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第五章 ついに決勝戦!
第27話 1番バッターに指名された久保
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遂に来た!遂に僕の時代が来た!
バントを上手い形で処理し、4番バッターを三振。これは僕中心に時代が動いているでしょ。
「今日ー、絶好調の晃ちゃん様が打ってやるからー、一般大衆の者どもよ、後に続けよー」
「はーい。国王様ー、承りましたー」
「太田先輩、ピンチ乗り切ったと思って、すっかりヒーロー気取りじゃん」
「何が晃ちゃん様だよ!誰だー!晃弘に変な映画見せたヤツはー?」
「おーい、誰か医者呼んでこーい!」
一般大衆が何やらブツブツ言っているみたいだが、自分のピッチングに幅を持たせるためにも何としても追加点を取ってやる。
それにはこの回の先頭バッターの僕が必ず塁に出てやる。
と意気込んでバッターボックスに立ったのだが、、。
「ストライーク」
「!!」
初球のストレートに擦りもしなかった。
「どうしたー、打ってやるんだろー」
「国王がそんなんじゃ、民衆は付いて行かないぞー」
うるさいよ!
あれ?でも今日僕って打っていたっけ?
ヤバっ!今日は2三振でヒットどころかバットに当てることさえ出来てなかった。
しまったー!ピッチングは絶好調でも、バッティングはてんでダメな日だった。
大口叩いて出てきたんですけど、、。
こうなったら破れかぶれで振るしかないな!さあ、きやがれ!
『カキーーン』
おー、当たったーっ!!
『打ったー、セカンド後方にフラフラっと上がったぞー。ライト前に来る、ライト前に来るーー、落ちたーー。ライト前ヒットー。詰まったのが幸いしヒットになりましたーー。耶麻高校この回もノーアウトのランナーを出しましたー』
「どーだー、導いてやったぞー、後に続けよー、下僕どもー」
「まーた、あんなこと言ってるよ!」
「今度は下僕になっちゃったよ。あんなボテボテのヒットくらいでよく言うよ」
「機嫌損ねると大変だから、好きにさせとけ」
「太田せんぱーい、ナイスヒットー」
*
「晃ちゃーん、ナイバッチィ」
うし!僕も続くぞー。
「竜二ー、お前は真面目にいけよー」
「おー」
ピッチャー、今のヒットにかなり苛立ってるみたいだな。雑にマウンドの土を直しているよ。
打ち取ったと思ったのに悪いとこに飛んでしまったと思って、苛立っているんだろうけど、鋭いボールでもきっちりスイングをすればヒットになるって事だよ。
今の勝負は完全に晃ちゃんの勝ちだ。
よーし、僕もヒットを打ってやる!
でもここはバントかな?
ヨッシーの方へ目を向けると握り拳を突き出していた。
思いっきり行けってこと?
サインは無しか。晃ちゃんはピッチングで頑張ってるから、攻撃は野手陣で頑張れってことなのだろう。
晃ちゃんがランナーにいることは忘れ、この回の先頭バッターのつもりで挑もう。
「ボール」
「!!」
初球は向こうの様子を見たいのと警戒心を煽る意味も込めて、バットを寝かせバントをするフリをしてみた。
そしたら胸元にズバッとストレートが投げ込まれ、僕は思わず仰け反ってしまった。
あっぶねー、向こうも追加点は絶対阻止したいと思っているのだろう。気合い入りまくりのようだ。
簡単にバントさせる気はないようだ。バントのサインが出ていたら、さぞ苦労したことだろう。
だからといって打たせる気もないのだろうが、初球ボールになってくれたのは大きい。
それにバントをしようとすると、セオリー通りに内角高めの速い球で対応しようとするピッチャーだということも分かった。
なら狙い球はもう決まったな。
ああこういうことか、コーチが僕を1番に指名した理由は、、。
僕は自分が1番バッターに指名されているのが不思議で仕方なかった。確かに僕は守備も送球の正確さも打率もバントも走塁もそつなくこなす。
でも全てチーム内で1番ではない。
守備力、バントの正確性は翔ちゃんの方が遥かに上、送球力では良ちゃんや康ちゃんの方が上だろう。打力は将大君、走塁力は隼人君だ。
ずっと思っていた。ずっと思っていたからコーチに自分は1番バッターじゃないほうがいいのでは?と進言した。でもコーチは僕のそんな言葉を笑って流した。
1番バッターは足の速いバッターが多い、なら隼人君が適任。もしくは打率の高い、翔ちゃんや康ちゃんがなるべきだと思う。僕は全部そつなくこなせるが全ての面で1番ではない。
