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第八章 生まれたときから火炎魔法を使えた少女

第3話 高級売春街

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 含みを持たせたソフロニアの言い方にいささか疑問を抱きながらも、考えていても仕方ないと思い、俺は南米へと移動した。

 その少女は現在売春街にいるのだそうだ。

 売春を強要させられているから心に闇を抱えてしまったのではなく、生まれた頃より強いオーラを有していたため、家族や近親の者と上手くいかず闇を抱えてしまったらしい。
 
 ちょっとした感情の変化で火炎魔法を発動させてしまうらしい。

 その魔法は家族を焼き殺し、近親者を焼き殺し、孤児となってしまった少女を引き取った教会の神父さんを焼き殺したという。
 
 自分のせいで大好きな人達が火に巻かれ、苦しみ悶えながら亡くなる様を見ることとなってしまえば、まともな神経の持ち主なら耐えられない出来事だろう。

 その少女は白雪のような綺麗な肌をし、済みきった空のような青い目をし、絹糸のような金髪をなびかせ、まさに絵に描いた様な美少女なのだそうだ。

 そのため人買いに買われ現在に至っているらしい。

 まだ少女とはいえ容姿端麗のため買う客は後を絶たないらしいが、全員その後、行方知れずになっているらしい。

 恐らく焼き殺されてしまっているのだろう。

 この売春街は売春行為をするためだけに訪れる街だ。ほとんどの人が極秘で訪れる為、ここで行方不明になっても一般に露呈することはない。

 ここで殺されてしまったら真相は闇の中だ。

 罪に問われることなく過ごしている少女は自分の罪に耐えられず自殺を試みた事も何度もあるらしい。が、感情の高ぶりとともに周りにあるものを延焼させてしまうため、自殺も出来ず、ただただ苦しい毎日を送っているとの事だ。

 俺は教えられた売春街にある闇市場に到着した。

 そこには多くの男達が集まっていた。男達は高級車で乗り付け、高級そうな腕時計をし、金のネックレス、黒光りした高そうな靴やバックを身に付けている者ばかりだった。

 闇市場は高級住宅街の一角にあり、売春婦には一人につき一軒の住宅が与えられているのだとか。

 その一軒家に買春客の男性が赴き、一晩を共にするシステムとなっているのだそうだ。

 ここで遊ぶには相当高額なお金が必要になるが、人買いにより世界中から激戦した美女が集められているため需要は絶えないのだとか。


「ひゃー、スゲー建物だなオイ!!」

 思わず声を上げてしまったのはその設備の豪華さにだ。

 イベントホール並みの建物の壁一面に、女性の写真がずらりと並んでいる。写真は全身が写されていて、実寸と書かれていた。

 写真の手前に置かれている操作盤に触れると、3D画像が現れ女性がいろいろなポーズをとり出す。

 1000ドルを支払うとヌード画像も3Dで見れるらしい。

 驚いたことにそこにいる男性達は惜し気もなく1000ドルを支払いヌード画像を見て回り女性を選別していた。


「世の中はなんでこんな品性の欠片もない連中に、お金が集まるのだろうか?いいや、お金が集まるから品性がなくなるのか?」

 世界中には貧困が広がり、明日生き抜く食べ物を賄う事すら出来ない人間がいるというのに、いたたまれない感情が溢れてくる。

 しばらく進むとようやく目的の少女の写真を見つけることが出来た。

 入ってから何時間経ったことだろう。いい加減この人混みと香水の匂いが入り雑じった空間に嫌気がさしてきているところだった。

 しかし、どうすればいいのだろうか?

 お金があればこの子の予約を取り、住んでいる家を教えてもらい、鍵を借りて家に入ることが出来るのだが?

 思案していると一人の男性がその少女『サディ』の写真を食い入るように見始めた。

 男は身長は並だが、成人男性二人分程の体格をし、特注品と思われる程のデカイスーツを纏っている。

 スーツは見たことのない質感をしていて、恐らく超高級な布で出来ているのだろうと容易に想像出来た。

 黒光りしている革靴にはリングが重なり、片側が空いている有名高級ブランドのマークがあしらわれていた。

 腕には金色の煌びやかな時計が見られ、10本の指すべてにバカデカイ宝石があしらった指輪をつけている。

「なんだこの気色悪いのは?人間なのか?」

 あまりの奇抜な姿にサディを狙っている化け物の一人ではないか?と一瞬思ってしまった。

「あ!」

 良い事というか、悪い事を思い付いてしまった。こいつがサディの家の鍵を受け取ったらぶんどってしまえばいいんだ!


『バコッ!』

 後をつけて行き、ある一軒家の前で立ち止まったところで作戦を実行した。罪悪感はない。

 サディに近付けば焼き殺されてしまうだろう。

 豚の丸焼きとなってしまうだろう。

 でも、焼き尽くされてしまうのなら丸焼きにはならないのか?

 そんなことどうでもいいか?殴られて意識を失う程度で済むんだ。感謝しろ。と心の中で思った。

 俺に殴られ倒れ込んだ姿は余分な肉が奇怪な形にダラリと広がり、醜さをよりいっそう引き立たせていた。

「ぷっ!ウシガエルかよ!」

 家の方に向き直ると確かにオーラを感じる事ができた。

 間違いなくこの家の中に目的の少女がいるようだ。一体どういう子なのだろう。闇を抱えるとはどういう意味なのだろう。

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