13 / 26
妖編
13.喧嘩と過去♡
しおりを挟む「朱鷹様! そんなに大きもの食べれません! もう少し刻んでください、ほら、貸して」
「ご、ごめん」
手に持っていた魚を奪われ、プンスカと怒る嫋の背中を見つめる朱鷹。
この光景、前にも見たことがある気がするな、と妖鳥は首を傾げる。
抱卵期を過ぎ、全ての卵たちが無事孵化した。
嫋は子供たちが可愛くて仕方がないようで、まだ人に化けることの出来ない雛鳥たちを一生懸命育てている。
言葉は通じない。それでも嫋が良く面倒を見ているためか、「この人が母鳥だ」ということは理解出来ているらしい。
今のところ餌がきちんと与えられているため、雛鳥同士の殺し合いは起きていない。
1匹、末っ子だけは体が小さかった。朱鷹は冷ややかな目でその末っ子を見下ろしているが、嫋はそれに気づいていないようである。
雛たちは灰色のふわふわな塊のようで、嫋は子供たちを頬で擽ってはくすくすと笑っている。
「ほら、慌てないでお食べ」
嫋は小さく刻んでやった魚を雛鳥の口に運ぶ。雛はピィピィと鳴きながら、必死になって餌にかぶりついている。
「ふふ、可愛い子」
「嫋~……」
「やめてください、まだご飯中なんですよ」
朱鷹がそろそろと隣にやって来て、嫋に後ろから抱きつく。ずり、と腰を擦り付けられるが、嫋は素知らぬ顔で断った。
「うう、子供が生まれてから交尾できてねぇ」
「ぁん……この子達が目をあけられるようになるまで、もう少し我慢してくださいね」
「……」
朱鷹が情けなく眉を下げる。嫋は困ったように微笑み、子供たちを愛おしげに撫でるばかり。
最近の嫋は睡眠時間すら減らして子ども達の傍におり、少しでも触れば嫌がられてしまう。
朱鷹はじっと子供たちを憎らしげに睨む。
特に気に入らないのは末っ子だ。足取りも拙く、これでは目を開けるのもいつになる事やら。
自分の娘子が取られた、と本能的に感じ取った朱鷹は、暗い目でグッと奥歯を噛み締めた。
夜、嫋はいつも通り雛鳥たちを寝かしつけていると、ふと後ろから影が覆い被さった。
「朱鷹様? どうなさいましたか」
「嫋、このところずっと寝れてねぇだろ? 相公と一緒に寝よう」
「ありがたいのですが、嫋は自分の意思でこの子達の傍におりますから……あっ」
出産後に大きくなった尻を包むように撫でられ、思わず嫋の肩が跳ねる。
抵抗する嫋を押さえ込み、朱鷹の手は下着の中に入り込む。穴をトントンと指先で叩くと、ちゅうちゅうと指先に吸い付いてきた。
「や、ぁ……だめ、だめ……」
「腰が揺れてるぞ、嫋♡」
「だってぇ……ね、やめて……この子たちはまだ雛鳥なの……」
「うんうん、嫋はいつも雛たちを見てて偉いな。でもちょっと頑張り過ぎだから、今日は相公と休もう」
「やだぁ……あ、あんっ」
ぬるん、と指が入る。嫋は朱鷹の腕に抱かれながら全身を愛撫され、なし崩しに挿入まで許してしまう。
嫋はビクビクと四肢を痙攣させながら、寝台の隅で縮こまっている雛たちに手を伸ばそうとした。
すると、筋張った手に恋人繋ぎをされ、その手は敷布に縫い付けられた。
朱鷹が嫋の腰を揺さぶり、ナカを蹂躙する。
こちゅッ こちゅッ こちゅんッ♡
「ぉ゛っ♡ やぁ、きゃあんッ♡」
「嫋、お前は子供に構いすぎだ。はぁ…母鳥は飯だけ与えてりゃいいんだよ」
唸るような声を漏らしながら嫋の子宮口を突き、ぐりぐりとその奥に入り込もうとする。
嫋を寝かしつけるため、少しでも疲弊させようと奥を重点的に責める。
嫋もそれが分かるのか、イヤイヤとかぶりを振りながら腰を逃れようとする。
こつっ♡ くりゅ、くりゅ♡
「やめ゛ッ♡ はーッ、はぁ、ぁ、ぁあッ♡」
「お前はこいつらの母である前に、俺の娘子なんだから……ッ」
ビク、と嫋の体が一際大きく痙攣する。ヒダも震えながらモグモグと朱鷹の肉棒を頬張り、精液を搾り取ろうと必死に動いている。
「はっ……ん、こいつ、やっぱ小せぇなあ……」
奥に精を出し、欲しがるヒダに擦り付けるように腰を動かしてやる。
ふと三兄弟の中でも小さい子供が視界に入り、朱鷹が手を伸ばす。
「しゅよ、さま……? なにを……」
