もふもふと始めるゴミ拾いの旅〜何故か最強もふもふ達がお世話されに来ちゃいます〜

双葉 鳴|◉〻◉)

文字の大きさ
上 下
57 / 88
五章 ゴミ拾いともふもふファミリー

57 領主公認もふもふカフェ

しおりを挟む
「失礼する、こちらに叔母様が若き姿で働いているというのは誠であるか?」

入り口から渋い声がした。
傍にはコエンさんとザイムさん。他に複数の行為冒険者の顔がある。
その顔には口止めしたんだがどうしても自分で会いに行くといって聞かなかったという諦めの表情が浮かんでいる。

「あら、何事ですか?」
「ヘキサさん、なんでもあなたのご家族が参ったようです」
「あらあら、わたくしの知っているお方?」
「甥のクロウウェルです、叔母様」
「まぁ、クロウちゃん!? こんなにシワが刻まれて。立派になったのねえ」

どう考えても立場は逆に見える二人だけど、幽霊だった期間が長かったようですっかり立場が変わってしまったようだ。
ヘキサさんがが10代の頃に生まれたクロウさんは、流行り病を収束できない無慈悲さを抱えて70年の時を過ごした。
生きてればヘキサさんは80代。
でも若くしてこの世をさったからこその若さでそこに居る。
ピヨちゃんのせいであるが、今は生まれ変わったことに感謝すらしてるのでピヨちゃんばかり責められない。

「ヘキサさん、積もるお話もあるでしょう、客室を貸切にしておきます。今日はもう上がっていただいて結構ですから、領主様をお願い出来ますか?」
「あらあら。お仕事を放ってしまうなんてありえませんわ。これからはいつでも会えますでしょう?」
「ヘキサさんがこの屋敷から出て行けないように、領主様も毎日出歩けるご身分でもないでしょう。それにこの歳では毎日はお厳しいことかと思います」
「そう? なら仕方ないわね。これもわたくしにできるお仕事であるならば、その役目お受けいたします」
「感謝する、小さな店主殿」
「いえいえ」

平民が貴族に口を出せるわけがないし、二人のギルドマスターからの圧がすごかったからね。

「まさかうちのお客さんにあんな大物が来るとは思いませんでした」
「オレノーのマブダチのお前が今更伯爵相手にビビるなよ」
「偉いのはオレノーさんで僕じゃないですからね。だからコエンさんもさっきいいから言う通りにしとけって顔してたんじゃないですか?」

すぐ横でプッと吹き出す声がする。
ザイムさんだ。

「見抜かれてますね、兄さん。これじゃあどっちが大人かわからないですね?」
「全く。どちらにせよクロウウェルは俺たちの協力者。礼を尽くすのは当たり前だろうが」
「巻き込んだのが私たちの方ですが、まぁこれくらいの見返りはあってもいいでしょう」
「あの、さっきからなんのお話でしょうか?」
「んー? なんの話だろうな」

コエンさんが煙に撒くような形ではぐらかす。
あまり語りたくなさそうだし、どちらにせよ恩はあるので深くは聞かないことにしよう。
これ以上面倒ごとはごめんだ。

「それはさておき、ピヨちゃんとやらはどちらへ?」
「ああ、あの子なら……」

指を差す方向はヘキサさんの胸元だ。
いつ霊体に戻るかもわからぬと言う不安から、共にいるようになった。飼い主のルテインさんはなんだったら長生き具合ではヘキサさんに負けてないので世界樹の森で生きるエルフと呼ばれてもおかしくないくらいのおばあさんだったりするが、見た目なら僕達の少し上くらいなんだよね。

参ったな、と言う顔。

「何かあったんですか?」
「まぁ、産毛の一つでも貰えたらなと」
「不老不死の伝承はデマって話ですよ?」
「さ、そうだぞザイム」
「由来に肖ろうとする人は多いんですよ。君のペットのロキ君と同様に」
「まぁブラッシング次第で落ちると思いますが、そんな今すぐともいきませんし」
「いっそクエストでルークに出したらどうだ?」
「その手がありましたか」

コエンさんが余計なことを言い、ザイムさんが名案だと僕にクエストを受けてくれるかといった。
期間は設けず、入手次第持ってく形で受注する。
わざわざこんな大勢で押しかけなくたって、受けるのに。

「とにかく、ピヨちゃんの件はこちらで預かってます」
「まぁ、ルークのところが一番安全だからな」
「全くです」
「???」

なんの話だろうかと頭を捻ってると。その頭をガシと掴まれる。

「お前のとこにいれば安心だってことよ。なんせ最強のガーディアンがついてるからな」

それってロキやソニンの事? もしかしてプロフェン?
インフィではないよなぁ。ルエンザも論外だ。

「この顔はわかってないですね」
「そのようだ」

えぇ?
じゃあ誰のことを言ってるんだろう?

「うちのリーダーは能天気だから仕方ないのよ。自分のしでかした事態を普通のことだと思ってるわ。なんだったら誰でもできるとさえ思ってそうよ?」

インフィにそんなことを言われる。
つまりそれって僕が守護神だって思われてるってこと?
流石にそれは盛りすぎじゃない?

