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五章 ゴミ拾いともふもふファミリー

58 新生ブリーダーズの初クエスト

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ぬいぐるみ販売の緩和。
そして地元霊の強制蘇生で僕のお店は瞬く間に多数の従業員を抱えることになっていた。
皆が皆ヘキサさんに負けず劣らずの貴族。
その上でピヨちゃんに忠誠を誓ってるのでこのお店で働くことに拒否感はない、むしろ働かせてください! という事で僕らは急遽暇になった。

今まではこっちで稼げるから冒険者活動は二の次だったけど、これを機に冒険者に戻ろうかと考えた。

「それではルテインさん、改めてよろしくお願いします」
「うむ、家事以外の事は任せてくれ」

すごい自信満々に自慢できないことを言う。
お姫様だって話だけど、そんな気配はどこにもない。
ちょっと情けない部分の多いお姉さんて感じだ。

ピヨちゃんがいなかったらとっくに餓死していたんだろうなぁと言う不安しかない。

「ルテインさんは剣士なんだ?」
「ああ、剣術の心得もあるぞ」
「その割りに随分と軽装だけど」
「うっ、それは……食べるのに困って。私のことはいいじゃないの! そう言うキサムの方はどうなの?」

顔を真っ赤にしながら狼狽えるルテインさん。
食べるのに困って剣術の要であるライトシールドと武装のほとんどを売り払ってしまったらしい。
だめだこの人、早くなんとかしないと。

「俺はナイフと罠使いだ。モンスターの発見、引き寄せなんでもござれ。薬草の発見とかも得意だぜ?」
「うぐ、意外と優秀なのね?」
「あたしは見ての通り弓での中距離攻撃が得意かな? 近づかれてもプロフェンちゃんのサポートがあるから近接も平気だよ?」
「うぅ、なんか急に肩身が狭くなってきたわ」

ルテインさんがその場にうずくまって地面にののじをかいてしまった。唯一の強みはピヨちゃんによるゾンビアタックしかないと言われたら、流石に凹むもんね。

「僕は基本的にサポーターなのでルテインさんが前衛を務めてくれるなら嬉しいです。うちは後衛ばかり多く、テイムモンスターが前衛と中衛を務めるタイプですので前衛はありがたいんですよ」
「ほんと!?」

うん、うちの前衛問題児しかいないからね。
その問題児の(ロキ、ソニンに続く)三人目になるか、貴重な戦力になるかの判断をしていくクエストを受ける。

ギルドでは店はいいのかなんて聞かれたけど、人気に応じてスタッフが増えたから急遽暇になったことを伝えた。

「まぁお前らの本分は冒険者だしな。ゴミ拾いの効果で塩漬け以来はなんもないが、お前ら向けのクエストならいくつかあるんだ」
「僕達向け?」
「ああ、バファリンからパブロンに向けて一本道の街道があるだろう?」
「ええ」

思い出しながら相槌を打つ。
真っ平らな平原に一本道。鳥系のモンスターからの襲撃が多いと聞くが、ロキやインフィの威圧でまるで近寄ってこなかったんだよね。

「その場所から右の逸れた山道にワイバーンの目撃例がある」
「ワイバーン?」

僕たちの返答にこれといった恐れはない。
今更ワイバーンが出たところでどうしたと言う感じだ。
それより厄介なメンツがパーティメンバーにいる。
融合で傾国級までパワーアップできる。
戦術級が出てきたところで「それで?」となるのだが、戦術級の相手ができるのはAランクパーティが複数名から、と言われるくらいに高難易度な点である。

「ワイバーンの名前を聞いても嫌な顔をしない奴ってのは帝国じゃ珍しいんだぞ?」
「まぁそれ以上ともう会ってますしね?」

僕はロキやソニン、プロフェン、インフィルエンザなど。
トラネ、キサムはドラゴンと。
ルテインさんに至ってはピヨちゃんがそれに当たる。

ピヨちゃんはどの等級にも与せず、その存在の希少性から伝説級に分類されていた。
強さの等級にないのは戦闘力的な意味での脅威ではなく、まず滅多に見かけない上に人類を敵対視していないから。

「で、だ。もう察しはついてるだろうがそいつらが悪さする前に駆除、もしくは保護してくれって事だな」
「駆除する必要はないんですか?」
「商人達がいつ襲われるかどうか不安だと言う密告でこのクエストは発生しているからな。駆除じゃなく、その場所から消えれば大丈夫だ」
「なるほど。しかし保護となると僕たちでは手に余りますが?」
「いつもの伸縮でなんとかならねぇか?」
「なんとかはなりますが……」
「いいじゃないの、引き受けちゃえば」

押し問答を続ける僕とコエンさんにインフィが割って入る。

「お嬢ちゃんは何か策があるのか?」
「ちょうど空を飛べる足が欲しかったの。上手く手懐ければ空から攻撃できるわ」
「更に攻撃範囲を伸ばすのか。こりゃ与えちゃいけない奴に与えちまう感じか?」
「はいはーい! あたしも空飛ぶ足場が欲しいです」
『え、僕のこといらなくなっちゃったの!?』

インフィに賛同するトラネに、ペット生活の危機を覚えたプロフェンが驚く。子犬の真似をして必死に懇願していた。

「もちろん、プロフェンちゃんも一緒に上から攻撃するんだよ? せっかくのブレスを使わないのは勿体無いもん」

使わんでよろしい。
空から荒地を生成する気かな?
インフィの言葉に釣られるように空を飛べる足に思うを馳せるメンバー達。
本人達がやる気を出してるのならリーダーの僕が断るのもおかしな話だ。
ただルテインさんだけがこのメンツでワイバーンに戦いを仕掛けるのは正気じゃないと言い出した。

「まってください、この子達はDランクですよ? Aランクパーティ複数推奨のワイバーンの群れに突っ込ませると言うのですか?」
「新人のお嬢ちゃんから見れば確かにそう見えるが、こいつらは好き好んでDに居るんだ。本当ならとっくにBなりAになっててもおかしくないんだが、この通りお気楽な奴らでな。お嬢ちゃんの心配はごもっともだが、俺だって出来もしねぇ奴らにこんな仕事振らねぇよ」
「信頼あってのクエストか。確かに新入りの私が口出しするのも違うな。許して欲しい」
「問題ない。こいつらの若さを考えたら引き止めるのが普通だ。つい最近までこいつの兄貴が保護者としてついてたんだが、もう自分の手を離れたって悲しい顔して出ていったよ」
「そこまでの経緯があったのだな、この子達に」
「ああ、この若さでどんな歴戦の将よりヤバいバトルを乗り越えてる。あんたもすぐに染まるさ。一緒に行動してればな」
「それはそれで少し困ると言うか」

嫁の行き手が絶望的になるみたいな顔をするルテインさんだった。流石に子供ばかりのパーティメンバーに恋をする気持ちはないようだ。
まぁ、僕も言い寄られても困るからね。

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