末っ子が摘みあげられ、嫋は嫌な予感がして上体を起こす。肉棒が嫋の中から抜け、敷布を精液が汚した。
朱鷹はジロジロとその成長具合を確認し、ひょいと床に放り投げる───。
「あぁッ!」
嫋が咄嗟に雛を掴み、胸の中に抱える。雛鳥はぶるぶると震え、必死になって嫋にしがみついた。
バチンッ!
「何を考えてるんですか!?」
嫋は朱鷹を睨み、勢いよく頬をぶった。
嫋が朱鷹に手を上げたことなど1度もない。それどころか、養父の件以降、怒りで声を荒らげたことすらなかった。
「あ……なんで、そいつに……」
朱鷹は赤くなった頬に手を添え、呆然と嫋と頬を交互に見ている。ショックで言葉が出ず、パクパクと口を開閉している。
「最低、最低、最低ッ!」
「だ、だって、そいつ小さいし……大人になったって……餌ひとつ自分で取れなかったら……」
「それがなんなんですか! 私とあなたの子供ですよ!?」
嫋がボロボロと涙をこぼしながら雛を抱きしめる。朱鷹は信じられないものを見るような目で、じっとその光景を眺めている。
「大きくなれなかったら、私たちが守ってあげればいいじゃないですか! この子が大人になっても餌を取れならいなら、嫋が狩りにいきます!」
「にゃ、にゃんず……」
「触らないでッ!」
伸ばした手を叩き落とされ、嫋は子供を守るように縮こまった。
子供の体が小さくても、十分に成長できない個体だとしても、嫋は全ての子供に愛情を注ぐだのだろうか。
(なんで……)
「知らない……そんなの、知らない……」
呆然と朱鷹が呟く。ボタボタと大粒の涙を落とし、迷子の子供のような表情で嫋の体に縋りつく。
「朱鷹様……?」
朱鷹の様子がおかしいことに気づき、嫋が困惑したように言葉を漏らした。
戸惑ったように朱鷹の頬に手を添え、そっと顔をあげさせる。
顔をぐちゃぐちゃにして泣く朱鷹を見て、嫋の息が詰まった。
「……どうしてあのようなことをしたのか、ちゃんと嫋にお話できますか?」
「……」
嫋が静かに朱鷹の髪を梳かし、小さな子供に聞き出すような口調で朱鷹に問いかける。
朱鷹はそっと目を瞑り、嫋の手ぐしを受け入れた。
「俺、生まれつき体が小さかったんだ……。兄弟は妖だから嫌に知性があって、幼鳥の頃から毎日クチバシで羽毛を剥がされてた」
「そんな……」
嫋は朱鷹の幼少期を想像し、思わず手で口を覆う。
ずっと前、藍狐と朱鷹が言っていた「同族のはみ出し者だった時」というのは、体が小さかった頃の話なのだろうか、と考える。
「母も父も俺に餌をやるのを嫌がった。だって、親から貰った餌で今は生きれたとして、この屋敷から出たらすぐに死ぬ。育て損だったんだろ」
朱鷹はチラ、と嫋の隣で震えている雛鳥を横目で見た。見れば見るほど、幼い頃の朱鷹に似ている。
「俺は運良く大きくなれた。でもこいつは幼鳥の時の俺より小さい。だから、目も開かないうちに殺してやるのが……俺たちのためにも、こいつのためにもなると思って……」
朱鷹の憔悴しきった顔を見て、嫋は思わずぎゅっと強く抱きしめる。
汗が擦れるのも気にせず、朱鷹の耳元でそっと言葉を吹き込む。
「朱鷹様、嫋はどんなに体の小さい子であろうと、人に化けられないとしても……あなたとの子供なら、どんな苦労をしたって愛したいのです。どうかこのような事はなさらないでください……」
「う、あ……」
もし、朱鷹の母鳥が嫋のような人であったなら、どんなに幸せだっただろう───。
親鳥たちは体の小さい朱鷹に無関心で、運良く人に化けられた時にようやく付けられた名前は、「鷹」だった。
鷹は鷲より一回り小さい。
親鳥にとって、朱鷹は慈しみ育てた子供ではなく、「小さい鳥」でしかなかったのだ。
他のどんな鳥より巨大な躰を持ったあとも、親に付けられた名前に苦しんだ。
ある日、この屋敷に住んでいた全ての兄弟家族たちを殺してしまうほどに。
それから何百年と過ぎ、色んな名前を自分につけた。やっと朱鷹という名前を受け入れられるようになった時、嫋に出会ったのだ。
嫋に呼ばれた名前はまるで蜂蜜のような甘さで朱鷹の心を浮つかせた。
「朱鷹様、嫋とともにこの子を育ててくださいますか?」
