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七章 もふもふファミリーと闘技大会(本編)
80 オーレン皇子の特別クエスト
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翌朝、いったいどんなクエストが待ち受けて居るのだろうとギルドに赴くと。
「お待ちしていましたルーク様」
何故か平伏する様に受付のお姉さんが頭を下げた。
昨日君付けしてた人が凄い変わりようだよ。
オーレンさん、いったい何を話したのやら。
「それで、本日受けてもらいたいクエストはこちらになります」
提示された紙面を除く。
内容はとてもシンプル。
街の6ヶ所にある重要施設に分体を置いてきてほしいというものだった。これって確かバファリンで龍を撃退した時のクエストだよね? もう撃退したのに。
「流行病が近づいて来てるんですね?」
僕の質問に、ただ頷く。
それだけで十分通じた様だ。
つまりバファリンでの『龍』撃退の報。
立役者の噂も聞かせられたという訳だ。
まぁそれを考えたら、その役目は僕にしかできないけどね。
「分かりました。引き受けます」
「ありがとうございます。ではこちらを受け取りください」
渡されたバンドは真っ白だった。
ん? これって皇族のみがつけられるものでは?
もしかして重要機関って?
「各所の門番にはすでに通達済みです。クエスト用紙を見せれば通してくれるでしょう。何卒ワクティンをよろしくお願いします!」
よろしくお願いされちゃった。
ちなみに成功報酬は6000万ゼニスだって。
びっくりしちゃった。
街ではない。国そのものを救うミッションだ。
6000万でも安いときっとオーレンさんは言うかもしれない。
ちなみにポケットマネーで出せる限界値がこれだという事なので、皇帝様には内緒みたいだね。
「これってあたし達ついてく意味ある?」
「え、めちゃくちゃあるけど?」
早速自分の役割を放棄しようとするトラネを強引に引き止めた。
基本的に『浮遊+引き寄せ』でなんとかなる分体の設置だけど、場所によっては手分けした方が早いまである。
要は手数で勝負だ。
「じゃあミッションの内訳を案内するね。分体を配るという任務は基本的に帝都の全景を知ることから始まる。この帝都がバファリンの何倍の大きさを誇るのか外観からはわからないとどうにもならない。そのための聞き込み任務をキサムに任せたい」
「ああ、一番重要なやつだよな。任せてくれ」
「なるべく被害者は出したくないからね」
「あたしは?」
「僕と一緒に手分けして分配。帝都の規模によっては作る分体の数も多くなることが予測されるからね」
「そりゃそっか」
「その際、テリンを配属するから高所でもなんとかなるでしょ?」
「鞍付き?」
「もちろん」
じゃあ、安心だ。と胸を撫で下ろすトラネ。
それでも足りない場合は僕の分体でなんとかするしかない。
「これ終わったらクエスト報酬とは別に僕からロンローンの蒸し煮巻きを贈呈するから頑張ろう!」
「なんか急にやる気が漲って来た!」
「ああ、見事成功させようぜ!」
たった半日口にしてないだけでこの力の入れ具合。
一度上げた食事のグレードはそう簡単に下げられない様だ。
いや、帝都のご飯がまずいわけではないんだ。
普通に美味しいんだけど、ロンローンの蒸し煮巻きがそれを上回るってだけ。
ちなみにロキ達にも好評で、それが出るときと出ない時で明らかにやる気に差が出てしまった。
ストナさん達のベンやザブロック達は大丈夫だろうか?
