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六章 もふもふファミリーと闘技大会(道中)
65 ルルア・タックでの攻防
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山道を越え、沢を越えたら周囲を自然の堅牢に囲まれた立地。
ルルア・タック侯爵領へと辿り着く。
ここは領主邸と街が一体化しているのでバファリンやパブロンより規模が大きい。
通常なら三つくらいの街を一体化。
最奥に侯爵家のお屋敷があり、中央に商業区。
西、南、東に続く道にそれぞれ街が伸びている。
山岳にあるというだけあって高山を多く有しており、中でも魔道具の最先端。
モンスター由来の魔核の他に、宝石からなる魔石。
ここは魔石発祥の地らしいのだ。
あちこちに見たことのない魔道具の数々。
ついつい目が向いてしまうのは仕方のない事だ。
「ルーク君、すっかり魔道具に夢中ね」
「実は最近魔導具に興味が湧いて」
「贅沢な悩みだねぇ、魔道具なんてお貴族様の道楽の延長線上にあるもんだろ? 平民の俺らには手が出ねぇものに興味を示せるってのはそれだけ懐に余裕があるってこった」
「こーら、リーダー。弟の成長に蓋をしないの。応援してやるのが兄貴って以前言ってたじゃない?」
「これはただの僻みですよ、お嬢様。自分がそれを手にするのはもう少し稼いでから。そう思ってたのに弟に先を越された。これはそんな顔です」
「小さい男だね、これじゃどっちが兄貴かわかんないよ」
「ううう、うるせーやい!」
僕が魔導具のショーケースを覗いてる外野で兄さん達がいつもの寸劇を交わしている。
ロキは僕におとなしく抱っこされてるが、その顔には暇、とはっきり書かれていた。
トラネ&キサムはルテインさんを連れて宿を取ってくると出かけた。インフィは見るものがあると別行動。
みんなが別行動するのはよろしくないので、集合場所を商業区の噴水広場に日が傾いた頃とした。
この街は日が落ちても昼のように明るいので、それまでの時間を各々で過ごす。
一日中歩いても回りきれないほどの大きな街。
時間が来るまでに見て回るだけでクタクタになった。
「いやぁ、満喫満喫。やっぱり大都会は凄いところだなぁ」
『俺は見せ物の気分だぜ。さっきからずっとこっち見てる視線、気づいてるか?』
もちろん。兄さんといた時は遠巻きに見てたけど、僕が一人になるのを見計らって距離を縮めてきたからね。
『締めるか?』
するだけ無駄でしょ? そもそも僕のスキル効果範囲はこの街をすっぽり覆うよ?
『何もできねぇ、って事か。あるじは普段ボケっとし過ぎて心配になるが、覚悟は決まってるんだったな。じゃあ放置でいいか』
威嚇だけはしておいて。
念話でロキと話しながら路地裏へと入る。
付けてきてる相手がこの奥を行き止まりと知ってるのか急足で距離を詰めてきた。
しかし──
「なに? どこに消え……ガハァッ!」
浮遊で建物の二階に上がり、そこからジャンプ。
引き寄せ+キックで踵落としを決めさせてもらった。
子供の蹴りで大袈裟に驚く人だなぁ。
「看破で見え見えなんだよね」
おそらく気配を消す系統のスキル。
「なにが目的で僕の後つけてたの?」
毛糸変換で縛り付け、浮遊で浮かせると街路灯に括り付ける。
最近大量に取得したブラッディベアーの毛が早速役に立った。
なかなか起きないのでブーツを脱がし……うわ、臭い!
足だけを徹底的に除菌して、取り出したるは毛糸で作ったくすぐり棒。
これをこう、こちょこちょと足の裏を刺激してやれば……
「やめろ! 降ろせ!」
ほら起きた。
「なんで僕をつけてたのか教えてくれたらおろしてあげてもいいよ?」
「子供がこんな時間まで一人でうろついているのは危ないと注意しようとしてたんだ」
「ふぅん。じゃあ気配と姿を消してたのはなんで? 突然声をかけたら僕くらいの子は驚いておしっこ漏らしちゃうよ? そういうことは考えなかったの?」
「いいから降ろせ! クソガキ!」
「理由を教えてくれなきゃダメですー」
押し問答をしている時間はないからね。
「じゃあ、僕はみんなのところに戻るから。じゃあね」
夜の闇に溶けるように、僕はその身を空に浮かせ。
パッと消える。
消えてないよ、伸縮で小さくなっただけ。
ただ消えたように見せれば相手は勝手に勘違いしてくれる。
あとは
そのまま空を飛んで違う路地で元の大きさに。
待ち合わせ場所へと急いだ。
「なに? 一人の時に狙われただって!?」
集合場所で先ほどの話を話題に上げれば兄さんが感情を剥き出しにして食いついた。
「追い払ったよ。というか縛って吊るしたから追ってはこないと思うけど」
「そうじゃねぇ、狙われたってことが問題なんだ。狙いはロキだろうな」
「ただのウサギだよ?」
「既に毛皮は売りに出された。商人達は鑑識眼が高い。おおかた似たような毛質のロキを攫って偽物を売るつもりだったんだろうな」
「攫ったところで売りに出すには毛量が少なくない?」
本来のサイズに比べて、今のロキから取れる毛量はバッグひとつ作るだけで精一杯だろう。
その前に攫っても一人で帰ってきそうだ。
『あるじ? 俺が負ける前提で話すのはよせ』
