上 下
74 / 148
第八章 生まれたときから火炎魔法を使えた少女

第8話 異空間での戦い

しおりを挟む
 そうか!そう言うことか!毒を吐くと聞いていたから、プロレスラーがやる毒霧のように吐き出して攻撃してくると思っていたが、こいつの息、呼気自体に毒が含まれているのか?

 なら不味いな。ここは住宅街。風で毒が広まってしまえば甚大な被害になる。

 そう思った俺はサディをその場に残し、ヒュドラを伴って異空間に移動することにした。

「これは貴様の仕業か!」

 いきなり異空間に連れてこられたのが面白くなかったのか、ヒュドラは憤慨したようで先程まで見せていた余裕の表情はなくなり、鋭く射抜くような視線を送ってきていた。

 「お前魔法を使えるのか?もしかしてキメイラは本当にお前に?いいや、そんなはずはない。たかだか人間の小僧一人にキメイラが負ける訳がない」

 キマイラは負けたんだよ。そしてお前もな。

「ここは重力も無ければ大気も無い世界。貴様の吐息はここまで届かないぞ」

「それはどうかな?小僧と思い侮っていたが。全力で殺させてもらうぞ」

 ヒュドラは腹の中にオーラを込めると九つの首から息を吐き出してきた。

「!!」

 なんだと!空気が無いんだぞ?いったい何を吸い込んで何を吐き出しているんだ?

 ヒュドラの九つの首から吐き出された吐息は四方八方に分散し、逃げ道を塞ぐように上下左右から襲ってきた。

「身動きせんとは諦めたか?」

 動こうとしない俺の姿を見て、ヒュドラは勝利を確信したように高笑いしだした。

 吐息は分散せず1ヶ所に集まり、塊となり襲ってくる。9つの塊が四方八方から襲いかかってくる。

 毒性を持つヒュドラの吐息は、タンパク質を分解し筋肉や臓器を破壊する作用を示すのだとか。

 高濃度に圧縮されたものとなると触れたもの全て分解し、溶解させてしまうのだとか。

 あんなのに触れてしまったら、人の体などひとたまりもないだろう。

「死ね。我がポイズンによって死ね」

 猛毒が襲い来る。

「凄いな。この空間の暗黒物質を体内に取り込み圧縮させ吐き出しているのか?」

「そんなことはどうでも良い。何が起こったのだ?一体何をした?我のポイズンの息が掻き消されてしまうとは、一体何をした?お前は一体何者なんだ。なぜ涼しい顔をしてそこに存在する?」

 襲い掛かってきたポイズンの息は、俺に到達する前に全て消し去ってやった。

 9つの首はそれぞれが驚きの表情を浮かべているようだった。

「我が体内で生成する毒は解毒することの出来ない最強の毒。吸い込まなくても皮膚に触れただけで死に至る猛毒。貴様はなぜ死なない?貴様は人間なのか?」

「そんな事はどうでも良くないだろうが。スゲーよ!マジでスゲーよ!空気の無いこの世界で風が起こせるなんて!暗黒物質を大気のように操り風を起こすなんて!」

 スゲー!!コイツのお陰でまた新しい魔法が覚えられるような気がする!

「お前、何を興奮しているのだ?我は人にとって絶望を与える存在。我を前にして絶望するどころか気分を高揚させるとは?如何なることか?」

「人の世には空気がある。空気がある場所で暮らしているから空気を活用した戦い方を熟知していると師匠は言っていたけど、空気がないとこで暮らしているから空気がない場所での戦い方も熟知しているってことなのか?スゲーなー、そんな戦い方もあるのか!」

「貴様ー、我の質問に答えよ。貴様は何故死なない?」

「あー、うるせーなー、テメーがどんな毒を使ってこようが俺には関係ないんだよ。貴様が持つ毒は何毒だ?神経に作用するものか?それとも細胞膜を破壊してしまうものか?どちらにしても貴様の持つ毒の分子構造が人の体に作用し毒となっているんだろ」 

「俺のオーラが作り出す冷気は絶対零度に達する。俺のオーラによって全ての物質の熱振動は停止し、貴様が放つ毒がどんな分子構造したどんな毒だろうと俺には関係ない。俺のオーラの前では毒は毒性の機能を失う。それだけだ」

「それだけだと!我の攻撃がそれだけだというのか!」

「貴様の攻撃が毒だけだとしたら、俺から見たら貴様はただデカいだけのトカゲだな」

「なんだとー!人間の分際で我を愚弄するのか!なら噛み殺してくれるわ」

 そう言って体を動かそうとしたが動かないことに気付く。

「これは何事か?」

「人間は皮膚に刺激を受けると微弱な電気信号が発生し神経を伝い脳に送られ痛みとして認知する。現世を生きるなら原理は貴様も同じだろ。体が崩れているのに痛みすら感じなかっただろ。俺の冷気に包まれれば電気信号すら発生しない。さっさと消えてなくなれ。バーーカ!」

 凍結部分がどんどん首へと上がっていく、、。

「貴様?本当に人間か?我をこうもあっさり倒すとは、、」

「!!」

「なるほど人間界の英雄の流れを受け継ぐものか?道理で、だがしかしこの先も上手くいくとは思うなよ。我が主となっているウラガーン様はそう簡単にはいかぬぞ、、」

 そう言い残し煌めきとなってヒュドラは消えていった。


 異空間を抜け元の世界に戻ると見覚えのある顔があった。

「ひょう君!」

「リズさん?と、ルーシアか!」

「なぜこんなところに?」

「もしかして、あなたがキマイラとヒュドラを倒したの?」

「ええ、まぁ、、」

 ヤバっ!余計なことしてって怒られるのか?