僕がなるべきではないと思っていた。思っていたからコーチにその思いをぶつけた。
「ははは、、だからだよ。だから久保を一番に指名したんだよ」
「??」
疑問顔をしている僕にコーチはこう言ってきた。
お前のその冷静な分析力はチーム1だ。誰よりも冷静にピッチャーの球筋を見極める力がある。
試合前に相手チームのデータを取って分析し攻略法を見つける。これはどのチームもやるだろう。でも実際にバッターボックスに立ってみないと分からない事も沢山ある。
1番バッターはそれを見極めた上で結果を残さなくてはならない。
だから僕はお前を冷静に分析の出来る、選球眼の良いバッターだと思って1番に指名したんだよ。と言っていた。
1番バッターに求められるのはとにかく塁に出ること。ヒットを打つだけではなく、フォアボールを取るのも重要なことだ。
1番最初にピッチャーと対戦して相手の事を見極め、何を選択すべきか冷静に判断できる。だから僕を1番バッターに選んだのだとか。
その期待に答えたい、でもフォアボールなんて狙わない。ここはヒットを打って塁に出てやる。
「せんぱーい、力まず頑張ってくださーい」
「確実に行けよー」
バントをするフリをして内角に投げさせ、そこを痛打する、、。
『ノーアウトでランナー1塁、耶麻高校、ここは確実にランナーを進めたいところです。バッター久保選手、バットを寝かせ送りバントの構えをとります。ランナーを進めることができるでしょうか?さあ振りかぶってー、第2球ー、投げたー』
『カキーーン』
「!!」
『打ったー、打ってきたー、セカンドの横ー、強い打球がセンター前を襲いましたー。耶麻高校ここはヒッティングできましたー。ノーアウトでランナー1塁、2塁とし追加点をあげるチャンスの到来でーす』
「よっしゃー、先陣切ったぞー。皆んなー続けよー」
「おっしゃー、ナイバッチィー」
「おー流石、特攻隊長ー」
「えーっ!先陣切ったのは僕でしょ?」
僕の言葉に2塁から不満の声が聞こえてきた。
「あーっ!忘れてた!?」
「酷っ!」
いないと思って打席に立ってたもので、、なんか、ごめん、、。
バントを上手い形で処理し、4番バッターを三振。これは僕中心に時代が動いているでしょ。
「今日ー、絶好調の晃ちゃん様が打ってやるからー、一般大衆の者どもよ、後に続けよー」
「はーい。国王様ー、承りましたー」
「太田先輩、ピンチ乗り切ったと思って、すっかりヒーロー気取りじゃん」
「何が晃ちゃん様だよ!誰だー!晃弘に変な映画見せたヤツはー?」
「おーい、誰か医者呼んでこーい!」
一般大衆が何やらブツブツ言っているみたいだが、自分のピッチングに幅を持たせるためにも何としても追加点を取ってやる。
それにはこの回の先頭バッターの僕が必ず塁に出てやる。
と意気込んでバッターボックスに立ったのだが、、。
「ストライーク」
「!!」
初球のストレートに擦りもしなかった。
「どうしたー、打ってやるんだろー」
「国王がそんなんじゃ、民衆は付いて行かないぞー」
うるさいよ!
あれ?でも今日僕って打っていたっけ?
ヤバっ!今日は2三振でヒットどころかバットに当てることさえ出来てなかった。
しまったー!ピッチングは絶好調でも、バッティングはてんでダメな日だった。
大口叩いて出てきたんですけど、、。
こうなったら破れかぶれで振るしかないな!さあ、きやがれ!
『カキーーン』
おー、当たったーっ!!
『打ったー、セカンド後方にフラフラっと上がったぞー。ライト前に来る、ライト前に来るーー、落ちたーー。ライト前ヒットー。詰まったのが幸いしヒットになりましたーー。耶麻高校この回もノーアウトのランナーを出しましたー』
「どーだー、導いてやったぞー、後に続けよー、下僕どもー」
「まーた、あんなこと言ってるよ!」
「今度は下僕になっちゃったよ。あんなボテボテのヒットくらいでよく言うよ」
「機嫌損ねると大変だから、好きにさせとけ」
「太田せんぱーい、ナイスヒットー」
*
「晃ちゃーん、ナイバッチィ」
うし!僕も続くぞー。
「竜二ー、お前は真面目にいけよー」
「おー」
ピッチャー、今のヒットにかなり苛立ってるみたいだな。雑にマウンドの土を直しているよ。
打ち取ったと思ったのに悪いとこに飛んでしまったと思って、苛立っているんだろうけど、鋭いボールでもきっちりスイングをすればヒットになるって事だよ。
今の勝負は完全に晃ちゃんの勝ちだ。
よーし、僕もヒットを打ってやる!