君は強いけど、搦手には弱いからね。
仮に隷属の首輪とかつけられたら強い分、仲間に迷惑かけちゃうよ? 僕の分体だから制御こそ可能だけど。
ルルア・タック侯爵領へと辿り着く。
ここは領主邸と街が一体化しているのでバファリンやパブロンより規模が大きい。
通常なら三つくらいの街を一体化。
最奥に侯爵家のお屋敷があり、中央に商業区。
西、南、東に続く道にそれぞれ街が伸びている。
山岳にあるというだけあって高山を多く有しており、中でも魔道具の最先端。
モンスター由来の魔核の他に、宝石からなる魔石。
ここは魔石発祥の地らしいのだ。
あちこちに見たことのない魔道具の数々。
ついつい目が向いてしまうのは仕方のない事だ。
「ルーク君、すっかり魔道具に夢中ね」
「実は最近魔導具に興味が湧いて」
「贅沢な悩みだねぇ、魔道具なんてお貴族様の道楽の延長線上にあるもんだろ? 平民の俺らには手が出ねぇものに興味を示せるってのはそれだけ懐に余裕があるってこった」
「こーら、リーダー。弟の成長に蓋をしないの。応援してやるのが兄貴って以前言ってたじゃない?」
「これはただの僻みですよ、お嬢様。自分がそれを手にするのはもう少し稼いでから。そう思ってたのに弟に先を越された。これはそんな顔です」
「小さい男だね、これじゃどっちが兄貴かわかんないよ」
「ううう、うるせーやい!」
僕が魔導具のショーケースを覗いてる外野で兄さん達がいつもの寸劇を交わしている。
ロキは僕におとなしく抱っこされてるが、その顔には暇、とはっきり書かれていた。
トラネ&キサムはルテインさんを連れて宿を取ってくると出かけた。インフィは見るものがあると別行動。
みんなが別行動するのはよろしくないので、集合場所を商業区の噴水広場に日が傾いた頃とした。
この街は日が落ちても昼のように明るいので、それまでの時間を各々で過ごす。
一日中歩いても回りきれないほどの大きな街。
時間が来るまでに見て回るだけでクタクタになった。
「いやぁ、満喫満喫。やっぱり大都会は凄いところだなぁ」
『俺は見せ物の気分だぜ。さっきからずっとこっち見てる視線、気づいてるか?』
もちろん。兄さんといた時は遠巻きに見てたけど、僕が一人になるのを見計らって距離を縮めてきたからね。
『締めるか?』
するだけ無駄でしょ? そもそも僕のスキル効果範囲はこの街をすっぽり覆うよ?
『何もできねぇ、って事か。あるじは普段ボケっとし過ぎて心配になるが、覚悟は決まってるんだったな。じゃあ放置でいいか』
威嚇だけはしておいて。
念話でロキと話しながら路地裏へと入る。
付けてきてる相手がこの奥を行き止まりと知ってるのか急足で距離を詰めてきた。
しかし──
「なに? どこに消え……ガハァッ!」
浮遊で建物の二階に上がり、そこからジャンプ。
引き寄せ+キックで踵落としを決めさせてもらった。
子供の蹴りで大袈裟に驚く人だなぁ。
「看破で見え見えなんだよね」
おそらく気配を消す系統のスキル。
「なにが目的で僕の後つけてたの?」
毛糸変換で縛り付け、浮遊で浮かせると街路灯に括り付ける。
最近大量に取得したブラッディベアーの毛が早速役に立った。
なかなか起きないのでブーツを脱がし……うわ、臭い!
足だけを徹底的に除菌して、取り出したるは毛糸で作ったくすぐり棒。
これをこう、こちょこちょと足の裏を刺激してやれば……
「やめろ! 降ろせ!」
ほら起きた。
「なんで僕をつけてたのか教えてくれたらおろしてあげてもいいよ?」
「子供がこんな時間まで一人でうろついているのは危ないと注意しようとしてたんだ」
「ふぅん。じゃあ気配と姿を消してたのはなんで? 突然声をかけたら僕くらいの子は驚いておしっこ漏らしちゃうよ? そういうことは考えなかったの?」
「いいから降ろせ! クソガキ!」
「理由を教えてくれなきゃダメですー」
押し問答をしている時間はないからね。
「じゃあ、僕はみんなのところに戻るから。じゃあね」
夜の闇に溶けるように、僕はその身を空に浮かせ。
パッと消える。
消えてないよ、伸縮で小さくなっただけ。
ただ消えたように見せれば相手は勝手に勘違いしてくれる。
あとは
そのまま空を飛んで違う路地で元の大きさに。
待ち合わせ場所へと急いだ。
「なに? 一人の時に狙われただって!?」
集合場所で先ほどの話を話題に上げれば兄さんが感情を剥き出しにして食いついた。
「追い払ったよ。というか縛って吊るしたから追ってはこないと思うけど」
「そうじゃねぇ、狙われたってことが問題なんだ。狙いはロキだろうな」
「ただのウサギだよ?」
「既に毛皮は売りに出された。商人達は鑑識眼が高い。おおかた似たような毛質のロキを攫って偽物を売るつもりだったんだろうな」
「攫ったところで売りに出すには毛量が少なくない?」
本来のサイズに比べて、今のロキから取れる毛量はバッグひとつ作るだけで精一杯だろう。
その前に攫っても一人で帰ってきそうだ。
『あるじ? 俺が負ける前提で話すのはよせ』
君は強いけど、搦手には弱いからね。
仮に隷属の首輪とかつけられたら強い分、仲間に迷惑かけちゃうよ? 僕の分体だから制御こそ可能だけど。
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