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七章 もふもふファミリーと闘技大会(本編)
86 病魔、現る
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「何よ、これ」
5組目の試合を勝利で収め、控え室に戻る時ストナは通路でのたうちまわる人々を見て目を疑った。
手には会場で売られていた屋台の食品を持っている。
前回までなかったものが増えていた時点で嫌な予感がしたが、それに興味を示さなくて良かった。ルーク君に出会えてよかった。相手が体調不良でいてくれたから勝てた。
あまり良い勝ち方とは言えないけど、ある意味で結果が全てである闘技大会。体調管理も含めて出場者の責任なのだ。
「ロンローンの蒸し煮巻きを受け取ってなかったら私もこうなってたのかしら。ルーク君に感謝しなくちゃ」
「姉御、外も様子がおかしいぜ?」
「くわー」
テイムモンスターのベン(リカントver.)とザブロックが甲高い鳴き声をあげて警戒する。控え室にはモニターがあり、そこから客席と次の試合の下馬評が発表されるのだが、客席からの歓声が悲鳴に置き換えられていた。
「大変、ルーク君が心配だわ!」
「坊主は強いから大丈夫だ。親父さんやご兄弟が見にきてくれてるんだろ? そっちの心配をするべきだろ」
「──ッ、そうね。父様や兄様があんな状態になったら大変だもの」
ごめんね、ルーク君。あとで拾ってあげるからそれまで耐えて。
ストナは控え室から飛び出し、家族の安否を心配した。
もうこんな事態になったら試合どころではない。今は帝国の危機なのだ。ここで試合にばかりかまけてられるならどれほど良かったか。アイビー家の未来はストナも双肩にかかっていた。
◇◇◇
「なんかみんな様子おかしくね?」
ほぼ全員、屋台で買って食べた相手が腹痛を訴えている。
中には真っ青になる人もいて、でも自分たちは何ともない。
エントリーした冒険者まで具合が悪そうだ。
「なんであたし達だけ平気なんだろうね?」
「それは僕のアクセサリーをつけてるからだよね、と」
「ルーク? 今どこから現れた!」
キサムの大声をジェスチャーで静かにするように促すと、僕はことの経緯を詳細に話した。
会場の外。つまりキッカとゴトーの決闘は闘技会場街で行われている。それでもモニターの向こうでは人々が苦しんだ果てにヘドロになって、それが宙に浮くとゴトーの下に集まる。
それでどんどん強くなっていくって仕掛けだ。
相手を苦しめた末に殺して自分の肉体の一部にする。
それは龍の特徴だ。末期症状と言っても良い。
だから僕はあの女性に気づかれないようにトラネとキサムを影の中に隠して移動する。
知り合いも、そうじゃない人も含めて可能な限り回収する。
もう、こんな作戦を考えたオーレンさん、あなたを恨みますよ?
何が“王国の侵略なら見慣れない菌を持ってる奴が黒幕だ。そいつが尻尾を出すまでゴミ拾いは封印だ”と言って変身させるなんて。
結果うまく尻尾を出しても死屍累々じゃないですか。
龍以前にコロニア王国の関係者と知ってキッカはお怒りだし、ニャンゾウに任せてきたけど大丈夫かな?
一応ピヨちゃんのおかげで分体の僕たちも殺しても生き返るけども、痛いのは痛いからね。
「ねぇ、坊や。さっきからそこでコソコソ何をやってるのかしら。ここの人達をどこへやったの? お姉さんに詳しく教えてくれない?」
見つかった! ど、どうしよう。
あ、そうだ!