まぁ僕の気にすることではないけど。
案の定、という言葉がよく似合うほどに帝都は広かった。
ホログラムという立体映像の魔導具があらゆる場所に置かれており、それが外から貧相に見える様に幾重も仕掛けられている。
忍び込みやすそうといざ入ったら想定していた兵士たちの数百倍の人数がお出迎えして来た……なんてこともある様な仕掛けだった。
キサムがマッピングをしただけでぐったりしてる。
まだ一ヶ所目でこのザマだ。
「大丈夫?」
「ああ、ちょっとこのミッションを低く見積り過ぎてた」
「報酬が報酬だからね。嫌な予感はしてたよ」
「でも、だからこそやりがいはあるだろ?」
「うん、無事成功させようね!」
キサムに休ませてる間に手分けして分体を配る。
僕のカバー出来る範囲は僕が50人分手を広げた空間のみ。
上下左右で分けてもその建造物は広大だった。
言い換えればその場所は塔。
それが帝都の中に6本、聳え立つ。
横の幅は僕のLVだと3回の設置で間に合うが、まぁ縦に長いのでそれを3回に分ける。
合計9個の分体でカバーした。
それを後5回。
45本もの髪の毛が僕の頭から引き抜かれた。
想像してみてほしい。
一本一本はそう大したダメージじゃないけど、合計54本もの毛を引き抜く感覚と言うのを。
討伐系クエストではないけど肉体的にも精神的にも疲れ果てたよね。ただしこのクエストはギルドに報告して終わりというわけにもいかなかった。
僕の能力を疑ってるわけではないが、初めっから報酬の引き渡しは3日後。
闘技大会が終わった後を予定していたから。
その後に6000万ゼニスを支払うという約束だ。
ポケットマネーといえど、それをかき集めるのに3日かかるってことだろうね。
どうせそれまでこの街にいるし、大丈夫ですよと了承して宿に帰ってロンローンの蒸し煮パーティーを開催した。
結局一日を費やしたので、すっかり夕暮れである。
疲れ切った体にロンローンの蒸し煮巻きは染み渡る旨さであった。
◇◇◇
ギルドからの一報を受け、間に合った、と安堵するオーレン。
そこへ皇帝ワレワ=レノー=オゴリダが訪問する。
「居るか? オーレン」
「兄上。今執務中だ。用事があるなら呼んでくれればいいのによ」
「プライベートな話だ」
「そうか。汚い場所で悪いが、入ってくれ」
オーレンの許可を受け取り、神経質そうな顔が部屋中を見渡した後、部屋主のオーレンを見定める。
「オーレン、お前闘技大会をどう見る?」
「どう見るとは?」
「そのままでの意味でだ。名目上は帝都の抱えるAランク、つまり他国へ向けてのお披露目会だ。戦力を揃えていると誤解されるのではないか?」
いままで気にもしなかった癖に、皇帝になって気が弱くなったか?
隣国は幾つもの国を奪って拡大の一途のコロニア王国だぞ。
いつ攻め滅ぼされるかわからぬという立場で戦力を集めて何が悪い。
「どこの国だってAランクを召し抱えているだろうに何言ってるんだ? それに冒険者ってのは水物だ。世話してやんなきゃフラってどこかへ行っちまうぜ?」
「こちらで召し抱えることで戦力の流出を抑えるというのか」
「父上はもう二歩も三歩も先を見据えてみてるぜ?」
「賢帝と称された方だ。それに比べて私と来たら、不安ばかり募ってどうしてもダメだ。時折りお前の能天気さが羨ましくなるよ」
こりゃ病気だな。
だがその責任から逃げたオーレンに言われたくはないだろう。
そこで兄に向けて手のひらの上に乗るサイズのウサギのアクセサリーを掲げた。ルークの出店したうさぎのお宿で購入出来る限定商品だ。いままで十分助けになって来たそれを、兄ワレワへと手渡す。
