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第八章 生まれたときから火炎魔法を使えた少女

第4話 心に闇を抱えた少女

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 俺はカードキーを奪い、扉を解除させる。

『ピピっ』と音がしたので解除されたのだと思うが?

 そのキーだけでドアが開けられると思っていたが開こうとしない。不思議に思い周りをキョロキョロしていると、、。

『手をかざして下さい』と表示があることに気が付いた。

 手をかざす、、。

『一致しません』と案内が流れた。

「マジかよ!もしかして静脈センサーか!これ?」

 紹介所があれだけの設備だったんだ。入り口が登録してある会員のみ入れるようになっていても、なんら不思議ではない。

「あちゃー、参ったなー」

 両手を頭の後ろで組み、ふと視線を上に向けた。

「あー、飛び越えちゃえば良いんじゃね?」

 俺は家を覆っている壁を一足飛びし、敷地内に侵入することにした。

「あ!」

 壁を飛び越え中庭に着地したところで、もしかして気絶させた男の手をかざせば良かったんじゃないのかと思った。

「あー、失敗した!まあいいか入れたんだし」

 いつも考えなしにまず行動してしまう。理知的な奏音だったらこんなことはしないだろうな。と思った。

 今度は失敗しないようにと思い、周りを確認するように見渡した。取り敢えず防犯ブザーのようなものは作動してないようだ。

 家を覆っている壁は刑務所を覆っている壁のように高い。

 壁の上には有刺鉄線のようなものが見られる。外からの侵入者を防ぐものなのか、それとも中の女性を外に出さないためのものなのか。

 壁を尻目に庭を抜け建物の前まで進むと、玄関の扉に手をかけた、、。

『ガチャ』

 こっちは鍵はかかってないようだった。

 家に入ろうとしたが強いオーラは家の中からは感じられないようなので、裏側の方に回ってみる事にした。

 家の壁伝いに歩き裏庭を覗くと一人の女性が小鳥たちと戯れていた。写真の少女だ。間違いない。

「まあ欲張ってはダメですよ!」

 小鳥の一羽がもう一羽の前にあるエサをついばんだので、たしなめる姿が目に映った。

 人間が怖くないのだろうか?小鳥たちは次々とサディの元へ舞い降りてくる。俺は小鳥たちを驚かせないように気配を殺して近寄った。

 数メートルの位置まで来たとき、サディは俺の存在に気付き驚きの表情を向けてきた。

 しばらくこちらを見つめた後、小鳥の方に視線を戻す。

「お客様ですか?ここは危険な場所です。どうか立ち去って下さい」

 小鳥たちと戯れていた時とは違う沈んだ表情で、冷たい棘のある口調でそう言ってきた。

「いいや、俺は客ではない」

 俺のその言葉に不思議そうな表情を見せてくる。

「ならどうやってここまで来たのですか?ここは貴方のようなお若い方が来るところではありません。貴方の身に危険が及ぶ前にどうか立ち去ってください」

 早く立ち去ればっかりだな。立ち去れと言われても立ち去る訳にはいかない。

「野生の鳥ですか?懐くなんて珍しいですね?」

 話題を変えてみた。

「私はここが長いですから。害がないと覚えたのでしょう。それより近づいても小鳥たちが逃げようとしないなんて、あなたは何者なのでしょう?小鳥たちはあなたを外敵と見なしてないようですね。私はあなたに危害を加えたくありません。どうかお引き取りを」

 あらら、結局そうなるのか、もう全て話すしかないか、と言っても師匠と同じで俺も口下手だからな。どうしたものか?

「俺の身を案じる必要はない。俺はあなたを救いだせとの命を受けここに来た」

 サディはその言葉に一瞬輝やいた眼を見せたが、直ぐに視線を落とした。

「私は救われるような人間ではありません。どうかお引き取りを、、」

 俺は視線を落としたその姿に昔の自分を重ねた。サディは昔の俺のような闇を抱えているのだろうか?

 もしかして、ソフロニアが俺が適任と言ったのはそういう意味なのか?なら何とかしてあげたいと思った。

 しかし、俺に出来るだろうか、家族との人との関わりがほとんど無かった俺に。

 姫妃様なら巧みな話術で何とかするのだろうに、慈愛に溢れたあのお方ならきっと上手くやることだろう。

 でもこの場に姫妃様はいない、俺は出来るだけ姫妃様のようにやってみようと思った。

 姫妃様は相手の心を掴むには共感を得る事が大切と言っていた。相手と自分の共通点を見つけて親近感をもってもらう。

 それにはまず、相手をよく見て観察すること。共通点はあるのだが、俺に上手く出来るだろうか?

「私はあなたを傷つけたくありません。どうか私に近付かないで下さい、、」

 半歩踏み込んだだけというのにこちらに強い視線を送り、懇願するように言ってきた。

 今までの買春客にも同じ事を何度も言ってきたのだろう。しかし、客達はそれを聞き入れることなく近付き、焼き殺されてしまったのだろう。

 焼き殺したくないから近付かないでという強い意思が視線から感じられた。

 ここに来る客はろくでもない奴ばかり、殺したところでどうということはない。それでもこの子は殺めてしまうことに、心を痛めてしまっているのだろうか?

 こんな綺麗な心をしている子、どうやったら救えるのだろうか?

「俺の身を案じることはない。俺も君と同じことが出来る」

 そう言って徐に落ちていた枯れ葉を拾い上げ、葉を延焼させて見せた。

 燃え上がった葉を見て何を思ったのだろう。サディは時が止まったかのような驚きの表情を浮かべたまま動かなくなっていた。

 今まで自分だけが特別な存在だと思い、自分の能力を疎い、呪い、自分の存在を否定し続けてきたはずだ。

 俺の行為を見て何を思ったのだろうか?

「君の力は特別なものではない。君は力を使いこなせていないだけ。コントロール出来るようになれば普通に生活出来るようになるし、人も殺さなくてすみますよ」

「俺もこの力には苦労したよ。多くの人間を殺した」

「えっ!あなたもなの?」

 その言葉を聞いた瞬間から眼の色が敵対視する眼から穏やかな眼へと変わったような気がした。

 やっと眼を合わせ会話をしてくれるようになった。

「まぁ俺の場合、君といくらか意味が違うがな、、」

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