌いだから」

 俺が答える前にサディが答えた。

「ジャメルお前も色々あったんだろ、そんな奴等自業自得だとは思わないのか?」

 俺はジャメルに疑問をぶつける。

「俺は基本、人間は好きだ。きちんと話をすれば皆んな理解してくれると思っている」

「ジャメルは姫妃さん派だからな」

「サイード貴様は奏音派じゃないか!」

 どういう派閥で分けられていて、何で言い争いになってるんだよお前達は!

 まあ二人ともお人好しの影響を受けているということには変わりないだろう。

 まだ実態がはっきりしていないというのに、いうまでもなく二人は人間側に加担する考えでいるみたいだ。

「ひょう、あなたはどうするつもりなの?救う価値がないと判断したのなら放っておくつもりなの?」

「さあな、でもその土地に住む人間全てが救う価値がないってことはないだろうから、結局神の暴走を止めるように動くことになるだろう。サディは?」

「私も救う価値のない人間はいると思う。だからまだ分からない」

 サディのことを救出に行ったのが姫さまや奏音だったらもしかしたら違う意見になっていたかと思うと、少し申し訳ない気持ちになったしまった。

 いうならサディは俺派になってしまっているのかもしれない。


「マジかよ!」

 空間移動魔法を使い3人を連れて現地に移動すると、広がっていた光景に一同は絶句してしまった。

 メインストリートと思われる場所は閑散としていて、清潔感はなく、建物は倒壊しているものが多く原型を留めている方が少ない状態となっていた。

「好景気に沸いてた街の面影もないわね、ビックリ!」

 サディは口に手を当て呆然としていた。

 確かにそう聞いていた。ここ数日、地震が頻発し住めるような状態ではなくなっているのだろうか?