今はピヨちゃんの毛糸製の鉄甲を嵌めてるので、お役御免というのもあった。
「やるよ」
「なんだこれは?」
「俺が冒険者時代に散々世話になったお守りだ。効くぜぇ」
何が効くのか的を得ないが、弟から初めて贈呈された品をまんざらでもなさそうに腰へ下げるワレワ。
「お前から私へのプレゼントなんて初めてだな」
「そうだったか?」
「そうさ。お前はいつも家庭教師から逃げ回り、夕食の席でしか顔を合わせないやつだった」
「その時は勉学が苦手でな」
「私だって得意ではないさ。だがお前がその体たらくだろう? 私が頑張らねばなと体に鞭を打ったものさ」
兄はそんな事を考えていたのか。
確かに授業から逃げるたびに小言を言われた気がする。
それはお前ばかり狡いぞ、という意味も含まれていたのかとハッとした。
兄は自分のことをよく知らないと勝手に思い込んでいた。
よく知らないのは自分の方じゃないかと自覚する。
そりゃ、嫌われる。
「その節は悪かった。あの時の借りを返す様に防衛は任せてくれ。元Aランク冒険者としても頑張るぜ?」
「コネで勝ち取った似非ランクだろう?」
「コネも実力のうちってな。なんだかんだで俺も故郷は捨てきれなかった。冒険者になればもっと自由になれるって思ってたんだが、外に出てわかったよ。自由ってのは誰かの保護下に入ってようやく振る舞えるのだと」
「それが父上だったと?」
「ずっと掌の上だったな。バックれた時と帰った時まで想定して部屋に荷物が準備されてたぜ?」
「私は父上の様になれるだろうか?」
いつになく弱気な兄に、オーレンは肩に手を置いた。
「兄貴は兄貴だよ。無理して親父を真似なくたっていい。俺はそんな兄貴のサポートをするために帰って来たんだ。デンと構えて指揮をとってくれたらいいさ。ミスしたら俺と一緒に頭下げに行こうぜ?」
「フン、私がお前の様なミスをするとでも?」
「民からの人気は皆無だけどな」
「あれは、お前が全て掻っ攫うから悪いのだ。少しは私にも残しておけ!」
「悪いな、こればっかりは早いもん勝ちだ」
べ、と舌を出し威嚇するオーレンに。
相手をするだけ時間の無駄だとワレワは退室すべく扉に手をかける。
その時の横顔には失敗したらどうしようかと悲壮に暮れていた翳りは霧散し、晴れ渡っている様に見えた。
「フン、せいぜい私のために働くことだな」
「まずは闘技大会だ。目先のやつからコツコツな?」
「貴様に言われんでもわかっているわ!」
バタン、と強い力で扉が閉められた。
相変わらず煽りに弱い兄である、とオーレンは嘆息した。
「お待ちしていましたルーク様」
何故か平伏する様に受付のお姉さんが頭を下げた。
昨日君付けしてた人が凄い変わりようだよ。
オーレンさん、いったい何を話したのやら。
「それで、本日受けてもらいたいクエストはこちらになります」
提示された紙面を除く。
内容はとてもシンプル。
街の6ヶ所にある重要施設に分体を置いてきてほしいというものだった。これって確かバファリンで龍を撃退した時のクエストだよね? もう撃退したのに。
「流行病が近づいて来てるんですね?」
僕の質問に、ただ頷く。
それだけで十分通じた様だ。
つまりバファリンでの『龍』撃退の報。
立役者の噂も聞かせられたという訳だ。
まぁそれを考えたら、その役目は僕にしかできないけどね。
「分かりました。引き受けます」
「ありがとうございます。ではこちらを受け取りください」
渡されたバンドは真っ白だった。
ん? これって皇族のみがつけられるものでは?
もしかして重要機関って?
