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第二章 試合開始 第二シード校
第6話 ファインプレイ連発
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「ツーアウトー」
「ツーアウトー」
晃ちゃんが人差し指と小指を立てながら外野に向かって大声を上げてきたので、僕、山下隼人も同じ仕草をし、大きな声を上げた。
皆んなガチガチになっていて、いつもと全然違う動きだったのでハラハラして見ていたが。どうやら皆んな立ち直ってくれたようだ。
自然と声が出るようになってきた。いつもと変わらない雰囲気になってきた。
それに今の翔ちゃんのファインプレイ、鳥肌がたった。
またこっちに来るかもと思った打球を飛び込んできてもぎ取ると、素早くトスし
ボールがパン、パーンとなったと思ったら2人の塁審がアウトーと叫んでいた。
守備ってこんなにカッコいいんだと震えた瞬間だった。
僕の野球経験は遊びでやっていた程度だった。守備なんて飛んできたボールを捕ればいいだけだと思っていた。
だが、この捕るだけというのが難しい。
前に落ちると思ったボールが急に伸び上がってきて僕の頭を越えていったり、高く上がったフライは風の影響を受けフラフラと動いてしまい、落下点を見誤ったりよくしてしまっていた。
ゴロできたボールもバウンドが変わって、浮いたり沈んだりするし、雨で濡れていたりしたら滑って本当に予想外の動きをする時がある。
僕は足が速いという理由でセンターの守備を任されることになった。
「いいか山下。センターはなライト、レフトと違って左右の打球は全てフェアグラウンド上になる。つまり捕り損なったら全てフェアプレイ。その間にランナーがどんどん先に進んで仕舞うんだぞ。センターのミスはその試合の勝敗を左右しかねないんだからな、慎重にいけよ」
センターを任すと言われた後、ヨッシーはそんなことを言ってきた。
練習では僕が一番守備範囲が広かった。ヨッシーが打ち上げたボールは僕が一番遠くで捕ることができた。
でも試合になると良ちゃんや将ちゃんの方が上手かった。なんかボールに向かって一直線に走っていくって感じだった。
経験の差ってヤツなのだろうが。だから僕は練習をした。誰より多くノックを進んで受けた。
陸上部にいた時よりも多く走っているんじゃないかってほど走った。
でも楽しかった。
取り敢えず練習では一番上手かったので、経験者の2人より優位なことがあるのが嬉しくて仕方がなかった。
僕の足が活かせるポジションがあるということが本当に嬉しかった。
『カッキーーン』
そんな僕のいるセンターポジションに打球が舞い上がってきた。
勢い良く舞い上がった白球に向かって一直線に走り出す。
追い付けそうと思い、目一杯グラブを差し出した。
受け身を取ることなど考えることなく白球に飛び付いた。
滑り込んだことで舞い上がった土と芝生が口に入り、苦味とザラついた味が口の中に広がる。
手にずしりとした感触はあった。
きっと捕ることは出来たはずだ。体が地面に打ち付けられ痛みが走り、顔をしかめながらグラブの中を確かめる。
白球は見事、グラブに収められていた。
しばしグラブの中の白球を見つめ呆然としていたが、ライトの将ちゃんが飛ばした帽子を拾ってきてくれ被せながら興奮気味に言ってきた。
「すごい!!やったじゃん。ナイスプレイ!!」
しばらく放心状態でいたがそう声を掛けられ、ようやく自分がナイスキャッチしたんだと実感した。
そして、白球の収まったグラブを高々と掲げ大声を上げた。
「よっしゃー、どんなもんじゃーーい!」
『捕った、捕った、捕りましたー。センター山下選手。ダイビングキャッチです。またしても耶麻高校にファインプレーが飛び出しましたー。センターの頭を越えるかと思った打球を見事グローブに収めてみせましたーっ!』
『いやー、ナイスプレイです。耶麻高校は守備が鍛えられてますねー』
「よっしゃー!!」
祐ちゃんの声がここまで聞こえてきた。ベンチの方に目を向けると両手を上げ、ベンチを飛び出しジャンプして喜んでいた。
「ナイスキャッチーー」
ヨッシーも大きなガッツポーズし何度もこちらに向かって拳を突き出していた。
「と、捕れたんだよな?」
今の打球を捕れたことを確認するようにグラブの中に目を向ける。入っているボールを再確認し安堵の表情を浮かべもう一度叫んだ。
