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七章 もふもふファミリーと闘技大会(本編)
78 お嬢様のお友達大作戦
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「あの、その。一目見た時からウサちゃんに一目惚れしました! お友達から始めさせてください!」
「えっ?」
一目見た時からって一体いつのお話だろう?
エス=タックは勿論、ワクティンに入る時にもロキは表に出してない。じゃあその前?
困惑する僕に、お付きの大男ゴトーさんが面目なさそうに答える。
「すまんな、坊や。お嬢は君の抱っこしてた純白のウサギに一目惚れした挙句、下手くそなクエストを出して低級冒険者に君を襲わせた張本人だ」
「あ、もしかしてルルア=タックの?」
「ご、ごめんなさい。交渉時の上限金額は求めないって書いたのに、まさか無理矢理奪いに行くなんて思わなくて……その、クエストは撤回したので!」
「ちなみにどんなクエストだったんですか?」
「こいつだ」
平謝りするお嬢様、多分身なりから考えて貴族の方だろう。
お付きの大男、冒険者ゴトーは問題のクエスト発注用紙を僕に見せた。
「うわぁ」
「デッドオアアライブってついてるし」
「ねぇ、奪取って奪えって言ってるのと同じ意味だよ?」
これを受ける冒険者なら奪い取るに決まってるよ、とウチのメンバーですら理解する。
「ごめんなさい、ごめんなさい! そう書かないと誰もクエスト受けてくれなくて!」
「ルルア=タックでの貴族は基本的に冒険者受けが悪いんだ。そこでお嬢様はご学同に唆されてクエストの一つでの達成できなければ貴族の名折れだ、だなんて煽られてな」
「それで冒険者から反発喰らってるんですか?」
「貴族の依頼はコストに合わないで無茶無謀が多いいんだ。付き合うだけ時間の無駄みたいなもんだ。その上であれこれ難癖つけられたら誰も受けないって。俺たちにだって生活がある。けど貴族はそんなこと知ったこっちゃないからな。自分達が自由にあつかえる傭兵ぐらいにしかおもっちゃいないんだ」
そりゃ軋轢も生むよ。完全に自業自得だよね。
「そもそも、今僕はぬいぐるみを持っていませんが?」
「ぬい……ぬいぐるみだったのか、あれは?」
抱っこされているのを目撃しただけだが、普通に本物と大差ないとゴトーは見えていたが、ぬいぐるみと言われて驚愕を浮かべる。
「ええ、精巧に作られたもので。エス=タックの冒険者ギルドの受付で元気に活躍中ですよ」
「一足遅かったな、お嬢。どうやら売却済みのようだ」
「そ、そんなぁ」
その場で足元から崩れ落ちるお嬢様。
なんか放っておくのも悪い気がしてきた。
「あの、もし宜しければオーダーメイドで一匹作りましょうか?」
「可能なのか?」
「ああ、ええと僕はこう言うものです」
商業ライセンスを見せる。
「毛皮修復師? あ、あのハンターラビットや九尾の毛皮を見事に再現した修復師って坊やの事だったのか!?」
「ええ、ルークと言います。以後お見知り置きを。それでどうでしょう、どんなサイズ、肌触り、重さなどはある程度決めていただくことができますよ」
「あたしもルークに作ってもらったんだー」
そう言って、手提げ袋からプロフェンぐるみを取り出すトラネ。
「わ、こっちの子も可愛いですね! 触感もふわふわ! わぁ、こっちの子も欲しいなぁ」
目をキラッキラに輝かせて目移りさせている。
早速浮気し始めたぞ、この人大丈夫かな?
「抱っこしてみる?」
「良いんですか?」
「ちゃんと返してくれたらね」
「もちろんです! あ、結構重いんですね、この子」
「重量もある程度調整できますよ。この子犬くらいでしたらこのくらいの重さがありますね」
「お嬢、俺にも抱っこさせてくれ」
「え、なんでですか?」
信じられない、私から奪おうというのかと言う目で見られるゴトーさん。この関係性でよくわかる。
貴族が冒険者をどう思っているのかが。
そりゃ誰も付き合わなくなるよ、そんな態度されたら。
ゴトーさんは良く付き合えるよね?