でもここはバントかな?
ヨッシーの方へ目を向けると握り拳を突き出していた。
思いっきり行けってこと?
サインは無しか。晃ちゃんはピッチングで頑張ってるから、攻撃は野手陣で頑張れってことなのだろう。
晃ちゃんがランナーにいることは忘れ、この回の先頭バッターのつもりで挑もう。
「ボール」
「!!」
初球は向こうの様子を見たいのと警戒心を煽る意味も込めて、バットを寝かせバントをするフリをしてみた。
そしたら胸元にズバッとストレートが投げ込まれ、僕は思わず仰け反ってしまった。
あっぶねー、向こうも追加点は絶対阻止したいと思っているのだろう。気合い入りまくりのようだ。
簡単にバントさせる気はないようだ。バントのサインが出ていたら、さぞ苦労したことだろう。
だからといって打たせる気もないのだろうが、初球ボールになってくれたのは大きい。
それにバントをしようとすると、セオリー通りに内角高めの速い球で対応しようとするピッチャーだということも分かった。
なら狙い球はもう決まったな。
ああこういうことか、コーチが僕を1番に指名した理由は、、。
僕は自分が1番バッターに指名されているのが不思議で仕方なかった。確かに僕は守備も送球の正確さも打率もバントも走塁もそつなくこなす。
でも全てチーム内で1番ではない。
守備力、バントの正確性は翔ちゃんの方が遥かに上、送球力では良ちゃんや康ちゃんの方が上だろう。打力は将大君、走塁力は隼人君だ。
ずっと思っていた。ずっと思っていたからコーチに自分は1番バッターじゃないほうがいいのでは?と進言した。でもコーチは僕のそんな言葉を笑って流した。
1番バッターは足の速いバッターが多い、なら隼人君が適任。もしくは打率の高い、翔ちゃんや康ちゃんがなるべきだと思う。僕は全部そつなくこなせるが全ての面で1番ではない。
僕がなるべきではないと思っていた。思っていたからコーチにその思いをぶつけた。
「ははは、、だからだよ。だから久保を一番に指名したんだよ」
「??」
疑問顔をしている僕にコーチはこう言ってきた。
お前のその冷静な分析力はチーム1だ。誰よりも冷静にピッチャーの球筋を見極める力がある。
試合前に相手チームのデータを取って分析し攻略法を見つける。これはどのチームもやるだろう。でも実際にバッターボックスに立ってみないと分からない事も沢山ある。
1番バッターはそれを見極めた上で結果を残さなくてはならない。
だから僕はお前を冷静に分析の出来る、選球眼の良いバッターだと思って1番に指名したんだよ。と言っていた。
1番バッターに求められるのはとにかく塁に出ること。ヒットを打つだけではなく、フォアボールを取るのも重要なことだ。
1番最初にピッチャーと対戦して相手の事を見極め、何を選択すべきか冷静に判断できる。だから僕を1番バッターに選んだのだとか。
その期待に答えたい、でもフォアボールなんて狙わない。ここはヒットを打って塁に出てやる。
「せんぱーい、力まず頑張ってくださーい」
「確実に行けよー」
バントをするフリをして内角に投げさせ、そこを痛打する、、。
『ノーアウトでランナー1塁、耶麻高校、ここは確実にランナーを進めたいところです。バッター久保選手、バットを寝かせ送りバントの構えをとります。ランナーを進めることができるでしょうか?さあ振りかぶってー、第2球ー、投げたー』
『カキーーン』
「!!」
『打ったー、打ってきたー、セカンドの横ー、強い打球がセンター前を襲いましたー。耶麻高校ここはヒッティングできましたー。ノーアウトでランナー1塁、2塁とし追加点をあげるチャンスの到来でーす』
「よっしゃー、先陣切ったぞー。皆んなー続けよー」
「おっしゃー、ナイバッチィー」
「おー流石、特攻隊長ー」
「えーっ!先陣切ったのは僕でしょ?」
僕の言葉に2塁から不満の声が聞こえてきた。
「あーっ!忘れてた!?」
「酷っ!」
いないと思って打席に立ってたもので、、なんか、ごめん、、。
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