そんなやりとりの後、数時間は籠ると思っていたクロウさんはヘキサさんと出てきて終始和やかな雰囲気でエントランスまでやってきた。

「今日は突然押しかけて申し訳ありませんでした。今度は孫を引き連れて寄らせていただきます」
「こちらこそあまりお相手できずに申し訳ありません」
「いえ、救国の英雄殿と直接お会いできて光栄です。私の代で叶えられなかった疫病の払拭。見事な手腕でございました」
「いえ、これは僕のスキルのおかげというか」
「それをひけらかさず、当たり前と言える御心。まさしく英雄と言って差し支えないでしょう。本当なら我が領で大々的に取り上げるところでしたが……」

恨めしそうに二人のギルドマスターを見やる。
止められたんだな、と同時に伯爵様に口出しできるこの人たちは何者なんだろうという気になる。

あんまり気にしすぎたらまた余計なことに首を突っ込みそうなのでやめた。

それから数日後。

「わぁ! もふもふだ! お祖父様、ここは天国ですか?」

僕より二歳ぐらい下の男の子がクロウさんに連れられもふもふ広場でもみくちゃにされながらも楽しそうにしていた。

その日からうちの店は領主公認もふもふカフェとして人気を博した。
わざわざ他領からのお客さんも増え、それと同時にロキぐるみも生産が追いつかなくなった。

そんな頻繁に抜け毛落ちないからね。
分体で量を増やしても世話人が足りないんだよね。
その日からロキぐるみの生産は予約制となった。
しおりを挟む
感想 51

あなたにおすすめの小説

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
ファンタジー
HOT 1位!ファンタジー 3位! ありがとうございます!  父親が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 その他、多数投稿しています! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

異世界遺跡巡り ~ロマンを求めて異世界冒険~

小狸日
ファンタジー
交通事故に巻き込まれて、異世界に転移した拓(タク)と浩司(コウジ) そこは、剣と魔法の世界だった。 2千年以上昔の勇者の物語、そこに出てくる勇者の遺産。 新しい世界で遺跡探検と異世界料理を楽しもうと思っていたのだが・・・ 気に入らない異世界の常識に小さな喧嘩を売ることにした。

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

子爵家の長男ですが魔法適性が皆無だったので孤児院に預けられました。変化魔法があれば魔法適性なんて無くても無問題!

八神
ファンタジー
主人公『リデック・ゼルハイト』は子爵家の長男として産まれたが、検査によって『魔法適性が一切無い』と判明したため父親である当主の判断で孤児院に預けられた。 『魔法適性』とは読んで字のごとく魔法を扱う適性である。 魔力を持つ人間には差はあれど基本的にみんな生まれつき様々な属性の魔法適性が備わっている。 しかし例外というのはどの世界にも存在し、魔力を持つ人間の中にもごく稀に魔法適性が全くない状態で産まれてくる人も… そんな主人公、リデックが5歳になったある日…ふと前世の記憶を思い出し、魔法適性に関係の無い変化魔法に目をつける。 しかしその魔法は『魔物に変身する』というもので人々からはあまり好意的に思われていない魔法だった。 …はたして主人公の運命やいかに…

異世界召喚されたら無能と言われ追い出されました。~この世界は俺にとってイージーモードでした~

WING/空埼 裕@書籍発売中
ファンタジー
 1~8巻好評発売中です!  ※2022年7月12日に本編は完結しました。  ◇ ◇ ◇  ある日突然、クラスまるごと異世界に勇者召喚された高校生、結城晴人。  ステータスを確認したところ、勇者に与えられる特典のギフトどころか、勇者の称号すらも無いことが判明する。  晴人たちを召喚した王女は「無能がいては足手纏いになる」と、彼のことを追い出してしまった。  しかも街を出て早々、王女が差し向けた騎士によって、晴人は殺されかける。  胸を刺され意識を失った彼は、気がつくと神様の前にいた。  そしてギフトを与え忘れたお詫びとして、望むスキルを作れるスキルをはじめとしたチート能力を手に入れるのであった──  ハードモードな異世界生活も、やりすぎなくらいスキルを作って一発逆転イージーモード!?  前代未聞の難易度激甘ファンタジー、開幕!

野草から始まる異世界スローライフ

深月カナメ
ファンタジー
花、植物に癒されたキャンプ場からの帰り、事故にあい異世界に転生。気付けば子供の姿で、名前はエルバという。 私ーーエルバはスクスク育ち。 ある日、ふれた薬草の名前、効能が頭の中に聞こえた。 (このスキル使える)   エルバはみたこともない植物をもとめ、魔法のある世界で優しい両親も恵まれ、私の第二の人生はいま異世界ではじまった。 エブリスタ様にて掲載中です。 表紙は表紙メーカー様をお借りいたしました。 プロローグ〜78話までを第一章として、誤字脱字を直したものに変えました。 物語は変わっておりません。 一応、誤字脱字、文章などを直したはずですが、まだまだあると思います。見直しながら第二章を進めたいと思っております。 よろしくお願いします。

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

処理中です...