「だったら俺の貸してやりますよ」
キサムが見てられないとばかりにソニンぐるみを貸し出す。
「お、悪りぃな。最初はぬいぐるみって聞いてそこまで興味はなかったんだが、いざ実物を見たらこう、むずむずしちまってな?」
「わかります。不思議な魅力があるんですよね」
キサムからソニンぐるみを借りて、その場でもふもふパーティーが開催された。
「おぉ、こいつはすごい。まるで生きてるみたいな暖かさがある」
「毛皮修復師のルークの技術によって再現された毛並みは、生きてる時のような温もりを再現してるんです。動かないってわかってても、いつか動くんじゃないかと錯覚してしまいますよね?」
「ああ、こいつはすごいぜ」
キサムとゴトーさんの話題にお嬢様がムッとする。
「後でウサちゃんも抱っこさせてくださいね?」
「えープロフェンちゃんにもう飽きたの?」
それに対して抗議するトラネ。真顔で目が一切笑っていない。
自分の推しが、双子の兄の推しに負けたのが許せないような威圧を見せた。
「ち、違います。この子もいいですけど、ウサちゃんが当初の目的だったので!」
「まぁそれだけソニンは優れてるって事だな」
「ムキー!」
全く君たち、往来の場で喧嘩し始めないでよね。
「まぁ、ここではなんですのでお店にでも参りましょう。ここのお店に入りたかったんですけど、どうも入場規制があるようでして」
「そうですね、ここは下流貴族~中流貴族が通う魔導具ショップ。平民の方が通うにはお値段が少々張ります」
「その分質は高いぞ」
「上流の方が買うお店と分けられてるのですか?」
「そうね、質に差はないけど扱える素材が高級品で付加価値も高いものを上流貴族は望まれてるわ。価格で差をつけようと言うお考えなのよ。お金の無駄遣いもいいところだわ」
「まぁそんな訳だ」
貴族間での軋轢もあるって聞かされて、つくづく家に残らなくてよかったと安堵する。
実家は何につけてもお金なかったからね。
兄さんがガメつくなるのもわかる気がするよ。
「ではまいりましょう、わたくしの連れだと認証すれば入れるシステムです。今は二人に設定してますが3人追加して、さぁどうぞ」
お嬢様、アセト=アミノフェンさんはさっさと店内に入り、ゴトーさんに続いて僕達も入った。本当にすんなり入れちゃった。従者システムって言うらしい。
従者を多く引き連れてるほど箔がつくとかなんとか。
お店の中は高級店みたいな煌びやか~な雰囲気。
バファリンやパブロンにあるような怪しい雰囲気は一切見せない。あれは一体なんだったのかと言うほど、イメージが真逆だ。
「欲しいのは見つかりましたか?」
「ええ、これとこれなんかは、僕達の拠点では珍しい代物ですね」
当たり前のように売ってることに突っ込まないようにしてたワイバーンの被膜。
その中でもグレードがいくつもあり、バファリン産のものが最上級とされている。
間違いない、バンの物だ。
ここに流れ着くからバファリンじゃ置いてないんだな?
まぁ高級品だって話だし、お貴族様が持っていくよね。
「魔導具作りの基本中の基本ですわね。ルークさんは魔導具もお造りになられるの?」
「ええ、色々と特許出願中でして。いくつかお見せしますよ」
「本当ですか?」
「坊やはまだ小さいのにあれこれ手に職つけてて凄いんだなぁ」
ゴトーさんがうんうん頷く。
「食べていかなくちゃいけないので、できることはなんでもやってるだけですよ。それに、冒険者との兼任なのでどれほど稼げてもいなくてですね」
「ランクは?」
「Dです」
「その年でDになれるってのはたいしたもんだぜ?」
「冒険者のランクというのは年齢で制限される物ですの?」
「別にされねぇが、Dともなれば受注クエストに魔獣討伐が混ざり始める。坊や達はこの見た目で魔獣討伐を何件もこなしてるんだ。立派なもんだろ? 大の大人でも挫けて諦める中間地点がDなんだよ。貴族様で言うところの伯爵クラスだな」
「まぁ、それはすごいことですわ」
「普通に凄いことなんだぜ? 俺はAだがな」
Aランク!?
じゃあゴトーさんは帝国お墨付きの冒険者って事?
