廃校が決まった母校の名前を、高校野球史に刻め!

加藤 佑一

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第五章 ついに決勝戦!

第8話 耶麻校上位打線

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「ストライーク」

 今のがフォーシームか!?

 凄いな!予想以上に伸び上がってきたぞ。バットを振ろうと思ったらもうミットに収まっていたって感じだった。

 しかもやや沈んでいるような感じだった。これはボールを見極めるとか難易度高そうだな。

 ワンテンポ早めに手を出す感じで、尚且つボールの下を叩くような感じでバットを出さないと打てないんじゃないのか?

 涼介君のように豪快に来るって感じじゃないので当たれば飛びそうだが、その当てるだけが苦労しそうなボールだな。

 でも僕が打てなくても皆んなで打ち崩すんだ、やれるだけのことはやってやる!


「ストライーク」


「!!」

 当たらない!結構早めに振ったと思ったのに、これでも振り遅れるのか?

 ヤバいな、2球で追い込まれてしまったぞ。今後のためにツーシームも見たいんだが、余裕がなくなってしまった。


「ボール」


 1球見せ球を投げた後の4球目はボールの判定だった。

 ラッキー、アッぶな!助かったー、今のがツーシームか?スピードのあるチェンジアップみたいな感じだった。

 なんか空中でボールが止まって消えたって感じだったぞ!

 そりゃー、バッティング体勢崩されてしまう訳だ。消える魔球なんて言われているのも納得がいく。

 あのボールはファールに逃れるのも一苦労だろうな。

 僕は一度バッターボックスを外し祐希君を見て頷いた。まずはフォーシームだ。ツーシームはよく見て後半に打ち崩す。

 2ボール、2ストライク。次が勝負だろう。どんな結果になろうとも思いっきり振り抜いてやると決めピッチャーを睨みつけた。


『打ったーっ!痛烈な打球がセカンドの頭を越えてライト前ヒットー』


「シャーっ!どーだーっ!」

「きたーっ!切り込み隊長ーっ!」

「竜ちゃん、ナイバッチィー」

「相変わらず、流し打ちがうめーなー、オイ!」


 きた!きた!きたーっ!やってやったぞー!堀口のフォーシーム打ち返してやったぞー!

 1塁ベース上で何度もガッツポーズを繰り返した後、ベンチに向かって高々と拳を突き上げた。

 祐希君に向かって高々と拳を突き上げた。ありがとう、君のお陰で魔球を完璧に打ち返せたよ。

 野球が誰よりも大好きな祐希君、どれだけ自分でプレイしたいと思っていることだろう。

 君の出来ないことは僕達皆んなでやってやる。僕達皆んなで打ち崩すんだ!

 よーし!絶対ホームに帰ってやるぞ。





「よっしゃー、次は俺の番だー、ぜってーボコってやる!」

 竜二の活躍に負けてはいられないと気合い十分でバッターボックスに向かったが、ベンチからのサインに驚愕してしまった。

 ここは確実にスコアリングポジションに送りたいのでバントで。

 ですよねー。

 まあしょうがない、チームの勝利が最優先だ。俺は犠牲になろうではないか。


『バントしたー、勢いの死んだ良いバントです。ピッチャー捕ってセカンドを見るがファースト送球ー、送りバント成功です』


「ナイスバントー」

「よっ!バント職人!」

 くっそー、俺の見せ場がー!

「コラーっ!クソ康誠ー、打てなかったらブチ殺すかんなー!」





「えっ!怖っ!!なんで!?」

 打てなかったら、僕ぶち殺されちゃうの?

「と、いうことなので打たせてもらいます」

 帽子を取って会釈しながら礼儀正しくバッターボックスに入ったが、その強気な発言にバッテリーからは鋭い視線が飛んできていた。

 僕はそんな視線はサラリと流し考察に入る。

 祐希先輩の話からすると、普通のストレートはまず来ないと考えていた方がいいとのことだった。

 久保先輩との対戦を見て、まず狙うのはフォーシーム。ツーシームはよく軌道を見るようにして、後半打ち返えせるようにしておく。

 でも、フォーシーム狙いと勘付かれないように、カウントに余裕がある時は手を出して欲しいとの事だった。

 久保先輩に完璧に打ち返されて驚いた表情はサイコーだったなー。完璧に打ち返してタイムリーになったらどんな表情するんだろ。

 楽しみー。


「ファール」


 今のがツーシームか!完全に体勢を崩され最後は片手一本のバッティングになってしまったが、なんとか当てることが出来た。

 本当にタイミングがとりづらいボールだな。

 フォーシームは球速を保ちつつも手前で変化する、ツーシームは手前で減速する、その緩急の差に普通はついていけない。

 それに加え内外角に投げ分けられてしまったら手の打ちようがない。

 そう思っているんだろ?でもウチには攻略法を編み出す天才がいるんだぜ。

 ツーシームを狙っていると見せかけフォーシームを待つ。

 さあ来い!


『打ったーー、センター返しーー、二塁ランナーどうするー?回ったかー?いやいや止まった、止まったー。ここは三塁コーチャー止めます!』


 やった!タイムリーだと思ったが、三塁コーチャーは大きく手を広げ久保先輩を止めていた。

「おー!!」

 センター寺田からの好返球に会場はどよめいていた。

 あっぶねー、そうだ忘れていた。センターは肩が強いからセンター前に抜けた時は無理はしないようにと祐希先輩に言われていたっけ。


『いやー、センターの寺田選手、肩が強い!ノーバウンドでストライクの好返球がキャッチャーに返ってきましたねー。これでは二塁ランナー三塁蹴っていたらアウトでしたね。3塁コーチャーナイス判断です』


「なんつー肩してんだよ!1点取れたと思ったのになー、残念」

 さすが決勝戦だ、そう簡単に点は取れないらしい。でもよく耳を澄ませると球場内がざわついてるのは、今の好返球の為だけではないようだった。

 堀口打たれたよ!実質2連打じゃん、耶麻校スッゲーな!そんな声も混じっていた。

「康ちゃーーん、ナイスバッティングーー」

「ありがとー」


『3番の石橋選手がヒットで続きワンナウトでランナー、一塁、三塁です。さあ続いて耶麻高校先制点をあげるのに絶好のバッターの登場です。次は4番、主砲中村選手です』

『この試合先制点が重要になってきますからねー。4番バッターといえどスクイズも考えられますよー』

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