66 / 111
第四章 準決勝 甲子園常連校
第16話 力投の康誠
しおりを挟む
向こうのピッチャーの状態から考えると、追加点を取るのは難しいと考えていたほうがいいだろう。
この回は柳澤先輩が注意と言っていた3、4番に打順が回る。4番の前にランナーを出さないことが重要になってくるだろう。
「打たせて行くよー、皆んな真面目に頼むよー」
「おー」
「真面目にしとるわ!」
「そういうのはサード方向に向かって言えよ!」
「なんでだよ!」
失敗した。サードとショート真面目に頼むよって言えばよかった。
僕はマウンド上で切り替えるように大きく息を吐くと、バッターと対峙する。
2番バッターは今日はヒットは出てないが、鋭いスイングをしていて強い打球を飛ばしている印象を受けた。
藤井先輩と似たタイプと思って間違い無いだろう。
ただシュート、シンカーが得意な僕にとっては、左バッターは比較的与し易い相手だ。
「まずは一つ確実に取らせてもらうぞ」
くっそー、やっぱりそう来たか。左バッターから見てシュート、シンカーは外に逃げていくボールになる。
それを徹底的にファールして粘ってきやがって。まあ僕が逆の立場だったらそうするだろうから、基本に忠実なバッティングっていったらそうなんだろうけど。
うーん、もう少しシンカーが切れよく落ちてくれれば、空振りを取れるんだろうが、、。
ここは内角に1球ストレートを投げ込んでおきたいところだ。ただ僕は柳澤先輩とは違う。今まで先輩の速いストレートと対峙してきたバッターが、僕のストレートに対応できないはずがない。
ちょっとでも投げ間違ったら大変なことになる。コントロールに注意を払い、内角にボールに魂を込め投げ込んだ、、。
『カキーーン』
『打ち上げたー、詰まらせましたー、ライトフライ。ほぼ定位置でキャッチし、アウトー』
「よーし、まず一つ!」
ふぅー、助かったー、ボール気味のボールに手を出し、窮屈な中途半端なバッティングとなっていた。
何で手を出してくれたのかは不明だが、取り敢えずラッキーな結果となってくれたようだ。
「康誠ー、ナイスボールだったぞー」
「康ちゃーん、ナイスピー」
「ライト良太じゃなくて良かったなー」
「そうだよ、俺だったらポテンしてたよ。って!コラー!まだ言うか!」
「良ちゃーーん、ポテンしてもフォローしてあげるからねー」
「しねーわ!だから外野は黙ってろって言ってんだろ!」
あはは、元気だなー。取り敢えずまず一つ、第一段階クリアだ。
3、4番の前にランナーを出すことなく迎えられる。しかし気を使うバッターばっかりだな。柳澤先輩はこんな奴等とよく対峙してられたな。僕も頑張らないと。
さあいよいよクリーンナップだ。今日、2安打の3番、警戒しなくてはならないバッターの一人だ。
「打たせていくよー、強い打球行くと思うのでよろしくー」
「おー」
「任せとけー」
「俺の見せ場頼むぜー」
「珍プレーでもすんの?」
「なんでそうなるんだよ!好プレーするんじゃ、ボケ!ナメんじゃねーぞ、コラ!」
なんか見せ場寄越せとかアホがうるさいから、カットボールを引っ掛けて内野ゴロにしてくれると助かるんだが。
まずは外に逃げるカーブを投げ、内側に食い込むシュート、落ちるシンカーを投げ2ボール、1ストライクとなった4球目だった、、。
「あっ!」
『また打ち上げたー、今度はセンターフライ。センター少し前進してキャッチし、ツーアウトです』
あー、フライになっちゃったよ。まーたなんか言われそうだなー。
「康誠ー、調子いいなー、良いボール来てたぞー」
「うぃーす、ありがとーございまーす」
「見せ場くれてありがとー」
「くっそー、山下先輩めー、俺の見せ場奪いやがってー!」
「センターフライにサードは関係ないだろ!」
「ボール来ないんじゃ、俺の活躍がテレビに映んねーじゃねーかよ!」
「お前は、そんな不純な動機でいたのかよ!」
「キャハハはは、やっぱ良ちゃんだね」
「アホが映って恥晒すだけだから止めときなー」
「外野は黙ってろって言ってんだろ!アホ弘ー!」
さあ次は4番、なんとかランナー無しで向かえられる事ができた。どの程度のバッターか試してやる。
『カキーーン』
「!!」
『打ったー、ライトオーバー、鋭い打球がライト頭上を襲いましたー、2ベースヒットー。目の覚めるような打球が飛んでいきましたー、反撃開始となるかー』
ヤバっ!失敗したなー、もっと慎重に行くべきだった。
しかしなんて奴だ!カットボールでバットの芯を外していたと思うんだけど?あんな打球飛ばせるもんなの?