なんでアセトさんの護衛なんて受けてるんだろう。
他にも引く手数多のクエストいっぱいあるだろうに。
「不思議そうな顔してるな。こいつは点数稼ぎさ。Aにもなると引き受けなくてもいいクエストも引き受けなくちゃいけないんだ。将来食いっぱぐれない為にもな」
ニッと笑うゴトーさん。
代わりにアセトお嬢様はご立腹だ。何せ自分の護衛クエストを受けたくもないと評されてしまったのだから。
それだけ旨みがないって言われてるのと一緒だもんね。
「ゴトーさんはAランクだったんですね。じゃあAランクの選抜闘技大会にも出場されるんですか?」
「いや、ああ言うのは年若いAランクが参加するもんさ。俺くらいのオッサンになると華がないって言うのか? 守りに入っちまって面白くないんだと。なんだ坊や、帝国には誰かの応援できたのか?」
「実はうちの兄さんが選抜されまして」
「ああ、その応援で帝国になぁ。ここは何かと制限が多いからな、歩きづらくて敵わんだろう?」
「まぁ僕達は試合が終わるまでの滞在ですし拠点にはしませんから」
「それではウサちゃんの制作は間に合わないんではなくて?」
「ええ、ですので商業ギルドに連絡をつけて輸送という形になりますがよろしいでしょうか? 本物の密猟でもなく、ただのぬいぐるみですからなんの違法性もないかと思われます」
アセトお嬢様はどうしましょう、と言う顔。
「まぁそこら辺が妥協しどころでしょう。ある程度の値段は決まってるのか?」
「バファリンでは5000ゼニスで売ってますね」
「安いな」
「安すぎますわ!」
真顔で猛反発を喰らう。
貴族の価値基準て自分の生活から換算するから異様に値上がりするんだよねぇ。コエンさんやザイムさんもそうだけど疲れが取れるウォーターポッドに150万出すとか言い出すし。
「ならばお嬢様の言い値で引き受けましょう。今後貴族様のやり取りではその値段で決めさせていただきます」
「わたくしの見る目が試されていますのね?」
「責任重大だな」
「送り先はアミノフェン子爵家でよろしかったでしょうか?」
「ええ、それとわがままを言って申し訳ないんですけど、この子も作って頂けないでしょうか?」
そう言って二体目の制作クエストを発注してきた。
プロフェンぐるみだ。ずっと抱っこしてるうちにその温もりを忘れられなくなったようだ。
お買い上げ、ありがとうございますと心の中で念じながら二体目の制作クエストを引き受けた。
口約束じゃあれなのでギルドで正式にクエストとして発注させる。兄さんの教えがこういうところで生きてくる。
お貴族様の圧力に屈してタダで作る人は多いと言う話もよく聞くが、僕はちゃんと代金をもらうように仕向けた。
ゴトーさんは「本当にしっかりしてんなぁ、こりゃ負けられませんぜ?」とアセトお嬢様を煽っていた。
「えっ?」
一目見た時からって一体いつのお話だろう?
エス=タックは勿論、ワクティンに入る時にもロキは表に出してない。じゃあその前?
困惑する僕に、お付きの大男ゴトーさんが面目なさそうに答える。
「すまんな、坊や。お嬢は君の抱っこしてた純白のウサギに一目惚れした挙句、下手くそなクエストを出して低級冒険者に君を襲わせた張本人だ」
「あ、もしかしてルルア=タックの?」
「ご、ごめんなさい。交渉時の上限金額は求めないって書いたのに、まさか無理矢理奪いに行くなんて思わなくて……その、クエストは撤回したので!」
「ちなみにどんなクエストだったんですか?」
「こいつだ」
平謝りするお嬢様、多分身なりから考えて貴族の方だろう。
お付きの大男、冒険者ゴトーは問題のクエスト発注用紙を僕に見せた。
「うわぁ」
「デッドオアアライブってついてるし」
「ねぇ、奪取って奪えって言ってるのと同じ意味だよ?」
これを受ける冒険者なら奪い取るに決まってるよ、とウチのメンバーですら理解する。
「ごめんなさい、ごめんなさい! そう書かないと誰もクエスト受けてくれなくて!」
「ルルア=タックでの貴族は基本的に冒険者受けが悪いんだ。そこでお嬢様はご学同に唆されてクエストの一つでの達成できなければ貴族の名折れだ、だなんて煽られてな」
「それで冒険者から反発喰らってるんですか?」
「貴族の依頼はコストに合わないで無茶無謀が多いいんだ。付き合うだけ時間の無駄みたいなもんだ。その上であれこれ難癖つけられたら誰も受けないって。俺たちにだって生活がある。けど貴族はそんなこと知ったこっちゃないからな。自分達が自由にあつかえる傭兵ぐらいにしかおもっちゃいないんだ」
そりゃ軋轢も生むよ。完全に自業自得だよね。
「そもそも、今僕はぬいぐるみを持っていませんが?」
「ぬい……ぬいぐるみだったのか、あれは?」
抱っこされているのを目撃しただけだが、普通に本物と大差ないとゴトーは見えていたが、ぬいぐるみと言われて驚愕を浮かべる。
「ええ、精巧に作られたもので。エス=タックの冒険者ギルドの受付で元気に活躍中ですよ」
「一足遅かったな、お嬢。どうやら売却済みのようだ」
「そ、そんなぁ」
その場で足元から崩れ落ちるお嬢様。
なんか放っておくのも悪い気がしてきた。
「あの、もし宜しければオーダーメイドで一匹作りましょうか?」
「可能なのか?」
「ああ、ええと僕はこう言うものです」
商業ライセンスを見せる。
「毛皮修復師? あ、あのハンターラビットや九尾の毛皮を見事に再現した修復師って坊やの事だったのか!?」
「ええ、ルークと言います。以後お見知り置きを。それでどうでしょう、どんなサイズ、肌触り、重さなどはある程度決めていただくことができますよ」
「あたしもルークに作ってもらったんだー」
そう言って、手提げ袋からプロフェンぐるみを取り出すトラネ。
「わ、こっちの子も可愛いですね! 触感もふわふわ! わぁ、こっちの子も欲しいなぁ」
目をキラッキラに輝かせて目移りさせている。
早速浮気し始めたぞ、この人大丈夫かな?
