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第三章 道のり
最終話 凄すぎる先輩
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「コーチ次の回は僕がコーチャーズボックスに立ちます」
「祐希何か考えがあるのか?」
「はい」
「分かった。でも十分気をつけるんだぞ」
「はい」
「それとあまり露骨なことはするなよ」
「はい、分かってますって、上手くやりますから」
盗塁阻止に重要な事は向こうに色々考えさせて、コンマ1秒でもスタートを遅らせること。
祐希は何か考えがあるようで、コーチャーボックスに入ると言い出していた。敵チームに余計なことを考えさせてやるとでも思っているのだろう。不敵な笑いを見せていた。
4回表は4番から始まる打順だった。逆転した後なだけに先頭バッターは出したくなかったのだが、野手の間に落ちてしまう、ついてないヒットが出てしまった。
当然、源工業のランナーは走る気満々で大きなリードを取ってくる。
俺は敵の様子を探るため初球、大きく外した投球をさせた。ランナーはスタートを切ったように見せかけ止まる。
バッターもバントの様子は見られなかった。
「晃ちゃーん、変化球の時ボールを長く持つクセ注意ねー」
「はーい」
その時祐希からそんな声が飛んだ、そんなクセあったか?と思ったが祐希のことだ、何か考えがあってのことなのだろう。
晃ちゃんは一度牽制球を送りこちらに向き直った時また声が飛んだ。
「あと縫い目探してボール捏ねくり回すのも無しねー」
「了解」
もう1球外したいところだが、フォアボールのことも考え覚悟を決めストライクのボールを要求する。
頭の中でキャッチしてからの動作の確認し盗塁に備える。そしてヨッシーに言われた言葉を思い出す。
コントロール注意、コントロール注意。
晃ちゃんが投球モーションに入ったとき、ランナーがスタートしたのが目に入った。
来た!!
・
・
・
・
「アウトー」
「しゃーーっ!!見たかー!!」
2塁審の腕が上がった瞬間、叫び声を上げガッツポーズに力が入った。
タイミング的にアウトに見えたが、塁審のコールがあるまで数分あるように感じた。その間中ずっと心臓止まっていたと思う。
コーチャーズボックスに入っている祐希が飛び跳ね、頭の上で両手を叩いているのが見える。
内外野からも雄叫びのような声が響き渡っていた。そこでまた喜びの感情が込み上げてきた。
「皆んなー、待たせたなー!」
「松井君ならやってくれると思ってたよー」
「たっかちゃーん、まだ1個目だからねー、調子乗んなー」
「おせーんだよ、テメーは、でもナイス送球だったぞー」
「豚足せんぱーい、待ってましたよー」
なんか豚足って聞こえたような気がしたがまあいいか。
取り敢えず1つ封じてやった。盗塁の瞬間、明らかに重心移動に違和感が見られた。
盗塁の時は一直線にセカンドベースに向かって行かなくてはならない。祐希が余計な事を言って惑わしてくれたお陰だろう。
祐希の言葉のお陰でランナーはピッチャーを意識してしまっていた。ストレートの時より変化球の時の方が盗塁成功率は高い。
余計な言葉を投げかけた事によって、変化球かどうか見極めようとしたため、一瞬スタートが遅れ、それにプラス、ピッチャーの方に意識がいっていたため、重心がセカンドベースからピッチャーの方に流れてきてしまっていた。
本当に些細な差だがその些細な差があったお陰でアウトにすることが出来た。
それと皆んなが逆転してくれたお陰もあるだろう。イケイケのムードから逆転されたことによって、盗塁を失敗する訳にはいかないという気持ちが働いていた事だろう。
それに加え俺は皆んなから力強い言葉を貰い、テンションは上がりまくっていた。
このアウトは皆んなのお陰だ。皆んながお膳立てしてくれたお陰だ。
「引き続き打たせていくんで、よろしくー」
「おー」
後続を打ち取りベンチに帰ると竜ちゃん、翔真、晃ちゃんが何やら密談しているようだった。
俺は嫌な予感をしながら警戒しながら近づいていく。
「貴ちゃん、お帰りー」
「貴洋、お帰りー」
「貴ちゃん、お帰りー」
「何だよそれー!」
「しょうがないから混ぜてやるよ」
「俺たちの足引っ張んなよ」
「使えない時は直ぐ追い出すからなー」
「お前らは小学生か!」
結果を出したから迎え入れてやるって意味なのか?泣かせるようなことしてくるなよ!