とんでもねー奴だな!?ここは逆にホームランにならなくて良かったと考えよう。次のバッターに集中だ。
「康ちゃん、切り替え、切り替え」
「バッター、集中」
「康誠ー、ボールは来てるぞー、落ち着いていこう」
「だからこっちに打たせろって言ってんだろー。俺だったら捕れたのによー」
「あんなの捕れる訳ねーだろ!アホかお前は!?」
「そうやって自分だけ目立とうとしてるから打たれんだよ。野球は一人でするんじゃねーんだぞ」
「自分だけ目立とうとしてんのはオメーだろ!つーか、お前はどっちの味方なんだよ!ピッチャーに労いの言葉かけてやるのが普通だろ!」
「翔真ー、アホ相手にムキになるなー。ツーアウトだー、締まってくぞー」
「おー」
ふふふ、良ちゃんなりの激励だよね。痛打されて動揺してたんだけど、一気に心が落ち着いたよ。
さあ次のバッターも当たってるバッターだ。気の抜けないバッターが続く。集中しなおそう。
『さんしーーん。バッターアウト、スリーアウトチェンジ』
「石橋君ナイスピー」
「康ちゃんナイスピー」
「よーし、良いボールだったぞー」
「三振かよ!まーたこっちに来なかったよ」
「良かったね。恥晒しにならなくて」
「どうしてだよ?」
「エラーしてる姿がテレビに映っちゃうじゃん」
「しねーつってんだろうが!」
「キャハハはは、、」
初球松井先輩は内角にカーブを要求してきた。カーブでバッターをのけ反らせ、外角にシュート、シンカーと投げ込ませ空振りをとり三振に打ち取った。
流石のリードだった。何を投げたらいいか困っている僕を上手くリードし、バッターの打ち気を逸らすリードだった。
「よーし、なんか打たれる気がしない。このまま行くぞー」
「おー、このまま行こうぜー」
「調子乗ってるとまた打たれるぞー」
「だから、オメーはどっちの味方なんだよ!ネガティブなことしか言えないのかよ!」
この回は柳澤先輩が注意と言っていた3、4番に打順が回る。4番の前にランナーを出さないことが重要になってくるだろう。
「打たせて行くよー、皆んな真面目に頼むよー」
「おー」
「真面目にしとるわ!」
「そういうのはサード方向に向かって言えよ!」
「なんでだよ!」
失敗した。サードとショート真面目に頼むよって言えばよかった。
僕はマウンド上で切り替えるように大きく息を吐くと、バッターと対峙する。
2番バッターは今日はヒットは出てないが、鋭いスイングをしていて強い打球を飛ばしている印象を受けた。
藤井先輩と似たタイプと思って間違い無いだろう。
ただシュート、シンカーが得意な僕にとっては、左バッターは比較的与し易い相手だ。
「まずは一つ確実に取らせてもらうぞ」
くっそー、やっぱりそう来たか。左バッターから見てシュート、シンカーは外に逃げていくボールになる。
それを徹底的にファールして粘ってきやがって。まあ僕が逆の立場だったらそうするだろうから、基本に忠実なバッティングっていったらそうなんだろうけど。
うーん、もう少しシンカーが切れよく落ちてくれれば、空振りを取れるんだろうが、、。