「やったーー!、捕ったぞーー!」
「ナイスキャッチ山下くーん」
そう言いながら将ちゃんは僕の手を引き、立たせると抱きついてきた。
一緒に野球部に入る前まではほとんど口を利くことはなかったのだが、ここ最近の練習で距離は一気に縮まっていた。
練習試合では落球してしまうことが多かった僕が、ファインプレイしてみせたことが我がことのように嬉しかったようだ。
よくやったと何度も何度も叩いてくる。
僕が上手くいかなくて悩んでいたのを皆んな知っていたのだろう。なんかこういうの本当にいいな。陸上を辞めて、野球を選んで本当に良かったと思った。
やっぱりチームで一丸になるって楽しい。
「ナイスキャッチーー。お調子者のくせにナイスプレイだったぞー」
同じ初心者として一緒にレクチャーを受けることが多い、仲良しの智ちゃんも皮肉混じりにそんな声を上げた。
「はー!ナイスキャッチした隼人様に何ふざけたこと言ってんだー、土下座して媚びへつらえー」
「何言ってんだ、バーカ!」
「隼ちゃーん、ありがとう」
「いつも全部俺に任せろって言ってんだろー」
「調子乗んなーっ!」
ナインは興奮冷めぬまま、お互いにハイタッチを繰り返しながらベンチに戻ってきた。
「ナイスキャッチー」
晃ちゃんはベンチ前で拍手しながら迎えてくれた。
「隼人様に任せとけばなんでも大丈夫だっつーの」
親指を立てグッドのポーズをし応える。
そこへ翔ちゃんが走り込んで来て晃ちゃんに抱きついた。
「俺のプレイも忘れてねーだろーなー」
「あはは、ごめん、ありがとう」
「ったくー。オメーは何一人でムキになってんだよ。うちらが後ろにいるの忘れてんじゃねーよ」
「ごめんなさい」
「藤井先輩、山下先輩、サイコーでした。僕も早く活躍したいです」
「良太、レフトオーバーのヒットを1点で抑えられたのは大きかったぞ、あれもファインプレイだ。皆んなナイスプレイだったぞ」
ヨッシーは全員に拍手を送っていた。
「コーチも前進守備やめさせて中間守備にさせたのナイス判断でしたね」
祐ちゃんがヨッシーに向かってそんなことを言っていた。
凄い、なんか凄い、僕の分からないところでなんか色々あったんだ。
「よーし、今度はうちらの番だーー。小次郎のやつをボコボコにしてやるぞー」
「おーー!!」
『耶麻高校ナイスプレイが続きスリーアウトチェンジです』
1回表2対0
「ツーアウトー」
晃ちゃんが人差し指と小指を立てながら外野に向かって大声を上げてきたので、僕、山下隼人も同じ仕草をし、大きな声を上げた。
皆んなガチガチになっていて、いつもと全然違う動きだったのでハラハラして見ていたが。どうやら皆んな立ち直ってくれたようだ。
自然と声が出るようになってきた。いつもと変わらない雰囲気になってきた。
それに今の翔ちゃんのファインプレイ、鳥肌がたった。
またこっちに来るかもと思った打球を飛び込んできてもぎ取ると、素早くトスし
ボールがパン、パーンとなったと思ったら2人の塁審がアウトーと叫んでいた。
守備ってこんなにカッコいいんだと震えた瞬間だった。
僕の野球経験は遊びでやっていた程度だった。守備なんて飛んできたボールを捕ればいいだけだと思っていた。
だが、この捕るだけというのが難しい。
前に落ちると思ったボールが急に伸び上がってきて僕の頭を越えていったり、高く上がったフライは風の影響を受けフラフラと動いてしまい、落下点を見誤ったりよくしてしまっていた。
ゴロできたボールもバウンドが変わって、浮いたり沈んだりするし、雨で濡れていたりしたら滑って本当に予想外の動きをする時がある。
僕は足が速いという理由でセンターの守備を任されることになった。
「いいか山下。センターはなライト、レフトと違って左右の打球は全てフェアグラウンド上になる。つまり捕り損なったら全てフェアプレイ。その間にランナーがどんどん先に進んで仕舞うんだぞ。センターのミスはその試合の勝敗を左右しかねないんだからな、慎重にいけよ」
センターを任すと言われた後、ヨッシーはそんなことを言ってきた。
練習では僕が一番守備範囲が広かった。ヨッシーが打ち上げたボールは僕が一番遠くで捕ることができた。
でも試合になると良ちゃんや将ちゃんの方が上手かった。なんかボールに向かって一直線に走っていくって感じだった。
経験の差ってヤツなのだろうが。だから僕は練習をした。誰より多くノックを進んで受けた。
陸上部にいた時よりも多く走っているんじゃないかってほど走った。
