もふもふと始めるゴミ拾いの旅〜何故か最強もふもふ達がお世話されに来ちゃいます〜

双葉 鳴|◉〻◉)

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五章 ゴミ拾いともふもふファミリー

61 魔導具師入門

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「え、魔道具の講習会があるんですか?」

ギルドにクエスト達成の報告を済ませてると、見慣れぬ告知が貼ってあった。
コエンさんがわざわざ受付まで来て話を振ってくる。
半ば僕たちの担当みたいなところあるよね。

「おう、ルーク。魔導具製作に興味あるのかい?」
「まぁうちの子の抜け殻がどう使われるかは生産者としては気になりますけどね」

でもそれくらいですよ、他に興味はないですよとそっけなく返す。

「それだけかー? いっそ魔導具師になったりは?」
「いや、やりませんよ。なんでそんなこと言うんです?」

コエンさんが捕まえた獲物は逃さないと言いたげに僕にどうしても講習を受けさせたそうだ。

「いや、その才能を冒険者だけに使うのは勿体無いと思ってな?」
「兄さんが言ってました」
「なんて?」
「何でもかんでも手をつけて器用貧乏にだけはなるなと」
「くっ、アイツめ。余計なことを教えやがって」

兄さんはお金に汚い人だったけど、コエンさんみたいに勢いで押し切ろうとするタイプに騙されない為の手段を教えてくれたのかもしれない。

「まぁ、講習会は出ても良いですよ。ただしそっちの道に進むかはわかりませんが」
「もうそれで良いからさ。講習を受けてくれるだけで良い!」

随分と推しが強いと思ったら、どうやら講習会が近づいてきてると言うのに誰も参加しなくて焦っていたらしい。
いつもお世話になってるので言ってくれたらそれくらいするのにね。

「わかりました。受けるだけで良いなら」
「恩に切る。帝国のお偉いさんが来るのに生徒0じゃ面目が立たなかったところだ」

そんなに切羽詰まってるなら、クエストでも出せば良いのに。

「じゃあクエストでもなんでも使って人集めでもすれば良いじゃないですか」
「そのお偉いさんは、生徒の質にえらいこだわるんだ」
「僕は大丈夫なんですか?」
「お前でダメだったら帝都中に素質ある奴なんかいねーよ」
「どれだけ頼りにされてるんですか、僕は」
「ランクA依頼を任せても大丈夫くらいには頼ってるよ」

それは流石にやめて。
ただでさえ子供だからって周囲から白い目で見られてるのにさ。
これ以上目立ったら何されるかわかんないよ。

「それにお偉いさんはお金を一切出さない癖に、こっちで物は用意しろって無茶言うんだぜ?」
「だからクエストに出すお金もないと?」
「なまじ端金で集まった生徒に対してお小言をこぼす未来が見える」
「だったら受けなきゃ良いじゃないですか、その講習自体」
「ああ、それもまた無理な話でな」

どうしてだろう?
頭を捻ってると、コエンさんがゴニョゴニョと耳打ちしてくれた。
あ、納得。そりゃ断れないよ。

そのお偉いさんは元皇帝。
要はオレノーさんのお父さん。
後継者に席を譲った後は隠居して魔導具師の講習に精を出してるらしい。

なんでそんな人が護衛もなしに外出回ってるの?
それを言ったらオレノーさんも大概だった。

「あの人自体がオーレン様にそっくりでなぁ。あの親にしてこの子ありって言われてる程だ。その反動でというか、第一王子の方が頭でっかちになっちまってな」

そう言えばお兄さんと仲が悪いんだっけ?
お兄さんに押し付けて冒険者になったって聞いた。
今はどうしてるんだろう?
帝都に帰ったっきりこっちにまるで来なくなっちゃったし。


そんなこんなで時は流れ、講習会当日。
僕は最初そこまで興味無さげにしていたが、その巧みな話術に夢中になり、気がつけば講習が進む度に質問をするほどになっていた。

「いや、ははは。こんなにジジイの話を楽しみにしてくれるなんて嬉しいことはない。これはコエンに担がれたかな?」
「いえ、普通に面白かったです」

講習会が終わり、質問タイム。
自分のことをお祖父さんと言うにはまだまだ若く感じた。
元帝王と聞いてもそんな気配を感じさせない。
気さくな雰囲気が気を楽にさせてくれた。

コエンさんが気を揉んでいるからもっと気難しい相手かと思ったけど、全然そんなことなかったや。
ただ、帝王時代の話はとぼけられてしまった。
今の自分はタダのジジイとして、過去のことなんて忘れてしまったみたいに言う。あれだけしっかりしてるならきっと記憶力も良さそうだ。

けど敢えてひけらかさないのは帝国の未来に関わるから。
だから迂闊に聞く内容じゃないと判断して僕の方が折れた。


その上で魔導具の作り方は僕の興味を大きくそそる。
何せ今まであまり必要としてこなかったスキルとかを付与出来るから。今まで僕やその分体が使ってこれたスキルが魔道具を介して限定的に操れるようになると言うのは画期的で、すっかりハマってしまった。