「抱っこしてみる?」
「良いんですか?」
「ちゃんと返してくれたらね」
「もちろんです! あ、結構重いんですね、この子」
「重量もある程度調整できますよ。この子犬くらいでしたらこのくらいの重さがありますね」
「お嬢、俺にも抱っこさせてくれ」
「え、なんでですか?」
信じられない、私から奪おうというのかと言う目で見られるゴトーさん。この関係性でよくわかる。
貴族が冒険者をどう思っているのかが。
そりゃ誰も付き合わなくなるよ、そんな態度されたら。
ゴトーさんは良く付き合えるよね?
「だったら俺の貸してやりますよ」
キサムが見てられないとばかりにソニンぐるみを貸し出す。
「お、悪りぃな。最初はぬいぐるみって聞いてそこまで興味はなかったんだが、いざ実物を見たらこう、むずむずしちまってな?」
「わかります。不思議な魅力があるんですよね」
キサムからソニンぐるみを借りて、その場でもふもふパーティーが開催された。
「おぉ、こいつはすごい。まるで生きてるみたいな暖かさがある」
「毛皮修復師のルークの技術によって再現された毛並みは、生きてる時のような温もりを再現してるんです。動かないってわかってても、いつか動くんじゃないかと錯覚してしまいますよね?」
「ああ、こいつはすごいぜ」
キサムとゴトーさんの話題にお嬢様がムッとする。
「後でウサちゃんも抱っこさせてくださいね?」
「えープロフェンちゃんにもう飽きたの?」
それに対して抗議するトラネ。真顔で目が一切笑っていない。
自分の推しが、双子の兄の推しに負けたのが許せないような威圧を見せた。
「ち、違います。この子もいいですけど、ウサちゃんが当初の目的だったので!」
「まぁそれだけソニンは優れてるって事だな」
「ムキー!」
全く君たち、往来の場で喧嘩し始めないでよね。
「まぁ、ここではなんですのでお店にでも参りましょう。ここのお店に入りたかったんですけど、どうも入場規制があるようでして」
「そうですね、ここは下流貴族~中流貴族が通う魔導具ショップ。平民の方が通うにはお値段が少々張ります」
「その分質は高いぞ」
「上流の方が買うお店と分けられてるのですか?」
「そうね、質に差はないけど扱える素材が高級品で付加価値も高いものを上流貴族は望まれてるわ。価格で差をつけようと言うお考えなのよ。お金の無駄遣いもいいところだわ」
「まぁそんな訳だ」
貴族間での軋轢もあるって聞かされて、つくづく家に残らなくてよかったと安堵する。
実家は何につけてもお金なかったからね。
兄さんがガメつくなるのもわかる気がするよ。
「ではまいりましょう、わたくしの連れだと認証すれば入れるシステムです。今は二人に設定してますが3人追加して、さぁどうぞ」
お嬢様、アセト=アミノフェンさんはさっさと店内に入り、ゴトーさんに続いて僕達も入った。本当にすんなり入れちゃった。従者システムって言うらしい。
従者を多く引き連れてるほど箔がつくとかなんとか。
お店の中は高級店みたいな煌びやか~な雰囲気。
バファリンやパブロンにあるような怪しい雰囲気は一切見せない。あれは一体なんだったのかと言うほど、イメージが真逆だ。
「欲しいのは見つかりましたか?」
「ええ、これとこれなんかは、僕達の拠点では珍しい代物ですね」
当たり前のように売ってることに突っ込まないようにしてたワイバーンの被膜。
その中でもグレードがいくつもあり、バファリン産のものが最上級とされている。
間違いない、バンの物だ。
ここに流れ着くからバファリンじゃ置いてないんだな?