「各所の門番にはすでに通達済みです。クエスト用紙を見せれば通してくれるでしょう。何卒ワクティンをよろしくお願いします!」
よろしくお願いされちゃった。
ちなみに成功報酬は6000万ゼニスだって。
びっくりしちゃった。
街ではない。国そのものを救うミッションだ。
6000万でも安いときっとオーレンさんは言うかもしれない。
ちなみにポケットマネーで出せる限界値がこれだという事なので、皇帝様には内緒みたいだね。
「これってあたし達ついてく意味ある?」
「え、めちゃくちゃあるけど?」
早速自分の役割を放棄しようとするトラネを強引に引き止めた。
基本的に『浮遊+引き寄せ』でなんとかなる分体の設置だけど、場所によっては手分けした方が早いまである。
要は手数で勝負だ。
「じゃあミッションの内訳を案内するね。分体を配るという任務は基本的に帝都の全景を知ることから始まる。この帝都がバファリンの何倍の大きさを誇るのか外観からはわからないとどうにもならない。そのための聞き込み任務をキサムに任せたい」
「ああ、一番重要なやつだよな。任せてくれ」
「なるべく被害者は出したくないからね」
「あたしは?」
「僕と一緒に手分けして分配。帝都の規模によっては作る分体の数も多くなることが予測されるからね」
「そりゃそっか」
「その際、テリンを配属するから高所でもなんとかなるでしょ?」
「鞍付き?」
「もちろん」
じゃあ、安心だ。と胸を撫で下ろすトラネ。
それでも足りない場合は僕の分体でなんとかするしかない。
「これ終わったらクエスト報酬とは別に僕からロンローンの蒸し煮巻きを贈呈するから頑張ろう!」
「なんか急にやる気が漲って来た!」
「ああ、見事成功させようぜ!」
たった半日口にしてないだけでこの力の入れ具合。
一度上げた食事のグレードはそう簡単に下げられない様だ。
いや、帝都のご飯がまずいわけではないんだ。
普通に美味しいんだけど、ロンローンの蒸し煮巻きがそれを上回るってだけ。
ちなみにロキ達にも好評で、それが出るときと出ない時で明らかにやる気に差が出てしまった。
ストナさん達のベンやザブロック達は大丈夫だろうか?
まぁ僕の気にすることではないけど。
案の定、という言葉がよく似合うほどに帝都は広かった。
ホログラムという立体映像の魔導具があらゆる場所に置かれており、それが外から貧相に見える様に幾重も仕掛けられている。
忍び込みやすそうといざ入ったら想定していた兵士たちの数百倍の人数がお出迎えして来た……なんてこともある様な仕掛けだった。
キサムがマッピングをしただけでぐったりしてる。
まだ一ヶ所目でこのザマだ。
「大丈夫?」
「ああ、ちょっとこのミッションを低く見積り過ぎてた」
「報酬が報酬だからね。嫌な予感はしてたよ」
「でも、だからこそやりがいはあるだろ?」
「うん、無事成功させようね!」
キサムに休ませてる間に手分けして分体を配る。
僕のカバー出来る範囲は僕が50人分手を広げた空間のみ。
上下左右で分けてもその建造物は広大だった。
言い換えればその場所は塔。
それが帝都の中に6本、聳え立つ。
横の幅は僕のLVだと3回の設置で間に合うが、まぁ縦に長いのでそれを3回に分ける。
合計9個の分体でカバーした。
それを後5回。
45本もの髪の毛が僕の頭から引き抜かれた。
想像してみてほしい。
一本一本はそう大したダメージじゃないけど、合計54本もの毛を引き抜く感覚と言うのを。
討伐系クエストではないけど肉体的にも精神的にも疲れ果てたよね。ただしこのクエストはギルドに報告して終わりというわけにもいかなかった。
僕の能力を疑ってるわけではないが、初めっから報酬の引き渡しは3日後。
闘技大会が終わった後を予定していたから。
その後に6000万ゼニスを支払うという約束だ。
ポケットマネーといえど、それをかき集めるのに3日かかるってことだろうね。
どうせそれまでこの街にいるし、大丈夫ですよと了承して宿に帰ってロンローンの蒸し煮パーティーを開催した。
結局一日を費やしたので、すっかり夕暮れである。
疲れ切った体にロンローンの蒸し煮巻きは染み渡る旨さであった。
◇◇◇
ギルドからの一報を受け、間に合った、と安堵するオーレン。
そこへ皇帝ワレワ=レノー=オゴリダが訪問する。
「居るか? オーレン」
「兄上。今執務中だ。用事があるなら呼んでくれればいいのによ」
「プライベートな話だ」
「そうか。汚い場所で悪いが、入ってくれ」
オーレンの許可を受け取り、神経質そうな顔が部屋中を見渡した後、部屋主のオーレンを見定める。
「オーレン、お前闘技大会をどう見る?」
「どう見るとは?」
「そのままでの意味でだ。名目上は帝都の抱えるAランク、つまり他国へ向けてのお披露目会だ。戦力を揃えていると誤解されるのではないか?」
いままで気にもしなかった癖に、皇帝になって気が弱くなったか?