まずは触媒になる魔石。これを魔力通りのいいワイバーンの被膜の上に置く。その上にシルクスパイダーの糸を縫いつける。縫い付けることができるのがワイバーンの被膜の唯一の利点。

安価な素材で代用すると手間がとんでも無くかかるらしい。
そういう意味ではワイバーンの被膜を欲しがってたみたい。
もしそれがなかったらミスリルに魔力伝達の溝を直接掘って、そこにシルクスパイダーの糸を粉々に砕いて作った薬液を垂らすんだって。
地味だし手間だし大仕事。
なお、シルクスパイダー以上に魔力伝導率が高い素材もあるにはあるが入手が難しいからこれも代用品だって言ってた。

まぁ、災害級以上の抜け毛を一本にまとめた毛糸があれば本望だって言ってた。これ、絶対僕が持ってる前提で教えてるよね?
一体どこからどこまで仕込みなのかわからない。

去年の今頃はまずこんな講習会見かけなかったし。
あの時はまだインフィもこっちに来てなかったからね。

そんなわけで製作開始。
対象に付与出来る効果は魔石一つに一種まで。
僕はこれをウォーターサーバーに取り付けて【疲労抽出】の効果をつけてみた。

「買います!」
「いやうちが先に買うって言ったんだからな!」
「じゃあうちは二個買います」
「バカめ、俺が先に三個買うわ!」

今目の前で繰り広げられてるのは、冒険者ギルドと商業ギルドのマスター同士の不毛な争い。
昨日作った魔道具の試作を見せに行ったら勝手に喧嘩を始めたのである。

良い大人が、みっともないと思わないの?

「あんまり喧嘩するなら売りませんよ?」
「頼む! そんなこと言わずに売ってくれ」
「100万出す!」
「俺は150万だ!」

だから多いですって。
結局最終的には元値タダのウォーターサーバーは一つ450万ゼニスとして売れた。
儲かったと言うより、心底心苦しい気分になった。

それとは別にパーティメンバーにも魔導具を作る。

「え、俺たちに……良いのか?」
「うん、いつもお世話になってるからね」
「で、このトラップ。どんな効果がついてるんだ?」
「それはね……」

キサムにプレゼントした養分吸収トラップは、挟んだ相手の血を根こそぎ吸い取るとっても凶悪なトラップだった。

「これ、使い所間違えたら俺は人殺しになるんじゃ……」
「じゃあ養分吸収以外の魔石を付け替えればいいよ」
「換えがあるのか?」
「そりゃあるよ。挟んだ相手のカビを除去する魔石とか、ノミを除去する魔石とか、傷が回復する魔石、毛皮が再生する魔石なんてある」
「なんかあれだな、解体の前に使うと効率良さそうな効果だな」
「あ、うん。キサムがよく解体する時に僕に頼むから、だったらその効果を持たせちゃったほうが僕が楽かなって」
「まぁ、あれば助かるが。トラップの効果としては強すぎるな」
「解体する時以外は使えないかな?」
「まぁ、インフィに細切れにされるよりは良いか」
「そうだね、考えて使ってくれたら嬉しいな」

物は言いよう。お陰でインフィには僕とキサムが揃って睨まれている。

「そしてトラネとインフィにはこれね」
「鞍?」
「うん鞍に引き寄せの効果が付いてるから、対応する腕輪が持ってれば乗っても落ちないよ」
「あら、そう言うの欲しかったの。ありがとうね、リーダー」

初めて感謝の言葉を貰った気がするよね。
ルエンザは僕の分体だから僕のスキルが使えるし、そっちの心配はない。ロキも同様だ。

「これでバンの上で立ちながら弓撃てるの?」
「もちろんさ。あとプロフェンには任意で大きくも小さくもなれるベルトを作ったよ。もしもの時に使ってね?」
『わふぅん!』

ありがとう、あるじーという気持ちが尻尾から伝わってくる。
僕の伸縮だと、抱っこできるサイズに強制的にしちゃうけど、たまーにトラネを乗せて駆け回りたそうにしてたもんね。
これでプロフェンは本体で歩き回れるようになった。
あとは大きい時の自分をもっと受け入れられるようになれば万々歳かな?

でも無理かなぁ?
時にいじめられた記憶がいつまでも残ってるもんね。
トラネと一緒にぜひ乗り越えてほしい。
自分の持ち味を生かしながらね。

ソニンにも同様のベルトを渡すと、素直じゃない感じで受け取った。いつでもキサムと行動できるようになったのが嬉しそうだ。
最初は凸凹コンビって言われてたのに、いつのまにか支え合うようになってたもんね。

これでいつでも自由行動が可能になった。
まぁはなれて行動する用事は今のところないんだけど。
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