その後、源工業の攻撃は単調なものとなり3回以降得点されることはなかった。
打線は絶好調で得点を次々と重ねていき、3対10と終わってみれば圧勝だった。
最初は本当にどうなってしまうのかと思ったが、心強い仲間たちの助けがあったお陰で俺達は準々決勝を突破し準決勝進出を決めた。
「うっしゃー、なんかもー、誰にも負ける気しねー。俺等は最強だー」
「何言ってんだお前は、恥ずかしいからそういうこと言うの止めろよ」
「何ー!」
「コーチ、貴ちゃんがまた重症でーす。今度は頭が重症でーす」
「何だとー!」
「くっそー、人が褒めてやってんのにいい気になりやがって、お前らなんてやっぱりクソだ。もう二度と褒めてやんねーからな、この低脳サルども!」
「だからさっきから何言ってんだよ!」
「誰が褒めてくれって頼んだよ!」
「病院行けよ!」
「なんか今回僕たちまるで出番なかったね」
「ホントだよ。先輩達凄すぎだよ」
「重っ苦しいムードを変えるホームラン打った中村先輩、相手のお家芸を奪う走塁をした久保先輩に我らの知恵袋の祐希先輩」
「あと一応、最速盗塁集団の盗塁を阻止した松井先輩もな」
「一応ね。ってもう皆んないなくなってるよ!」
「何ー!さっきまで喧嘩してたじゃん?うっそー、また置いてけぼりなのー!」
「祐希何か考えがあるのか?」
「はい」
「分かった。でも十分気をつけるんだぞ」
「はい」
「それとあまり露骨なことはするなよ」
「はい、分かってますって、上手くやりますから」
盗塁阻止に重要な事は向こうに色々考えさせて、コンマ1秒でもスタートを遅らせること。
祐希は何か考えがあるようで、コーチャーボックスに入ると言い出していた。敵チームに余計なことを考えさせてやるとでも思っているのだろう。不敵な笑いを見せていた。
4回表は4番から始まる打順だった。逆転した後なだけに先頭バッターは出したくなかったのだが、野手の間に落ちてしまう、ついてないヒットが出てしまった。
当然、源工業のランナーは走る気満々で大きなリードを取ってくる。
俺は敵の様子を探るため初球、大きく外した投球をさせた。ランナーはスタートを切ったように見せかけ止まる。
バッターもバントの様子は見られなかった。
「晃ちゃーん、変化球の時ボールを長く持つクセ注意ねー」
「はーい」
その時祐希からそんな声が飛んだ、そんなクセあったか?と思ったが祐希のことだ、何か考えがあってのことなのだろう。
晃ちゃんは一度牽制球を送りこちらに向き直った時また声が飛んだ。
「あと縫い目探してボール捏ねくり回すのも無しねー」
「了解」
もう1球外したいところだが、フォアボールのことも考え覚悟を決めストライクのボールを要求する。
頭の中でキャッチしてからの動作の確認し盗塁に備える。そしてヨッシーに言われた言葉を思い出す。
コントロール注意、コントロール注意。
晃ちゃんが投球モーションに入ったとき、ランナーがスタートしたのが目に入った。
来た!!