ここは内角に1球ストレートを投げ込んでおきたいところだ。ただ僕は柳澤先輩とは違う。今まで先輩の速いストレートと対峙してきたバッターが、僕のストレートに対応できないはずがない。
ちょっとでも投げ間違ったら大変なことになる。コントロールに注意を払い、内角にボールに魂を込め投げ込んだ、、。
『カキーーン』
『打ち上げたー、詰まらせましたー、ライトフライ。ほぼ定位置でキャッチし、アウトー』
「よーし、まず一つ!」
ふぅー、助かったー、ボール気味のボールに手を出し、窮屈な中途半端なバッティングとなっていた。
何で手を出してくれたのかは不明だが、取り敢えずラッキーな結果となってくれたようだ。
「康誠ー、ナイスボールだったぞー」
「康ちゃーん、ナイスピー」
「ライト良太じゃなくて良かったなー」
「そうだよ、俺だったらポテンしてたよ。って!コラー!まだ言うか!」
「良ちゃーーん、ポテンしてもフォローしてあげるからねー」
「しねーわ!だから外野は黙ってろって言ってんだろ!」
あはは、元気だなー。取り敢えずまず一つ、第一段階クリアだ。
3、4番の前にランナーを出すことなく迎えられる。しかし気を使うバッターばっかりだな。柳澤先輩はこんな奴等とよく対峙してられたな。僕も頑張らないと。
さあいよいよクリーンナップだ。今日、2安打の3番、警戒しなくてはならないバッターの一人だ。
「打たせていくよー、強い打球行くと思うのでよろしくー」
「おー」
「任せとけー」
「俺の見せ場頼むぜー」
「珍プレーでもすんの?」
「なんでそうなるんだよ!好プレーするんじゃ、ボケ!ナメんじゃねーぞ、コラ!」
なんか見せ場寄越せとかアホがうるさいから、カットボールを引っ掛けて内野ゴロにしてくれると助かるんだが。
まずは外に逃げるカーブを投げ、内側に食い込むシュート、落ちるシンカーを投げ2ボール、1ストライクとなった4球目だった、、。
「あっ!」
『また打ち上げたー、今度はセンターフライ。センター少し前進してキャッチし、ツーアウトです』
あー、フライになっちゃったよ。まーたなんか言われそうだなー。
「康誠ー、調子いいなー、良いボール来てたぞー」
「うぃーす、ありがとーございまーす」
「見せ場くれてありがとー」
「くっそー、山下先輩めー、俺の見せ場奪いやがってー!」
「センターフライにサードは関係ないだろ!」
「ボール来ないんじゃ、俺の活躍がテレビに映んねーじゃねーかよ!」
「お前は、そんな不純な動機でいたのかよ!」
「キャハハはは、やっぱ良ちゃんだね」
「アホが映って恥晒すだけだから止めときなー」
「外野は黙ってろって言ってんだろ!アホ弘ー!」
さあ次は4番、なんとかランナー無しで向かえられる事ができた。どの程度のバッターか試してやる。
『カキーーン』
「!!」
『打ったー、ライトオーバー、鋭い打球がライト頭上を襲いましたー、2ベースヒットー。目の覚めるような打球が飛んでいきましたー、反撃開始となるかー』
ヤバっ!失敗したなー、もっと慎重に行くべきだった。
しかしなんて奴だ!カットボールでバットの芯を外していたと思うんだけど?あんな打球飛ばせるもんなの?