「僕、迷子で。お姉さんここがどこか知りませんか?」
僕は無知を装った。
お姉さんの瞳は僕を見てるようで僕を見ていない。
まるで僕の中に自分の撒き散らした菌が存在してるかを認識するかのように目を細め……
「ここの人間が居なくなった原因は坊やね? どうしてこれだけの病原体の中で涼しい顔をしていられるの?」
「病原体? 一体なんのお話ですか? 僕おトイレに行きたくて。急いでるんです」
股間を押さえて駆け足のジェスチャーをするも疑いは強まる一方だった。
「逃すと思ってかい!」
伸ばされた手。そこに向けて毛糸変換。
からの~養分抽出。
「ギャッ!」
思った通り。病原体そのものを魔力に変換できる。
今現在僕にゴミ拾いはできない。
いや、既存のゴミは拾えるけど。
お姉さんやゴトーさんの病原菌を特定する事も、拾うこともできないでいた。
「何をやったんだい、坊や」
「お姉さんはコローナの仲間?」
「あの子を知っているってことは、ああ……あんたが龍祓いの一族か。レクレー家の生き残り! コロニア王国の裏切り者!」
「僕を裏切ったのは父様だよ。スキルが使えないからって親子の縁を切って追い出したんだ。僕の手に入れたものまで欲しがった。だから王国を出たんだ」
「どんな屁理屈をこねようとね、裏切り者は裏切り者なんだよ!」
お姉さんの体が真っ黒に変容し、ゴトーさんに酷似した筋肉だるまとなった。
赤いか黒いかでの判断はできないけど、そっちが本性みたいだ。
僕は魔力を毛糸変換で周囲に広げてカウンターの構え。
攻撃されるたびに魔力に変換して奪ってやるもんね。
病気の特定はできずとも、こうやって魔力に変換ぐらいはできるんだ。
「どうしたの、お姉さん。おしゃべりしすぎて疲れちゃった?」
「おかしいわね。どうして私の菌が減っていくのかしら。ここにばら撒いた菌たちも今やもう見る影もない」
「ああ、それなら僕が奪った」
「龍祓いの血筋がこんなに厄介だったなんてね!」
身を翻し、逃げるお姉さん。
ゴトーさんと合流するつもりだろうか。
僕は彼女を見逃しながら毛糸を回収。
魔力確保に回った。
5組目の試合を勝利で収め、控え室に戻る時ストナは通路でのたうちまわる人々を見て目を疑った。
手には会場で売られていた屋台の食品を持っている。
前回までなかったものが増えていた時点で嫌な予感がしたが、それに興味を示さなくて良かった。ルーク君に出会えてよかった。相手が体調不良でいてくれたから勝てた。
あまり良い勝ち方とは言えないけど、ある意味で結果が全てである闘技大会。体調管理も含めて出場者の責任なのだ。
「ロンローンの蒸し煮巻きを受け取ってなかったら私もこうなってたのかしら。ルーク君に感謝しなくちゃ」
「姉御、外も様子がおかしいぜ?」
「くわー」
テイムモンスターのベン(リカントver.)とザブロックが甲高い鳴き声をあげて警戒する。控え室にはモニターがあり、そこから客席と次の試合の下馬評が発表されるのだが、客席からの歓声が悲鳴に置き換えられていた。
「大変、ルーク君が心配だわ!」
「坊主は強いから大丈夫だ。親父さんやご兄弟が見にきてくれてるんだろ? そっちの心配をするべきだろ」
「──ッ、そうね。父様や兄様があんな状態になったら大変だもの」
ごめんね、ルーク君。あとで拾ってあげるからそれまで耐えて。
ストナは控え室から飛び出し、家族の安否を心配した。
もうこんな事態になったら試合どころではない。今は帝国の危機なのだ。ここで試合にばかりかまけてられるならどれほど良かったか。アイビー家の未来はストナも双肩にかかっていた。
◇◇◇
「なんかみんな様子おかしくね?」
ほぼ全員、屋台で買って食べた相手が腹痛を訴えている。
中には真っ青になる人もいて、でも自分たちは何ともない。
エントリーした冒険者まで具合が悪そうだ。
「なんであたし達だけ平気なんだろうね?」
「それは僕のアクセサリーをつけてるからだよね、と」
「ルーク? 今どこから現れた!」
キサムの大声をジェスチャーで静かにするように促すと、僕はことの経緯を詳細に話した。
会場の外。つまりキッカとゴトーの決闘は闘技会場街で行われている。それでもモニターの向こうでは人々が苦しんだ果てにヘドロになって、それが宙に浮くとゴトーの下に集まる。
それでどんどん強くなっていくって仕掛けだ。
相手を苦しめた末に殺して自分の肉体の一部にする。
それは龍の特徴だ。末期症状と言っても良い。
だから僕はあの女性に気づかれないようにトラネとキサムを影の中に隠して移動する。
知り合いも、そうじゃない人も含めて可能な限り回収する。
もう、こんな作戦を考えたオーレンさん、あなたを恨みますよ?