「うん、うん……」
ぐり、と嫋の薄い腹に頭を擦り付ける。
朱鷹は嫋の腹に抱きつき、赤子のように縮こまって泣いていた。
83
お気に入りに追加
300
あなたにおすすめの小説
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた
翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」
そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。
チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。
幽閉王子は最強皇子に包まれる
皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。
表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。

美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました
SEKISUI
BL
ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた
見た目は勝ち組
中身は社畜
斜めな思考の持ち主
なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う
そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される
精霊の港 飛ばされたリーマン、体格のいい男たちに囲まれる
風見鶏ーKazamidoriー
BL
秋津ミナトは、うだつのあがらないサラリーマン。これといった特徴もなく、体力の衰えを感じてスポーツジムへ通うお年ごろ。
ある日帰り道で奇妙な精霊と出会い、追いかけた先は見たこともない場所。湊(ミナト)の前へ現れたのは黄金色にかがやく瞳をした美しい男だった。ロマス帝国という古代ローマに似た巨大な国が支配する世界で妖精に出会い、帝国の片鱗に触れてさらにはドラゴンまで、サラリーマンだった湊の人生は激変し異なる世界の動乱へ巻きこまれてゆく物語。
※この物語に登場する人物、名、団体、場所はすべてフィクションです。

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜
飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。
でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。
しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。
秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。
美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。
秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。
執着攻めと平凡受けの短編集
松本いさ
BL
執着攻めが平凡受けに執着し溺愛する、似たり寄ったりな話ばかり。
疲れたときに、さくっと読める安心安全のハッピーエンド設計です。
基本的に一話完結で、しばらくは毎週金曜の夜または土曜の朝に更新を予定しています(全20作)
臣下が王の乳首を吸って服従の意を示す儀式の話
八億児
BL
架空の国と儀式の、真面目騎士×どスケベビッチ王。
古代アイルランドには臣下が王の乳首を吸って服従の意を示す儀式があったそうで、それはよいものだと思いましたので古代アイルランドとは特に関係なく王の乳首を吸ってもらいました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる