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第五章 ついに決勝戦!
第32話 最終回前の両キャプテン
しおりを挟む早朝に、変態――改め、レイドと俺は一緒に魔術塔へと向かった。
そこに向かう途中。心の中でずっと変態と呼んでいたせいで、ついついそう言ってしまったのだ。
すると、レイドは道のど真ん中で膝を付き。動かなくなった。
通行人がめちゃめちゃこっちを見てコソコソしてるし、終いには『あれって、ハートシア様じゃね?』みたいな声も聞こえてきて……レイドは凄い注目の的になっていた。
遂には、俺の方を見ながら『あの人が原因なのかな?』 とか言われ始めたので、慌ててレイドと呼びまくったら何事もなかったように動き出した。
確かにそう言った俺も悪かったけどさ、流石にこれは無いだろうとクッソ呆れたわ。
△▼△▼△▼△▼
「へ~。よく、変た――コホン、レイドが行ってたの知ってたけど……ここが魔術塔だったんだ? 普通のカフェかと思ってた」
そう、ごくごく普通のカフェにしか見えない。
俺が輝石の時に、レイドが頻繁に足を運んでいたところなのだが。
知り合いのような人に、資料のようなものを受け取って。それに目を通し、一言二言その相手に話していただけだったから、あまり気にもしていなかった。
「ああ、表向きはな。今日はこの奥に用がある」
「ん……? スタッフルーム?」
従業員入り口のような扉の前に、俺達は止まっていた。
すげ~! 大きな組織の本部って、こういうふうに隠されてるもんなんだな~。
「お待ち下さい」
レイドがその取っ手を掴んだ時に、後ろから声を掛けられた。
「……なんだ?」
「ハートシア様、その隣の方はどなたでしょう? 関係者以外はご入室出来ないことを……。勿論、ご存知ですよね?」
従業員らしき男が、こちらに歩み寄って来ていた。
うわ~なんか、感じ悪いな。
言っていることは確かに正しいけど。この従業員は、あからさまに小馬鹿にするような態度を取っていたのだ。
「今、何が起こっているのか分かっているだろう? それを解決することの出来る者だ」
「さあ? ハートシア様が何をおっしゃっているのか……。とにかく、関係者以外は立ち入り禁止ですよ~?」
え? こいつ、何様?
レイドは、魔術塔の人達に救われたとか言ってたけど……マジでか?
そんなこと、してくれそうに見えね~けど?
「ああっ! そうか!! 風のうわさで聞きましたよ? ハートシア様は、輝石に愛を囁くようになりボケが始まったとかなんとか……。まあ、確かに。お年ですからね~?」
ブッチン!!
「俺、レイドのパートナーだから! はい、すっげー関係者!」
「ぎゃぁああーーーーーーっ!!?」
あ、ヤベ、吹っ飛ばしちまった。
「あ~~……。あれ、どうしよ……ぐえっ!!」
「ヤマダっ!!!」
何故だか、レイドにギュウギュウと絞め技を食らう。
「うぐ、苦し……っ! 苦しいんだけど!?」
「ああ、すまない! あまりにも、ヤマダが可愛いことを言うから……。そうか、妻、か」
「はぁ?」
ニコニコ輝くような笑みを浮かべているレイドを、俺は呆然と見上げた。
は? 妻……?? なんで、『パートナー』から『妻』に脳内変換してんの? 仕事の相棒、みたいな意味で言ったんだけど? ……にしても、ボケたや年だとかって言われた本人がなんで怒らねーんだ。
未だ、絞め殺すレベルで抱きついてくるレイドに『妻、違うわボケ!』(レイドは、まったく聞こえていない様子)と言って必死に剥がそうと踠いていたら、ひっくり返った従業員とたまたま目が合い。化け物を見るような目をされて怯えられた。
なんか、ムカついたから睨み付けると。悲鳴を上げられ、逃げられた。は? 失礼じゃね?
それから、へばりつくレイドを何とか引き剥がし。
俺達は、その扉の中へと入った――――。
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