隣国は幾つもの国を奪って拡大の一途のコロニア王国だぞ。
いつ攻め滅ぼされるかわからぬという立場で戦力を集めて何が悪い。
「どこの国だってAランクを召し抱えているだろうに何言ってるんだ? それに冒険者ってのは水物だ。世話してやんなきゃフラってどこかへ行っちまうぜ?」
「こちらで召し抱えることで戦力の流出を抑えるというのか」
「父上はもう二歩も三歩も先を見据えてみてるぜ?」
「賢帝と称された方だ。それに比べて私と来たら、不安ばかり募ってどうしてもダメだ。時折りお前の能天気さが羨ましくなるよ」
こりゃ病気だな。
だがその責任から逃げたオーレンに言われたくはないだろう。
そこで兄に向けて手のひらの上に乗るサイズのウサギのアクセサリーを掲げた。ルークの出店したうさぎのお宿で購入出来る限定商品だ。いままで十分助けになって来たそれを、兄ワレワへと手渡す。
今はピヨちゃんの毛糸製の鉄甲を嵌めてるので、お役御免というのもあった。
「やるよ」
「なんだこれは?」
「俺が冒険者時代に散々世話になったお守りだ。効くぜぇ」
何が効くのか的を得ないが、弟から初めて贈呈された品をまんざらでもなさそうに腰へ下げるワレワ。
「お前から私へのプレゼントなんて初めてだな」
「そうだったか?」
「そうさ。お前はいつも家庭教師から逃げ回り、夕食の席でしか顔を合わせないやつだった」
「その時は勉学が苦手でな」
「私だって得意ではないさ。だがお前がその体たらくだろう? 私が頑張らねばなと体に鞭を打ったものさ」
兄はそんな事を考えていたのか。
確かに授業から逃げるたびに小言を言われた気がする。
それはお前ばかり狡いぞ、という意味も含まれていたのかとハッとした。
兄は自分のことをよく知らないと勝手に思い込んでいた。
よく知らないのは自分の方じゃないかと自覚する。
そりゃ、嫌われる。
「その節は悪かった。あの時の借りを返す様に防衛は任せてくれ。元Aランク冒険者としても頑張るぜ?」
「コネで勝ち取った似非ランクだろう?」
「コネも実力のうちってな。なんだかんだで俺も故郷は捨てきれなかった。冒険者になればもっと自由になれるって思ってたんだが、外に出てわかったよ。自由ってのは誰かの保護下に入ってようやく振る舞えるのだと」
「それが父上だったと?」
「ずっと掌の上だったな。バックれた時と帰った時まで想定して部屋に荷物が準備されてたぜ?」
「私は父上の様になれるだろうか?」
いつになく弱気な兄に、オーレンは肩に手を置いた。
「兄貴は兄貴だよ。無理して親父を真似なくたっていい。俺はそんな兄貴のサポートをするために帰って来たんだ。デンと構えて指揮をとってくれたらいいさ。ミスしたら俺と一緒に頭下げに行こうぜ?」
「フン、私がお前の様なミスをするとでも?」
「民からの人気は皆無だけどな」
「あれは、お前が全て掻っ攫うから悪いのだ。少しは私にも残しておけ!」
「悪いな、こればっかりは早いもん勝ちだ」
べ、と舌を出し威嚇するオーレンに。
相手をするだけ時間の無駄だとワレワは退室すべく扉に手をかける。
その時の横顔には失敗したらどうしようかと悲壮に暮れていた翳りは霧散し、晴れ渡っている様に見えた。
「フン、せいぜい私のために働くことだな」
「まずは闘技大会だ。目先のやつからコツコツな?」
「貴様に言われんでもわかっているわ!」
バタン、と強い力で扉が閉められた。
相変わらず煽りに弱い兄である、とオーレンは嘆息した。
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