でも楽しかった。
取り敢えず練習では一番上手かったので、経験者の2人より優位なことがあるのが嬉しくて仕方がなかった。
僕の足が活かせるポジションがあるということが本当に嬉しかった。
『カッキーーン』
そんな僕のいるセンターポジションに打球が舞い上がってきた。
勢い良く舞い上がった白球に向かって一直線に走り出す。
追い付けそうと思い、目一杯グラブを差し出した。
受け身を取ることなど考えることなく白球に飛び付いた。
滑り込んだことで舞い上がった土と芝生が口に入り、苦味とザラついた味が口の中に広がる。
手にずしりとした感触はあった。
きっと捕ることは出来たはずだ。体が地面に打ち付けられ痛みが走り、顔をしかめながらグラブの中を確かめる。
白球は見事、グラブに収められていた。
しばしグラブの中の白球を見つめ呆然としていたが、ライトの将ちゃんが飛ばした帽子を拾ってきてくれ被せながら興奮気味に言ってきた。
「すごい!!やったじゃん。ナイスプレイ!!」
しばらく放心状態でいたがそう声を掛けられ、ようやく自分がナイスキャッチしたんだと実感した。
そして、白球の収まったグラブを高々と掲げ大声を上げた。
「よっしゃー、どんなもんじゃーーい!」
『捕った、捕った、捕りましたー。センター山下選手。ダイビングキャッチです。またしても耶麻高校にファインプレーが飛び出しましたー。センターの頭を越えるかと思った打球を見事グローブに収めてみせましたーっ!』
『いやー、ナイスプレイです。耶麻高校は守備が鍛えられてますねー』
「よっしゃー!!」
祐ちゃんの声がここまで聞こえてきた。ベンチの方に目を向けると両手を上げ、ベンチを飛び出しジャンプして喜んでいた。
「ナイスキャッチーー」
ヨッシーも大きなガッツポーズし何度もこちらに向かって拳を突き出していた。
「と、捕れたんだよな?」
今の打球を捕れたことを確認するようにグラブの中に目を向ける。入っているボールを再確認し安堵の表情を浮かべもう一度叫んだ。
「やったーー!、捕ったぞーー!」
「ナイスキャッチ山下くーん」
そう言いながら将ちゃんは僕の手を引き、立たせると抱きついてきた。
一緒に野球部に入る前まではほとんど口を利くことはなかったのだが、ここ最近の練習で距離は一気に縮まっていた。
練習試合では落球してしまうことが多かった僕が、ファインプレイしてみせたことが我がことのように嬉しかったようだ。
よくやったと何度も何度も叩いてくる。
僕が上手くいかなくて悩んでいたのを皆んな知っていたのだろう。なんかこういうの本当にいいな。陸上を辞めて、野球を選んで本当に良かったと思った。
やっぱりチームで一丸になるって楽しい。
「ナイスキャッチーー。お調子者のくせにナイスプレイだったぞー」
同じ初心者として一緒にレクチャーを受けることが多い、仲良しの智ちゃんも皮肉混じりにそんな声を上げた。
「はー!ナイスキャッチした隼人様に何ふざけたこと言ってんだー、土下座して媚びへつらえー」
「何言ってんだ、バーカ!」
「隼ちゃーん、ありがとう」
「いつも全部俺に任せろって言ってんだろー」
「調子乗んなーっ!」
ナインは興奮冷めぬまま、お互いにハイタッチを繰り返しながらベンチに戻ってきた。
「ナイスキャッチー」
晃ちゃんはベンチ前で拍手しながら迎えてくれた。
「隼人様に任せとけばなんでも大丈夫だっつーの」
親指を立てグッドのポーズをし応える。
そこへ翔ちゃんが走り込んで来て晃ちゃんに抱きついた。
「俺のプレイも忘れてねーだろーなー」
「あはは、ごめん、ありがとう」
「ったくー。オメーは何一人でムキになってんだよ。うちらが後ろにいるの忘れてんじゃねーよ」
「ごめんなさい」
「藤井先輩、山下先輩、サイコーでした。僕も早く活躍したいです」
「良太、レフトオーバーのヒットを1点で抑えられたのは大きかったぞ、あれもファインプレイだ。皆んなナイスプレイだったぞ」
ヨッシーは全員に拍手を送っていた。
「コーチも前進守備やめさせて中間守備にさせたのナイス判断でしたね」
祐ちゃんがヨッシーに向かってそんなことを言っていた。
凄い、なんか凄い、僕の分からないところでなんか色々あったんだ。
「よーし、今度はうちらの番だーー。小次郎のやつをボコボコにしてやるぞー」
「おーー!!」
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