何が“王国の侵略なら見慣れない菌を持ってる奴が黒幕だ。そいつが尻尾を出すまでゴミ拾いは封印だ”と言って変身させるなんて。
結果うまく尻尾を出しても死屍累々じゃないですか。
龍以前にコロニア王国の関係者と知ってキッカはお怒りだし、ニャンゾウに任せてきたけど大丈夫かな?
一応ピヨちゃんのおかげで分体の僕たちも殺しても生き返るけども、痛いのは痛いからね。
「ねぇ、坊や。さっきからそこでコソコソ何をやってるのかしら。ここの人達をどこへやったの? お姉さんに詳しく教えてくれない?」
見つかった! ど、どうしよう。
あ、そうだ!
「僕、迷子で。お姉さんここがどこか知りませんか?」
僕は無知を装った。
お姉さんの瞳は僕を見てるようで僕を見ていない。
まるで僕の中に自分の撒き散らした菌が存在してるかを認識するかのように目を細め……
「ここの人間が居なくなった原因は坊やね? どうしてこれだけの病原体の中で涼しい顔をしていられるの?」
「病原体? 一体なんのお話ですか? 僕おトイレに行きたくて。急いでるんです」
股間を押さえて駆け足のジェスチャーをするも疑いは強まる一方だった。
「逃すと思ってかい!」
伸ばされた手。そこに向けて毛糸変換。
からの~養分抽出。
「ギャッ!」
思った通り。病原体そのものを魔力に変換できる。
今現在僕にゴミ拾いはできない。
いや、既存のゴミは拾えるけど。
お姉さんやゴトーさんの病原菌を特定する事も、拾うこともできないでいた。
「何をやったんだい、坊や」
「お姉さんはコローナの仲間?」
「あの子を知っているってことは、ああ……あんたが龍祓いの一族か。レクレー家の生き残り! コロニア王国の裏切り者!」
「僕を裏切ったのは父様だよ。スキルが使えないからって親子の縁を切って追い出したんだ。僕の手に入れたものまで欲しがった。だから王国を出たんだ」
「どんな屁理屈をこねようとね、裏切り者は裏切り者なんだよ!」
お姉さんの体が真っ黒に変容し、ゴトーさんに酷似した筋肉だるまとなった。
赤いか黒いかでの判断はできないけど、そっちが本性みたいだ。
僕は魔力を毛糸変換で周囲に広げてカウンターの構え。
攻撃されるたびに魔力に変換して奪ってやるもんね。
病気の特定はできずとも、こうやって魔力に変換ぐらいはできるんだ。
「どうしたの、お姉さん。おしゃべりしすぎて疲れちゃった?」
「おかしいわね。どうして私の菌が減っていくのかしら。ここにばら撒いた菌たちも今やもう見る影もない」
「ああ、それなら僕が奪った」
「龍祓いの血筋がこんなに厄介だったなんてね!」
身を翻し、逃げるお姉さん。
ゴトーさんと合流するつもりだろうか。
僕は彼女を見逃しながら毛糸を回収。
魔力確保に回った。
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