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「アウトー」
「しゃーーっ!!見たかー!!」
2塁審の腕が上がった瞬間、叫び声を上げガッツポーズに力が入った。
タイミング的にアウトに見えたが、塁審のコールがあるまで数分あるように感じた。その間中ずっと心臓止まっていたと思う。
コーチャーズボックスに入っている祐希が飛び跳ね、頭の上で両手を叩いているのが見える。
内外野からも雄叫びのような声が響き渡っていた。そこでまた喜びの感情が込み上げてきた。
「皆んなー、待たせたなー!」
「松井君ならやってくれると思ってたよー」
「たっかちゃーん、まだ1個目だからねー、調子乗んなー」
「おせーんだよ、テメーは、でもナイス送球だったぞー」
「豚足せんぱーい、待ってましたよー」
なんか豚足って聞こえたような気がしたがまあいいか。
取り敢えず1つ封じてやった。盗塁の瞬間、明らかに重心移動に違和感が見られた。
盗塁の時は一直線にセカンドベースに向かって行かなくてはならない。祐希が余計な事を言って惑わしてくれたお陰だろう。
祐希の言葉のお陰でランナーはピッチャーを意識してしまっていた。ストレートの時より変化球の時の方が盗塁成功率は高い。
余計な言葉を投げかけた事によって、変化球かどうか見極めようとしたため、一瞬スタートが遅れ、それにプラス、ピッチャーの方に意識がいっていたため、重心がセカンドベースからピッチャーの方に流れてきてしまっていた。
本当に些細な差だがその些細な差があったお陰でアウトにすることが出来た。
それと皆んなが逆転してくれたお陰もあるだろう。イケイケのムードから逆転されたことによって、盗塁を失敗する訳にはいかないという気持ちが働いていた事だろう。
それに加え俺は皆んなから力強い言葉を貰い、テンションは上がりまくっていた。
このアウトは皆んなのお陰だ。皆んながお膳立てしてくれたお陰だ。
「引き続き打たせていくんで、よろしくー」
「おー」
後続を打ち取りベンチに帰ると竜ちゃん、翔真、晃ちゃんが何やら密談しているようだった。
俺は嫌な予感をしながら警戒しながら近づいていく。
「貴ちゃん、お帰りー」
「貴洋、お帰りー」
「貴ちゃん、お帰りー」
「何だよそれー!」
「しょうがないから混ぜてやるよ」
「俺たちの足引っ張んなよ」
「使えない時は直ぐ追い出すからなー」
「お前らは小学生か!」
結果を出したから迎え入れてやるって意味なのか?泣かせるようなことしてくるなよ!
その後、源工業の攻撃は単調なものとなり3回以降得点されることはなかった。
打線は絶好調で得点を次々と重ねていき、3対10と終わってみれば圧勝だった。
最初は本当にどうなってしまうのかと思ったが、心強い仲間たちの助けがあったお陰で俺達は準々決勝を突破し準決勝進出を決めた。
「うっしゃー、なんかもー、誰にも負ける気しねー。俺等は最強だー」
「何言ってんだお前は、恥ずかしいからそういうこと言うの止めろよ」
「何ー!」
「コーチ、貴ちゃんがまた重症でーす。今度は頭が重症でーす」
「何だとー!」
「くっそー、人が褒めてやってんのにいい気になりやがって、お前らなんてやっぱりクソだ。もう二度と褒めてやんねーからな、この低脳サルども!」
「だからさっきから何言ってんだよ!」
「誰が褒めてくれって頼んだよ!」
「病院行けよ!」
「なんか今回僕たちまるで出番なかったね」
「ホントだよ。先輩達凄すぎだよ」
「重っ苦しいムードを変えるホームラン打った中村先輩、相手のお家芸を奪う走塁をした久保先輩に我らの知恵袋の祐希先輩」
「あと一応、最速盗塁集団の盗塁を阻止した松井先輩もな」
「一応ね。ってもう皆んないなくなってるよ!」
「何ー!さっきまで喧嘩してたじゃん?うっそー、また置いてけぼりなのー!」
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