もふもふと始めるゴミ拾いの旅〜何故か最強もふもふ達がお世話されに来ちゃいます〜

双葉 鳴|◉〻◉)

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四章 ゴミ拾いと流行り病

47 スキル【熟成調理】

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遠征中に溜まったゴミ達から面白いスキルが派生した。
それがお肉を拾ったそれらを消費して調理するって言うスキルだ。

ただお肉だけじゃそこまで美味しい調理はできないみたいで、香辛料なり調味料なりが必須だと行き当たる。

が、それは人間換算での話だ。
いつも人参しか食べないと思われたソニンやロキが食いついたのだ。

「人参以外も食べるんだ?」
『人参は主食。こっちはおやつ? 小腹を満たすのに良い』

ふぅん?
おやつという割に結構食らいつくじゃないの。
さっきのと含めて6個目のお肉だよ、それ?

「ロキはどう?」
『久しく忘れていた味を思い出す。人参は別腹だがな』

もっちゃもっちゃと頬袋を膨らませて満更でもなさそうに言う。
対して九尾姉妹は食いつきが悪い。

『嫌ぁよ、なんで今更そんな野蛮なもの口にしなきゃいけないわけ?』

こっちはこっちで魔力付与したミルクが飲めてれば十分みたいな口ぶり。魔力が供給されてれば尻尾が増えてく九尾ならではの考えなのかもしれない。

『でもこれ、魔力がこもってて美味しいよ? 血もつかないし、程よく肉の味がする。生じゃないからお腹も壊さないし』

ルエンザは意外と食いつきが良い。
インフはいつもの食わず嫌いだ。ルエンザが美味しそうに食べるのを見て、仕方ないわねって感じで食いついた。

『美味しいね、あるじー』

プロフェンは癒し。
トラネが手放したくない理由が今になって分かった。

「わ、すごい勢いで食べてるね」
「うん、どうも人間用じゃなくてモンスター用の調理スキルだったみたい」
「これで少しは食費が浮くかな?」
「肉は僕のスコア行きだったけど、別の用途ができてよかったね」
「皮は高値で売れるけど、モンスター肉は味によっては売れないもんね」
「こんな肉食べるのはモンスターぐらいって思われるのは皮肉だわ」

インフィは本体で食べておきながら分体の方で悪態を吐く。

「そうね、モンスターだって食べるのに困って食らいつくんだろうから」
「あら、モンスターの食事に理解があるのね?」
「プロフェンちゃんと一緒に暮らしてたらわかるよ」
「そうね」

そっけない会話のようでいて、本人達は笑顔だ。

「さて、スキルの検証が終わればクエストの続きだ」

軽く手を叩き、キサムが全員の注目を集める。
僕達は今、バファリンから北にある山岳の街パブロンに来ていた。

バファリンに比べてモンスターが多く、討伐系クエストが多いことから第二の拠点になっている。
バファリンで活躍していた新人冒険者パーティ『バウンティ』もこっちに来ては僕達とあら同様にクエストを競い合っている。

なぜか知らないけどインフィにご執心だ。
最初こそ厄災級では? と身構えていたけど特に何も仕掛けてこないので気のせいということになっていた。

代わりに周辺で拾えるゴミが一気に加速したので厄災様々だ。

「討伐対象はブルホーン。インフィの魔法頼みだが、時間稼ぎは任せてもらおう。ソニン、やれるな?」
「キュッキュー」

魔力の込められてない人参以外ではやる気を見せないソニンは、おやつと言い切った調理肉ですっかりやる気を見せていた。

「あたし達も頑張ろうね、プロフェンちゃん?」
「キャンキャン!」

すっかり子犬の真似が上手になったプロフェンが、トラネの期待に応えるように鳴いた。

「なら、期待させてもらおうかしら? ルエンザ、こちらも負けてられないわね?」
『姉さん、負けず嫌いだもんね』
「うるさい、ほら来るわよ」

この姉妹は相変わらず仲が良い。
軽口を叩き合えてる間は気にしなくて良さそうだ。
ルエンザも普通に魔法も使うから、僕達はそれぞれモンスターを引っ張ってきてインフィに回す係だ。

けどロキがやんちゃするので僕は基本インフィの横で応戦している。
基本的にフリーなので僕がサポートできるのは敵を釣ってきた時くらいだ。それまでは僕のゴミ拾いの範囲外だから何もできないんだよね。
分体だから遠くに行っても効果が切れないのがここにきて仇になった感じ。

まぁロキはロキなので好きにしたら良いと思うよ。
僕も無理に合わせろって言えないしね。

戦闘はつつがなく終わった。
ブルホーンが占めて36体。
予想以上に多く釣れた。
そしてインフィの魔法で細切れになる。

「討伐部位は角だっけ?」

ミンチ肉の中から角の部位を探す。
合計72本の角を手に入れてからゴミ拾いで回収。
相変わらずバファリンでスコア回収が美味しいので、こっちで問題なく取得可能だ。討伐部位以外は全部拾ってしまう。

そこで再び【熟成調理】スキルが反応する。
先ほどのボアステーキと違い、今回はブルホーンの包み焼きという凝った調理過程を済ませた料理だった。

動いた後だから空腹の僕らでも美味しそうだと思った。

「味が薄い……臭みも強い」

絶望的な僕達に比べ、

『おぉ、これもまた深みがあって良いな!』
『兄ちゃん、食いすぎ! あたしの分がなくなるって!』
「まだあるからがっつかないの。ルエンザもどう?」

一応聞きながら目の前に置くと、ガフガフと食べ始めた。
ルエンザが食べればインフも食いつく。
分体のインフィも心なしか嬉しそうだ。
こっちはボアより好みの味だったみたいだ。

「うわぁ、これを美味しく食べれるんだ。羨ましい。キサム~お腹すいたよ~」
「今干し肉焼いてるからちょっと待ってろ」
「早くね?」

モンスター側の食事が豪華に見える錯覚を覚えながら、慎ましやかな食事を楽しむ。
こうなってくると人間用の調理スキルも欲しくなってくるね。
ここ数週間遠征が多くなってきたので、本格的に料理を習おうかなって真剣に思うほどだった。
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