とんでもねー奴だな!?ここは逆にホームランにならなくて良かったと考えよう。次のバッターに集中だ。
「康ちゃん、切り替え、切り替え」
「バッター、集中」
「康誠ー、ボールは来てるぞー、落ち着いていこう」
「だからこっちに打たせろって言ってんだろー。俺だったら捕れたのによー」
「あんなの捕れる訳ねーだろ!アホかお前は!?」
「そうやって自分だけ目立とうとしてるから打たれんだよ。野球は一人でするんじゃねーんだぞ」
「自分だけ目立とうとしてんのはオメーだろ!つーか、お前はどっちの味方なんだよ!ピッチャーに労いの言葉かけてやるのが普通だろ!」
「翔真ー、アホ相手にムキになるなー。ツーアウトだー、締まってくぞー」
「おー」
ふふふ、良ちゃんなりの激励だよね。痛打されて動揺してたんだけど、一気に心が落ち着いたよ。
さあ次のバッターも当たってるバッターだ。気の抜けないバッターが続く。集中しなおそう。
『さんしーーん。バッターアウト、スリーアウトチェンジ』
「石橋君ナイスピー」
「康ちゃんナイスピー」
「よーし、良いボールだったぞー」
「三振かよ!まーたこっちに来なかったよ」
「良かったね。恥晒しにならなくて」
「どうしてだよ?」
「エラーしてる姿がテレビに映っちゃうじゃん」
「しねーつってんだろうが!」
「キャハハはは、、」
初球松井先輩は内角にカーブを要求してきた。カーブでバッターをのけ反らせ、外角にシュート、シンカーと投げ込ませ空振りをとり三振に打ち取った。
流石のリードだった。何を投げたらいいか困っている僕を上手くリードし、バッターの打ち気を逸らすリードだった。
「よーし、なんか打たれる気がしない。このまま行くぞー」
「おー、このまま行こうぜー」
「調子乗ってるとまた打たれるぞー」
「だから、オメーはどっちの味方なんだよ!ネガティブなことしか言えないのかよ!」
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
M性に目覚めた若かりしころの思い出
kazu106
青春
わたし自身が生涯の性癖として持ち合わせるM性について、それをはじめて自覚した中学時代の体験になります。歳を重ねた者の、人生の回顧録のひとつとして、読んでいただけましたら幸いです。
一部、フィクションも交えながら、述べさせていただいてます。フィクション/ノンフィクションの境界は、読んでくださった方の想像におまかせいたします。
やくびょう神とおせっかい天使
倉希あさし
青春
一希児雄(はじめきじお)名義で執筆。疫病神と呼ばれた少女・神崎りこは、誰も不幸に見舞われないよう独り寂しく過ごしていた。ある日、同じクラスの少女・明星アイリがりこに話しかけてきた。アイリに不幸が訪れないよう避け続けるりこだったが…。

燦歌を乗せて
河島アドミ
青春
「燦歌彩月第六作――」その先の言葉は夜に消える。
久慈家の名家である天才画家・久慈色助は大学にも通わず怠惰な毎日をダラダラと過ごす。ある日、久慈家を勘当されホームレス生活がスタートすると、心を奪われる被写体・田中ゆかりに出会う。
第六作を描く。そう心に誓った色助は、己の未熟とホームレス生活を満喫しながら作品へ向き合っていく。

女豹の恩讐『死闘!兄と妹。禁断のシュートマッチ』
コバひろ
大衆娯楽
前作 “雌蛇の罠『異性異種格闘技戦』男と女、宿命のシュートマッチ”
(全20話)の続編。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/329235482/129667563/episode/6150211
男子キックボクサーを倒したNOZOMIのその後は?
そんな女子格闘家NOZOMIに敗れ命まで落とした父の仇を討つべく、兄と娘の青春、家族愛。
格闘技を通して、ジェンダーフリー、ジェンダーレスとは?を描きたいと思います。


隣人の女性がDVされてたから助けてみたら、なぜかその人(年下の女子大生)と同棲することになった(なんで?)
チドリ正明@不労所得発売中!!
青春
マンションの隣の部屋から女性の悲鳴と男性の怒鳴り声が聞こえた。
主人公 時田宗利(ときたむねとし)の判断は早かった。迷わず訪問し時間を稼ぎ、確証が取れた段階で警察に通報。DV男を現行犯でとっちめることに成功した。
ちっぽけな勇気と小心者が持つ単なる親切心でやった宗利は日常に戻る。
しかし、しばらくして宗時は見覚えのある女性が部屋の前にしゃがみ込んでいる姿を発見した。
その女性はDVを受けていたあの時の隣人だった。
「頼れる人がいないんです……私と一緒に暮らしてくれませんか?」
これはDVから女性を守ったことで始まる新たな恋物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる