〈異類婚BL〉旦那様は大鷲様♡

山海 光

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後宮編

24.エピローグ

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満開の桃の下、二人の男が戯れている。

たお、嫋! ほら見ろ、この時期は綺麗に咲いてるだろ?」
「ふふ、本当ですね」

嫋は桃の枝を1つ手折り、朱鷹しゅようの髪へと挿してみる。

「……なんで俺?」
「まあ、似合っていますよ?」

首を傾げる朱鷹にクスクスと笑い、その烏のような黒髪を撫でる。朱鷹は何か言いたげだったが、嫋に撫でられれば、顔を蕩けさせて幸せそうに頬を緩めた。



あれから数十年。

人里を離れて長い2人は、長安がどうなったのかを知らない。
噂によると、皇太子から帝位についた呂楼りょろうも息子に譲位し、各地を悠々と回っているとか、ある人を探しているとか。

最近の嫋は、妖や神たちの生贄として嫁いだ人間たちと世間話をして、子育ての大切さだとか、夫が今日もかっこいいのだとか、そんな惚気話ばかり言い合っている。
肝心の相公しゃんごんが迎えに来てもずっと話し込むのが朱鷹の悩みだ。後ろからグリグリと頭を擦り付けてようやく、そろそろ帰りましょうか、と愛らしく微笑むのだ。

一方の朱鷹は、人間の味覚を持つ娘子にゃんずのため、中華の美食を集めては、目を輝かせて嫋の反応をうかがっていた。
暖かい土地からしか穫れない新鮮なライチが好評で、朱鷹は頻繁に千里を翔けて南の土地へと赴く。

「ねえ、僕もいるんだけど」

イチャイチャとくっつき合う2人にゲンナリとしながら、藍狐らんこが重いため息をつく。

藍狐はまだ嫋への想いを捨てきれていない。
妊婦姿で腹を愛おしそうに撫でる度、朱鷹のために蕩ける瞳を見る度、藍狐の胸は刺されたように痛む。

いつまで経っても「もしも」を考えられずにはいられない。嫋を体のうちに抱き寄せた一夜が忘れられないのだ。

それでも新しい恋を見つけるため、食人の衝動を抑える試行錯誤を嫋や朱鷹と共に重ねていた。
発情期前にたらふく動物の肉を食べるとか、もういっそ全く肉を食べない、とか色々である。


当初、人を好んで食う朱鷹が生贄を娶ったというのだから、妖たちはペロリと平らげておしまいだろうと思っていた。
しかし、そんな彼らの予想を反して、朱鷹は嫋を深く愛している。

嫋と朱鷹は何十羽という子供を育てあげた。
子供たちが巣立つ度に号泣し、2人で肩を抱いてその悲しさを共有するのだから、子供たちは少し呆れてしまっている。
しかし同時に、自分が巣立つ時はどれだけ泣いてくれるのだろう、という期待も子供たちにはあった。

嫋の髪に挿している簪が揺れ、黒い羽が柔い頬を擽った。
いつか妖としての寿命が終わるまで、末永く寄り添って生きていくのだ。








以下後書き─────

無事完走しました。
殴り書きかつ推敲無しなので、誤字脱字や設定と矛盾した部分も多くあったと思います。(幾つかは投稿後に修正しましたが、それでも全部は直しきれていないです)

素人の読みづらい文章であったにも関わらず、最後まで読んでくださった方には感謝しかありません。

あとはifのbadendを番外編にて2話載せたら終わりです。
♡など頂けたらこれからの作品や番外編執筆の励みになります。

良いのが思いついたら追加で書きたいなーと思ってます。
呂苑が幼い嫋を買ってたときの話とか、嫁いだ先が藍狐だったルートとか、朱鷹が実は昔妓楼の女を買ってたのに嫉妬した嫋のお仕置SMプレイとか、色々。
絶対書く、という保証はないですが……!
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