「俺の任務はこの子を保護するだけだったんですけど。話している途中に邪魔するから、消してしまいました」

 俺はそう言いながらサディを二人に紹介するように前に突き出した。

「事も無げに言ってくれるわね。あの化け物を退治したっていうの?」

 呆れ顔をしながらルーシアはそう言ってきた。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

全能で楽しく公爵家!!

山椒
ファンタジー
平凡な人生であることを自負し、それを受け入れていた二十四歳の男性が交通事故で若くして死んでしまった。 未練はあれど死を受け入れた男性は、転生できるのであれば二度目の人生も平凡でモブキャラのような人生を送りたいと思ったところ、魔神によって全能の力を与えられてしまう! 転生した先は望んだ地位とは程遠い公爵家の長男、アーサー・ランスロットとして生まれてしまった。 スローライフをしようにも公爵家でできるかどうかも怪しいが、のんびりと全能の力を発揮していく転生者の物語。 ※少しだけ設定を変えているため、書き直し、設定を加えているリメイク版になっています。 ※リメイク前まで投稿しているところまで書き直せたので、二章はかなりの速度で投稿していきます。

転生幼女の怠惰なため息

(◉ɷ◉ )〈ぬこ〉
ファンタジー
ひとり残業中のアラフォー、清水 紗代(しみず さよ)。異世界の神のゴタゴタに巻き込まれ、アッという間に死亡…( ºωº )チーン… 紗世を幼い頃から見守ってきた座敷わらしズがガチギレ⁉💢 座敷わらしズが異世界の神を脅し…ε=o(´ロ`||)ゴホゴホッ説得して異世界での幼女生活スタートっ!! もう何番煎じかわからない異世界幼女転生のご都合主義なお話です。 全くの初心者となりますので、よろしくお願いします。 作者は極度のとうふメンタルとなっております…

勇者じゃないと追放された最強職【なんでも屋】は、スキル【DIY】で異世界を無双します

華音 楓
ファンタジー
旧題:re:birth 〜勇者じゃないと追放された最強職【何でも屋】は、異世界でチートスキル【DIY】で無双します~ 「役立たずの貴様は、この城から出ていけ!」  国王から殺気を含んだ声で告げられた海人は頷く他なかった。  ある日、異世界に魔王討伐の為に主人公「石立海人」(いしだてかいと)は、勇者として召喚された。  その際に、判明したスキルは、誰にも理解されない【DIY】と【なんでも屋】という隠れ最強職であった。  だが、勇者職を有していなかった主人公は、誰にも理解されることなく勇者ではないという理由で王族を含む全ての城関係者から露骨な侮蔑を受ける事になる。  城に滞在したままでは、命の危険性があった海人は、城から半ば追放される形で王城から追放されることになる。 僅かな金銭で追放された海人は、生活費用を稼ぐ為に冒険者として登録し、生きていくことを余儀なくされた。  この物語は、多くの仲間と出会い、ダンジョンを攻略し、成りあがっていくストーリーである。

空間魔法って実は凄いんです

真理亜
ファンタジー
伯爵令嬢のカリナは10歳の誕生日に実の父親から勘当される。後継者には浮気相手の継母の娘ダリヤが指名された。そして家に置いて欲しければ使用人として働けと言われ、屋根裏部屋に押し込まれた。普通のご令嬢ならここで絶望に打ちひしがれるところだが、カリナは違った。「その言葉を待ってました!」実の母マリナから託された伯爵家の財産。その金庫の鍵はカリナの身に不幸が訪れた時。まさに今がその瞬間。虐待される前にスタコラサッサと逃げ出します。あとは野となれ山となれ。空間魔法を駆使して冒険者として生きていくので何も問題ありません。婚約者のイアンのことだけが気掛かりだけど、私の事は死んだ者と思って忘れて下さい。しばらくは恋愛してる暇なんかないと思ってたら、成り行きで隣国の王子様を助けちゃったら、なぜか懐かれました。しかも元婚約者のイアンがまだ私の事を探してるって? いやこれどーなっちゃうの!?

そして、私は遡る。戻れないタイムリーパーの秘密

藍染惣右介兵衛
ミステリー
 ――どこまでが実話で、どこまでが作り話なのか……。 『異世界へ行く方法や、過去へ戻る方法が知りたい?』  タイムリープを習得すればいい。 方法……? 方法は簡単だが、あまりお勧めはできないな……  あなたは既に、何度も何度も世界を繰り返しているのかもしれない。 ……自分が遡った記憶さえ失って……  実在のタイムリーパーが初めて明かす、タイムリープ物語。 ここにいる自分はいつから「自分」なのか、いつまで「自分」なのか。 ここにある世界はいつから「世界」なのか、いつまで「世界」なのか。  問題や悩みの根源は、いつ、どこから発生したのか。 『現実世界』と『隠された世界』の秘密を白日の下にさらし出す! 「――そして、私は遡る。」 【※「姉らぶるっ!!」とは、著者が違います】 【※小説家になろうから移設。いずれ改訂する予定です】 【※時系列が複雑です。タブブラウザで同時に開くと……】

収容所生まれの転生幼女は、囚人達と楽しく暮らしたい

三園 七詩
ファンタジー
旧題:収容所生まれの転生幼女は囚人達に溺愛されてますので幸せです 無実の罪で幽閉されたメアリーから生まれた子供は不幸な生い立ちにも関わらず囚人達に溺愛されて幸せに過ごしていた…そんなある時ふとした拍子に前世の記憶を思い出す! 無実の罪で不幸な最後を迎えた母の為!優しくしてくれた囚人達の為に自分頑張ります!

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

月が導く異世界道中

あずみ 圭
ファンタジー
 月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。  真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。  彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。  これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。  漫遊編始めました。  外伝的何かとして「月が導く異世界道中extra」も投稿しています。

処理中です...