まぁ高級品だって話だし、お貴族様が持っていくよね。
「魔導具作りの基本中の基本ですわね。ルークさんは魔導具もお造りになられるの?」
「ええ、色々と特許出願中でして。いくつかお見せしますよ」
「本当ですか?」
「坊やはまだ小さいのにあれこれ手に職つけてて凄いんだなぁ」
ゴトーさんがうんうん頷く。
「食べていかなくちゃいけないので、できることはなんでもやってるだけですよ。それに、冒険者との兼任なのでどれほど稼げてもいなくてですね」
「ランクは?」
「Dです」
「その年でDになれるってのはたいしたもんだぜ?」
「冒険者のランクというのは年齢で制限される物ですの?」
「別にされねぇが、Dともなれば受注クエストに魔獣討伐が混ざり始める。坊や達はこの見た目で魔獣討伐を何件もこなしてるんだ。立派なもんだろ? 大の大人でも挫けて諦める中間地点がDなんだよ。貴族様で言うところの伯爵クラスだな」
「まぁ、それはすごいことですわ」
「普通に凄いことなんだぜ? 俺はAだがな」
Aランク!?
じゃあゴトーさんは帝国お墨付きの冒険者って事?
なんでアセトさんの護衛なんて受けてるんだろう。
他にも引く手数多のクエストいっぱいあるだろうに。
「不思議そうな顔してるな。こいつは点数稼ぎさ。Aにもなると引き受けなくてもいいクエストも引き受けなくちゃいけないんだ。将来食いっぱぐれない為にもな」
ニッと笑うゴトーさん。
代わりにアセトお嬢様はご立腹だ。何せ自分の護衛クエストを受けたくもないと評されてしまったのだから。
それだけ旨みがないって言われてるのと一緒だもんね。
「ゴトーさんはAランクだったんですね。じゃあAランクの選抜闘技大会にも出場されるんですか?」
「いや、ああ言うのは年若いAランクが参加するもんさ。俺くらいのオッサンになると華がないって言うのか? 守りに入っちまって面白くないんだと。なんだ坊や、帝国には誰かの応援できたのか?」
「実はうちの兄さんが選抜されまして」
「ああ、その応援で帝国になぁ。ここは何かと制限が多いからな、歩きづらくて敵わんだろう?」
「まぁ僕達は試合が終わるまでの滞在ですし拠点にはしませんから」
「それではウサちゃんの制作は間に合わないんではなくて?」
「ええ、ですので商業ギルドに連絡をつけて輸送という形になりますがよろしいでしょうか? 本物の密猟でもなく、ただのぬいぐるみですからなんの違法性もないかと思われます」
アセトお嬢様はどうしましょう、と言う顔。
「まぁそこら辺が妥協しどころでしょう。ある程度の値段は決まってるのか?」
「バファリンでは5000ゼニスで売ってますね」
「安いな」
「安すぎますわ!」
真顔で猛反発を喰らう。
貴族の価値基準て自分の生活から換算するから異様に値上がりするんだよねぇ。コエンさんやザイムさんもそうだけど疲れが取れるウォーターポッドに150万出すとか言い出すし。
「ならばお嬢様の言い値で引き受けましょう。今後貴族様のやり取りではその値段で決めさせていただきます」
「わたくしの見る目が試されていますのね?」
「責任重大だな」
「送り先はアミノフェン子爵家でよろしかったでしょうか?」
「ええ、それとわがままを言って申し訳ないんですけど、この子も作って頂けないでしょうか?」
そう言って二体目の制作クエストを発注してきた。
プロフェンぐるみだ。ずっと抱っこしてるうちにその温もりを忘れられなくなったようだ。
お買い上げ、ありがとうございますと心の中で念じながら二体目の制作クエストを引き受けた。
口約束じゃあれなのでギルドで正式にクエストとして発注させる。兄さんの教えがこういうところで生きてくる。
お貴族様の圧力に屈してタダで作る人は多いと言う話もよく聞くが、僕はちゃんと代金をもらうように仕向けた。
ゴトーさんは「本当にしっかりしてんなぁ、こりゃ負けられませんぜ?」とアセトお嬢様を煽っていた。
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