「これでは住人の方に話を聞くことも出来そうにありませんね」

 街の散々たる光景に、ジャメルは貧しかった故郷を思い出しているのか、辛そうな、寂しそうな表情を浮かべていた。

「ったくよー。地震くらいで逃げ出すんじゃねーよ」

 サイードは相変わらず口が悪い。雨風を防げないのであればこの地にとどまる理由は無くなってしまったのだろう。人がいなくなってしまうのは致し方ない。

 その時、足元がふらつくほどの地震が起こった。

「収まったみたいね」

「今のは結構大きかったな」

 収まったところでサディ、サイードが声を上げる。このような大きな地震が頻発しているようであれば確かにこの地にとどまるのは難しいだろう。

「向こうから皿の割れる音がしました」

「えっ!そんなの聞こえた?」

 俺は自然育ちだから耳が良いとでも言いたいのだろう。ジャメルはサディに得意げな表情を向けていた。

「確かに人の気配が感じられる。行ってみるか」

 ジャメルの言葉を受け、人の気配のする方へと歩を向ける。メインストリートから外れ、向かった先の通りにはまだ何軒か営業を行っているお店があるようだった。

 しばらく進んだ先に開いているレストラン?酒場なのか?そんな感じの場所を発見し入店してみることにする。

「いらっしゃーい」

 お皿が割れた音が上がったのはここからではないかと思い、中に入ると爽やかな笑顔の女性店員が迎えてくれた。

「あら、見かけない顔ね。引越しのお手伝いにでも来たの?」

 別にそういうわけではないがその話に乗っておくことにした。俺が答えようとしたが店員はサイードの方に視線を向けている。

 サイードは背が高く体格もがっしりしているので一番年上だと思ったのだろう。

「話し合わせろ」

「はー?何で俺が?なんて返せばいいんだよ?」

「女性に対していつも紳士的な態度のあなたに応対は任せるわ」

「まあ、そ、そうだけど、、」

 サディに煽てられその気になったサイードは店員と言葉を交わし出す。

 後では店主と思われる男性が割れた皿の片付けをしているようだった。ジャメルが聞き取った音はここで間違いなかったようだ。

 俺達はテーブル席に座って一息つくことにする。

 視線を上げるとサイードはまだ店員と話し込んでいるようだった。

「よー、坊主達、何か飲むかい?」

 先程割れた皿を片付けていた男性が陽気な感じで話しかけてきた。トムという名らしい。何でも数日前までは採掘現場で作業をしていた作業員なんだとか。

 店主なのかと思ったが、女性の方が店主でトムは臨時のバイトで雇ってもらっているのだとか。

「臨時?」

「そう臨時。店内が混み合う時間はここにいるけど、普段はあっちこっちで壁とか棚の補強してるよ」

 他にも近くに住まわれている方の家具などの修理も請け負っているのだとか。

 店内を見渡すと修繕したと思われる、周りの色と違う色をした箇所がいくつも見られた。そのどれもが綺麗に修繕されているようだった。

「器用な方なんですね?」

「それだけが取り柄だからな」

 トムは得意満面に応えてきた。

 ソフロニアの言葉通りになって何だか癪だが、神の神罰が下ってしまっている状況下でも共に助け合い生きていこうとしている人達に触れ、助けてあげたいという感情が湧き上がってきてしまった。

「臨時でバイトをしているってことはトムもいずれこの地を離れるのかい?」

 俺の言葉を受けるとトムはサイードと話している女性の方へ目を向けた。

「惚れているのかい?」

「惚れている!ち、違うよ。惚れてるとかそういうのじゃなくて、なんか上手く言えないけど、もっと違う高質な感情なんだと思う」

 何でもトムは小さい時に母親を亡くしてしまい、年上の女性に強い憧れを持っているのだとか。しかもその女性にはこの街に流れてきた際、かなりお世話になってるのだとか。

「俺がここに来た時はよー、まだ酒飲めるような年齢じゃなかったんだよ。でも普通に飲んでた。だから出してくれって言ったらメチャクチャ怒られてよー。ビビったぜ、体もデカく、声もデカい荒くれ者の俺にハッキリ物言いしてくる奴がいるなんてよ」

 礼節は全てその女性から学んだのだとか。

「俺を真っ当な人間にしてくれたんだあのお方は。それに一生忘れねーぜ。酒が飲める年齢になった誕生日の日に、これは私からの祝いの酒だよって言って奢ってくれたのを。あの時差し出してくれた酒の味には涙が止まらなかったぜ」

 何とも胸が熱くなるような話だ。この街に住む人達、一人一人にそのようなドラマがあるのだろう。

「他の作業員の方はどうしたんですか?」

「金にならねーって言って他の土地に移って行ったよ」

「金にならないってなんで?作業できなくなっているのかい?」

「いやー、もうー、採掘現場倒壊しちゃってよー、作業にならないったらありゃしないんだよ」

「倒壊したって、死者とか怪我人とかいなかったの?」

 俺が聞く前にサディがそう聞き返した。

「俺達のいた方は人的被害はなかったんだけど、掘削機械が全てダメになっちゃってよー、再開の目処は全く立たない状態だよ」

「俺達のいた方はって、他は人的被害もあったの?」

「何だお嬢ちゃん、知らないのかよ?あんだけ大きな騒ぎになってたのに。何人も亡くなっちまった現場あったみたいだぜ」

「そんなことがあったのに、あなたまだここで再開待っているつもりなの?」

「この街は絶対俺たちが復活させてみせる」

 トムは力強くそう言ったが、何が原因なのか知っているサディは唖然としているようだった。トムの言葉を受けどのような感情を抱いているのだろうか。

「さっき食事時は混み合うって言ってけど、まだ住人は残っているのですか?」

 俺はそこで話に割って入った。

「ああ、役所のある所にはまだ沢山いるぜ」

 沢山だと!?不味いな、ロキ神が大規模の地震を起こさないといいんだが、、。

「何でまだ残っているんだい?」

「採掘を再開したい業者と反対している住人達が裁判で争っているから」

 まだ本気で再開させようと思っている人間がいるのか!


「ひょうこれからどうするの?」

 トムとの会話を終え、店を出るとサディはそう声をかけてきた。

「取り敢えず裁判所に傍聴しに行ってみよう」
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